【特集】クライゲラキ蒸留所(Craigellachie)|場所・歴史・製法・種類と味わい|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「クライゲラキ蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ホワイトホースとデュワーズ/オイルヒーティング/ワームタブ

クライゲラキの特徴

華やか系/サルファリー/穀物の甘み/トロピカルフルーツ/フローラル/ハーバル

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初谷(はつがい)

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【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
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クライゲラキ蒸留所

クライゲラキ蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年1891年
所有会社バカルディ社
地域分類スペイサイド,スペイ川中流域
年間生産量410万リットル
発酵槽カラマツ製8基
ポットスチル初留2基・再留2基
仕込み水リトル・コンバルヒル
ブルーヒルの泉
ブレンド先デュワーズ

「クライゲラキ蒸留所」蒸留所の立地と概要

出典:whisky.com / google map

ポイント

 クライゲラキ蒸留所はスペイサイドのスペイ川中流域に位置しています。より具体的にはフィディック川とスペイ川の合流地点及び,幹線道路のA941号線とA95号線の交差地点付近にあるクライゲラキ村の内部に建っています。
 スペイ川を跨ぐA941号線の橋梁の横には,かつて著名な土木技術社であるトーマス・テルフォード氏が設計した壮観なデザインの「クライゲラキ橋」が架かっており,周囲の大自然も相まって絶景です。

 残念ながらクライゲラキ蒸留所は一般公開されていませんが,蒸留所のスチルハウスは外からでもポットスチルが並ぶ様子が確認でき,程近くにある4つ星のクライゲラキホテルにはコッパードッグというバーもあるため,旅先の穏やかな休息地としては最適でしょう。
 ちなみにクライゲラキ(Craigellachie)はゲール語の「Creag Eileachaidh」に語源があるとされており,日本語では「無情に突き出た大岩」という意味を持っているという意見が主流となっています。

「クライゲラキ蒸留所」蒸留所の歴史

クライゲラキ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1891年ピーター・マッキー氏とアレクサンダー・エドワード氏によってクライゲラキ蒸留所が創業される
蒸留所の設計は著名な建築家であるチャールズドイグ氏が手がけている
1896年事業がクライゲラキ−グレンリベットディスティラリー社として再構築される
1898年(初めてクライゲラキでウイスキーの生産が始まったのはこの年であったという情報がある)
1900年アレクサンダー・エドワード氏が所有株式をピーター・マッキー氏に売却する
1916年ピーター氏が運営するマッキー&Co社がクライゲラキ蒸留所を買収する
1919年ピーター・マッキー氏が準男爵の称号を賜る
1924年ピーター・マッキー氏が亡くなる
会社名がホワイトホース・ディスティラーズ社に変更される
1927年ホワイトホースディスティラーズ社がDCL社に買収される
1930年蒸留所がDCL社の子会社として創設されたSMD社に移籍される
1964年ポットスチルが2基増設されて計4基体制となる
1986年DCL社がギネス社による買収を受け,新たにUD社が創設される
1998年ジョン・デュワー&サンズ社及びデュワーズのキー蒸留所がバカルディ社に買収される
2014年クライゲラキのシングルモルトブランドがデュワーズによってリニューアルされる

クライゲラキに纏わるストーリー

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「クライゲラキ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    410万L
  • 仕込み水
    ブルーヒルの泉
  • モルトスター
    グレネスク製麦所
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイター
    (シュタイネッカー社製)
  • マッシュタン容量
    1バッチ9.5トン
  • ウォッシュバック
    カラ松製8基
  • 酵母
    ケリー社,リキッド状
  • ウォッシュバック容量
    47,000L
  • 発酵時間
    56時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型2基
  • ウォッシュスチル容量
    28,185L(張込み23,500L)
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型2基
  • スピリッツスチル容量
    28,185L(張込み21,500L)
  • コンデンサー
    ワームタブ式
  • 本留の度数
    70%
  • ウェアハウス
    グラスゴー

製麦について

出典:google map

ポイント

 クライゲラキ蒸留所では現在自社製麦を行っておらず,製麦工程は専門のモルトスターであるブートモルト社のグレネスク製麦所に委託し,そこから原料のモルトを購入しています。グレネスクでは麦芽の乾燥に通常のガスバーナーではなく,オイル(油)を焚いた際に発生する硫黄香を呈す成分を含んだ熱気を活用した,オイルヒーティングという手法が取られています。
 このグレネスク製麦所のオイルヒーティング設備は”クライゲラキのためだけに”使用されており,これによって得られる重心の低いクセになる適度な硫黄香を個性とした特徴的なテイストはまさにクライゲラキ唯一のものと言えるでしょう。

 ピーテッドレベルについてはピートを焚かないノンピートタイプとされており,大麦品種はコンチェルト大麦,そして産地については英国内で可能な限りスコットランド産のものが採用されています。

 麦芽の粉砕を行うモルトミルはポルテウス社製であり,1バッチ9.5トンのモルトを約2時間半で粉砕し,グリストとすることができます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

ポイント

 クライゲラキ蒸留所では仕込み水としてリトルコンバルヒルにあるブルーヒルの泉の水が使用されています。マッシュタンについて,2001年までは古い鋳鉄製のマッシュタンが使用されていましたが,現在は1バッチあたり9.5トンのグリスト容量を誇るシュタイネッカー社製で最新鋭のフルロイタータンが設置されています。

 フルロイター式のため撹拌を行うレーキが水平・垂直方向どちらにも可動し,コンピューター制御と圧力差のモニタリングによって,アンダーバックを介すことなく清澄なウォートを採取することができます。

ここが特徴!

  • 最初のお湯の温度は糖化酵素のよく働く67.3℃に設定されている
  • 1バッチで得られるウォートの総量は約47,000リットルであり,1基の発酵槽に送られる
  • クライゲラキは週7日稼働しており,マッシングは週に21回行われている

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

ポイント

 クライゲラキ蒸留所には容量47,000リットルでカラ松製のウォッシュバックが8基設置されています。使用される酵母はケリー社製でリキッド状のディスティラーズ酵母になります。酵母は4,500リットルサイズのタンクに保管されており,1バッチに対して192リットルが添加されています。

ここが特徴!

  • 発酵時間は55〜65時間とされており,一般的な水準よりもやや長い
  • ウォッシュのアルコール度数は約8%となる
  • 発酵槽1基分の47,000リットルのウォッシュはウォッシュスチル2基分に該当する

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com / google map

ポイント

 クライゲラキ蒸留所には容量28,185リットル(張込み23,500リットル)のストレート型ウォッシュスチルが2基,容量28,185リットル(21,500リットル)のストレート型スピリッツスチルが2基設置されています。
 ラインアームは初留・再留ともにやや下向きとなっており,加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーは伝統的なワームタブ式コンデンサーが採用されています。

 ワームタブ式コンデンサーは冷却水の漏れが生じやすいことから,スコッチ業界では多くが淘汰されてしまった背景がありますが,クライゲラキでは維持管理に注力することで伝統的な製法を守り続けています。ちなみに冷却水には付近を流れるフィディック川の水が活用されています。

ここが特徴!

  • 初留によってアルコール度数8%のウォッシュは度数27%のローワインに変化している
  • 一般的にチャージに対して「蒸留液:残留物=1:2」程度となることから,初留では7,800リットル程度のローワインが得られているものと考えられる
  • 再留は初留2回分のローワインと前回蒸留の前留・後留を混合し,約21,500リットルの張込みで行われる
  • 冷却速度の遅いワームタブ式コンデンサーは,クライゲラキが製麦時に創出している硫黄系のテイストを初めとした重めの香味成分を保持させるのに効果的である
  • ミドルカットの基準については,前留は蒸留初期の30分程度の度数が72%よりも高い部分,ミドルは4時間半〜5時間程度の中間部分,後留は蒸留液の度数が63%を下回った部分とされている

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

ポイント

 クライゲラキ蒸留所では熟成が敷地内で行われておらず,出来立てのスピリッツは本土のグラスゴーにあるデュワーズの工場に輸送され,そこで熟成が行われています。熟成に使用される樽は全体の90%がアメリカンオークのバーボン樽とされており,残りの10%程度がヨーロピアンオークのシェリー樽とされています。

 蒸留によって得られたニューポットは加水をすることなく樽詰めされ,本土の熟成庫で長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

クライゲラキ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

クライゲラキ13年

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ポイント

クライゲラキ13年」は当蒸留所のオフィシャルシングルモルトのうち,最もスタンダードなボトルになります。その構成はファーストフィルのシェリー樽が半分,ファーストフィルのバーボン樽が半分とされています。
 ワームタブ式コンデンサーをはじめとして伝統的な製法を守り,オイルヒーティングによって乾燥された麦芽を原料として作られたウイスキーは,適度な硫黄香を孕む,唯一の個性を持った非常に価値のあるテイストとなっています。

香り

キャラメル/ドライフルーツ/ハーブ/モルティ/トロピカルフルーツ/カスタード/洋梨/はちみつ/わずかに硫黄

味わい

濃いモルティ感/ウッディなスパイス香/柑橘フルーツ/硫黄系のサルファリー香/ジンジャー感

余韻

甘みを伴うウッドスモークとモルティ感,そして微かにサルファリーな印象


クライゲラキ17年

ポイント

クライゲラキ17年」は当蒸留所の中間グレードに位置するオフィシャルシングルモルトであり,原酒の構成は13年と同じく50%がファーストフィルのシェリー樽50%がファーストフィルのバーボン樽とされていることから,13年の正統進化に当たるボトルと言えるでしょう。
 その特徴については,13年よりもエキゾチックなフルーツ香が強くなり,パイナップルのような力強い要素を基調としてモルティな甘さや若干の焦げ感などが香ばしく感じられます。クライゲラキらしいサルファリー感は長期の熟成によって養われたフルーツ香に溶け込み,心地よく感じられる程度に留まります。


クライゲラキ23年

ポイント

クライゲラキ23年」は当蒸留所のオフィシャルシングルモルトのうち,最もハイレンジ帯に位置するボトルであり,そのウイスキーの構成比は明らかにされていませんが,ファーストフィルのバーボン樽原酒ファーストフィルのシェリー樽原酒が使用されています。
 その味わいについてはモルティな穀物の甘さは主体として残存し,13年の時から存在していたトロピカルフルーツ感が焼いたパイナップルのような濃厚な甘みに進化。そしてより長い熟成期間によってフルーツバスケットのような華やかさや,バニラのクリーミーさ,メントール感などに更なる発展が見られます。

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参考資料

参考サイト:クライゲラキ公式 / whisky.com / scotchwhisky.com / diffordsguide.com / malt-whisky-madness.com