【特集】グレンファークラス蒸留所(glenfarclas)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「グレンファークラス蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

グレンファークラス蒸留所

グレンファークラス蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1836年
所有会社J&Gグラント社
地域分類スペイサイド
スペイ川中流域
発酵槽ステンレス製12基
ポットスチル初留3基・再留3基
仕込み水ベンリネス山中腹の泉
ブレンド先アイルオブスカイなど

「グレンファークラス蒸留所」蒸留所の立地

立地について

グレンファークラス蒸留所はスペイサイドのスペイ川中流域、クライゲラキとグランタウン・オン・スペイの中間に位置しています。

広々とした草原の続く場所、眼下にはスペイ川の谷を望むことができる自然豊かな場所です。

またこの地域は10を超える蒸留所が拠点を構えるほどウイスキー作りに最適な環境を有している場所になります。

ちなみにグレンファークラスはゲール語で「緑の草原の谷間」を表しています。


「グレンファークラス蒸留所」蒸留所の歴史

グレンファークラス蒸留所の歴史を年表形式でまとめました!

西暦年内容
1836年農夫のロバート・ヘイ氏によってグレンファークラス蒸留所が建設される
1844年ロバート・ヘイ氏が蒸留所を経営する免許を獲得する
1856年ロバート・ヘイ氏が亡くなる
蒸留所はジョン・グラント氏に売却される
1889年ジョン・グラント氏が亡くなる
蒸留所は息子のジョージ・グラント氏へと引き継がれる
1890年ジョージ・グラント氏が亡くなる
蒸留所は息子のジョンとジョージ,未亡人のエルシーへと引き継がれる
1895年蒸留所がグラントファミリーとパティソンエルダー&Co社が共同所有となる
グレンファークラス-グレンリベットディスティラリー社が設立される
1896年蒸留所がリニューアルされる
1898年パティソンエルダー&Co社が倒産する
グレンファークラス-グレンリベットディスティラリー社はJ&Gグラント社となる
蒸留所は100%グラントファミリー(J&Gグラント社)の所有となる
1960年ポットスチルが2基から4基に増設される
1947年ジョージ・スコット・グラント氏が蒸留所を有限会社として引き継ぐ
1968年現在の「グレンファークラス105」の前身にあたるカスクストレングスのボトルがリリースされる
1972年フロアモルティングが廃止される
1973年ビジターセンターがオープンされる
1976年ポットスチルが2基増設され,計6基体制となる
1980年1980年代にスペインのホセ・ミゲル・マルティン社と提携し,シェリー樽の供給を受け始める
2002年会長のジョージ・スコット・グラント氏が亡くなる
蒸留所はジョン・LS・グラント氏に引き継がれる

グラント家の家族経営

グレンファークラス蒸留所は1865年以降現在まで,グラント家による運営が続けられています。

初代はジョン・グラント氏であり,彼は60歳の時に6人の子供を連れたバーバラ氏と結構するほど精力的な人間だったようですね。

2代目はジョン氏の死後に蒸留所を引き継いだ息子のジョージ・グラント氏になります。しかし彼も蒸留所を引き継いだ翌年に亡くなってしまったようです。

3代目は同名でややこしいですが,2代目のジョージの息子であるジョンとジョージの兄弟でした。1898年にJ&Gグラント社が設立されて間も無くジョンは退職してしまったらしく,ジョージを中心に蒸留所が運営されていました。

4代目は1947年に蒸留所を有限会社として引き継いだジョージ・スコット・グラント氏でした。彼は2002年に死去するまで蒸留所の会長を務めていました。

5代目は1973年に入社していたジョン・LS・グラントであり,2002年以降現在まで会長を務めています。

まだ世代交代されていませんが,6代目に当たるジョージ・S・グラント氏が2000年に入社しており,現在も蒸留所の運営に携わっています。

同一の家族にて経営される蒸留所としては,キャンベルタウンのスプリングバンク蒸留所に次いで2番目の古さを誇ります。


「グレンファークラス蒸留所」製法の特徴

製麦

ポイント

グレンファークラス蒸留所では1972年にフロアモルティングが廃止されて以降,専門業社(マントン社シンプソンズ社)から原料のモルトを仕入れています。仕入れるモルトはピートの炊かれていないノンピートタイプになります。

購入したモルトは330トンの容量を誇る11棟のサイロへと運ばれています。

原料のモルトをモルトミルにて粉砕してグリストとしたのちに,そのサイズごとに「ハスク:グリッツ:フラワー=15:80:5」の割合で整頓します。

次の工程は糖化になります!


糖化

ポイント

仕込み水にはベンリネス山中腹から湧き出る清廉な水を使用しています。マッシュタンは1バッチあたり16.5トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。

製麦によって得られたグリストをマッシュタンに投入し,加熱した仕込み水を3回に分けて注ぐ(スパージング)ことで糖化が進められます。まず1回目のスパージング64度のお湯、2回目は78度、3回目は80度と徐々に温度を上げつつ、糖分を多分に含んだウォートを抽出することができます。

ここで3回目に抽出されるウォートは糖分が少ないため、次のバッチの1回目のスパージングに再利用されています。またウォートを抽出したあとのドラフ(絞りカス)は栄養分豊富であるため、家畜の牛のエサとなります。

次の工程は発酵になります!


発酵

ポイント

グレンファークラス蒸留所には容量45,000リットルでステンレス製ウォッシュバックが12基設置されています。発酵に使用される酵母はマウリ社製のクリーム状のものが採用されており,ウォート

糖化により抽出されたウォートは20度前後まで冷却されてから,酵母と共にウォッシュバックに投入されます。発酵にかける時間は最小でも72時間と比較的長めに設けられています。

発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!


蒸留

ポイント

グレンファークラス蒸留所には容量29,600リットルのウォッシュスチルが3基、容量25,000リットルのスピリットスチルが3基あります。スチルはどれもバルジ型であり,加熱方式はガスによる直火焚き,冷却方式はシェル&チューブ方式になります。

初留によって得られるローワインの度数は約23%,再留とミドルカットを経て得られるニューポットは約68%になります。

次の工程は熟成になります!


熟成

ポイント

グレンファークラス蒸留所にはダンネージ式のウェアハウスが38棟あります。熟成に使用される樽は全てがスペインのホセ・ミゲル・マルティン社製のシェリー樽になります。

蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数63.5%に調整した後に,樽詰めされます。

多くの蒸留所は一般に,樽をセカンドフィルまでしか使用しないが、グレンファークラスではフォースフィルまで使用しています。

樽を大切に扱っていることもあり,ウェアハウスに眠る樽はおよそ10万樽にも及んでいます。

オフィシャルボトル一覧

グレンファークラス蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレンファークラス10年

ポイント

グレンファークラス蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードなボトルになります!

シェリー樽に由来するドライフルーツ調の甘さがしっかりと出ており,ネガティブな風味も少ないことから,グレンファークラスのみならずウイスキーの入門としても最適な一本だと思います!

ボトルと化粧箱のデザインも最高にかわいくてナイスですね!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:3,589円/楽天市場:3,250円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

豊かなシェリー香/はちみつ/トフィー/モルトの甘味/レーズン/スパイシー

味わい

レーズン/ドライフルーツ/ショートケーキ/オークの甘さ/モルティ

余韻

オークの甘さとシェリー香,スパイシー感がバランス良く長く続く

グレンファークラス12年

ポイント

12年熟成のグレンファークラスになります!

12年という長い熟成期間の中で,色味はより濃く,シェリーの甘味はより濃密になっています。シェリー樽系のウイスキーが好きな方は必見のボトルです!家に一本置いておきましょう!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:4,180円/楽天市場:4,080円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

シェリー漬けのフルーツ/フレッシュなりんご/スパイシー/レーズン

味わい

シェリーの甘み/ドライフルーツ/フレッシュ/レーズン/スパイシー/リッチ

余韻

シェリー香とスパイシーな豊かな余韻が長く続く

グレンファークラス105

ポイント

カスクストレングスタイプのグレンファークラスになります!カスクストレングスは樽出し後に加水をせずにボトリングされていることを意味しており,グレンファークラス本来の旨味が凝縮されています。

105というのはプルーフのことであり,一般的な%に換算すると約60%です。度数の高さから一見アルコール辛いかと思われがちですが,甘さも濃厚なため刺激は隠されています!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:5,830円/楽天市場:5,998円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

力強い樽香/ダークベリー/りんご/レーズン/ドライ感

味わい

オークの甘さ/ダークフルーツ/レーズン/ドライフルーツ/ドライ/りんご

余韻

滑らかだがどっしりとしたシェリー香が非常に長く続く

グレンファークラス15年

ポイント

15年熟成のグレンファークラスになります!

15年という超熟の域に入ってきたボトルですが,色味は金色を通り越して琥珀色に,レーズンはより深みを増してさまさまなドライフルーツの香りが生まれています。

シェリー樽系のウイスキーの中では破格の価格帯を維持してくれているのが本当にありがたいですね!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:6,573円/楽天市場:6,600円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

強烈なシェリー香/クリーミー/華やかでフローラル/オレンジ/スパイシー

味わい

強力なレーズン/芳醇なシェリーの香り/オレンジピール/くるみ

余韻

ショートケーキのようなベリー系とクリーム感を含んだ甘い余韻が長く続く

グレンファークラス21年

ポイント

21年熟成のグレンファークラスになります。この年数を超えると価格が一気に跳ね上がってしまいますね。

驚くほど滑らかでありながら強力なドライフルーツの甘味とスパイシーさがあり,非常にバランスのよい風味が錬成されています。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:22,105円/楽天市場:26,998円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

強力なレーズン/オレンジ/りんご/ドライフルーツ/ミント/スパイシー

味わい

なめらかな甘さ/シェリー香/濃いドライフルーツの甘さ/モルティ/スパイシー

余韻

モルティかつレーズンの甘さがとても長く続く

グレンファークラス25年

ポイント

25年熟成のグレンファークラスになります。

圧倒的に長期の熟成を経て,シェリー感は穏やかになりましたが,より複雑な風味が生まれており,文字通り熟成感を極めています。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:22,105円/楽天市場:22,165円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

古びたシェリー香/複雑なフルーツ香/ドライフルーツ/レーズン/メントール/ナッティ

味わい

濃厚なシェリー香/レーズン/ドライフルーツ/オークの甘さ/スパイシー/ナッツ/チョコ

余韻

シェリーの甘さとコーヒーのようなビター感が非常に長く続く

グレンファークラス30年

ポイント

30年の熟成を経たグレンファークラスになります。

超長期熟成を耐え抜いたグレンファークラスはまさにシェリー樽系のウイスキーの中で究極と言えるでしょう。買う余裕があるならば迷うことはないでしょう。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:82,380円/楽天市場:68,200円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

究極のシェリー香/複雑で多様なドライフルーツ/マイルドなスパイシー感

味わい

究極のレーズンの甘さ/無限い奥深いドライフルーツ/ビターとスパイシー/完璧なバランス感

余韻

永遠のシェリー香

参考資料

サムネイル画像:whisky.com ミリオン商事 scotchwhisky.com