記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「アベラルギー蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
モリソン&マッカイ社/ブレンド・ボトリング設備併設/自社畑産の大麦のみを使用
アベラルギー蒸留所
アベラルギー蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 2017年 |
所有会社 | ザ・パース・ディスティリング社 |
地域分類 | スコットランド ローランド |
発酵槽 | ステンレス製6基 |
ポットスチル | 初留1基・再留1基 |
仕込み水 | 自社の畑の井戸水 |
ブレンド先 | ー |
「アベラルギー蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
アベラルギー蒸留所はスコットランドのローランド地方に位置しています。具体的にはブレンディング発祥の地である都市パースの約7マイル南になります。
またこの場所は地域的にはローランドですが,ほとんど南ハイランドとの境界です。
蒸留所にはモリソン&マッカイ社のブレンド・ボトリング設備や熟成庫等も併設されており,全てモスグリーンの色味で統一されています。
加えて建物の周りには同社が所有する大麦畑が広がっており,ここで採れる大麦がウイスキーの原料として採用されています。
「アベラルギー蒸留所」蒸留所の歴史
アベラルギー蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
※関連の深いモリソン&マッカイの歴史についても一部含みます。
西暦年 | 内容 |
---|---|
1951年 | スタンリー・P・モリソン氏がウイスキーの仲介事業を始める |
1963年 | モリソン氏がボウモア蒸留所を買収する |
1994年 | モリソンボウモア社はサントリー社へと売却される |
2005年 | ブライアン・モリソン氏がケニー・マッカイ氏と共にブレンデッドウイスキーを手がけていたスコティッシュリキュールセンター社を買収する |
2014年 | 会社名をモリソン&マッカイ社へと改める ザ・パース・ディスティリング社を設立し,アベラルギー蒸留所の建設計画が始められる |
2016年 | アベラルギー蒸留所の建設が開始される |
2017年 | 生産が始まり,最初の樽がニューポットで満たされる |
アベラルギーに纏わるストーリー
マッカイ氏とモリソン家の関係
ブライアン・モリソン氏(スタンリーの息子)と共に,ボトラーズ事業に参入したマッカイ氏は,実は元来モリソン家と関わりの深い人物でした。
というのも彼はかつてスタンリー・P・モリソンが所有していたグレンギリーやオーヘントッシャン,ボウモアで勤務していたことがあり,ブライアンとも旧知の仲だったのです。
このような背景もあり,二人が揃って新たな事業に挑んだのも合点がいきますね。
ちなみに現在はマッカイ家がブレンデッド・ボトラーズ事業を,モリソン家が蒸留所の運営を担っています!
蒸留所の建設地
2010年代半ば頃からブランドの展開に伴って,スコティッシュモルトセンターの施設のみでは手狭感が否めなくなりました。
そこで都市パースより南に7マイルほどの場所にブレンド・瓶詰め施設,そして蒸留所を建設する計画が進行していきました。
この建設予定地については,ブライアン氏が所有していた300エーカーの畑が選定されることとなりました。
現在もこの畑では大麦等の栽培が行われており,現在原料に使用するモルトは,全てこの自社の畑で作られたのものが採用されています。
「アベラルギー蒸留所」製法の特徴
製麦について
ポイント
アベラルギー蒸留所では原料の大麦に自社の畑で採れた,ゴールデンプロミス種という伝統的な品種のものを採用しています。製麦は外部の専門業社(シンプソンズ社)に委託しています。
ピーテッドレベルはライトリーピーテッド(約10ppm)とされています。
このモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
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糖化について
ポイント
アベラルギー蒸留所では仕込み水として自社農場の井戸水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり2トンのグリスト容量を持つステンレス製のセミロイタータンになります。
マッシュタンにグリストを投入し,加熱した仕込み水を3回に分けて温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。この糖化手法はインフュージョン法と呼ばれています。
糖化が完了すると糖分を多く含んだ,クリアな色味のウォートを得ることができます。
次の工程は発酵になります!
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発酵について
ポイント
アベラルギー蒸留所には容量10000リットル,ステンレス製のウォッシュバックが設置されています。使用される酵母はマウリ社製になります。
糖化によって得られたウォートは20度前後まで冷却されたのち,酵母と共にウォッシュバックに投入されます。発酵にかける時間は約72時間と比較的長めに設定されています。
発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみが完成します。
次の工程は蒸留になります!
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蒸留について
ポイント
アベラルギー蒸留所には容量10,000リットルでストレート型のウォッシュスチルが1基,容量7,200リットルでバルジ型のスピリットスチルが1基設置されています。
スチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式,冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。
発酵によって得られたもろみはまずウォッシュスチルに投入されて初留が行われます。初留が完了するとアルコール度数約20%のローワインが得られます。
続いてローワインをスピリットスチルに投入し,再留が行われます。再留及びミドルカットを終えた段階でアルコール度数約67%のニューポットが完成します。
次の工程は熟成になります!
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熟成について
ポイント
アベラルギー蒸留所では敷地内にあるダンネージ式とパラタイズ式のウェアハウスで原酒の熟成を行います。
使用される樽はファーストフィルのシェリー樽とファーストフィルのバーボン樽(ウッドフォードリザーブを中心にセカンドフィルの樽も使用されています。
蒸留で得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に整えたのちに樽詰めされ,ウェアハウスで長い時間を眠ることとなります。
関連ボトル一覧
アベラルギー蒸留所からはまだ公式のシングルモルトがリリースされていません。
ここでは蒸留所併設の設備でボトリングされているブレンデッドモルトの「オールドパース」を紹介します!
オールドパース
オリジナル
ポイント
オールドパースはブレンディング発祥の地として有名なハイランドの「パース」に敬意を表して名付けられたブレンデッドモルトのブランドです!
シェリー樽熟成の原酒のみで構成されており,エレガントでフルーティな風味が特徴的です!
価格帯
Amazon:4,420円
※2022年7月現在
香り
エレガントなシェリー香/ドライフルーツ/レーズン/スパイシー
味わい
ドライフルーツ/レーズン/はちみつ/スパイシー/とても甘い
余韻
ほのかなレーズン香とスパイシー感がとても長く続く
オールドパース
カスクストレングス
ポイント
オリジナルと同様にシェリー樽原酒のみで構成されていますが,カスクストレングス・ノンチル・ノンカラーでボトリングされている,個性的な1本です。
オリジナルよりもさらに濃密なシェリー感を味わうことができます!
価格帯
Amazon:5,880円
※2022年7月現在
香り
シェリー香/ドライフルーツ/オークの甘さ/シナモン系スパイシー
味わい
レーズン/ドライフルーツ/ウッディ/はちみつ/ブラウンシュガー/シロップ系の甘さ
余韻
甘いレーズン感とウッディ,スパイシーな余韻がとても長く続く
参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / 公式サイト