【特集】トーモア蒸留所(Tormore)|場所・歴史・製法・種類と味わい|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「トーモア蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

独自設計の美しい建物|カーリング|精留器

トーモアの特徴

ノンピート|フルーツバスケット|はちみつ|モルティ|水由来の煙感

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初谷(はつがい)

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トーモア蒸留所

トーモア蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年1958年
所有会社ペルノリカール社
地域分類スコットランド
スペイサイド,スペイ川中流域
年間生産量480万リットル
発酵槽ステンレス製11基
ポットスチル初留4基・再留4基
仕込み水アクボッキーバーン
ブレンド先バランタイン,ロングジョン

「トーモア蒸留所」蒸留所の立地と概要

出典:whisky.com

ポイント

 トーモア蒸留所はスコットランドのスペイサイド地方,スペイ川中流域に所在しています。同地域はウイスキー蒸留所の密集地帯としてもよく知られている場所になりますが,トーモアはその南西端付近に建っています。

 その創業が決定したのは1958年ということで,スペイサイド地内においては同時期にグレンキース(1958年)タリバーディン(1949年)なども操業を開始していますが,既存の建物を活用せずに独自の設計のもとに建設された蒸留所はトーモアが戦後初。
 白い花崗岩の壁に緑の屋根,そして教会のような丸い装飾窓を備えた印象的な建物は,元ロイヤルアカデミーの会長”サー・アルバート・リチャードソン氏”が設計したものであり,美しい外観の蒸留所として評価されることの多い蒸留所になります。

 また蒸留所の敷地内には,人工的に作った池が存在していることが知られていますが,冬季には氷が張るため,過去にはその上で職人たちがカーリング大会を盛んに行っていたという逸話もあります。(今は温暖化で池があまり凍らないそうです…)

 ちなみに”トーモア”という名称にはゲール語に語源(Tòrr mòr)があり,Tòrrが「丘」,mòrが「大きな」を意味することから,”大きな丘”という意味が込められていることがわかります。

「トーモア蒸留所」蒸留所の歴史

トーモア蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1959年ロング・ジョン社のオーナー企業「シェンリー社」がトーモア蒸留所の建設を開始する
1961年ウイスキーの製造が始まる
1972年ポットスチルが4基増設されて8基体制になる
1975年ロング・ジョン社及びトーモア蒸留所が,大手ビール会社のウィットブレッド社に買収される
1989年ウィットブレッド社の蒸留酒部門及びトーモア蒸留所がアライド・ライオンズ社に買収される
1994年アライド・ライオンズ社が他社合併を経てアライド・ドメク社となる
2004年トーモア12年がリリースされる
2005年アライド・ドメク社がペルノリカール社に買収され,トーモアも同社に引き継がれる
2014年オフィシャルラインナップの刷新により,トーモア12年が廃止され,14年と16年がリリースされる

「トーモア蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    480万L
  • 仕込み水
    アクボッキーバーン
  • モルトスター
    様々
  • 大麦の品種
    オプティック,コンチェルトなど
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイター
  • マッシュタン容量
    10.4トン
  • ウォッシュバック
    ステンレス製11基
  • ウォッシュバック容量
    48,500L
  • 酵母
    クリーム状,マウリ社製
  • 発酵時間
    52時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型4基,精留器
  • ウォッシュスチル容量
    12,125L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型4基,精留器
  • スピリッツスチル容量
    8,000L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ方式
  • 本留の度数
    67〜70%程度
  • ウェアハウス形式
    ラック式,パラタイズ式
    敷地外の社内の倉庫

製麦について

ポイント

 トーモア蒸留所は創業時より製麦設備を所有しておらず,原料の大麦は製麦の専門業社(モルトスター)から購入することで賄われています。

 大麦の品種はプロピノ,オプティック,コンチェルト,オックスブリッジなど多彩。そして麦芽の乾燥にピートを炊き込まないノンピートスタイルが採用されています。

 用意された原料のモルトはローラー式のモルトミルで粉砕し,グリストとされます。一般的にグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

 トーモア蒸留所では,仕込み水としてアクボッキーバーンの水が採用されています。
 この川を流れる水は,蒸留所の背後の丘にあるロック・アン・オー(黄金の泉)を水源としており,ピートのテイストをほのかに含んだ軟水。そのプロパティはウイスキー作りに最適と言われています。

 糖化に使用されるマッシュタンは,ワンバッチあたり10.4トンの莫大な容量を誇る,ステンレス製のフルロイタータンになります。

ここが特徴!

  • 糖化工程にて,ウォッシュバック容量の48,500Lに匹敵するウォートが確保されていると仮定すると,グリスト1トンあたりのウォート収量は約4,663Lとなり,妥当である
  • ノンピート麦芽を使用していながらも,仕込み水の影響によって微かなスモーキーフレーバーが添加され,程よいキャラ立ちのウイスキーが完成する

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

ポイント

 トーモア蒸留所には,容量48,500リットルでステンレス製のウォッシュバックが11基設置されています。また発酵時に添加される酵母はマウリ社製のディスティラーズイーストで,クリーム状で取引されています。

 発酵にかける時間は52時間とされており,これは標準的な長さ。そのため乳酸発酵のあまり生じていない複雑な香味のウォッシュが完成していると捉えることができます。

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

 トーモア蒸留所には容量12,125リットルでストレート型のウォッシュスチルが4基,容量8,000リットルでストレート型のスピリッツスチルが4基設置されています。

 ラインアームは概ね地面と水平ですが,精留器が装備されているため,軽快な香味を呈する蒸気以外をカットする役割を果たしています。
 スチルの加熱は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。

ここが特徴!

  • ストレート型のスチル形状では蒸気の環流が生じ難いが,精留器の影響により,軽くすっきりとした酒質が得やすくなる

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

ポイント

 トーモア蒸留所には貯蔵容量に優れたラック式及び,パラタイズ式のウェアハウスが敷地内に併設されています。
 しかしながら敷地内のウェアハウスのみでは貯蔵容量に不足が生じてしまうため,新たに生産される原酒のほとんどはペルノリカールが所有する敷地外のウェアハウスに安置されています。

 また熟成に使用される樽は,バーボン樽が中心とされています。

 蒸留によって得られたニューポットは,加水によってアルコール度数を63.5%に調整したちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

トーモア蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

トーモア14年

ポイント

トーモア14年』は,当蒸留所のオフィシャルラインナップの一角を担う,最もスタンダードなボトルになります。

 使用される原酒はアメリカンオークのバーボン樽原酒でアルコール度数は43%。
 そしてノンチルフィルターでボトリングとのことですが,ラベルにバッチNo.やボトリング日時が記載されている通り,リリースごとに異なる味わいを楽しむことができる点も魅力的です。

※少量生産のため,各種通販サイト売り切れです

Tasting Note

  • 香り

柑橘類の爽快感|麦芽糖|はちみつ|トフィー|りんごと洋梨|シナモン

  • 味わい

厚いボディ感|柑橘|りんごと洋梨|はちみつ|ウッディ|シナモンスパイス

  • 余韻

スパイシーな木|エレガントな夏の情景|コーヒー系ビター感


トーモア16年

ポイント

トーモア16年』は,14年と共に当蒸留所のオフィシャルラインナップの双璧をなす,主力的なボトルになります。

 使用される原酒はアメリカンオーク樽原酒で,14年と同様にスモールバッチの構成。度数はやや高めの48%に設定されています。
 熟成年数の伸び,そして度数の高さによってボディはより厚みを増し,豊かかつ奥深いテイストを獲得。エキゾチックなフルーツやクリーミーな甘さに長けた香り高いウイスキーです。

※少量生産のため,各種通販サイト売り切れです

Tasting Note

  • 香り

オレンジ・りんご・メロン|ナッティ|モルティ|バニラアイス|香ばしいウッディ

  • 味わい

フルーツバスケット|シナモンスパイス|ウッディ|オレンジピール|シリアル|バニラ|ココナッツ

  • 余韻

シャープなキレ|フルーティな華やかさ|ジンジャーと柑橘類

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参考資料

参考サイト:whisky.comscotchwhisky.comscotchwhisky.netmalt-whisky-madness.comdistilando.com