キングスバーンズ蒸留所(kingsbarns)|場所・歴史・製法・オフィシャルボトル|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「キングスバーンズ蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

王様の穀物庫/原料は地元産大麦のみ/ゴルフ場/鳩小屋

キングスバーンズの特徴

ローランドモルトらしい/華やか/軽やか/フローラル/トロピカル

キングスバーンズ蒸留所

キングスバーンズ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年2014年
所有会社ウィームス・ディスティラリー社
地域分類スコットランド ローランド
発酵槽ステンレス製4基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水敷地内の井戸水
ブレンド先

「キングスバーンズ蒸留所」蒸留所の立地

ポイント

キングスバーンズ蒸留所はスコットランドのローランド,ファイフ地方の東海岸にあるセント・アンドリュースゴルフ場の南に位置しています。

ファイフ地方は王室と縁の深い土地でもあり,一帯が「王様の穀物庫(キングスバーンズ)」と呼ばれていました。現在も大麦を含む穀物の生産が行われており,蒸留所で作られるウイスキーはこの大麦のみを原料に採用しています。

またかつて地域の農家はオランダ製のタイルを使用した鳩小屋を作り,その豪華さを競う文化がありました。蒸留所の敷地内にもその形跡が残されており,残る鳩小屋の中には創業して最初に原酒を詰めた樽が置かれています。

一般的なローランドモルトの個性に違わぬ,ライトでクリーンな酒質を生み出すことを念頭組まれた生産体制が整えられていますが,特殊な樽での熟成を行うなどによって唯一の個性を生み出している蒸留所です!

「キングスバーンズ蒸留所」蒸留所の歴史

キングスバーンズ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
2009年ゴルフキャディーを務めていたダグラス・クレメント氏が蒸留所建設に向けて資金調達を行う
2010年クレメント氏はカンボ・エステートに蒸留所を建設する計画の許可を受ける
2012年蒸留所建設に際してスコットランド政府より67万ポンドの助成金が付与される
2013年クレメント氏は会社をウィームス家に売却して資金を調達する
しかし会社には取締役として残り,半年後に蒸留所の建設が始まる
2014年キングスバーンズ蒸留所とビジターセンターが12月に一般公開される
同年のセント・アンドリューの日である11月30日に初めて蒸留が行われる

キングスバーンズに纏わるストーリー

操業に至るまで

創業者のダグラス・クレメント氏は元々ファイフ海岸付近のキングスバーンズゴルフリンクスにてゴルフキャディーを務めていた,ごく普通の一般市民であり,金銭的に恵まれていたわけではありませんでした。

しかしながら仕事上関わるゴルファーたちと関わるうちに,ゴルフ場近辺に蒸留所があれば良いという好奇心に触れる機会が多くなってきます。

そこで彼はゴルフ場の程近く,カンボエステートにある遺棄された農場を発見して,そこに蒸留所を建設することを決意しました。

まず直面するのが資金面の問題です。これを解決した方法はどのようなものだったのでしょうか。

最初はクレメント氏がゴルフ場で関わりを持っていた人らを含む,32人の投資家からおよそ10万ポンドを調達しました。きっとクレメント氏は投資に値する人望を持っていたのでしょう。

その後クラウドファンディングや政府の助成金をもとに幾度か資金調達を試みますが,目標額である160万ポンドにはまだ届かず。

そこで登場するのが,カンボエステートの一部を所有する名門貴族のウィームス家でした。クレメントの試みは運良くウィームス家の目に止まり,プロジェクトは彼らの所有とし,クレメント氏はディレクターとして舵取りを行う運びとなります。

これによって2013年には資金面の問題が完全に解決し,そこからは半年以内に建設に着手,1年半後には稼働開始というスピード創業が実現されました!

余談に蒸留所運営の会社体系としては,操業がキングスバーンズカンパニー・オブ・ディスティラーズ社,所有する親会社がウィームスディスティラリー社となっています。

「キングスバーンズ蒸留所」製法の特徴

製麦について

ポイント

キングスバーンズ蒸留所では原料の大麦として地元のファイフ産のコンチェルト大麦を採用しており,製麦作業は外部の専門業者(マントン社)に委託しています。

また乾燥時にピート処理を行わない,ノンピートタイプのモルトを原料として使用します。

モルトの粉砕を行うモルトミルはビューラー社製で4ローラー式のものになります。

原料のモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!

糖化について

マッシュタン 出典:whisky.com

ポイント

キングスバーンズ蒸留所では仕込み水として,敷地内の井戸より地下100m程度の帯水層から採取できる,ミネラル豊富な天然水を採用しています。

マッシュタンは1バッチあたり1.5トンのグリスト容量を誇るステンレス製セミロイタータンになります。

製麦によって得られたグリストはマッシュタンに投入され,加熱した仕込み水を3回に分けて温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。この糖化手法はインフュージョン法と呼ばれています。

糖化が完了すると糖分を多く含んだクリアな色味のウォートを得ることができます。

次の工程は発酵になります!

発酵について

ウォッシュバック 出典:whisky.com

ポイント

キングスバーンズ蒸留所には容量8,000リットルでステンレス製のウォッシュバック4基設置されています。酵母は南アフリカおよびベルギー産の2種類のドライイーストを混合して使用しています。

糖化によって得られたウォートは酵母が活性化する20℃まで冷却したのち,酵母と共にウォッシュバックに投入することで発酵が進行します。発酵にかける時間は70〜90時間と比較的長めに設定されています。

発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみを得ることができます。

次の工程は蒸留になります!

蒸留について

ポットスチル 出典:whisky.com

ポイント

キングスバーンズ蒸留所には容量7,500リットルのウォッシュスチルが1基,容量4,500リットルのスピリットスチルが1基設置されています。

形状はどちらもランタンヘッド型であり,細いネックととても長いラインアームが特徴的です。またスチルの加熱方式は石油焚きボイラーで発生させた蒸気による間接加熱方式,冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。

まず発酵によって得られたもろみは,ウォッシュスチルへ投入されて初留が行われます。初留が完了するとアルコール度数約20%程度のローワインを得ることができます。

続いてローワインをスピリットスチルへと移して再留を行います。再留によって発生するアルコール分については,蒸留初期および終期の不安定な成分を多く含む部分をカットするミドルカットという工程が行われます。

再留とミドルカットを終えるとアルコール度数約73.2%ニューポットが完成します。

次の工程は熟成になります!

熟成について

最初の樽 出典:google map

ポイント

キングスバーンズ蒸留所は敷地が非常に狭く,蒸留所内ウェアハウスがありません。そのため熟成は敷地外にあるファイフの保税倉庫で行われています。

使用される樽はファーストフィルのバーボン樽(ヘブンヒル),シェリー樽,ポルトガル産のSTR赤ワイン樽(※)を中心に使用しています。

蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に整えたのち,これらの樽に詰められて長い期間を保税倉庫で眠ることとなります。

余談ですが,操業を初めて最初に樽詰めされたウイスキーは敷地内の古い鳩小屋の中に安置されています。


※STRとは
STRは「シェービング(Shaving)」「トースティング(Toasting)」「リチャーリング(Re-Charring)」の3工程の頭文字を表しています。
シェービングというのは赤ワインが直接触れていた樽の内面を削り取る工程のことであり,ウイスキーに与えるワイン由来の影響を間接的なものとすることが可能となります。トーストとチャーは過去記事で解説しているのでそちらをご参照ください!
一般にSTR樽で熟成させたウイスキーはダークな色と味を持つようになることが知られています。


オフィシャルボトル一覧

キングスバーンズ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

キングスバーンズ
ドリームトゥドラム

ポイント

ファーストフィルのバーボン樽とファーストフィルのSTR赤ワイン樽の2種類の樽で熟成された原酒で構成されるキングスバーンズのシングルモルトです。

フルーティさを追い求めた製造工程に加えてSTR樽で熟成させていることから,非常に華やかは風味が錬成されている,新興ながら個性的なウイスキーになります!

香り

バナナ/パイナップル/サマーベリー/ハーバルな要素/フローラル

味わい

トロピカルフルーツ/ベリー/フローラル/トフィー/タルト

余韻

フレッシュで甘いシロップのようであり,ジンジャーのようなスパイス感もある

キングスバーンズ バルコミー
シェリーカスクマチュアード

ポイント

キングスバーンズ蒸留所がオロロソシェリー樽で3年以上熟成された原酒を2020年にボトリングした商品です。

キングスバーンズ本来の果実香とシェリーの甘さがバランスよく表現されています。

香り

ドライフルーツ/シナモン/サマーベリー/チョコレート/スパイシー

味わい

パイナップル/オレンジピール/シナモン/ケーキスパイス/ウッディ

余韻

ドライアプリコットやローストヘーゼルナッツのニュアンス

参考資料

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / キングスバーンズ公式