ストラスミル蒸留所(Strathmill)|場所・歴史・製法・ボトルの種類と特徴|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「ストラスミル蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

グレンアイラ|ほぼブレンド用|花と動物|精留器

ストラスミルの特徴

ノンピート|フルーティ&フローラル&スパイシー|りんご,シナモンetc...

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初谷(はつがい)

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ストラスミル蒸留所

ストラスミル蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年1891年
所有会社ディアジオ社
地域分類スコットランド
スペイサイド,キース地区
年間生産量260万リットル
発酵槽ステンレス製6基
ポットスチル初留2基・再留2基
仕込み水蒸留所の泉
ブレンド先J&B,オールドマスターなど

「ストラスミル蒸留所」立地と概要

出典:whisky.comgoogle map

ポイント

 ストラスミル蒸留所はスコットランドのスペイサイド地方,キース地区に所在しています。より具体的には幹線道路のA96号からやや奥まった場所,アイラ川の沿線付近に建っています。
 また蒸留所のすぐ横には,キースとダフタウンを結ぶ観光列車が走っており,車内からストラスミルを臨むことが可能です。

 ストラスミルは創業時には”グレンアイラ(アイラ川の谷)”という名称でしたが,蒸留所から程近いアイラ川の下流側には”ストラスアイラ(アイラ川の広い谷)”が建っており,これらは互いにほぼ同じ立地・ほぼ同じ語源の蒸留所ということができるでしょう。

 現在ストラスミルで生産されるウイスキーは,そのほとんどがJ&Bを筆頭としたブレンデッド用の原酒とされており,オフィシャルシングルモルトは2001年から販売されている花と動物シリーズの12年もの1本のみ。ボトラーリリースも僅かであることから,シングルモルトとして飲む機会は決して多くはないでしょう。

 ちなみにストラスミルの語源は,広い谷を意味する”ストラス”と,粉挽小屋を意味する”ミル”というゲール語にありますが,特に「ミル」については,ストラスミルの建物が蒸留所として創業する以前に,製粉所として使用されていたことから名付けられていると考えられます。

「ストラスミル蒸留所」蒸留所の歴史

ストラスミル蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1823年現在蒸留所として利用されている場所にて,製粉工場(ストラスアイラミルズ)が設立される
1892年とうもろこし工場が蒸留所に転換される
当時はグレンアイラ蒸留所という名称で稼働を始めた
1895年ジンを手がける英国の企業「W&Aギルビー社」が蒸留所を9,500ポンドで買収する
蒸留所名がストラスミルに変更される
1962年W&Aギルビー社がユナイテッド・ワイン・トレーダーズ社と合併し,IDV(インターナショナル・ディスティラーズ・アンド・ヴィントナーズ)社が形成される
1968年ポットスチルが2基増設され,合計4基体制となる
屋外に伸びるラインアームに精留器が取り付けられる
1972年IDV社がグランドメトロポリタングループに買収される
1993年ストラスミル初となるシングルモルトがリリースされる
1997年グランドメトロポリタンとギネス社が合併し,ディアジオ社が形成される
2001年花と動物シリーズより,12年熟成のシングルモルトがオフィシャルリリースされる
2014年ディアジオのスペシャルリリースの一環として25年熟成のボトルがリリースされる

ストラスミルに纏わるストーリー

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「ストラスミル蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    260万L
  • 仕込み水
    蒸留所の泉
  • モルトスター
    ディアジオ社内
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製セミロイタータン
  • マッシュタン容量
    1バッチ9.1トン
  • ウォッシュバック
    ステンレス製6基
  • 酵母
    プレス状
  • ウォッシュバック容量
    46,500L
  • 発酵時間
    65時間,120時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    バルジ型2基
  • ウォッシュスチル容量
    10,700L
  • ポットスチル(再留)
    バルジ型2基
  • スピリッツスチル
    6,000L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ(屋外)
  • 本留の度数
    72%
  • 樽詰め度数
    63.5%
  • ウェアハウス形式
    ダンネージ式5棟,ラック式2棟

製麦について

出典:whisky.com

ポイント

 ストラスミル蒸留所では,現在は自社製麦を実施しておらず,製麦工程は同じディアジオ社内のモルトスターに委託されています。
 ピーテッドレベルはノンピートとされており,最終的にはスペイサイドモルトらしい華やかなテイストのウイスキーが生産されることとなります。

 用意された原料のモルトはローラー式のモルトミルで粉砕し,グリストとされます。一般的にグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

 ストラスミル蒸留所では,仕込み水として蒸留所敷地内の泉の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり9.1トンのグリスト容量を誇る,ステンレス製のセミロイタータンになります。

ここが特徴!

  • ウォッシュバック容量が46,500Lであることから,糖化1バッチでこれに相当する量のウォートが得られていると考えられ,その場合グリスト1トンあたりのウォート抽出量が約5,100Lとなって合点がいく。

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

 ストラスミル蒸留所には,容量46,500リットルでステンレス製のウォッシュバックが合計6基設置されています。酵母は通常のディスティラーズ酵母であり,プレス状で取引されています。

ここが特徴!

  • 発酵時間が平日65時間・休日120時間程度と,一般的な水準よりもかなり長めに設定されており,発酵後期に生じる乳酸発酵の影響によって,軽くすっきりとしたテイストが得られやすい

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

 ストラスミル蒸留所には,容量10,700リットルのウォッシュスチルが2基,容量6,000リットルのスピリッツスチルが2基設置されています。

 形状はどちらもバルジ型であり,加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーは屋外設置のシェル&チューブ方式が採用されています。
 またスチルハウス内から屋外のコンデンサーに繋がるラインアームには,精留器が設置されており,その場所も屋外となっているのが独自的なポイントとなります。

ここが特徴!

  • バルジ型のスチル形状により,蒸気の環流が促されることとなり,比較的重めの香味を呈する成分が除去されやすい
  • 精留器の採用により,ラインアーム部においてもヘビーな酒質となる蒸気を除去できるため,最終的な生成物が軽やかかつオイリーなテイストになりやすい

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:whisky.com

ポイント

 ストラスミル蒸留所には,伝統的なダンネージ式のウェアハウスが5棟,貯蔵容量に優れた近代的なラック式ウェアハウスが2棟併設されています。また熟成に使用される樽の材質や大きさなどについては確定的な情報が公表されていません。

 樽詰めは蒸留所内ではなく,西に10km強離れたところにあるオスロスク蒸留所で実施されており,タンカーで輸送されたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整されたのちに樽詰めされます。
 その後は一部の樽のみがストラスミル蒸留所の敷地内のウェアハウスに安置され,残りのほとんどの原酒はディアジオの集中熟成庫にて長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

ストラスミル蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

花と動物シリーズ
ストラスミル12年

created by Rinker
ストラスミル
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ポイント

ストラスミル12年」は「花と動物(Flora and Fauna)」という,かつてのUD社(現ディアジオの一部)が所有していた蒸留所のモルト原酒がボトリングされたシリーズの一角を担う,ストラスミル蒸留所唯一のオフィシャルシングルモルトになります。

 このシリーズに含まれるボトルは,ラベルに各蒸留所に関連した何らかの動植物が描かれていることで知られていますが,このストラスミルのボトルにはスペイサイドの水辺に生息する「セキレイ」という鳥が描かれています。

 そのテイストは多層的で完成度が非常に高く,長い歴史で培われた個性と魅力をしっかりと持つ代物。スペイサイドらしいりんご系のフルーティ感を軸に,シナモンスパイスやシュガートーストのような甘さが散りばめられたデザートチックなウイスキーです。

Tasting Note

  • 香り

熟したりんご|シナモン|モルティ|胡椒スパイシー|シナモンシュガー|フローラル

  • 味わい

焼きりんご|クッキー|バニラクリーム|草原と花畑|レーズン|トースト|シナモン|胡椒

  • 余韻

暖かみを感じるスパイシー感とほのかなフルーツの甘味が長く残る

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参考資料

参考サイト:whisky.comscotchwhisky.comscotchwhisky.netmalt-whisky-madness.comrarewhisky101.comscottishdelight.com