【特集】グレンフィディック蒸留所(glenfiddich)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「グレンフィディック蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ウイスキートレイル|シングルモルト売上世界トップクラス

グレンフィディックの特徴

ノンピート|青リンゴ|洋梨|フローラル|カスタード|はちみつ

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初谷(はつがい)

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グレンフィディック蒸留所

グレンフィディック蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所諸元

創業年1887年
所有会社ウィリアム・グラント&サンズ社
地域分類スペイサイド,ダフタウン地区
年間生産量2,100万L
発酵槽ダグラスファー製32基
ポットスチル初留14基・再留28基
仕込み水ロビーデューの泉
ブレンド先グランツ,モンキーショルダーなど

「グレンフィディック蒸留所」立地と概要

出典:google map

ポイント

グレンフィディック蒸留所』はスコットランド,スペイサイド地方のダフタウン地区に位置しています。
 スペイサイドには多くの蒸留所が密集していることが知られていますが,特にグレンフィディックを含む8つの蒸留所とクーパレッジは,観光促進用のテーマルート”モルトウイスキートレイル”に包含されています。

 その創業は,決して大きな資産を持たないウィリアム・グラント氏によるものであり,業者を雇う余裕がなかったことから9人の息子と共に371日をかけて75万個に及ぶ石を積み上げることで建物が完成したと言われています。
 そんな創業にかける強い思いと努力の結果か,今では世界で最も人気なシングルモルトのひとつ呼ばれる最高峰の名声を獲得しており,一貫してグラント家の末裔によって運営が継続されています。

 ちなみにグレンフィディックという名称は,ゲール語で「鹿の谷」を意味しているとされており,ブランドのロゴデザインも立派なツノを構えた雄鹿がモチーフになっています。

「グレンフィディック蒸留所」蒸留所の歴史

グレンフィディック蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1886年ウィリアム・グラント氏によってグレンフィディック蒸留所の建設が開始される
1887年クリスマスの日にウイスキーの生産が始められる
1896年グレンフィディックディスティラリー社が設立される
1898年主要な原酒販売先であったブレンデッドウイスキーメーカーのパティソン社が倒産する
1903年自社にてブレンデッドウイスキーの製造を行うべく,ウィリアムグラント&サンズ社が設立される
1923年アメリカ禁酒法の影響がスコットランドに波及する
しかしグレンフィディックは,生産量の拡大を決定した
この時の経営は創業者ウィリアムの孫にあたるゴードン・グラント氏が執り行っていた
1957年ウィリアムの曾孫にあたるチャールズ・ゴードン氏銅器職人を雇う
1958年フロアモルティングが廃止される
1959年自社にてクーパレッジを開き,樽職人を雇い始める
1961年特徴的な三角形のボトルが考案される
1963年グレンフィディックのシングルモルトをスコットランド国外にまで売り込み始める
世界にシングルモルトの魅力を広める
1969年スコットランド初となるビジターセンターがオープンされる
1974年大規模な投資を行い,ポットスチルを16基増設する
1987年創業100周年を記念して限定ボトルをリリースする
1991年グレンフィディック50年が限定発売される
1998年シェリー酒の熟成に用いられるソレラシステムを応用した「ソレラバット」が導入される
2001年グレンフィディック64年が限定発売される
2005年ビジターセンターの改装を行う
2009年グレンフィディック50年が再び限定発売される
2010年ウェアハウスの屋根が大雪で抜け落ちる
この時に救われた樽の原酒を使用した「グレンフィディック スノーフェニックス」が発売される
2019年オフィシャルラインナップのボトルデザインが刷新される

グレンフィディックに纏わるストーリー

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「グレンフィディック蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    1,370L
  • 仕込み水
    ロビーデューの泉
  • モルトスター
    バルヴェニー,様々な製麦所
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイター
  • マッシュタン容量
    10トン
  • ウォッシュバック
    ダグラスファー製32基
  • ウォッシュバック容量
    50,000L(チャージ41,000L)
  • 酵母
    リキッドタイプ
  • 発酵時間
    68時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱,ガス直火加熱
  • ポットスチル(初留)
    10基,形状は様々
  • ウォッシュスチル容量
    9,000L
  • ポットスチル(再留)
    21基,形状は様々
  • スピリッツスチル容量
    4,500L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ方式
  • 本留の度数
    70.5%
  • ウェアハウス形式
    ダンネージ,ラック,パラタイズ

製麦について

ポイント

 グレンフィディック蒸留所では,1958年まで所内にてフロアモルティングが実施されていましたが,現在は系列かつ近隣のバルヴェニー蒸留所や,専門の製麦業者(モルトスター)から原料のモルトを仕入れています。

 麦芽のピーテッドレベルは全てノンピートタイプとされており,スペイサイドモルトらしい華やかさに特化したシングルモルトが生産されています。

 用意された原料のモルトはローラー式のモルトミルで粉砕し,グリストとされます。一般的にグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:google map

ポイント

 グレンフィディック蒸留所では,仕込み水としてほど近くのロビーデューの泉の水を採用しています。
 マッシュタンは第1蒸留棟と第2蒸溜棟に1基ずつ,計2基が設置されており,どちらも1バッチあたり10トンのグリスト容量を誇るステンレス製フルロイタータンになります。

ここが特徴!

  • 糖化1バッチあたり4万1,000リットルのウォートが得られており,これをグリスト1トンあたりに換算すると4,100リットルである
  • 搾りかす(ドラフ)は全てバイオ燃料として再利用されている

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:google map

ポイント

 グレンフィディック蒸留所には,容量50,000リットル(チャージ約41,000リットル)で,ダグラスファーの木製ウォッシュバックが32基設置されています。酵母はリキッド状のディスティラーズ酵母であり,1基あたり225リットルが添加されています。

 また発酵時間は68時間で,最終的に完成するウォッシュのアルコール度数は9.6%と高めであることが知られています。

ここが特徴!

  • 発酵時間が68時間と比較的長めのため,適度に乳酸発酵の影響を受けており,これが最終的に完成するウイスキーのすっきりとしたテイストに寄与している

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:google map

ポイント

 グレンフィディック蒸留所には,容量9,000リットルのウォッシュスチルが10基,容量4,500リットルのスピリッツスチルが21基設置されています。これらのスチルは2つの蒸留棟に分けて配置されています。

 スチルの形状についてはまちまちであり,ストレート型,バルジ型,ランタン型などの様々な種類が入り混じっています。その背景にはこれまで他の蒸留所から中古のポットスチルを購入していたという事実があります。
 また1957年以降は,これらのスチルの調整を行う銅器職人を雇っているのもグレンフィディックの大きな特徴であり,スチルの手入れを欠かさないことで高品質なウイスキーの生産が維持されています。

 そしてコンデンサーは全てシェル&チューブ方式ですが,加熱方式については第1蒸留棟が蒸気間接加熱第2蒸留棟が昔ながらのガス直火加熱とされています。

 ちなみに現在第3蒸留棟を増設する計画が進行中であり,実現されれば新たにポットスチルが15基増えることとなり,生産能力は2,000万リットルを超える見込みとなっています。完成は2019年予定とのことでしたがその後のニュースは未だ見受けられないのが現状です。

ここが特徴!

  • 多種多様な形状のポットスチルからは,異なる種類の香味成分が得られていると考えられ,完成するウイスキーの多様性に大きく寄与する
  • 初留・再留共にスチルサイズが小さめであり,比較的ヘビーな香味も確保されやすいと考えられる
  • 第2蒸留棟の直火加熱では,アルコール成分などの蒸散が一気に進行しやすく,力強い香味成分が得られやすいと考えられる

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:google map

ポイント

 グレンフィディック蒸留所には,最大80万樽の貯蔵が可能な43棟のウェアハウスが併設されています。
 その形態も多彩であり,伝統的なダンネージ式ウェアハウスから,近代的で貯蔵容量に優れたラック式やパラタイズ式までもが混在しています。

 さらに1959年以降は蒸留所にクーパレッジ(樽工場),そしてボトリング工場が併設されており,糖化からボトリングまでの全工程を所内で完結させることができます。

 熟成に使用される樽については,アメリカンオークのバーボン樽を中心としつつ,カリブ産のラム樽,スペインのヘレス産のシェリー樽なども採用されています。
 また独自な試みとして「ソレラバット」と呼ばれる巨大な樽を活用した熟成も実施されており,シェリー酒の熟成手法として知られるソレラシステムをモチーフに,樽の中身を枯らさないように充填とボトリングを繰り返す仕組みも採用されています。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

グレンフィディック蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレンフィディック12年
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ポイント

グレンフィディック12年』は,当蒸留所のオフィシャルラインナップのうち,最もスタンダードかつ代表作的なボトルになります。
 使用されている原酒はアメリカンオーク樽及びヨーロピアンオークのシェリー樽で12年以上熟成された原酒であり,最終的には後熟によって味わいが整えられています。

 クセのない飲みやすいテイストを最大の魅力とした逸品のため,当蒸留所の入門のみならず,全てのスコッチシングルモルトの入門と言っても過言ではないほど。ちゃんとしたシングルモルトを飲んだことのない人は是非このボトルから。

Tasting Note

  • 香り

洋梨|青リンゴ|フレッシュなレモン|甘いオーク香

  • 味わい

洋梨|青リンゴ|フローラル|クリーミー|自然なはちみつ

  • 余韻

洋梨系のフルーティ感とウッディなビター感


グレンフィディック15年
ソレラリザーブ

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ポイント

グレンフィディック15年』は,バーボン樽・ホワイトオークの新樽・シェリー樽で熟成されたウイスキーを,さらに独自のソレラバットにて6ヶ月間後熟された原酒によって構成されています。

 ソレラバットは1998年に設置されており,それ以降一度も空にならないように原酒の継ぎ足しが行われているという代物。秘伝のタレのような美味しさがトッピングされた興味深い一本です。
 その味わいは12年と比較してリッチな奥深さを獲得しており,フルーティ&スパイシーのバランスが整った満足感のあるテイストに仕上がっています。

Tasting Note

  • 香り

プラム|洋梨|アーモンド|ドライフルーツ|クローブスパイス|ややモルティ

  • 味わい

レーズン|はちみつ|プラム|バニラ|シナモンスパイス|ナッティ

  • 余韻

甘み主体で滑らかかつスムースな余韻


グレンフィディック18年
スモールバッチリザーブ

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ポイント

グレンフィディック18年』は,18年以上の熟成を経たスパニッシュオークのオロロソシェリー樽アメリカンオーク樽原酒をブレンドし,最後に3ヶ月間の後熟が適用された原酒によって構成されています。

 タイトルの通り,高品質な樽のみが厳選されたスモールバッチ(小さいロット)にて,各原酒を厳格に管理することにより,深く豊かな風味に優れたクラフトマンシップを感じる最高品質のウイスキーが完成しています。
 その味わいでは芳醇な樽香をベースとし,トーストされたりんごやシナモン,そしてドライフルーツのような濃密な甘みに長けた甘美な印象。優雅な夜を演出してくれる素晴らしい逸品です。

Tasting Note

  • 香り

アップルパイ|シナモン|ドライフルーツ|スパイシー|アーモンド|キャラメルバニラ

  • 味わい

焼きりんご|ドライフルーツ|モルティ|スパイシー|芳醇な樽香|シナモン

  • 余韻

温かみがあり,長く続くラグジュアリーな余韻


グレンフィディック21年
グランレゼルヴァ

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ポイント

グレンフィディック21年』はヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオーク樽で21年以上熟成された原酒をブレンドし,最後に4ヶ月間にわたってカリビアンラム樽にて後熟させた原酒によって構成されています。

 長期にわたる熟成により,シェリー樽・アメリカンオーク樽・ラム樽から様々な個性を獲得したウイスキーは,多彩かつ複雑に入り組んだ立体的なテイストを持っているのが特徴。ゆっくりと時間をかけて飲むことで様々な表情を見ることのできる大人びたウイスキーです,

Tasting Note

  • 香り

はちみつ|フローラル|ラムレーズン|トロピカルフルーツ|バニラ|クリーム

  • 味わい

砂糖漬けドライフルーツ|トロピカル|はちみつ|バニラ|ジンジャースパイス|ウッディなビター感

  • 余韻

スイート&ビターのバランスが整った円熟感のある複雑な余韻


グレンフィディック
IPAエクスペリメント

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ポイント

グレンフィディックIPAエクスペリメント』は,スペイサイド地方のクラフトビールメーカー”スペイサイドクラフトブリュワリー”とのコラボレーションボトルになります。
 その最も特徴的な点は,原酒の後熟に際して,12週間に渡ってインディアペールエールを寝かせたビール樽の1種を使用している点にあり,IPA由来のホップ感やビターさが活かされている画期的なテイストが完成しています。


グレンフィディック
プロジェクトXX

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グレンフィディック
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ポイント

グレンフィディック・プロジェクトXX』は,世界中に名を馳せる20名のモルトマスターが一堂に会し,蒸留所の熟成庫の中から最高の原酒を選りすぐることで仕上げられたという実験的なボトルになります。

 樽の内訳はバーボン樽17個,シェリー樽2個,ポート樽1個で,ブレンドを担当したのはグレンフィディックのモルトマスター”ブライアン・キンスマン氏”とのこと。愛好家の嗜好によって形成された圧巻の迫力は必見です。

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参考資料

参考サイト:グレンフィディック公式 | whisky.com | scotchwhisky.com | whiskipedia.com | whiskys.co.uk | scotchwhisky.net