グレンフィディック蒸留所(glenfiddich)|場所・歴史・製法・オフィシャルボトル|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「グレンフィディック蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

グレンフィディック蒸留所

グレンフィディック蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1886年
所有会社ウィリアム・グラント&サンズ社
地域分類スペイサイド
ダフタウン地区
発酵槽ダグラスファー24基
ポットスチル初留10基・再留20基
仕込み水ロビーデューの泉
ブレンド先モンキーショルダー
グランツなど

「グレンフィディック蒸留所」蒸留所の立地

ポイント

グレンフィディック蒸留所はスペイサイドダフタウン地区で操業しています。

フィディック川の谷に蒸留所が建っていることからグレンフィディックという名がつけられています。

スペイサイドは年間を通して気温が安定しており、ピートも豊富に採れるウイスキー作りに最適の地です。

ちなみにグレンフィディックはゲール語で「鹿の谷」を表しています。

「グレンフィディック蒸留所」蒸留所の歴史

グレンフィディック蒸留所の歴史を年表形式でまとめました!

西暦年内容
1886年ウィリアム・グラント氏によってグレンフィディック蒸留所の建設が開始される
1887年クリスマスの日にウイスキーの生産が始められる
1896年グレンフィディックディスティラリー社が設立される
1898年主要な原酒販売先であったブレンデッドウイスキーメーカーのパティソン社が倒産する
1903年自社にてブレンデッドウイスキーの製造を行うべく,ウィリアムグラント&サンズ社が設立される
1923年アメリカ禁酒法の影響がスコットランドに波及する
創業者ウィリアムの孫にあたるゴードン・グラント氏が経営に参加し,生産量の拡大を決定する
1957年ウィリアムの曾孫にあたるチャールズ・ゴードン氏銅器職人を雇う
1958年フロアモルティングが廃止される
1959年自社にてクーパレッジを開き,樽職人を雇い始める
1961年特徴的な三角形のボトルが考案される
1963年グレンフィディックのシングルモルトをスコットランド国外にまで売り込み始める
世界にシングルモルトの魅力を広める
1969年ビジターセンターがオープンする
これはスコットランド初であった
1974年大規模な投資を行い,ポットスチルを16基増設する
1987年創業100周年を記念して限定ボトルをリリースする
1991年グレンフィディック50年が限定発売される
1998年シェリー酒の熟成に用いられるソレラシステムを応用した「ソレラバット」が導入される
2001年グレンフィディック64年が限定発売される
2005年ビジターセンターの改装を行う
2009年グレンフィディック50年が再び限定発売される
2010年ウェアハウスの屋根が大雪で抜け落ちる
この時に救われた樽の原酒を使用した「グレンフィディック スノーフェニックス」が発売される

グレンフィディックに纏わるストーリー

資金難での創業

ウィリアム・グラント氏は1886年,これまで勤めていたモートラック蒸留所を辞め,グレンフィディックを創業することを決めました。

ウィリアムは元々ダフタウンの仕立て屋の息子として生まれたため資産等はなく,子供も9人いたため決して生活は楽ではありませんでした。そんな環境の中でもコツコツとお金を貯めた末の蒸留所創業という決断でした。

しかし貯金では土地を手に入れるのがやっとであり,建設業界職人を雇うことは叶いませんでした。そこでウィリアム氏はなんと家族総出で自力員て蒸留所を建設することを決めました。建設に使用した石の総数は75万個にも及び,総日数371日と1年以上もの年月を要したとか。

もちろんポットスチル等の基本的な設備を購入する余裕もありませんでしたが,偶然にも近所のカーデュ蒸留所がウィリアム氏の想いを汲んで,中古のスチルを譲ってくれたとのことです。

そしてついに1887年のクリスマスの日に蒸留所を操業する準備が整い,生産が始められることとなりました!

ふたつの苦境

ひとつ目の苦境

グレンフィディックは創業から19世紀末にかけて,パティソン社が手がけるブレンデッドウイスキーの原酒として使用されていました。

しかしながら1898年にこのパティソン社が倒産する運びとなり,大きな顧客を失うこととなってしまいました。そこでウィリアム氏は怯むことなく,早急に自社にてブレンデッドウイスキーを生産する方向へと舵を切りました。

それを実現するために設立されたのが,現在もブレンデッドウイスキー「グランツ」の生産を続けるウィリアム・グラント&サンズ社でした。そしてこのビジネスは完全に成功し,グレンフィディックの地位を揺らがぬものへと変えていきました。

ふたつ目の苦境

1920年にアメリカで禁酒法が適用され,世界のウイスキー業界全体に大きな打撃が波及することとなりました。もちろんスコットランドの多くの蒸留所も大きなダメージを受けており,徐々に閉鎖を余儀なくされる蒸留所も増えていきました。

1923年前後の禁酒法の影響がピークに達した頃,グレンフィディックはなんと生産量の増大を決定したのです。業界全体に暗雲が立ちこめる中でのこの判断はまさに異端だったでしょう。

しかしながらこの采配が功を奏し,グレンフィディックは禁酒法が明けた時にスコットランドに残っていた6ヶ所の蒸留所のひとつとなり,その後のウイスキー需要の急増に対応できるだけの準備を整えていた選ばれし蒸留所となったのです。

需要の増加に対して,適切に供給を行うことができたグレンフィディックは大きなニーズを獲得し,現在まで「世界No.1シングルモルト」としての地位が完全に確立されることとなりました!

「グレンフィディック蒸留所」製法の特徴

製麦について

ポイント

グレンフィディック蒸留所では1958年まで自社にてフロアモルティングを行なっていましたが,現在は原料のモルトを製麦の専門業社及びバルヴェニー蒸留所から仕入れています。採用されるモルトは全てノンピートタイプになります。

麦芽の粉砕に使用するモルトミルは2基あり,ポーティアス社製のローラーミルが採用されています。

モルトを粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!

糖化について

マッシュタン
出典:googlemap

ポイント

グレンフィディック蒸留所では仕込み水としてロビーデューの泉の水を採用しています。マッシュタンは2基あり,双方とも1バッチあたり10トンのグリスト容量を誇る,ステンレス製のフルロイタータンになります。

マッシュタンにグリストを投入したのち,加熱した仕込み水を3回に分けて温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。糖化が完了すると糖分を多分に含んだ約41,000リットルのウォートが完成します。一般にこの糖化手法はインフージョン法と呼ばれていますね。

この仕込みを週に50回程度行なっているとのことで,非常に壮大な規模感が伺えるかと思います。

次の工程は発酵になります!

発酵について

ウォッシュバック
出典:googlemap

ポイント

グレンフィディック蒸留所には容量50,000リットルでダグラスファー製のウォッシュバックが32基設置されています。使用される酵母はリキッドタイプであり,41,000リットルのウォートに対して225リットルの分量が添加されます。

糖化で得られたウォートは約17度まで冷却されたのち,酵母と共にウォッシュバックへと投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は60時間と比較的長めに設定されています。

発酵が完了するとアルコール度数9.6%のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!

蒸留について

スチルハウス
出典:googlemap

ポイント

グレンフィディック蒸留所には容量11,500リットルのウォッシュスチルが10基,容量9500リットルのスピリットスチルが21基設置されています。ポットスチルは主に他の蒸留所の中古品を採用しているため,それぞれの形状はまちまちでありバルジ型・ランタン型・ストレート型など多様です。

これらのさまざまなスチルの調整を行う銅器職人を雇っているのもグレンフィディックの大きな特徴であり,スチルの手入れを欠かさないことで高品質なウイスキーの生産が維持されています!

また蒸留棟が2つに分かれており,第一蒸留棟に16基のスチルが,第二蒸留棟に15基のスチルが置かれています。加熱方式は第一蒸留棟では蒸気による間接加熱方式,第二蒸留棟ではガスによる直火方式,冷却方式は全てシェル&チューブ方式が採用されています。

余談ですが現在第三蒸留棟が建設中であり,これが完成するとスチル数・生産数ともにスコットランド最多となる見込みです!

発酵によって得られたもろみはまずウォッシュスチルに移され,初留が行われます。初留を終えた時点でアルコール度数約12%のローワインを得ることができます。

次いでローワインをスピリットスチルに移して再留が行われます。再留によって生じるアルコールはミドルカットという工程を経て,安定した成分のみがニューポットとして確保されます。このニューポットはアルコール度数が約70.5%まで高められています。

次の工程は熟成になります!

熟成について

ウェアハウス
出典:googlemap

ポイント

グレンフィディック蒸留所には43棟ものウェアハウスが建っており,収容可能な樽の総数は80万樽にも及ぶとか。それだけ多くの樽を維持管理するために,自社にクーパレッジ(樽工場)を設置しているのも大きな特徴であり,毎日126個もの樽がここで整備されています。

熟成に使用される樽は「アメリカンオーク製の新樽orバーボン樽」と「スパニッシュオーク製のシェリー樽」が主に使用されています。全てのオーク材に自社にてトースト(赤外線)処理もしくはチャー(焼き入れ)処理を行うことで,オークのフレーバーが原酒に染み込むように工夫されています。

蒸留によって得られたニューポットは,アルコール度数が63.5%程度になるまで加水を行い,樽詰めが行われます。そして無数にあるウェアハウスへと運ばれて,風味がピークを迎えるまでの長い期間を眠ることとなります。

ここでグレンフィディックには「ソレラバット」と呼ばれる巨大な樽があり,原酒の一部についてはこの樽で後熟を行います。

この樽は,シェリー酒の熟成手法として知られるソレラシステムをモチーフに,樽の中身を枯らさないように充填とボトリングを繰り返す仕組みのもとで使用され続けています。実際に1998年以降この樽には半分以上ウイスキーが入った状態が保たれ続けています。

余談ですがこの樽で熟成させた原酒を中心にボトリングされているのが「グレンフィディック15年ソレラリザーブ」ですね!

ボトリングについて

ボトリング設備
出典:googlemap

ポイント

グレンフィディック蒸留所は自社にボトリング設備を有している非常に珍しい蒸留所でもあります。これにより,製麦こそ外部に委託していますが,ほぼ全ての生産工程を自社にて完結させることができるということになります。

このボトリング設備のもとで,熟成を終えた原酒たちが加水等の微調整を経てボトリングされ,グレンフィディックが世界中へと旅立っています!

このことからもグレンフィディックはテロワール的要素を持った,ここの蒸留所ここの環境だけで生まれる唯一のウイスキーと言えるのかもしれませんね!


オフィシャルボトル紹介

グレンフィディック蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレンフィディック12年
スペシャルリザーブ

ポイント

グレンフィディックのオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードな12年熟成のボトルです!アメリカンオーク樽とシェリー樽で最低12年間熟成させた原酒をもとに,さらに後熟を行うことでまろやかに仕立て上げた至高のウイスキーになります。

グラント家が100年を超える長い歴史の中で培ってきた伝統的で個性のある華やかな風味は,ウイスキー好きにとって必見であると言えるでしょう。まさに完璧なスペイサイドモルトです。

価格帯

Amazon:4,780円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

洋梨/フレッシュりんご/レモン系の柑橘感/華やかなフルーツ香/円熟した熟成感

味わい

とても甘い/洋梨/砂糖をまぶしたレモンピール/フルーツバスケット/フローラル/クリーミー/バニラ

余韻

柔らかく繊細な甘みが軽やかに長く続く

グレンフィディック15年
ソレラリザーブ

ポイント

15年熟成のグレンフィディックになりますが,実は単なる15年熟成ではありません。

一般にシェリー酒の熟成手法としてソレラシステムというものがありますが,グレンフィディックはそれに着想を得て,大きな樽の中身を枯らさないように補充とボトリングを循環させ続けるという方法を考案しました。

15年の熟成を経た原酒をこのソレラバットに投入し,約6ヶ月間後熟させた原酒をボトリングしたのがこのボトルになります!

斬新な手法のもとで生産された王道のグレンフィディック。ワクワクが止まりませんね。

価格帯

Amazon:9,680円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

甘い/多様なフルーツ香/はちみつ/バニラ/レーズン/薄くスパイシー/ウッディ

味わい

滑らか/かなり甘い/柑橘の甘さ/バニラ/シナモン/レーズン/ドライフルーツ/ウッディ

余韻

甘く豊かな余韻が非常に長く続く

グレンフィディック18年
スモールバッチリザーブ

ポイント

最低18年以上熟成させたオロロソシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽を厳選してバッティング,そしてその後3ヶ月後熟させることでなめらかにしたグレンフィディックです!

このボトルに採用される原酒は,できるだけ150樽以下のスモールバッチ(小ロット)にすることで厳格な個別管理を可能とし,安定して深く豊かな味わいが維持されています。

18年はもはや長熟の域ですよね。圧倒的に強く花開いたグレンフィディックの潜在能力の片鱗を確かめてみましょう。

価格帯

Amazon:23,980円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

熟した果実の集合体/シナモン系スパイシー/ウッディで甘い/レーズン/ドライフルーツ/フローラル

味わい

ドライフルーツ/レーズン/ふくよかな樽香/シナモン/フローラル/ナッティ/ほのかにスパイシー

余韻

温かく深い,そして豊かな甘みを含んだ余韻が非常に長く続く

グレンフィディック21年

ポイント

オフィシャルラインナップで最も長熟な21年熟成のグレンフィディックです!

最低21年間熟成させたシェリー樽原酒とアメリカンオーク樽原酒をバッティングしたのち,カリビアンラム樽で4ヶ月間後熟させたこだわりの一品。限界まで引き出されたグレンフィディックの個性とラム樽の斬新な要素は必見ですね。

まさしくスペイサイドモルトの極みと言えるボトルなので,機会があれば是非飲んでみてください。

価格帯

Amazon:26,900円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

バニラ/フルーツバスケット/フローラル/クリーミー/バナナ系トロピカル/いちじく/ウッディ

味わい

ゆずピール/とにかく甘い/フローラル/華やかなフルーツ香/ジンジャー/バニラ/キャラメル/オークの甘さ

余韻

深い・豊か・複雑・熟成感・すべてが圧倒的で永遠のように続く

参考資料

サムネイル画像:whisky.com / scotchwhisky.com / グレンフィディック公式