【特集】ロックランザ蒸留所(lochranza)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「ロックランザ蒸留所」になります!
※旧アイル・オブ・アラン蒸留所

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

クラフト蒸留所のパイオニア/マクリームーア

ロックランザの特徴

甘い・フルーティ・フローラルのアランモルト/スモーキー・個性派のマクリームーア

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初谷(はつがい)

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ロックランザ蒸留所

ロックランザ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1995年
所有会社アイル・オブ・アラン・ディスティラーズ社
地域分類スコットランド,アラン島
年間生産量120万リットル
発酵槽オレゴンパイン製6基
ポットスチル初留2基・再留2基
仕込み水イーサン・ビオラック川
ブレンド先ロバートバーンズなど

「ロックランザ蒸留所」蒸留所の立地

ポイント

ロックランザ蒸留所はスコットランドのアラン島に位置しています。地域区分的にはアイランズに分類されており,アラン島はグラスゴーの西岸のクライド湾に位置することから,本土で言うとローランド地方と同程度の緯度となります。

また島の北部には標高874mを誇るゴートフェル山があることから,南北での気候に格差があり,アラン島は「スコットランドの縮図」と称されることもしばしばあります。

特に蒸留所の建つロックランザの環境は,メキシコ暖流の影響を受ける温暖な気候に,適度な海風や澄み切った山の空気が整っており,シングルモルトの熟成に非常に適したものとなっています。

またロックランザ蒸留所は元々「アイル・オブ・アラン蒸留所」として稼働していましたが,同じアラン島の南部に系列のラグ蒸留所が建てられたことを受けて,その地名からロックランザ蒸留所と呼ばれるようになりました

ちなみにアイルランドにもアランセーターで有名なアラン島がありますが,スコットランドのアラン島(Arran)とは綴りが異なり,Aranと表記されています。混同しないように注意しましょう。

「ロックランザ蒸留所」蒸留所の歴史

ロックランザ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1825年当時アラン島で政府公認を得ているのはラグ蒸留所のみであった
1837年ラグ蒸留所の閉鎖を持ってアラン島の蒸留所が完全に淘汰される
1991年ハロルドカリー氏デイビッド・ハッチソン氏が設立したアイル・オブ・アランディスティラーズ社が,アラン島の北部ロックランザの土地を地主から購入する
1992年蒸留所の建設計画提出に伴う最初の公開会議が実施される
1993年蒸留所建設計画の最終承認がなされる
1994年アイルオブアラン蒸留所(旧名)の建設が開始される
1995年4月に建設が完了し,6月29日午後2時29分に最初の蒸留が行われてニューポットが生み出される
1997年エリザベス女王の立ち合いのもとでビジターセンターがオープンされる
1998年俳優のユアンマクレガーらによって初めて3年熟成を終えたシングルモルトの試飲会が開かれる
1999年赤字経営であったことを受けて6月にハロルド・カリー氏が取締役を引退し,息子のアンドリューに引き継ぐが,彼も9月に辞任した
以降はもう一人の息子のポール氏が取締役を務める
2003年依然赤字経営が続き,ポール氏が取締役を辞任したことにより,カリー家が経営陣からは離れる
同年以降,筆頭株主はレスリー・オーチンクロス氏となるが,カリー氏やハッチソン氏も少数の株式は所有している
2006年初のオフィシャルボトルとしてアランモルト10年が発売される
2007年ワールド・ウイスキー・アワードにて「ディスティラリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞する
2008年蒸留所のマスターブレンダーとして,ボウモアで勤務していたジェームズ・マクタガード氏が採用される
MD(取締役)はユアン・ミッチェル氏となる
2010年多くのウイスキーが成熟し,長年続いた赤字経営状態に改善の兆しが見えこれ以降年を追う度に発展していく
ライトリーピーテッドタイプの公式ブランドとしてマクリームーアがリリースされる
2016年ハロルド・カリー氏が91歳で亡くなる
2017年業績好調を受けてポットスチルが2基増設される
2018年アラン社により,ピーテッドタイプの原酒生産を目的としたラグ蒸留所が島の南部に建設される
2019年ラグ蒸留所での生産開始に伴い,蒸留所名がアイルオブアランからロックランザ蒸留所に改められる
併せてボトルデザインもシンプルなものに変更される
ユアンマクレガー(左)氏らを招いた試飲会(1998)
出典:scotchwhisky.com

ロックランザに纏わるストーリー

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「ロックランザ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    120万L
  • 仕込み水
    イーサン・ビオラック川(ロッホ・ナ・デイビー湖が水源)
  • モルトスター
    グレネスク(ブートモルト)
  • ピーテッドレベル
    ノンピート,中ピート(20ppm)
  • マッシュタン材質
    ステンレス製セミロイタータン
  • マッシュタン容量
    1バッチ2.5トン
  • ウォッシュバック
    オレゴンパイン製6基
  • 酵母
    ケリー社製
  • ウォッシュバック容量
    15,000L(張込み13,000L)
  • 発酵時間
    65時間
  • スチル加熱方式
    蒸気加熱方式
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型2基
  • ウォッシュスチル容量
    7,100L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型2基
  • スピリッツスチル容量
    4,300L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • 本留の度数
    68.5%
  • 樽詰め度数
    68.5%
  • ウェアハウス形式
    ダンネージ,ラック,パラタイズ混在

製麦について

ポイント

ロックランザ蒸留所では製麦設備が導入されていないことから自社製麦が行われておらず,製麦工程は専門業社(モルトスター)のブートモルト社(グレネスク製麦所)に委託しており,そこから原料のモルトを購入しています。大麦の品種はオプティック種とオックスブリッジ種が中心です。

現在のピーテッドレベルはノンピートタイプとフェノール値20ppmのミディアムピーテッドタイプが設定されていますが,2018年に系列のラグ蒸留所が創業される前は50ppmのヘビリーピーテッドタイプの麦芽も使用されていました。今はラグ蒸留所がヘビリーピーテッドタイプの原酒を生産しています。

特にピーテッドタイプのモルトを原料に生産される原酒は,「マクリームーア(Machrie Moor)」という独自のブランドとしてリリースされています。

用意された原料のモルトは,専用のローラー式モルトミルで粉砕してグリストとされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

ポイント

ロックランザ蒸留所では仕込み水としてナ・デイビー湖を水源としたイーサン・ビオラック川の水(軟水)を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり2.5トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。

ちなみにイーサン・ビオラックはゲール語で「鋭い滝」を意味しており,実際に6箇所もの滝を下る急流を流れてきた水は,ナチュラルで純粋な素晴らしい水質を誇っています。

ここが特徴!

  • ウォートがクリアな色味となることから,すっきりとしたテイストが養われる

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

ポイント

ロックランザ蒸留所には容量15,000リットル(張込み13,000リットル)でオレゴンパイン製のウォッシュバックが6基設置されています。酵母はケリー社製のディスティラーズ酵母が使用されています。

ここが特徴!

  • 発酵時間が65時間と比較的長めに設定されている

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

ポイント

ロックランザ蒸留所には容量7,100リットルのウォッシュスチルが2基,容量4,300リットルのスピリッツスチルが2基設置されています。

形状はどれもストレート型であり,細く長いネックを経てラインアームはほぼ水平となっています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ式が採用されています。

創業からしばらくは2基のスチルのみで稼働していましたが,業績好調を受けて2017年に2基のスチルが増設されており,生産量も2倍を超える120万リットルに到達しました。

ここが特徴!

  • ストレート型の蒸留器で還流があまり生じないことから,多様で複雑なテイストが得られる
  • 蒸留器のネックが長く背が高いことから,銅との接触面積増大し,不快な香気の除去が進む
  • ロックランザのローワインは度数23%,ニューポットは68.5%となる

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

ポイント

ロックランザ蒸留所のウェアハウスは伝統的なダンネージ式や近代的なラック式,貯蔵容量に優れた縦置きのパラタイズ式など,様々な形式が混在しています。

熟成に使用される樽はシェリー樽とバーボン樽をはじめとして,フィニッシュ用に多彩なワイン樽なども活用されており,ニューポットは加水せずにそのままこれらの樽に詰められています。

ロックランザのウイスキーはその熟成年によらず,ほぼ全てがアルコール度数46%もしくはカスクストレングスでボトリングされることとなります。無論カラーリングも行われないため,ウイスキーの色味は樽由来のものとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

ロックランザ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

アランモルト10年

ポイント

アランモルト10年」はロックランザ蒸留所の公式シングルモルトのうち,最もスタンダードなボトルであり,アラン島で育まれる個性がしっかりと反映されたウイスキーになります。

そのウイスキーは1stフィルのバーボン樽原酒をメインとし,シェリーホグスヘッド原酒をバランスよくブレンドすることで構成されており,滑らかなフルーティさやモルティなテイストが感じられる仕上がりとなっています。

その味わいはもちろんのこと,2019年のボトルデザイン変更によってシンプルな外観となり,今では多少入手困難となるほどの大人気銘柄となりました。

受賞歴:WWA2019金賞,IWSC2019金メダル(95点)etc...

香り

自然の蜂蜜/モルティ/青リンゴ/フローラル/エステリー/シトラス/スパイシー/ハーブ/オレンジマーマレード/ドライフルーツ

味わい

モルティな甘さ/ローストナッツ/シトラス/香水系フローラル/エステリー/りんご/ウッディ/バニラ/オレンジ/ラムレーズン/シナモン系スパイス

余韻

ウッディな樽香/シナモン系の甘めのスパイス感/比較的長めの余韻


アラン バレルリザーブ

ポイント

アラン バレルリザーブ」はロックランザ蒸留所の公式シングルモルトのうち,最も入門的な立ち位置のボトルであり,1stフィルのバーボンバレルで7〜8年程度熟成された原酒のみで構成されています。

アランらしいフローラルかつフルーティなテイストをベースとし,軽快なスパイス香を有した爽やかな風味が表現されており,アランの個性と場面を選ばない万能さを併せ持ったウイスキーとなっています。


アラン クォーターカスク

ポイント

アラン クォーターカスク」は1stフィルのバーボンバレルで7年間の熟成を経た後,アメリカンオーク製で容量125リットルの小さなクォーターカスクで2年間の追加熟成を行った原酒で構成されています。

1stフィルや小さな樽では,樽由来のオーク調のテイストが色濃く原酒に映し出される傾向が強く,このボトルも例に漏れず,ウッディかつスパイシーなテイストをしっかりと感じることができます。

加えてカスクストレングスでボトリングされており,冷却濾過やカラーリングも施されていないことから,最も自然な状態の原酒を味わうことができる点も非常に魅力的です。


アラン シェリーカスク

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アラン シェリーカスク」はファーストフィルのシェリーホグスヘッドで全期間熟成された原酒のみで構成されており,シェリー樽由来のリッチで甘いフルーティさやナッティなテイストが引き出されたボトルになります。

こちらもカスクストレングスでボトリングされていることから,度数こそかなり高めですが,飽きないフルボディの甘さをガッツリと感じることが出来ます。


アラン アマローネカスク

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アラン アマローネカスク」は様々なワイン樽フィニッシュが適用された当蒸留所のボトルシリーズのうち,イタリアの辛口赤ワインの「アマローネ」の空き樽フィニッシュ原酒にフィーチャーしたボトルになります。

度数50%・ノンチル・ノンカラーでボトリングされており,チェリーやベリーのような赤い果物の甘さやチョコレート,スパイシーな風味を強く感じることができます。


アラン ソーテルヌカスク

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アラン ソーテルヌカスク」は様々なワイン樽フィニッシュが適用された当蒸留所のボトルシリーズのうち,フランスの甘口貴腐ワイン(ソーテルヌ)の空き樽でフィニッシュされた原酒にフィーチャーしたボトルになります。

こちらも度数50%・ノンチル・ノンカラーでボトリングされており,はちみつやバナナ,甘じょっぱいバニラ,ドライフルーツなどの多彩で華やかな甘さをしっかりと感じることができます。


アラン ポートカスク

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アラン ポートカスク」は様々なワイン樽フィニッシュが適用された当蒸留所のボトルシリーズのうち,ポルトガルの酒精強化ワイン「ポート」の空き樽でフィニッシュされた原酒にフィーチャーしたボトルになります。

マスターブレンダーのジェームス・マクタガード氏がモニタリングし,最適な期間をポート樽でフィニッシュ。例に漏れず度数50%・ノンチル・ノンカラーでボトリングされています。

黒いラベルや濃い色味から連想されるように,若干の焦げ感を有したりんごやナッツ,ビターオレンジ,ドライフルーツなど,濃厚かつ力強い甘みを感じることができます。


アランモルト18年

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アランモルト18年」はシェリーホグスヘッド原酒1stフィルのバーボン樽原酒をバランスよくヴァッティングした,18年熟成を超えるアランモルトのプレミアムレンジのボトルになります。

バーボン樽とシェリー樽の魅力が見事に融合しており,オークやバニラの甘さから,砂糖漬けドライフルーツやチョコレートの甘さまで,多彩かつエレガントなテイストを感じることができます。


アランモルト21年

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

アランモルト21年」は1st及び2ndフィルのシェリーホグスヘッドで熟成された原酒のみで構成された,21年熟成の究極のアランモルトになります。

その原酒構成からも10年や18年とは一線を画したテイストが表現されており,アラン島で培われたモルトの個性とシェリー樽由来の濃厚かつフルーティな甘みの応酬です。

ドライフルーツ調の華やかフルーティな甘さはもちろん,ビターさを纏ったローストナッツやダークチョコレートのような奥深いテイストは,まさに円熟感のある高級ウイスキーといった印象です。


マクリームーア

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

マクリームーア」はフェノール値20ppmのライトリーピーテッド麦芽で仕込まれた,ピーテッドタイプのロックランザ蒸留所の原酒にフィーチャーしたブランドになります。一言で言えばピーテッドタイプのアランモルトです。

マクリームーアという名称はアラン島西海岸のピート湿原を由来としており,ここにはミステリアスなストーンサークルや古代遺跡が点在しています。

中でも「フィンガルの大かまど」と呼ばれるストーンサークルには,伝説の巨人戦士フィンガルが愛犬ブランを繋いでいたとされる岩の彫刻が残されており,ボトルに描かれた犬はこの逸話が基にされています。


マクリームーア
カスクストレングス

※情勢により,売り切れの場合があります

ポイント

マクリームーア カスクストレングス」は通常のマクリームーアと同様に,ピーテッドタイプのアランモルトをカスクストレングスでボトリングしたウイスキーになります。

ボトリング時に加水されていないことから,ピートスモークがよりダイレクトに伝わり,それに続いて焼きたてクッキーやパイナップル,バニラクリームなどの甘いテイストを感じることができます。

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参考資料

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / アラン公式 / whisk-e.co.jp