記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「ダフタウン蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
シングルトンブランド/週7日24時間体制で生産/97%がブレンド用の原酒
シングルトンの特徴
ノンピート/バーボン樽/シェリー樽/スペイサイドモルトらしい華やかさ/青リンゴ/洋梨/スパイシー
ダフタウン蒸留所
ダフタウン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1896年 |
所有会社 | ディアジオ社 |
地域分類 | スコットランド スペイサイド ダフタウン地区 |
発酵槽 | ステンレス製12基 |
ポットスチル | 初留3基・再留3基 |
仕込み水 | コンバルヒル ジョックスヒルの泉 |
ブレンド先 | ベルなど |
「ダフタウン蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ダフタウン蒸留所はスコットランドのスペイサイド,ダフタウン地区に位置しています。具体的にはダラン川のほとり,スペイ渓谷の木々の間に埋もれるような立地となっています。
ダフタウン地区は古くから「ダフタウンは7つのスチルから成る」と称されるほど,蒸留所が密集した街でした。現在はいくつか蒸留所の閉鎖・開業を経て6ヶ所の蒸留所が稼働中です。
これだけ狭い地域に蒸留所が密集していると水源に関する揉め事もあるようです。特にダフタウン蒸留所は同じくジョックスウェルの泉から仕込み水を引いているモートラック蒸留所と争っていたことがあります。
ちなみに蒸留所の建物は元々大きな食品工場であり,創業時にパゴダ屋根の増設等を含めて改装したものがそのまま使われています。
「ダフタウン蒸留所」蒸留所の歴史
ダフタウン蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1895年 | ピーター・マッケンジーらの運営するダフタウン・グレンリベット社によってダフタウン・グレンリベット蒸留所が建設される |
1896年 | 蒸留所が正式に創業されて生産が始まる |
1897年 | 蒸留所がP.マッケンジー&Co社の所有となる 以降40年弱は同社の元で安定した運営が進められる |
1933年 | 蒸留所がアーサー・ベル&サンズ社によって買収される |
1968年 | 蒸留所の改装が行われて,蒸留器が2基から4基に増設される またフロアモルテイングが廃止される |
1974年 | 蒸留器が再び増設されて計6基体制となる |
1975年 | アーサーベル社がダフタウン蒸留所の近くにピティバイク蒸留所を建設する |
1985年 | アーサーベル社がギネス社に買収される |
1993年 | ピティバイク蒸留所が閉鎖される |
1997年 | 会社合併によってディアジオ社が形成される |
2006年 | ダフタウン蒸留所のシングルモルトブランド,「シングルトン」より12年熟成のボトルがリリースされる |
2007年 | 週7日24時間体制での生産が始められる |
シングルトン
ダフタウン蒸留所のウイスキーはほとんどがブレンド専用原酒であり,シングルモルトとしてリリースされるのは,生産された原酒の3%程度のみであるとか。
今でこそ,そもそもの生産量がとても大きいので,シングルトンとして継続的に入手可能ですが1990年代までの公式リリースはダフタウングレンリベット10年と花と動物シリーズくらいしかありませんでした。
シングルトンというブランド名称でダフタウンのシングルモルトが販売されるようになってからは,急激にその売上を伸ばしています。
ここで「シングルトン」について紛らわしい点がひとつ。
このシングルトンという名称は過去,ディアジオ社が所有するオスロスク蒸留所のシングルモルトにも使用されていました。
加えて現在もアメリカではシングルトンの中身はグレンダラン,ヨーロッパではダフタウン,アジアだとグレンオードとなっているのです。
このように同じ「シングルトン」のブランドでありながら,地域やによって中身が違うという少しややこしい体制となっているのが,どことなく紛らわしいですね(笑)
ちなみに日本に輸入されているシングルトンはダフタウンのシングルモルトとなっているのでお間違いのないように。
ダフタウンは7つのスチルから成る
ダフタウンの街はジェームズ・ダフ氏主導の元,19世紀初頭にナポレオン戦争の帰還兵たちの職を確保するために建設された街でした。
そのためダフタウンという名前はジェームズ・ダフ氏の名前に由来しています。
この街では良質な水が十分に確保可能であったため,街が出来たばかりの時期から,蒸留所が多く建つようになりました。
そこで蒸留所が立ち並ぶダフタウンの街はローマの故事にちなんで「ダフタウンは7つのスチルから成る」と称されるようになります。
この7つのスチルの内訳は次のとおりです!
モートラック(1823)/グレンフィディック(1886)/バルヴェニー(1892)/コンバルモア(1894)/パークモア(1894)/ダフタウン(1896)/グレンダラン(1897)
これらのうちパークモアとコンバルモアは閉鎖,のちにピティバイク蒸留所が創業されますが現在は閉鎖・取壊し済,1990年に建てられたキニンヴィ蒸留所は現在も稼働しています。
ちなみにコンバルモアの建物は現在も熟成庫として使用されているため,これを加味すると現在もダフタウンには7つの蒸留所が存在していることになります!
「ダフタウン蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
600万リットル - 仕込み水
コンバルヒルのジョックの泉 - モルティング
外部委託 - ピーテッドレベル
ノンピート - マッシュタン
ステンレス製フルロイタータン - マッシュタン容量
13トン
- ウォッシュバック材質
ステンレス製12基 - ウォッシュバック容量
53,000リットル - 発酵時間
最低75時間 - ポットスチルの数
初留3基・再留3基 - ポットスチル形状
ストレート型 - スチル加熱方式
蒸気による間接加熱方式 - コンデンサー
シェル&チューブ方式
製麦について
ポイント
ダフタウン蒸留所では1968年まで自社にてフロアモルティングが行われており,独自のピーテッドモルトが使用されていました。
現在も蒸留所の建物にはパゴダ屋根が残っていますが,これはかつて自社でモルティングを行なっていた時代の名残です。
現在はディアジオの製麦専門部署よりノンピートタイプのモルトを仕入れています。
原料のモルトは蒸留所備え付けのモルトミルによって粉砕してグリストとされたのち,糖化の工程へと進みます!
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糖化について
ポイント
ダフタウン蒸留所では仕込み水としてコンバルヒルのジョックスウェルの泉の水を採用しています。
マッシュタンは1バッチあたり13トンと莫大なグリスト容量を誇る,ステンレス製のフルロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストはマッシュタンへと投入され,加熱した仕込み水を3回に分けて,温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。この糖化手法はインフュージョン法と呼ばれています。
糖化が完了すると糖分を多く含み,透明感のあるウォートを得ることができます。
次の工程は発酵になります!
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発酵について
ポイント
ダフタウン蒸留所には容量53,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが12基設置されています。発酵に使用される酵母はクリーム状のものになります。
糖化によって得られたウォートは,酵母が活発に活動可能な20℃前後まで冷却されたのち,酵母と共にウォッシュバックに投入することで発酵が進行していきます。
発酵に要する時間は最低75時間以上と,比較的長めに設定されています。
発酵が完了するとアルコール度数約8%程度のウォッシュが完成します。
次の工程は蒸留になります!
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蒸留について
ポイント
ダフタウン蒸留所には容量12,000リットルのウォッシュスチルが3基,容量15,300リットルのスピリットスチルが3基設置されています。
形状はどれもストレート型であり,加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。
発酵によって得られたウォッシュはまずウォッシュスチルへと移されて初留が行われます。初留が完了するとアルコール度数が約20%程度まで高められたローワインを得ることができます。
次いでローワインはスピリットスチルへと移されて再留が行われます。再留によって得られるアルコールはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,蒸留初期・終期の不安定な香味成分が除去されます。
この工程をミドルカットと言い,スチルマンと呼ばれる熟練の蒸留技士の厳格な管理の元で行われます。
再留・ミドルカットを終えるとアルコール度数約68%のニューポットを確保することができます。
次の工程は熟成になります!
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熟成について
ポイント
ダウタウン蒸留所には熟成を行うウェアハウスが8棟建っており,それらに加えてピティバイク蒸留所の跡地に建設された巨大なウェアハウスが使用されています。
熟成に使用される樽はアメリカンオークのバーボン樽とヨーロピアンオークのシェリー樽が半々程度の割合となっています。
蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることになります。
オフィシャルボトル一覧
ダフタウン蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
ザ・シングルトン
ダフタウン12年
ポイント
シングルトンのブランドからリリースされている,ダフタウン蒸留所の12年熟成の公式シングルモルトになります。
ダフタウン蒸留所の公式シングルモルトの中では最もスタンダードなボトルです。
ノンピート麦芽を原料にヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのバーボン樽で熟成された原酒で構成されています。
香り
白桃/ナッティ/オレンジ系柑橘/青リンゴ/モルティ
味わい
青リンゴ/ナシ/柑橘の香り/ナッティ/モルティ/スパイシー
ザ・シングルトン
ダフタウン15年
ポイント
シェリー樽とバーボン樽で15年以上の熟成を経たダフタウン蒸留所の原酒で構成されたボトルになります。
スペイサイドらしい華やかな風味がそのままに,濃厚な熟成感とスパイシーさのバランスがとても良い一本です。
ザ・シングルトン
ダフタウン18年
ポイント
シェリー樽とバーボン樽で18年以上の熟成を経たダフタウンのシングルモルトです。
18年という長期熟成の間に甘みやフルーツ香がより深まり,圧倒的な飲みやすさが実現されました。
ちなみに18年熟成のスコッチの中ではかなりリーズナブルな価格であるため,長熟のモルトを飲んでみたい人にはピッタリかと思います!
参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com