【特集】ロッホローモンド蒸留所(lochlomond)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「ロッホローモンド蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ローモンドスチル/連続式蒸留器でモルトウイスキー/モルトとグレーンが生産可能

ロッホローモンドの特徴

りんご系フルーティ/バニラ/クリームブリュレ/ほのかなピート/優しいオーク香

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初谷(はつがい)

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ロッホローモンド蒸留所

ロッホローモンド蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1965年
所有会社ヒルハウス・キャピタルマネジメント社
地域分類スコットランド 南ハイランド
発酵槽ステンレス製21基
(室内10基・室外11基)
ポットスチルポットスチル2基・ローモンドスチル6基
カフェ式連続蒸留器・連続式蒸留器
仕込み水ローモンド湖
ブレンド先ロイヤルエスコートなど

「ロッホローモンド蒸留所」蒸留所の立地

view from the street

ポイント

ロッホローモンド蒸留所はスコットランドの南ハイランド、ローランド地方との境界付近に位置しています。スコットランドの大都市であるグラスゴーからは車で20分程度と比較的好立地です。

近傍にはスコットランド最大の湖であるローモンド湖があり、そこから流れ出るリーヴェン川沿いに蒸留所が建てられています。

このローモンド湖には先史時代に作られた人工小島がいくつかあり、その中でもインチマリンインチモーンはロッホローモンドの公式ブランド名にも使用されています。またローモンド湖は多様な生態系を有する湿地としてラムサール条約の登録地にもなっていることから、非常に自然豊かな環境に接している蒸留所と言えるでしょう!

加えて湖の南西岸ではゴルフのスコティッシュオープンの会場に使用されるロッホローモンド・ゴルフ・クラブがあることから、ロッホローモンドとゴルフ関連のコラボボトルがしばしばリリースされています!

「ロッホローモンド蒸留所」蒸留所の歴史

ロッホローモンド蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1965年リトルミル蒸留所の所有者であるダンカン・トーマス氏とアメリカのバートン・ブランズ社の共同出資によってロッホローモンド蒸留所が創設される
当時導入されたポットスチルは円筒形ヘッドを有するローモンドスチル2基であった
1971年蒸留所がバートン・ブランズ社に完全に買収される
1984年蒸留所が閉鎖される
1985年蒸留所がインバーハウスディスティラーズ社に買収される
1986年蒸留所がグレンカトリーン・ボンデッドウェアハウス社によって買収される
1989年ロッホローモンド・ディスティラーズ社が創設される
1990年ローモンドスチルが2基増設される
1993年新規に連続式蒸留器2基を有するグレーン蒸留棟が増設される
グレーンウイスキーの生産が開始される
1997年火災によって約30万リットルのウイスキーが失われる
1998年通常のストレート型のポットスチルが2基増設される
2005年複数のシングルモルトブランドとしてとしてインチモーン・インチマリン・クレイグロッジなど8種類が公式リリースされる
2009年カフェ式連続蒸留器が導入される
2014年グレンカトリーン社がエクスポーネント社に売却される
蒸留所は同社のロッホローモンドグループのもとで運営される
2016年ローモンドスチルが2基、ウォッシュバックが3基導入される
2019年蒸留所が中国のヒルハウス・キャピタルマネジメント社に買収される
煩雑であったシングルモルトのブランドをロッホローモンドに統一する
インチマリンとインチモーンはそれぞれロッホローモンド・インチマリンロッホローモンド・インチモーンと改名される

ロッホローモンドに纏わるストーリー

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「ロッホローモンド蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    500万リットル
  • 仕込み水
    ローモンド湖
  • モルトスター
    ブートモルト社
  • ピーテッドレベル
    様々
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイター
  • マッシュタン容量
    1バッチ9.5トン
  • ウォッシュバック
    ステンレス製21基
  • 酵母
    様々
  • ウォッシュバック容量
    25,000L(屋内10基)
    50,000L(屋外11基)
  • 発酵時間
    70時間以上
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • 単式蒸留器
    2基(容量25,000L,ストレート型)
  • ローモンドスチル
    6基(容量18,000L)
  • 連続式蒸留器
    3基
  • コンデンサー
    シェル&チューブ式

※ロッホローモンド蒸留所ではモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を生産していますが、この記事ではモルトウイスキーの製法に着目してご紹介します!グレーンはモルトウイスキーとは異なる巨大な蒸留棟で量産されています(グレーンの製法解説はこちら)

製麦について

出典:whisky.com

ポイント

ロッホローモンド蒸留所では自社製麦は行なっておらず、専門業社(Boortmalt社)に委託しています。

使用するモルトには3種類のピートレベルが設定されており、ノンピート(0ppm)ライトリーピーテッド(25ppm)ヘビリーピーテッド(50ppm)となっています。

それぞれの年間使用割合はノンピートのものが圧倒的に多く90%程度、ライトリーピーテッドは約4%、ヘビリーピーテッドは約6%程度となっています!

原料のモルトはモルトミルで粉砕してグリストとしたのち、糖化の工程へと進みます!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

ロッホローモンド蒸留所ではローモンド湖の水を仕込み水に採用しています。マッシュタンはステンレス製9.5トンのグリスト容量を誇る最新鋭のフルロイタータンになります。

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

ロッホローモンド蒸留所にはステンレス製のウォッシュバックが計21基設置されています。うち10基は室内にあり容量が25000リットル、11基は屋外にあり容量は50000リットルとなっています。

糖化で得られたウォートは冷却されたのちにウォッシュバックへと移され、酵母と混合することで発酵が始まります。酵母はケリー社マウリ社アンカー社のものなどを使い分けています。

ここが特徴!

  • 発酵時間は70時間以上と比較的長めに設定されている

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

ロッホローモンド蒸留所には容量25000リットルの一般的な単式蒸留器が2基、容量18000リットルの円筒形のローモンドスチルが6基設置されています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式、冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。

ローモンドスチルは円筒状のボディ内部に整流用の銅板仕切りがあり、銅と触れる面積を究極に増やしつつ、より純度の高いアルコール分を回収可能な単式蒸留器になります。これを使用することでまるで3回蒸留を行ったかのような酒質を得ることが可能です!

ここが特徴!

  • ミドルカットの度数について,平均で65%としたものがインチモーン,84%としたものがインチマリンに使用される

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:whisky.com

ポイント

ロッホローモンド蒸留所には1994年に設立されたクーパレッジ(樽工場)が敷地内にあり、5人の樽職人が常時勤務しています。蒸留所の生産量に負けじと、ここで樽の修理リチャーを行うことで樽の需給問題を解決しています。蒸留所にクーパレッジが併設されている場所はスコットランドでも4カ所しかないとか。またリチャーマシンを導入したのはスコットランド初とのことです!

使用される樽は基本的にはバーボン樽であり、ファーストフィルやリフィルはもちろん、自社のクーパレッジでリチャーした樽もバッチリ使用されています。ウェアハウスは非常に規模が大きく、パラタイズ式を基本としており、建物自体は新旧さまざまとなっています。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

ロッホローモンド蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

ロッホローモンド シングルグレーン

ポイント

原料にノンピートタイプのモルトのみを使用して、世界的にも珍しいカフェスチルで蒸留することで生み出された、稀有なグレーン原酒のみが使用されたボトルです。

グレーンとは思えないほど豊かな風味を持っており、フルーティかつクリーミーな味わいは必見です。

香り

青リンゴ/軽くピーティ/バニラ/クリーミー感/フレッシュ

味わい

りんご系のフルーティさと酸味/洋梨/バニラ/オーク感/薄く柑橘/若干ピーティ

余韻

オークの暖かさが残りキレが良い


ロッホローモンド シングルグレーン ピーテッド

ポイント

原料にピーテッドタイプのモルトのみを使用し、カフェスチルで蒸留を行った原酒のみが使用されたウイスキーです。ロッホローモンドのりんご感漂うフルーティさとピーティさのマッチが心地よい一本です。

香り

優しいピーティ/フローラル/バニラ/ゆずレモン/フレッシュ

味わい

香ばしいピートスモーク/モルティ/クリーミー/バニラ/オレンジピール

余韻

モルティな甘さと優しいピート香が長く続く


ロッホローモンド クラシック

ポイント

ローモンドスチルと伝統的なポットスチルで蒸留した原酒がブレンドされた一本です。

熟成に使用した樽は、蒸留所併設のクーパレッジにて厳選されたオーク樽であり、エレガントかつフルボディな仕上がりが特徴的です。余韻にはほのかなピート感が感じられます。

香り

ピート感/カカオ系ビター感/りんご/うっすらとマスカット

味わい

ピート感/カカオ系ビター感/りんご/うっすらとマスカット

余韻

ビター感とスパイシー感をベースに軽やかなスモーキーさが長く残る


ロッホローモンド シグネチャー

ポイント

世にも珍しいシングルブレンデッドスコッチウイスキーというジャンル属するボトルです。

オロロソシェリー樽とリチャー樽で構成されたソレラシステムを組むことで、味わいのまとまりを最大限によくしています。ロッホローモンドとシェリー樽の相性は非常に良いですね。それぞれの良さが引き立てあっています。

2019年の世界的なコンペでは98点を叩き出した実力者でありながら、比較的安価に購入できる高コスパなボトルなので是非飲んでみて欲しいところです。

香り

アロマティック/レーズン/バニラ/ダークフルーツ/柔らかいスモーキー/甘い

味わい

モルティな甘み/シナモン/レーズン/洋梨/ダークフルーツ/スパイシー/黒糖

余韻

軽やかでドライだがしっかりとした甘さと香ばしいピート感が長く続く


ロッホローモンド 12年

ポイント

原料としてノンピートのものとライトリーピーテッドのモルトを使用した原酒が使用されています。

ファーストフィルのバーボン樽、リフィルバーボン樽、リチャー樽の3種類の樽で12年間熟成した原酒をブレンドした一本。強調されたバニラ感が非常に素晴らしい…

香り

葉っぱ系スモーク感/バニラ/グレープフルーツ/バニラ/はちみつ

味わい

干草/香ばしいピーティ/スパイシー/オークの甘さ/バニラ/はちみつ/柑橘系フルーティ

余韻

強い樽感とスパイシーさが長く残る


ロッホローモンド12年
インチマリン

ポイント

ノンピートのモルトを原料にローモンドスチルで蒸留された原酒のみが使用されています。熟成はファーストフィルのバーボン樽、リフィル樽、リチャー樽で行っています。

爽やかな夏を思わせる緑の香りと桃の風味がしっかりと感じられます。マスターブレンダーのビル・ホワイト氏が自らヴァッティングした至高の味わいを是非ご堪能あれ。

香り

アロマティック/濃いオレンジ/パイン/オークの暖かさ/乾いた感じ/柑橘系

味わい

甘酸っぱい/オレンジ/桃/スパイシー/キャンディー/エステリーな甘さ/ドライめ

余韻

柑橘系の甘さとスパイシー感が長く残る


ロッホローモンド12年
インチモーン

ポイント

原料にピーテッドタイプのモルトを活用し、伝統的なポットスチルとローモンドスチルで蒸留した原酒を組み合わせて作られたインチモーン。

リチャー樽とリフィルバーボン樽に由来する心地よいバニラ感とピーティなニュアンスがベストマッチ。多重的で複雑な旨味は圧巻です。

香り

優しくピーティ/オーク/バニラ/シトラス/りんご/メロンっぽい甘さ/スパイシー

味わい

香ばしいピート/カラメル/はちみつ/シトラス/柑橘の甘さ/バニラ/ビターチョコ/スパイシー

余韻

柔らかいピート感とスパイシーさが長く残り、ほんのり甘い


ロッホローモンド 18年

ポイント

これまで紹介したボトルとは一線を画す強いこだわりのもとでリリースされる超熟のロッホローモンド。熟成に使用する樽は蒸留所併設のクーパレッジのマスタークーパーを務めるトミー・ウォレス氏によって選び抜かれた最高級のオーク樽で18年の長い時を刻んだ原酒が使用されています。

ロッホローモンド本来のりんご感のあるフルーティさやバーボン樽由来のバニラ感歯より深さを増し、フルボデイでエレガントな印象を残します。自分や親しい人へのプレゼント候補に名乗りを挙げるボトルです。

香り

濃いりんご/グレープフルーツ/葉っぱ系スモーキー感/柑橘/濃厚なバニラ/キャラメル

味わい

クリームブリュレ/バニラ/濃厚な柑橘の甘さ/熟したりんご/フルボディな甘さ/優しいピート

余韻

スモーク感と紅茶のようなフローラルな余韻が非常に長く続く

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参考資料

参考サイト:ロッホローモンド公式 whisky.com scotchwhisky.com