記事の概要
昨今のウイスキーブームによってありとあらゆるボトルの値上がりが続いており,コスパよく多様なウイスキーを飲むことが難しくなってきています。
しかしそんな情勢の中でも,未だにあまり広く知られておらず,3000円台という破格の価格帯で購入することができる美味しいシングルモルトスコッチウイスキーは存在しています。
この記事ではそんな3000円台で購入可能なボトルを可能な限り全て,ご紹介していこうと思います!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
ウイスキーの種類について
ボトルの紹介に入る前に「ウイスキーの種類」もとい,テーマに即しては「シングルモルトウイスキーとは何か?」という点について簡単に説明をしておきます。
今回取り上げるのがスコットランドで作られるスコッチウイスキーであり,なおかつスコッチが世界中のウイスキー産地の代表格であることから,ここではスコットランドにおけるウイスキーの種類に纏わる定義を確認してみましょう。
スコッチウイスキーの定義
スコットランドにおけるウイスキーの定義は英国の法律「スコッチウイスキー規則」にて次のように定められています。
- 原料は水・酵母・大麦麦芽及びその他の穀物とすること
- スコットランドの蒸留所で糖化・発酵・蒸留を行うこと
- アルコール度数94.8%以下で蒸留すること
- 容量700リットル以下のオーク樽で熟成させること
- スコットランド国内の保税倉庫もしくは許可された場所で3年以上熟成させること
- 添加物は水及びスピリッツカラメルのみとすること
- アルコール度数40%以上でボトリングすること
スコッチウイスキーの種類
以上の定義に沿って作られたウイスキーはスコッチウイスキーを名乗ることができますが,このスコッチウイスキーは使用した原料の違いによってさらに次の5種類に大別することができます。
以前はこの原料の違いによるウイスキーの分類は曖昧な定義でしたが,2009年に改正されたスコッチウイスキー規則にて,明確に呼び名と定義が定められる運びとなりました。
シングルモルトウイスキー
- 単一の蒸留所のみで生産されたスコッチウイスキー
- 原料穀物は大麦麦芽のみとすること
- 単式蒸留器(ポットスチル)で蒸留を行うこと
- スコットランド国内でボトリングすること
- モルトウイスキーは個性が強く「ラウドスピリッツ」と称される
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シングルグレーンウイスキー
- 単一の蒸留所のみで生産されたスコッチウイスキー
- シングルモルトやブレンデッド以外のもの
(原料に大麦麦芽以外の穀物も含まれている) - 蒸留器に関する定めはない(一般的に連続式蒸留器が使用されている)
- グレーンウイスキーは個性が弱く「サイレントスピリッツ」と称される
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ブレンデッドウイスキー
- モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混合したもの
- モルトとグレーンの比率や蒸留所数の定めはない
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ブレンデッドモルトウイスキー
- 2箇所以上の蒸留所のシングルモルト原酒を混合したもの
- かつて使用された「ピュアモルト」の表記は完全に禁止されている
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ブレンデッドグレーンウイスキー
- 2箇所以上の蒸留所のシングルグレーン原酒を混合したもの
- かつて使用された「ピュアグレーン」の表記は完全に禁止されている
※グレーンウイスキーは個性に乏しいため,ブレンデッドグレーンの流通は非常に少ない
『3000円台で買える』
シングルモルトスコッチ集
早速3,000円台で買うことのできるシングルモルトスコッチウイスキーを全て紹介していきたいと思います!
シングルモルトは各蒸留所の個性が表現されたジャンルであるため,今回は序列は付けません。しかしこの価格帯ではクセのあるボトルはほとんどなく,どれも飲みやすく仕上げられているものが多くなっているので,第一印象で興味を惹かれたボトルを選ぶのが大正解です。
総じて初心者のシングルモルトスコッチ入門としても最適なボトルばかりなので要チェックです!
グレングラント10年
ポイント
「グレングラント10年」はスペイサイドのローゼス地区に所在するグレングラント蒸留所が手がける公式シングルモルトのうち,最もスタンダードな代表作的ボトルになります。
シングルモルト売上ランキングにて世界第6位に位置するグレングラントですが,所有者のカンパリ社の所在するイタリアにおいて最もメジャーなウイスキーとなっています。
そのテイストのベースはバーボン樽で熟成された原酒によって構成されており,10年の熟成期間が設けられていることからアルコールの刺激は微弱。円熟感があり濃厚なバニラやはちみつの甘さが際立つ理想的なスペイサイドモルトです。
香り
バニラ/トフィー/りんご/ハーブのような爽快感/果樹園を思わせる華やかさ
味わい
濃厚な甘さ/柑橘系フルーティ/バニラ/はちみつ/モルティ/りんご
\\蒸留所の解説記事//
グレンマレイ クラシック
ポイント
「グレンマレイ クラシック」はスペイサイドのエルギン地区に位置するグレンマレイ蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最も標準的かつリーズナブルなシングルモルトになります。
ノンピート麦芽を原料とし,アメリカンオーク樽で熟成された原酒で構成されており,軽く滑らか,そして華やかでフルーティなテイストが基調となっています。
クセの全く無いその中庸な美味しさ,そして圧倒的にリーズナブルな価格帯からスコッチウイスキーの入門としても扱いやすい万能なシングルモルトです。
香り
柑橘の甘さ/バタースコッチ/バニラ/モルティ/ショートブレッド/温かみ
味わい
レモン/オレンジ/バニラ/トフィー/モルティな甘み/暖かい草原感
\\蒸留所の解説記事//
スペイバーン10年
ポイント
「スペイバーン10年」はスペイサイドのローゼス地区に位置するスペイバーン蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードな代表作的なボトルになります。
その構成はアメリカンオークのバーボン樽とシェリー樽で熟成された原酒の組み合わせで形成されており,まろやかなクリーミー系の甘さとレモン系のフレッシュな爽快感,そしてドライフルーツのリッチな甘さなどがバランスよく共存しています。
ライトな酒質と軽快なフルーティネスを特徴としていることから,ハイボールとの相性が非常に良く,その価格帯も相まって常飲シングルモルト候補の筆頭に挙がるボトルと言えるでしょう。
香り
柑橘の爽快感/青リンゴ/カスタード/オレンジマーマレード/フローラル
味わい
軽やか/カスタード/レモン/ライム/ジンジャー系スパイシー
\\蒸留所の解説記事//
ロッホローモンド クラシック
ポイント
「ロッホローモンド クラシック」は多彩なタイプのウイスキーを生産する南ハイランドのロッホローモンド蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最も標準的な構成のシングルモルトになります。
そのウイスキーは個性的なローモンドスチルとクラシカルなポットスチルで蒸留された原酒を,蒸留所併設の樽工場で作られたオーク樽で熟成させることで完成しています。
ノンヴィンテージながら若さに負けないエレガントでフルボディな風味を感じることができ,バランスの良いテイストであることから素晴らしい完成度を誇り,非常にコスパに秀でているボトルと言えるでしょう。
香り
バニラ/はちみつ/オレンジピール/カカオ系ビター感/りんご/マスカット/僅かにピート
味わい
香ばしピート感/ビターチョコ/アップルトフィー/ビター/スパイシー/柑橘系
\\蒸留所の解説記事//
オーヘントッシャン
アメリカンオーク
ポイント
「オーヘントッシャン アメリカンオーク」はローランドのオーヘントッシャン蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もリーズナブルば入門的立ち位置のボトルになります。
当蒸留所の最大の特徴はなんと言っても「3回蒸留」であり,通常の2回蒸留よりも1回多く蒸留を行うことで,最も軽やかでフルーティな香味を有するアルコールのみを厳選することができます。
アメリカンオークのバーボン樽で熟成された原酒のみで構成されており,原酒本来のスムーズなエレガントさと樽由来のウッディな円熟感とバニラの甘さの流麗な融合を感じることができます。
香り
クリームブリュレ/シトラス/ナッティ/新緑の若葉/オークの樽香
味わい
スムース/ドライオレンジ/ライム系柑橘感/トフィー/バニラ/はちみつ/ウッディ
\\蒸留所の解説記事//
グレンファークラス10年
ポイント
「グレンファークラス10年」はスペイサイドのスペイ川中流域に位置するグレンファークラス蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードなシングルモルトになります。
グレンファークラスの最大の特徴は「シェリー樽熟成」であり,ほぼ全ての原酒が1st〜4thフィルまでのホセ・ミゲル・マルティン社製のシェリー樽で熟成されています。よってこれらの樽に由来するドライフルーツやレーズンのような濃密な甘さを感じることができます。
シェリー樽熟成系のウイスキーは近年のウイスキーブームの中で価格高騰が続いているのですが,このグレンファークラスは比較的リーズナブルな価格帯を維持しており,同系統のウイスキーの入門にも最適なボトルです。
香り
豊かなシェリー香/はちみつ/トフィー/モルトの甘味/レーズン/スパイシー
味わい
レーズン/ドライフルーツ/ショートケーキ/オークの甘さ/モルティ
\\蒸留所の解説記事//
アードモア レガシー
ポイント
「アードモア レガシー」は東ハイランドのアードモア蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もリーズナブルかつスタンダードなシングルモルトになります。
熟成こそメジャーなバーボン樽で行われていますが,原料のモルトについてノンピート・ピーテッド双方が採用されており,完成するウイスキーはフェノール値12ppm程度のスモーキーな仕上がりです。
しかしながらアイラモルトのようなクセに振り切ったテイストではなく,内陸系のドライで香ばしいピートスモークが感じられる程度に留まっています。よって数少ないピーティ系ウイスキーの入門にも適したボトルと言えるでしょう。
香り
シナモンスパイス/トフィー/バニラ/はちみつ/繊細かつ優しいピートスモーク
味わい
バニラクリーム/シナモンスパイス/オレンジ系柑橘感/心地よいピートスモーク
\\蒸留所の解説記事//
グレンスコシア
キャンベルタウンハーバー
ポイント
「グレンスコシア キャンベルタウンハーバー」はキャンベルタウンに残る数少ない蒸留所のひとつ,グレンスコシア蒸留所が手がけるオフィシャルボトルのうち,最もリーズナブルなシングルモルトになります。
キャンベルタウンモルトは独特な塩辛さ(ブリニー)を特徴としていますが,その特異な美味しさから最近では希少価値が高まっています。しかしながらグレンスコシアは入手製・価格帯ともに良心的な水準を維持しているありがたい銘柄です。
このボトルは1stフィルのバーボン樽で熟成された原酒のみで構成されており,樽由来の濃厚なバニラ感とキャンベルタウンモルトらしいブリニー感を併せ持つ魅力的なテイストを有します。
通販では僅かに価格帯が高い場合がありますが,安いところでは3,000円以下で販売している場所もあるので,キャンベルタウンモルトに興味のある方は真っ先に探してみることをオススメします。
香り
バニラ感/カラメル/ナッツ類/青りんごフルーティ/海の香り
味わい
甘い/バニラ/ブリニー(塩気)/若干スパイシー/ビター/スパイシー
\\蒸留所の解説記事//
アイル・オブ・ジュラ10年
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ10年」は本土西側に浮かぶジュラ島のアイル・オブ・ジュラ蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最も標準的なシングルモルトになります。
ジュラのウイスキーはスコットランドでも有数の巨大なポットスチルで蒸留されていることから,軽やかでクリーンな酒質となり,短い熟成期間でもその真価を垣間見ることができます。
このボトルはアメリカンオークのバーボン樽で10年間の熟成を経たのち,スペインのヘレス産のシェリー樽でフィニッシュされた原酒で構成されており,類稀なバランス感から「酒飲みのためのオールラウンダー」と表現されます。
香り
バニラ/はちみつ/オレンジ/柑橘にフレッシュ感/胡椒系スパイス香/ダークチョコレート
味わい
オレンジマーマレード/ジンジャー/モルティ/優しいスパイス/モルティ/トーステッドアーモンド
\\蒸留所の解説記事//
ザ・グレンリベット12年
ポイント
「ザ・グレンリベット12年」はスペイサイドのリベット地区に位置するザ・グレンリベット蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードで多くの人から愛されるボトルです。
グレンリベットは政府公認第1号の蒸留所として非常に有名であり,かつては栄光に肖りたい悪意からグレンリベットを勝手に名乗る蒸留所が爆増したほどに美味なウイスキーです。
アメリカンとヨーロピアンの2種類のオーク樽で12年以上熟成された原酒で構成されるこのボトルですが,ウイスキーの関連書籍にて「最高級のモルト」と表現されたこともあり,客観的な実績も十分。
世界販売量TOP3(2020年時点で2位)にその名を連ねるスペイサイドモルトの代表格的銘酒ながら,リーズナブルに購入することができるので,まだ飲んだことのない人はどこかで飲んでおくべきでしょう。
香り
フルーティ/パイナップル/柑橘感/優しく甘い香り/バニラ/はちみつ
味わい
ナッツ感/濃密な柑橘/トロピカル/バニラ/チョコレート/フローラル
\\蒸留所の解説記事//
シングルトン・オブ・ダフタウン12年
ポイント
「シングルトン・オブ・ダフタウン12年」はスペイサイドのダフタウン地区に位置するダフタウン蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードなボトルになります。
実はシングルトンブランドのリリースはダフタウンだけではなく地域によって異なり,日本・ヨーロッパではダフタウン,アメリカではグレンダラン,アジアではグレンオードとされているので購入時は注意が必要。
このボトルはノンピート麦芽を原料に,ヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのバーボン樽で熟成された原酒で構成されており,多彩なフルーツ香と濃い甘さを特徴としています。
やはりスペイサイドらしい華やかなテイストが特徴となっているため,同じ地区に位置するグレンフィディックなどが好きな方は一度試してみると良いかもしれません。
香り
白桃/ナッティ/オレンジ系柑橘/青リンゴ/モルティ
味わい
青リンゴ/ナシ/柑橘の香り/ナッティ/モルティ/スパイシー
\\蒸留所の解説記事//
タムナブーリン ダブルカスク
ポイント
「タムナブーリン ダブルカスク」はスペイサイドのリベット地区に所在するタムナブーリン蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードかつリーズナブルなボトルになります。
タムナブーリンもノンピート麦芽を原料としていることからスペイサイドモルトらいいテイストを持っており,このダブルカスクはバーボン樽でメインの熟成を行ったのち,シェリー樽でのフィニッシュを適用した原酒で構成されています。
バーボン樽とシェリー樽由来の要素が織りなす香り高くリッチで華やかな印象に対し,安く思えるほどにリーズナブルな価格帯であることから,神コスパのスペイサイドモルトと表現することができるでしょう。
香り
りんご/トフィー/はちみつ/暖かいモルティ感/オレンジマーマレード
味わい
洋ナシ/ピーチ/パイナップル系トロピカル/黒糖感
\\蒸留所の解説記事//
トマーティン レガシー
ポイント
「トマーティン レガシー」は北ハイランドに位置するトマーティン蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もリーズナブルな蒸留所の入門的な立ち位置のボトルになります。
その構成はノンピート・ピーテッド双方のタイプの麦芽を原料とし,バーボン樽とアメリカンオークのバージン樽で熟成された原酒からなる,熟成年の縛りがないノンヴィテージタイプとされています。
「受け継がれる財産」という意味のレガシーを表題に掲げ,トマーティンらしい力強いウッディネスや濃厚かつ繊細なバニラとはちみつの甘さを感じることができる魅力的なボトルです。
香り
シャキシャキのナシ/レモン系柑橘感/フローラル/バニラクリーム/ウッディ/スパイス香
味わい
青リンゴ/コーヒー系ビター感/強バニラ/はちみつ/力強いオーク/胡椒系スパイス感
\\蒸留所の解説記事//