【特集】クライヌリッシュ蒸留所(Clynelish)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「クライヌリッシュ蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

サザーランド公爵/ブローラ蒸留所/ヤマネコがシンボル

クライヌリッシュの特徴

ノンピート/ワクシー/フルーティ/フローラル/蜜のような甘さ/沿岸の個性

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初谷(はつがい)

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クライヌリッシュ蒸留所

クライヌリッシュ蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年1819年(1967年)
所有会社ディアジオ社
地域分類スコットランド,北ハイランド
年間生産量480万リットル
発酵槽カラ松製8基・ステンレス製2基
ポットスチル初留3基・再留3基
仕込み水クラインミルトン川
ブレンド先ブラック&ホワイト,ジョニーウォーカーなど

「クライヌリッシュ蒸留所」立地と概要

出典:whisky.com / google map

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所はスコットランドの北ハイランド地方に位置しています。より具体的にはサザーランド地方,北海に面した沿岸のブローラの街に建っており,周辺は大都市のエジンバラやグラスゴーからは車で4時間以上を要する人里離れた場所になります。

 クライヌリッシュのウイスキーはハイランドモルトらしい華やかなテイストをベースとしながら,蒸留所の立地に由来する沿岸の個性を獲得しており,北ハイランドの起伏に富んだ地形や海からの潮風に耐え抜いた力強さを特徴としています。

 また現在クライヌリッシュとして稼働している蒸留所は,実は1967年に新しく建てられたものであるというのが面白いポイント。この新たな蒸留所は1819年に創業された当初の蒸留所は同じ敷地内に建てられており,古い蒸留所の方が「ブローラ蒸留所」へと名前を変えて稼働していました。ブローラは1983年に一度閉鎖されていましたが,2021年に再稼働しています。

 ちなみに「クライヌリッシュ(Clynelish)」という名称にはゲール語に語源があるとされていますが,過去版のモルトウイスキー大全では「金色の湿地(ゲール語の綴りは不明)」とされていたり,他には「果樹園の草地(Cluasin lise)」とする説があったりと,複数の解釈が存在しています。

「クライヌリッシュ蒸留所」歴史

クライヌリッシュ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1819年第2代スタッフォード侯爵のジョージ・ルーソン=ゴア氏によってクライヌリッシュ蒸留所が創業される
1825年蒸留所がジェームズ・ハーパー氏に引き継がれる
1827年ジェームズ・ハーパー氏が倒産し,蒸留所はジョン・マセソン氏に引き継がれる
1846年蒸留所がジョージ・ローソン&サンズ社へと売却される
1896年蒸留所がブレンダーのエインズリー&ハイルブロン・ディスティラーズ社及び,ジョン・リスク氏によって買収される
この頃から業績が好調に転じる
1912年蒸留所がジョン・リスク氏の単独所有となる
1925年蒸留所及びジョン・リスク氏がDCL社の傘下となる
1931年蒸留所が閉鎖される
1960年約30年越しに生産が再開される
1967年現在のクライヌリッシュに当たる2番目の蒸留所「クライヌリッシュA」が,当初の蒸留所の隣で創業される
1968年1番目の蒸留所が閉鎖される
1969年1番目の蒸留所が「クライヌリッシュB」として再度稼働され,主にブレンデッド用のピーティな原酒を生産するようになる
このクライヌリッシュBは町名から「ブローラ蒸留所」に改名され,クライヌリッシュAが現在の「クライヌリッシュ蒸留所」となった
1973年ブローラの生産方針が変更され,ノンピートスタイルの原酒が作られるようになる
1983年ブローラ蒸留所が閉鎖される
2002年クライヌリッシュ14年がリリースされる
2014年ディアジオ社によってクライヌリッシュの拡大に3,000万ポンドの投資が公表されるが,実際には延期されている
2021年ブローラ蒸留所での生産が再開された

クライヌリッシュに纏わるストーリー

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「クライヌリッシュ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    480万L
  • 仕込み水
    クラインミルトン川
  • モルトスター
    バーグヘッド製麦所など
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイタータン
  • マッシュタン容量
    1バッチ12.5トン
  • ウォート総量(/1バッチ)
    56,000L
  • ウォッシュバック
    カラ松製8基,ステンレス製2基
  • 酵母
    ケリー社製,リキッド状
  • ウォッシュバック容量
    58,600L
  • 発酵時間
    80時間程度
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    バルジ型3基
  • ウォッシュスチル容量
    17,000L(張込み13,900L)
  • ポットスチル(再留)
    バルジ型3基
  • スピリッツスチル容量
    19,000L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • 本留の度数
    67〜68%
  • ウェアハウス
    敷地内(ダンネージ)
    ディアジオの集中熟成庫

製麦について

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所では所内での製麦は行われておらず,製麦工程は主に同じディアジオ系列のバーグヘッド製麦所を筆頭とした,専門のモルトスターに委託しています。
 大麦は蒸留所近傍にあるスコットランド有数の大麦産地,ブラックアイルで採れたロリエット種を中心とし,ピーテッドレベルは全てノンピートタイプとされています。

 用意された原料のモルトはローラー式のモルトミルで粉砕し,グリストとされます。一般的にグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所では仕込み水として,クラインミルトン川の水が採用されています。マッシュタンは2016年の改修工事以前は古い鋳鉄製のものが使用されていましたが,現在は1バッチあたり12.5トンのグリスト容量を誇る最新鋭のステンレス製フルロイタータンが使用されています。

 仕込み水を採るクラインミルトン川は,鉱物を多く含有した山を流れていることから,19世紀のゴールドラッシュの時代には人気の採掘場でした。クライヌリッシュのウイスキーも金のような価値を生み出していますね(?)

ここが特徴!

  • 最初のお湯の温度は65℃,3回目のお湯は84℃に設定されている
  • 糖化1バッチで完成するウォートは約56,000リットルとなり,次の発酵工程では1基のウォッシュバックに投入される

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所には容量58,600リットルのウォッシュバックが合計10基設置されており,うち8基はカラ松製,2基はステンレス製になります。酵母はケリー社製でリキッドタイプのディスティラーズ酵母とされており,ウォッシュバック1基あたり約20リットルが添加されています。

ここが特徴!

  • 発酵時間は80時間程度と長めに設定されている
  • ウォッシュのアルコール度数は約9%となる
  • ウォッシュは一時的にウォッシュチャージャーというタンクに貯蔵され,ウォッシュスチル3基分(約42,000リットル)貯まった段階で,ウォッシュスチルに投入される

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所には容量17,000リットル(張込み13,900リットル)のウォッシュスチルが3基,容量19,000リットルのスピリッツスチルが3基設置されています。
 形状はどれもボール状の膨らみがあるバルジ型で,ネックは短めながらしっかりとした太さがあります。加熱方式は蒸気による間接加熱方式で,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。

 特徴的な点として再留器の容量が初留器よりも大きい容量とされており,その分蒸留時間も長くかかってしまいますが,アルコール蒸気の銅との接触が十分に確保されるため,不快な香味が除去されたクリーンなテイストが得られているとされています。

 またミドルカット後のヘッドとテールについて,ローワインと混合する前に一時貯蔵するタンクが設けられており,その中で様々な成分を含んだ沈殿物が堆積していきます。
 再留時にこの沈殿物を含んだ溶液がローワインと混合してチャージされることとなりますが,この沈殿物によってクライヌリッシュのワクシーなテイストが得られていると考えられています。

ここが特徴!

  • バルジ型のポットスチルでは蒸気の環流が促進され,軽やかな香味を含む蒸気が多くコンデンサーへと流出する
  • 初留はスチル容量に対して8割程度のチャージとされているため,蒸気はスチル内面の銅と接触する機会が増大する

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:google map

ポイント

 クライヌリッシュ蒸留所には伝統的なダンネージ式のウェアハウスが併設されており,現在は6,500樽程度がそこに貯蔵されています。そのほかの多くの樽はファイフにあるディアジオの集中熟成庫に輸送され,そこに貯蔵されています。

 使用される樽は主にバーボン樽とされていますが,わずかにシェリー樽も利用されています。また生産される原酒のうち,シングルモルトリリース用のものは5%にも満たず,ほぼ全てがブレンデッド用とされています。実際にオフィシャルシングルモルトはクライヌリッシュ14年のみとなっています。

 蒸留によって得られたニューポットは,加水によってアルコール度数を63.5%に調整されたのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

クライヌリッシュ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

クライヌリッシュ14年

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ポイント

クライヌリッシュ14年」は当蒸留所唯一のオフィシャルシングルモルトになります。ボトルに描かれたヤマネコはハイランドに生息しているだけでなく,蒸留所創業者のサザーランド公爵家の副紋章とされていることから採用されています。

 樽構成は明かされていませんが,シロップのように濃いワクシーな甘さを主体として,フルーティさやフローラル感に長けた華やかなテイストを特徴としています。
 また蒸留所が北ハイランドの海沿いに建っていることもあり,潮風の吹き荒ぶ環境に由来した,アイランズモルトに近い沿岸の個性を獲得している点も非常に興味深いところ。バランス感に卓越した確固たる骨格が形成されているため,類稀な満足感を付与してくれる逸品です。

香り

フルーツバスケット/リッチなメープルシロップ/洋梨/暖かい潮風/フローラル/ワクシー

味わい

旬な洋梨のフルーティ感/ドライフルーツ/甘いはちみつ/優しい海の香り/花畑/ややオイリー

余韻

凝縮感のある甘みや沿岸の個性など,バランスに富んだ余韻が非常に長く続く

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参考資料

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / distilando.com / whiskipedia.com