【特集】ノックニーアン蒸留所(Nc'nean)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「ノックニーアン蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ジムスワン博士/ドリムニンエステート/再生可能エネルギー/オーガニック大麦

ノックニーアンの特徴

ハーブ感/潮感/桃/フローラル/シトラス/ジンジャー

ノックニーアン蒸留所

ノックニーアン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年2017年
所有会社ノックニーアン・ディスティラリー社
地域分類スコットランド 西ハイランド
発酵槽ステンレス製4基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水エステート内の湖
ブレンド先

「ノックニーアン蒸留所」蒸留所の立地

ポイント

ノックニーアン蒸留所はスコットランドの西ハイランドに位置しています。具体的にはマル島のトバモリー港の対岸,本土最西端にあたるモーヴァン半島の先端付近になります。

蒸留所の周辺は古くは氏族が有していた大土地のドリムニンエステートが広がっており,その一角にあたる古い農場であった部分が現在蒸留所として活用されています。

ちなみに本土の都市部から蒸留所まで車で行くのはかなり厳しいらしく,一度対岸のマル島に渡ってから船で渡るというルートが一般的らしいです(笑)

ちなみに「ノックニーアン(Nc'nean)」という聴きなれない名前には明確な由来があり,サー・ウォルター・スコットの小説に登場する有名な魔女のことを表しています。

「ノックニーアン蒸留所」蒸留所の歴史

ノックニーアン蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
2001年ドリムニンエステートがトーマス家によって買収される
ホリデーコテージ等が運営される
2012年アナベル・トーマス氏がドリムニンエステートに蒸留所を建設する計画を立案する
2013年ドリムニンディスティラリー社が設立される
2014年蒸留所の建設に着手する
2017年蒸留所名をノックニーアンに確定させる
同年3月に最初のニューポットが樽詰めされる
2020年シングルモルト第1弾が発売される

ジム・スワン博士

ノックニーアン蒸留所は創業にあたって,ジムスワン博士にウイスキー作りのコンサルタントを依頼しました。ジムスワン博士は台湾のカバランを初めとした,数多くの蒸留所を成功に導いてきた素晴らしいコンサルタントです。

彼の元で形作られたノックニーアン蒸留所の最も特徴的な部分としては,蒸留所で使うエネルギーの全てを再生可能エネルギーで賄うことができるようにしたことや,原料の大麦をオーガニックなものとしているところです。

そんな凄腕のジムスワン博士ですが,2017年2月にノックニーアン蒸留所の試運転をしていた時期に突然死してしまいます。自身の手がけた蒸留所の行く末を見届けることができなかったのは無念だったと思われますが,その意志は間違いなく現地のチームが引き継がれているでしょう。

ノックニーアンはまだまだ創業してから日が浅い蒸留所なので,博士に代わってみんなで今後の展開を見守っていきましょう!

「ノックニーアン蒸留所」製法の特徴

製麦について

グリスト
出典:whisky.com

ポイント

ノックニーアン蒸留所では100%オーガニックのスコットランド産大麦のみを原料として採用しており,製麦作業自体は外部の専門業社(マントン社)に委託しています。

仕入れるモルトはは全てノンピートタイプになります。

このモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!


糖化について

マッシュタン
出典:Google map

ポイント

ノックニーアン蒸留所では仕込み水としてエステート内の湖の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり1トンのグリスト容量を持つ,ステンレス製のセミロイタータンになります。

マッシュタンにグリストを投入し,加熱した仕込み水を3回に分けて,温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。糖化が完了すると糖分を多く含み,高い透明度のウォートを得ることができます。この糖化手法をインフュージョン法と呼びます。

次の工程は発酵になります!


発酵について

ウォッシュバック
出典:Google map

ポイント

ノックニーアン蒸留所には容量5000リットルでステンレス製のウォッシュバックが4基設置されています。酵母はファーメンティス社アンカー社のディスティラーズ酵母のほか,実験的に様々な酵母が使用されています。

糖化によって得られたウォートは20度前後まで冷却されたのち,酵母と共にウォッシュバックへと投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は66〜114時間とかなり長めに設定されています。

これはノックニーアンが求めている,ニューポットの段階からフルーティさを感じられるほどの高クオリティを実現するために必要な設定であるとも言えるでしょう。

発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!


蒸留について

ポットスチル
出典:Google map

ポイント

ノックニーアン蒸留所には容量5000リットルのウォッシュスチルが1基,容量3500リットルのスピリットスチルが1基設置されています。どちらもフォーサイス社製で,特徴的なランタン型になります。

ポットスチルの加熱方式はバイオマスボイラーで発生させた蒸気による間接加熱方式,冷却方式はマルチパスタイプのシェル&チューブ方式が採用されています。

発酵で得られたもろみはまずウォッシュスチルへと移され,初留が行われます。初留を終えた時点でアルコール度数約20%のローワインが完成します。

続いてこのローワインをスピリットスチルに移し,再留を行います。再留によって抽出されたアルコール分はミドルカットという工程を経て,熟成に適した質の高い部分のみが厳選されることとなります。

再留,ミドルカットまでを終えたニューポットはアルコール度数が71%程度まで高められています。

次の工程は熟成になります!


熟成について

ノックニーアンの樽
出典:whisky.com

ポイント

ノックニーアン蒸留所には伝統的なダンネージ式のウェアハウスがありますが,庫内は蒸留の際に発生した暖かい廃液によって温度管理を行うことができる近代的な設備も導入されています。

熟成に使用する樽は主にバーボン樽赤ワイン樽であり,僅かにシェリー樽も使用されています。

蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.3%に整えたのちに樽詰めされ,ダンネージ式の貯蔵庫で長い時を眠ることとなります。


オフィシャルボトル一覧

ノックニーアン蒸留所からは,現在通年販売されているオフィシャルボトルはありません。

そのため,ここでは限定公式ボトル及びボトラーズからノックニーアンを味わえるボトルを一部紹介します!

ノックニーアン
オーガニック シングルモルト

ポイント

2017年創業の新興の蒸留所らしく,環境や持続可能性への配慮が随所に見て取れるノックニーアンの公式ボトルです。

オーガニック大麦を原料とし,緩やかな発酵・蒸留の進行管理は行われているため,生み出されるウイスキーも非常に華やかでフルーティな香味を強く有した風味となっています。

またラベルデザインも最小のフットプリントに留めながら,自然との調和を感じさせる非常に美しいものとなっています。

価格帯

Yahooショッピング:30913円

※2022年8月現在

香り

桃/ハーブ感/ジンのよう/海の潮感/香水/フローラル/シトラス

味わい

桃/アプリコット/ハーバル/潮感/フローラル/シトラス/スパイシー

余韻

ジンジャー感を含むドライな余韻

ブティックウイスキー
ノックニーアン バッチ1(2) 3年

ポイント

ブティックウイスキーは英国のマスターオブモルト社が創設したインディペンデントボトラーになります。

ノックニーアンはオフィシャルリリースがまだ通年化していないため,これらのボトルは数少ないノクニーアンを味わうための手段の一つとなるでしょう。

このシリーズのラベルは蒸留所に纏わるストーリーやジョーク等を風刺したイラストデザインとされているため,ボトルを眺めてそのストーリーを感じながら飲むことで,より深くノックニーアンを楽しめることでしょう。

価格帯

市場価格:8000〜11000円程度

香り

夏の草原/モルティ/バニラ/ハーブ感/フレッシュ

味わい

チョコ/モルトビスケット/ナッティ/ライム/スパイシー/ハーバル

余韻

ドライかつスパイシーな余韻が非常に長く続く

参考資料

参考サイト:ノックニーアン公式 / whisky.com / scotchwhisky.com