記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「ミルトンダフ蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
バランタインのキー蒸留所(生産量最大)/ブラックバーン/モストウィー
ミルトンダフの特徴
ノンピート/甘くフルーティ/力強いボディ/花畑フローラル/シナモンスパイス
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
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【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
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ミルトンダフ蒸留所
ミルトンダフ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1824年 |
所有会社 | ペルノリカール社 |
地域分類 | スペイサイド,エルギン地区 |
年間生産量 | 580万リットル |
発酵槽 | ステンレス製16基 |
ポットスチル | 初留3基・再留3基 |
仕込み水 | ブラックバーン |
ブレンド先 | バランタイン |
「ミルトンダフ蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ミルトンダフ蒸留所はスペイサイドのエルギン地区に位置しています。より具体的にはマレイ州の中心のエルギンから西に5キロ程度外れた場所にあり,良質な水を湛えるブラックバーンという小川の沿線に建てられています。
ミルトンダフの仕込み水は,このブラックバーン(黒い小川)から採取されていますが,黒い小川という名称から連想されるイメージとは異なり,この川は水晶のように透明な湧き水からなる軟水で構成されています。
この水は古くから多くの人に評価されており,実際に1236年にブラックバーンの沿線に位置していたプラスガーデン修道院では,この水を使用したビール作りが行われていました。
またミルトンダフという名称にも由来があり,蒸留所の立つ場所がかつて修道院によってミルトン(粉挽き場)として使用されていたと考えられていたことと,辺り一帯を支配していたのがダフ族であったことから,ミルトンダフ(Miltonduff)となったとされてます。
特段の繋がりはありませんが,ストラスアイラ蒸留所がかつてミルトン蒸留所と呼ばれていた時期があり,ミルトンダフと混同しがちなので注意が必要です。
「ミルトンダフ蒸留所」蒸留所の歴史
ミルトンダフ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1824年 | アンドリュー・ピアリー氏及びロバート・ベイン氏がミルトンダフ蒸留所を政府公認の元で創業する |
1866年 | 蒸留所がウィリアム・スチュアート社に買収される |
1895年 | トーマス・ユール社が蒸留所の株式の一部を取得し,のちに完全な所有権を獲得する これ以前はウィリアム・スチュアート社の単独所有であった |
1936年 | 蒸留所がカナダのハイラムウォーカー社に買収される 以降ミルトンダフはバランタインの主要なキーモルトとなった |
1964年 | 別タイプのシングルモルトブランド「モストウィー」の生産に向けて,ローモンドスチルが2基導入される |
1974年 | 大規模な設備拡充により,年間生産量が500万リットルを超える |
1981年 | ローモンドスチルの使用が廃止され,代わりにポットスチルが2基設置される |
1987年 | ハイラムウォーカー社がアライド・ライオンズ社に買収される |
1994年 | 会社合併によってアライド・ドメク社が形成される |
2005年 | アライド社がペルノリカール社に買収される 以降蒸留所の運営は同社のウイスキー部門にあたるシーバスブラザーズ社が担当する |
2017年 | バランタインブランドからミルトンダフ15年がリリースされる |
2022年 | シーバスブラザーズ社により,生産規模の拡大にアベラワー蒸留所と併せて8,800万ポンドを投じる計画が公表される 2025年に現在の生産棟の隣に新たな設備が導入される予定 |
ミルトンダフに纏わるストーリー
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「ミルトンダフ蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
580万L - 仕込み水
ブラックバーン - モルトスター
シンプソンズ,ベアーズ - ピーテッドレベル
ノンピート - マッシュタン材質
ステンレス製フルロイター - マッシュタン容量
1バッチ8トン - ウォッシュバック
ステンレス製16基 - 酵母
マウリ社,リキッドタイプ - ウォッシュバック容量
36,000L
- 発酵時間
最低48時間 - スチル加熱方式
蒸気加熱方式 - ポットスチル(初留)
ストレート型3基
外部加熱装置付き - ウォッシュスチル容量
22,730L(張込み12,000L) - ポットスチル(再留)
ストレート型3基 - スピリッツスチル容量
18,200L(張込み15,000L) - コンデンサー
シェル&チューブ式 - 本留の度数
68-69% - ウェアハウス形式
ダンネージ式,ラック式
製麦について
ポイント
ミルトンダフ蒸留所では現在自社製麦が行われておらず,製麦工程はシンプソンズ社,ベアーズ社を中心とした外部の専門業社(モルトスター)に委託して,そこから原料のモルトを購入しています。
ピーテッドレベルについては,バランタインの主要な構成原酒として甘くフルーティなテイストのウイスキーを作るべく,全てノンピートタイプとされています。
用意された原料のモルトは,ローラー式のモルトミルで粉砕してグリストとします。
次の工程は糖化になります!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について
ポイント
ミルトンダフ蒸留所では仕込み水として良質な水を讃えるブラックバーン(黒い小川)の水(軟水)を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり8トンのグリスト容量を誇るステンレス製のフルロイタータンになります。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について
ポイント
ミルトンダフ蒸留所には容量36,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが計16基設置されています。酵母は一般的なディスティラーズ酵母であり,マウリ社製のリッキドタイプのものになります。
ここが特徴!
- 発酵時間が48時間程度と標準程度の長さのため,乳酸醗酵があまり生じず,重めのテイストが助長される
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について
ポイント
ミルトンダフ蒸留所には容量22,730リットル(張込み12,000リットル)のウォッシュスチルが3基,容量18,200リットル(張込み15,000リットル)のスピリッツスチルが3基設置されています。
形状はどれもどっしりとした重心が低めのストレート型であり,ラインアームは大きく下を向いています。加熱方式は蒸気による加熱方式方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。
1964年から1981年の間は「モストウィー」というシングルモルトの生産のために,2基のローモンドスチルが使用されていましたが,1981年に現在まで残る2基の通常のポットスチルに置き換えられてしまいました。
ウォッシュスチルについてはグレンバーギと同じく,エクスターナルヒーティングシステムが導入されており,蒸留時前にウォッシュが予熱されることによってエネルギー効率が大きく改善されています。
ここが特徴!
- 背の低いストレート型でありラインアームが下を向いているため,重く複雑な香味成分がニューポットにも残存する
- 初留をスチル容量の半分程度で行うことから蒸気が触れるスチルの表面積が増大し,不快な香気の除去が進みやすい
- ニューポットの度数は概ね68−69%程度となる
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について
ポイント
ミルトンダフ蒸留所には非常に大規模な熟成を有しており,伝統的なダンネージ式のウェアハウスと貯蔵容量に優れた近代的なラック式のウェアハウスが混在しています。
熟成はアメリカンオーク樽やシェリー樽を中心として行われていますが,バランタインブランドからリリースされる唯一の公式シングルモルトである「ミルトンダフ15年」は1stフィルのアメリカンオーク樽熟成原酒のみで構成されています。
蒸留によって得られたニューポットは,通常加水によって度数を63.5%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓
オフィシャルボトル一覧
ミルトンダフ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
バランタイン シングルモルト
ミルトンダフ15年
ポイント
「ミルトンダフ15年」はバランタインブランドからリリースされる当蒸留所のシングルモルトであり,唯一の公式シングルモルトにあたるボトルになります。ラベルに描かれた水車は仕込み水を採取するブラックバーンの情景です。
著名なブレンデッドスコッチであるバランタインには,40種類を超えるスコットランド産の原酒が使用されていますが,1930年代からグレンバーギと共に最重要のキーモルトとして使用され続けているのが,このミルトンダフです。
このボトルではバランタインの骨格を形成する力強いボディと,シナモンスパイスやフローラル感の強い,濃厚な甘みを感じることができます。
バランタインファンの方はミルトンダフはもちろん,同じくキーモルトであるグレンバーギやグレントファース,スキャパを飲み,そのテイストのルーツを探ってみると良いでしょう。
香り
ナシ/レモン/シナモン/バニラ/はちみつ/フローラル/柔らかなオーク香/ドライなモルティ感
味わい
メープルシロップ/モルティ/ドライなオーク感/りんご/シナモン/バニラ/ビターな柑橘感
余韻
ビターさを有したフルーツ香と優しいシナモンスパイスが長く残る
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参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / バランタイン公式