【特集】アイル・オブ・ラッセイ蒸留所(Isle-of-Raasay)|場所・歴史・製法・種類と味わい|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「アイル・オブ・ラッセイ蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ジャコバイト|特殊な樽のみを採用|シャンパーニュ酵母

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所の特徴

ノンピート・ピーテッド×特殊な3種類の樽熟成=6タイプの原酒
ダークフルーツ感|島の個性|ピートスモーク

\\執筆者情報//

whisky_roundupのアバター

初谷(はつがい)

ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー

各種SNSも運用中!

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年2017年
所有会社R&Bディスティラーズ社
地域分類スコットランド,ラッセイ島
(アイランズ)
年間生産量18.8万リットル
発酵槽ステンレス製6基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水敷地内の井戸水
ブレンド先

「アイル・オブ・ラッセイ蒸留所」立地と概要

出典:whisky.com | google map

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所はスコットランドのラッセイ島に位置しており,分類としてはアイランズに括ることができます。
 このラッセイ島はスカイ島の東隣にあり,島の形や大きさがニューヨークのマンハッタン島に類似していることから”スコットランドのマンハッタン島”とも呼ばれています。

 蒸留所の建物は元々カントリーホテルとして使用されていたものであり,売りに出ているのを発見したアラスデア・デイ氏が購入し,2017年に蒸留所として創業されました。
 ウイスキーの生産にはテロワールの概念を感じることができ,熟成やボトリングは既に全て島内で行われており,今でこそ北欧やアイスランド産の大麦を原料に使用していますが,最終的には全てラッセイ産とすることが目標に掲げられています。

「アイル・オブ・ラッセイ蒸留所」蒸留所の歴史

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
2014年アラスデア・デイ氏とビル・ドビー氏によってR&Bディスティラーズ社が設立される
2015年直近までホテルとして使用されていたボロデールハウスが売りに出ていたため,デイそれを購入し,蒸留所を開業することを決意する
2016年2月にアイル・オブ・ラッセイ蒸留所の建設計画が認可され,4月に着工した
2017年9月より最初のマッシングと蒸留が実施された
2020年スコッチの定義である3年熟成の完了を機に,初のシングルモルトがリリースされる

アイル・オブ・ラッセイに纏わるストーリー

\\タップで開く//

「アイル・オブ・ラッセイ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    18.8万L
  • 仕込み水
    敷地内の井戸水
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
    ヘビーピート(50ppm)
  • マッシュタン材質
    ステンレス製セミロイター
  • マッシュタン容量
    1バッチ1トン
  • ウォート総量
    1バッチ5,000L
  • ウォッシュバック
    ステンレス製6基
  • 酵母
    ディスティラーズ酵母
    シャンパーニュ酵母
  • ウォッシュバック容量
    5,000L
  • 発酵時間
    70時間・120時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    ランタン型1基(フリッリ社製)
  • ウォッシュスチル容量
    5,000L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型1基(フリッリ社製)
  • スピリッツスチル容量
    3,600L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • 本留の度数
    70%
  • 樽詰め度数
    63.5%
  • ウェアハウス形式
    パラタイズ式,ダンネージ式

製麦について

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所では自社製麦を行っておらず,製麦工程は外部の専門業者(モルトスター)に委託しています。現状大麦は国内及び北欧産のものが使用されていますが,ピートについては島内産のものが主に使用されており,最終的には100%島内産のシングルモルトを作ろうという構想があります。

 大麦の品種については,ローリエイト種及びコンチェルト種,アイスランドの独自の品種や古代種と言われるベア種など,多様な種類のものが使用されています。
 またピーテッドレベルについては,ノンピートタイプとフェノール値50ppm程度のヘビリーピーテッドタイプの2種類の設定があります。

 用意された原料のモルトはローラー式のモルトミルで粉砕し,グリストとされます。一般的にグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所では仕込み水として,蒸留所の背後の「青白い牛の井戸(Tobar na Ba Bàine)」と呼ばれる井戸の湧水を採用しています。
 この水は島の最高峰であるダンカン山に降った雨水が,島を構成する火山岩やジュラ記の砂岩を経由することにより,豊富なミネラル分を含有しているため,ウイスキーに個性と複雑さを与える大きな要因となっています。

 マッシュタンは1バッチあたり1トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。

ここが特徴!

  • 糖化1バッチあたり,約5,000リットル程度のウォートが得られている
  • ウォートはクリアな色味となるため,軽くすっきりとしたテイストを生み出す

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所には容量5,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが設置されています。使用される酵母は一般的なディスティラーズ酵母及びシャンパーニュ酵母が使用されており,どちらもドライタイプとされています。

 ラッセイ蒸留所では,発酵工程でダークフルーツのような風味を得るために,シャンパーニュ酵母の使用や,通常よりもわずかに高めの温度設定での発酵が行われています。

ここが特徴!

  • シャンパーニュ酵母の使用は,発酵工程において,ダークフルーツのような香味を得るために行われている。
  • 発酵時の温度を通常よりもわずかに高めに設定しており,こちらもダークフルーツのような香味を得ることに一役買っている。
  • 発酵時間は70時間と120時間の設定があり,通常よりもかなり長め。発酵終期の乳酸発酵の影響にとり,軽くすっきりとしたテイストが得られていると考えられる

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所には容量5,000リットルでランタン型のウォッシュスチルが1基,容量3,500リットルでストレート型のスピリッツスチルが1基設置されています。ラインアームは初留器ではやや下向き,再留器ではやや上向きとされています。
 またウォッシュスチルには,ネックとラインアームに冷却用のジャケットが装着されており,ピーテッドタイプの原酒を蒸留する際にはバルブを開いて環流を促し,ノンピートタイプの原酒の蒸留時にはバルブを閉じて環流を妨げています。

ここが特徴!

  • ウォッシュスチルに冷却用のジャケットが設けられていることから,バルブを開くと環流が促進されてクリーンで軽やかなテイスト,閉じると重く複雑なテイストを得ることができる
  • スピリッツスチルはストレート型だが,やや上向きのラインアームによって蒸気の環流が促進され,軽やかな香味成分を得やすいものと考えられる
  • 一般的にチャージに対して「蒸留液:残留物=1:2」程度となることから,初留では1,700リットル程度のローワインが得られているものと考えられる

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:whisky.com

ポイント

 アイル・オブ・ラッセイ蒸留所には蒸留所建屋の背後に伝統的なダンネージ式のウェアハウスと貯蔵容量に優れたパラタイズ式のウェアハウスが併設されています。

 熟成に使用される樽は「北アメリカ産のライウイスキー樽|強く火入れしたチンカピンオークの新樽|ファーストフィルのボルドーワイン樽」の3種類が主とされています。また一部の特殊なリリース用としてマンサニージャ樽などが使用されるケースもあります。
 3種類の樽で熟成される原酒がさらに,ノンピートタイプとピーテッドタイプに分けることができるため,全体としては6種類の原酒が作り分けられているという見方ができます。

 蒸留によって得られたニューポットは,加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

アイル・オブ・ラッセイ
R-01.1

画像クリックでAmazon商品ページへ

ポイント

アイル・オブ・ラッセイ R-01.1」は定期的にスモールバッチでリリースされる当蒸留所の定番ラインナップのひとつで,2022年の5月にリリースされたボトルになります。
 Rはリリース(release)を指し,R-01は主に5月,R-02は9月にボトリングされたバッチを指します。このR-01.1は,第1弾のR-01に続き,5月にボトリングされたシングルモルトの第2弾に該当しています。

 このR-01.1ではノンピート・ヘビーピート原酒の双方を使用し,最終的なフェノール値は48〜52ppmのヘビリーピーテッドタイプ。樽の割合は「ライカスク:チンカピンオーク:ボルドー=65:25.5:9.5」とされています。

 ノンチル・ノンカラーかつ46.4%という高めの度数でボトリングされているこだわりの構成であり,ダークフルーツのようなアダルトな甘みと,ヘブリディーズ諸島の気候からくるほのかな塩味を有したピートスモークが特徴的です。

香り

レモン系柑橘感|ミント|塩味|キャラメル|ダークフルーツ|わずかにスパイシー|軽ピートスモーク

味わい

レモンピールとライム|はちみつ|塩キャラメル|ピートスモーク|ビターチョコ|ラムレーズン

余韻

ダークフルーツのようなビター感とほのかなピートスモークが残る

各種SNS運用中!
フォローしてね👍

参考資料

参考サイト:アイル・オブ・ラッセイ公式 | whisky.com | scotchwhisky.com