【特集】グレンバーギ蒸留所(Glenburgie)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「グレンバーギ蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

バランタインの中核/グレンクレイグ/2004年に建替え工事済

グレンバーギの特徴

ノンピート/華やかなスペイサイドスタイル/りんご系フルーティ/トフィーの甘さ

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初谷(はつがい)

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グレンバーギ蒸留所

グレンバーギ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1810年
所有会社ペルノリカール社
地域分類スコットランド,エルギン地区
発酵槽ステンレス製12基
ポットスチル初留3基・再留3基
仕込み水バーギーヒルの泉
ブレンド先バランタインなど

「グレンバーギ蒸留所」蒸留所の立地

出典:google map

ポイント

グレンバーギ蒸留所はスペイサイドのエルギン地区に位置しています。より具体的にはフォレスとエルギンの中間地点付近,両者を結ぶ幹線道路のA96号線から建物を見ることができる好立地に建てられています。

兼ねてよりグレンバーギはこの土地で操業していますが,2004年に建て替えが行われており,ポットスチル以外の生産設備が全て新設されているため,昔のものと完全に同じ蒸留所として扱って良いのかは疑問が残ります。

グレンバーギ(Glenburgie)はゲール語に語源があるとされており,ゲール語のグレン(Gleann)が「」を,バーギは地名にあたります。一説に地名のバーギはノース語のBorgという単語に由来があるらしく,この単語は「砦がある」という意味を示します。

よってグレンバーギは「砦がある谷」という意味を持っていると考えられ,砦というかは微妙なところですが,実際に蒸留所の近傍には16世紀に建てられたバーギー城が所在しています。

「グレンバーギ蒸留所」蒸留所の歴史

グレンバーギ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1810年ウィリアム・ポール氏により前身のキルンフラット蒸留所が設立される(当時は密造)
1829年キルンフラット蒸留所が政府公認となる
1870年蒸留所が閉鎖される
1878年蒸留所がチャールズ・ケイ氏に引き継がれる
生産設備を一新し,グレンバーギ蒸留所として再稼働される
1880年蒸留所がフレイザー&グラント社に買収される
1882年所有者がアレクサンダー・フレイザー&Co社となる
1925年アレクサンダー・フレイザー社が倒産し,蒸留所はドナルド・マスタード氏に引き継がれる
1927年蒸留所が閉鎖される
1930年蒸留所がハイラムウォーカー社に買収される
運営は傘下のJ&Gストダート社に一任される
1936年ストダート社がハイラムウォーカー社に完全に買収される
グレンバーギは100%ハイラムウォーカー社の所有・直営となった
1958年新たなシングルモルト「グレンクレイグ」用のローモンドスチルが2基導入される
自社でのフロアモルティングが廃止される
1981年ローモンドスチルが撤去され,従来のポットスチルに変更される
これにより「グレンクレイグ」は幻となった
1987年ハイラムウォーカー社がアライド・ライオンズ社に買収される
1994年アライド・ライオンズ社が他社を吸収し,アライド・ドメク社が形成される
2004年蒸留所の老朽化した建物が建て替えられ,ポットスチルが2基増設されて計6基体制となった
2005年蒸留所がペルノリカール社傘下のシーバス・ブラザーズ社に買収される
2017年バランタインブランドからシングルモルトのグレンバーギ15年がリリースされる
2020年バランタインブランドからグレンバーギ18年がリリースされる

グレンバーギに纏わるストーリー

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「グレンバーギ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    425万L
  • 仕込み水
    バーギーヒルの泉
  • モルトスター
    シンプソンズ,ベアーズ
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製フルロイター
  • マッシュタン容量
    1バッチ7.5トン
  • ウォッシュバック
    ステンレス製12基
  • 酵母
    ケリー社製,リキッド状
  • ウォッシュバック容量
    34,500L
  • 発酵時間
    52時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱,エクスターナルヒーティング付き
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型3基
  • ウォッシュスチル容量
    11,500L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型3基
  • スピリッツスチル容量
    13,500リットル
  • コンデンサー
    シェル&チューブ方式
  • 本留の度数
    69%
  • ウェアハウス
    敷地内に8棟
    (ダンネージ4,ラック2,パラタイズ2)

グレンバーギの製法概要

グレンバーギ蒸留所の製造工程は,2004年の改築以降全面的にコンピューター管理とされており,発酵槽やポットスチルの状態までもがモニターで確認することができます。

また年間生産能力が425万リットルというのは,スペイサイドの中でも中規模以上の大きさとなっていますが,世界第2位の売り上げを誇るバランタインの最も主要なモルトとされているため,ほぼ全てがバランタイン用の原酒とされています。

製麦について

出典:google map

ポイント

グレンバーギ蒸留所では1958年までフロアモルティングによる自社製麦が行われていましたが,現在は製麦をシンプソンズ社及びベアーズ社を中心とした外部の専門業社(モルトスター)に委託し,そこから原料のモルトを購入しています。

ピーテッドレベルは全てノンピートとされており,バランタインのキーモルトとしてフルーティかつ甘く,リッチでバランス感の整ったスペイサイドモルトらしいテイストが表現されています。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

ポイント

グレンバーギ蒸留所では仕込み水として地元のバーギーヒルの泉の水を使用しています。マッシュタンは1バッチあたり7.5トンのグリスト容量を誇るステンレス製のフルロイタータンになります。

ここが特徴!

  • 初回のお湯の温度は63.5℃,2回目は95℃,3,4回目は100℃(沸点)とされている
  • グリスト内の糖類を最大限に回収するためにお湯の回数が4回とされている

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:google map

ポイント

グレンバーギ蒸留所には容量34,500Lでステンレス製のウォッシュバックが12基設置されています。使用される酵母はケリー社製でリキッドタイプのディスティラーズ酵母です。ちなみにウォッシュバックは2004年の蒸留所建て替えの際に全て交換されています。

ここが特徴!

  • 発酵時間が52時間という概ね一般的な長さに設定されている

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

ポイント

グレンバーギ蒸留所には容量11,500リットルのウォッシュスチルが3基,容量13,500リットルのスピリッツスチルが3基設置されています。形状はどれも大きめのストレート型であり,ラインアームは概ね水平程度のため,還流が比較的少なくなります。

加熱方式については蒸気による間接方式ですが,エクスターナルヒーティングシステム(外部加熱装置)が導入されており,ウォッシュがスチルの投入される前に予熱が行われています。コンデンサーはシェル&チューブ方式です。

過去には「グレンクレイグ」というもう1種類のシングルモルトを生産するために,特殊な蒸留器であるローモンドスチルが使用されていた時期がありましたが,1981年を最後に撤去されてしまいました。

また2004年の建て替え以前より使用されていた4基のポットスチルは,そのまま続投されており,工事に際して新たに2基のポットスチルが増設されて計6基体制となっています。

ここが特徴!

  • エクスターナルヒーティングにより,蒸留効率とエネルギー効率が大きく改善されている
  • スチルサイズが大きさにより,蒸気と銅の接触面積が増大し,不快な香気の除去が進みやすい
  • スチル形状に由来する還流が少なく,重く複雑なテイストが得られる

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:google map

ポイント

グレンバーギ蒸留所には合計8棟のウェアハウスが建てられており,その内訳は伝統的なダンネージ式が4棟,近代的なラック式が2棟,縦置きのパラタイズ式が2棟となっています。

蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

グレンバーギ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

※グレンバーギのシングルモルトはバランタインブランドからのリリースがあります。

グレンバーギ15年

ポイント

グレンバーギ15年」はバランタインブランドから,その中核を担うキーモルトに着目したシリーズとしてリリースされた15年熟成のグレンバーギのシングルモルトになります。

バランタインのキーモルトの中でも最も主要なモルトがこのグレンバーギであり,フルーティかつスイート,華やかさを特徴としたスペイサイドモルトらしい魅力を有しています。

残るキーモルトであるグレントファースミルトンダフ(スキャパは除く)も同じシリーズとしてリリースされているため,バランタインファンの方はキーモルトの中にテイストのルーツを探ってみるのも一興でしょう。

香り

華やかフルーティ/りんご感/フレッシュなシトラス/モルティ/トフィー/自然のフローラル感

味わい

香水系のフローラル感/シトラス系柑橘感/柔らかなモルティ/ナッツ感/はちみつ/ウッディ

余韻

フルーツの甘みと木のビター感が織りなす端正なバランス感/長く滑らかな余韻

【参考】
\\公式テイスティングノート//

香り
洋梨や赤りんご
味わい
甘くフルーティ,はちみつ
余韻
滑らかでとても長い

バランタイン公式

グレンバーギ18年

ポイント

グレンバーギ18年」はバランタインのキーモルトシリーズのうち,2020年に新たに追加されたグレンバーギ15年の上位に相当するボトルになります。

15年の時点で端正かつスペイサイドモルトらしい華やかなテイストが表現されていましたが,より長期の熟成によって滑らかな飲みやすさがさらに発展しています。

【参考】
\\公式テイスティングノート//

香り
熟したりんごやカシス
味わい
フルーティでリッチ,はちみつ
余韻
クリーミーで心地よく伸びる

バランタイン公式

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参考資料

参考サイト:バランタイン公式 / whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-masness.com / scotchwhisky.net / distilando.com / danish whisky blog