記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「ラガヴーリン蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
キルダルトン3兄弟/ピーター・マッキー/ホワイトホース
の特徴
ヘビーピート/干草/海風由来のヨード感/リッチ/濃厚/奥に秘められた甘さ
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【ラガヴーリン16年のレビュー】
ラガヴーリン蒸留所
ラガヴーリン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1816年 |
所有会社 | ディアジオ社 |
地域分類 | スコットランド アイラ島 |
発酵槽 | カラ松製10基 |
ポットスチル | 初留2基・再留2基 |
仕込み水 | ソラン湖 |
ブレンド先 | ホワイトホース |
「ラガヴーリン蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ラガヴーリン蒸留所はスコットランド南西に浮かぶアイラ島の南岸部に位置しています。アイラ島南岸にはラガヴーリンのほかに「アードベッグ蒸留所」と「ラフロイグ蒸留所」があり、3箇所を合わせてキルダルトン3兄弟と呼びます。
アイラ島は年間をとして気温変動が少ない冷涼な気候であり、島の4分の1がピート層、そして海から吹く潮風が原酒の個性を育むといったウイスキー作りに最適の土地になります!
またラガヴーリンの周辺はかつて10を超える密造所が栄えていたらしいですが,この背景には周囲の土地が人が踏み入れ難い程の湿地帯であることや,海は暗礁が多くて船の航行が難しかったことが寄与したとか。
当時の密造の摘発は船上から行われることが多かったらしいですから,確かに密造には最適な土地だったのでしょう。ちなみにラガヴーリンはゲール語で「水車小屋のある窪地」のことを指しています。
「ラガヴーリン蒸留所」蒸留所の歴史
ラガヴーリン蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1816年 | アイラ島のジョンストン家のジョン・ジョンストンによってラガヴーリン蒸留所が設立される |
1825年 | 創業者のジョンストンは1821年より閉鎖されていたアードモア蒸留所を引き継いだ |
1835年 | アードモアの生産が停止される |
1836年 | ジョンストンが亡くなる 蒸留所はグラスゴーの酒売りであるアレクサンダー・グラハムによって買収される |
1837年 | ラガヴーリンとアードモアを統合して運営がなされる |
1852年 | 蒸留所がジョン・クロフォード・グラハムに引き継がれる |
1862年 | 蒸留所がジェームズ・ローガン・マッキー&Co社に買収される |
1889年 | ジェームズ・ローガン・マッキーが亡くなる ジェームズの元で修行していた甥のピーター・マッキーへと蒸留所が引き継がれる |
1890年 | ピーターにより社名がマッキー&Coに改められる ラガヴーリンをキーモルトとしたブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」を発売する |
1908年 | 敷地に2番目の蒸留所としてモルトミル蒸留所が建てられる |
1924年 | ピーター・マッキーが亡くなる 社名がホワイトホースディスティラーズ社に改められる |
1927年 | ホワイトホースディスティラーズ社が合併により、DCL社の一部となる |
1941年 | 第二次世界大戦の影響によって蒸留所が閉鎖を余儀なくされる |
1951年 | 蒸留所が火災に見舞われる |
1962年 | モルトミル蒸留所が閉鎖される ラガヴーリンのスチルハウス再建が行われ、モルトミル蒸留所のスチルが組み込まれる |
1974年 | 自社でのフロアモルティングが廃止される |
1987年 | UD社によってDCL社が買収される |
1988年 | ラガヴーリン16年がクラシックモルトシリーズに選出される |
1997年 | 会社合併により所有者がディアジオ社となる |
2012年 | 映画「エンジェルズシェア」でラガヴーリンが紹介される |
ラガヴーリンに纏わるストーリー
「ラガヴーリン蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
253万L - 仕込み水
ソラン湖 - モルトスター
ポートエレン - ピーテッドレベル
ヘビリーピーテッド
34〜38ppm - マッシュタン材質
ステンレス
フルロイター - マッシュタン容量
1バッチ4.4トン - ウォッシュバック
カラ松製10基 - ウォッシュバック容量
22,000リットル
- 酵母
マウリ社
リキッドイースト - 発酵時間
55時間 - スチル加熱方式
蒸気間接加熱 - ポットスチル(初留)
2基,ストレート - ポットスチル(再留)
2基,ストレート - コンデンサー
シェル&チューブ - ウェアハウス
ダンネージ式
本土の熟成庫も使用 - 樽詰め度数
63.5%
製麦について
ポイント
ラガヴーリン蒸留所では自社でのフロアモルティングが1974年まで行われていましたが,現在は製麦をポートエレンに委託しています。麦芽のフェノール値は34〜38ppmとヘビリーピーテッドタイプに設定されています。
このモルトは熱風乾燥とピート乾燥のレシピが正確に定められており、コンピューター制御を行うことで常に同品質のものが安定供給されています。
モルトをモルトミルで粉砕してグリストとした後、糖化の工程へと進みます!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について
ポイント
ラガヴーリン蒸留所では仕込み水としてソラン湖(Lochan Sholum)の水を使用しています。マッシュタンは1バッチあたり4.4トンのグリスト容量を誇る、ステンレス製のフルロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯を温度を上げながらスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。
各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有するウォートが抽出されており,通常糖類の含有量が多い1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のお湯は次回の糖化バッチに混合されることとなります。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について
ポイント
ラガヴーリン蒸留所には容量22000リットル、カラ松製のウォッシュバックが10基設置されています。発酵に使用される酵母はマウリ社製のリキッドイーストであり、1基あたり100リットル使用します。
糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して冷却したのちに酵母と共にウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。
発酵時間は平均で55時間程度と標準的な長さであり、発酵が完了するとアルコール度数9%となったやや濁り気味のウォッシュを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について
ポイント
ラガヴーリン蒸留所には容量11000リットルのウォッシュスチルが2基、容量12500リットルのスピリットスチルが2基設置されています。
ポットスチルはどれもストレート型であり、背が高め、細く大きく下向きに傾斜したラインアームが特徴的です。スチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式、冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。
ーー初留ーー
1基のウォッシュバックで作られたウォッシュを2等分して2基のウォッシュスチルに投入し、約5時間以上かけて初留が行われます。
初留釜の容量11000リットルに対して投入するもろみが10400リットルと、容量ギリギリの分量で蒸留をおこなっているため、アルコールの蒸気が銅と触れる面積が小さいという特徴があります。
初留が完了するとアルコール度数約20%程度となったローワインを得ることができます。
ーー再留ーー
続いて初留2回分のローワイン12200リットルが再留釜1基に投入され、約11時間と非常に長い時間をかけて再留が行われます。
こちらも初留と同様に容量ギリギリの分量で蒸留をおこなっているため、アルコール蒸気が銅と触れる面積が小さくなっています。
再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。
この作業はミドルカットといい,ラガヴーリンではニューポット全量の60〜70%にも及ぶ広めの幅で本留を確保しているのが特徴です。
再留・ミドルカットを終えた時点でアルコール度数68〜69%の本留が得られます。
ーー考察ーー
蒸留における諸情報からラガヴーリンの酒質について少し考察を…
ストレート型のスチル形状から蒸気の進行を妨げるものが少なく,また容量と張込みの差分が小さいことから,スチルの銅に触れる面積が少ないため、銅を触媒とした香味成分の洗練が起きづらいと考えられます。
以上から蒸留によって,銅を触媒として起こる新たな香味の生成や硫黄化合物などの除去があまり起きないため,軽やかさやクリーンさとは無縁かつ,雑味さえ包含するどっしりとした重厚感のある奥深い風味が得られていると考えられます。
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について
ポイント
ラガヴーリン蒸留所には1962年に建設されたダンネージ式の白い熟成庫がありますが,現在ここに眠る樽は5000樽に限定されています。
またラガヴーリンの樽の一部はカリラやポートエレンの熟成庫にも保管されていましたが,最近では新規に作られた原酒と共に本土にあるディアジオの熟成庫に安置されるようになっています。
熟成に使用される樽はスタンダードなバーボン樽とシェリー樽が中心となります。
蒸留によって得られた本留は,加水によってアルコール度数63.5%に調整して樽詰めされたのち,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
オフィシャルボトル一覧
ラガヴーリン蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
ラガヴーリン8年
ポイント
ラガヴーリン8年は元々2016年に創業200周年を記念として限定リリースされたボトルでしたが,のちに定番商品として定着しています。
蒸留所のシグネチャー的なボトルは16年の方ですが,この8年もパワフルなスモーキーさとエレガントさを持ち合わせる非常に美麗なウイスキーです。
非常に個性的な特徴が前面に出ていますので初心者にはオススメしづらいですが、興味を持てた時に飲んでみると良いでしょう。
香り
硫黄を思わせるスモーキー/ソフト/チョコ/レモン/バニラ系/干草/軽め
味わい
極スモーキー/硫黄系/草原/ビターチョコ/タンニン/潮/ミント/レモン
余韻
スモーキーや干草感が長く続く/オイリーな感触がある
ラガヴーリン16年
ポイント
ラガヴーリン蒸留所が出すオフィシャルボトルは長らくこの16年熟成のボトルのみでした。強烈なスモーキーさが16年という長い熟成年月によってより深められ、マイルドさを持ちつつも圧倒的な破壊力を秘めています。
まさしくラガヴーリンの代表作であり,根強いファンを多く抱えているウイスキーです。また近年人気が急上昇しており,アイラ島内の売上ランキングでもボウモアを抜いてラフロイグに次ぐ第2位に上り詰めました。
香り
強力なスモーキー/ヨード感/スパイシー/干草/シェリーの甘味/バニラ感/柑橘系のフレッシュさ
味わい
濃厚/リッチ/強いピートスモーク/海風/フルーティ/甘さ/秋の若干淋しい草原のよう
余韻
スパイシーさとピート感が長く続く/濃厚でリッチな感触
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参考資料
参考サイト:whisky.com scotchwhisky.com ディアジオ公式サイト