記事の概要
みなさん日常的に飲むウイスキーには,いったい何を求めているのでしょうか?
私個人としては,「日常的」という観点からは,”比較的安価・いつでもどこでも買える・気軽に飲めるライトな風味”といった要素を求めてしまいます。このように考えた時,真っ先に頭に浮かんでくるジャンルは,多々あるブランドのベーシックなブレンデッドウイスキーで間違いないでしょう。
それらは複数の原酒を使用して作られることから量産が効き,価格は安価。そして味わいではバランスを整えることができ,軽やかながら飲み方によって様々な側面を見せてくれるからです。特にハイボールをよく飲まれる方にとっては,このようなウイスキーの若さをパンチとして味方につけることができるため,最適と言えます。
この記事ではそんな激安でちょいウマな庶民の味方とも言える,ベーシックなブレンデッドウイスキーを10本ご紹介していきます。
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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最もベーシックな
ブレンデッドウイスキー10選
サントリーウイスキー角瓶
(SUNTORY WHISKY)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | 山崎・白州 バーボン樽原酒 |
ポイント
『角瓶』はサントリー社が所有する白州と山崎のバーボン樽原酒をキーモルトとし,甘く華やかな味わいに仕立てられたブレンデッドウイスキーになります。繊細な味わいを好む日本人の嗜好に合わせ,クセを呈するピート感は控えめとされ,キャラメルのようなほのかな甘みを持っているのが特徴です。
非常にライトで飲みやすい構成となっていますが,決して本場スコットランドのウイスキーに負けない強い意志が込められたボトルであり,特に個性的な亀甲状のボトルデザインは薩摩切子をモチーフにした唯一のものとして,差別化が図られていたりします。
そして角瓶の最大の魅力は,なんと言ってもハイボールが美味し過ぎるところにあり,軽快かつ華やかな香りを持ちながら,ドライで後腐れのない喉越しの良さは,他の追随を許さないほどの爽快感を誇ります。食事との相性にも優れた,日本人に最適な大衆派ブレンデッドウイスキーです!
香り
バニラ|軽快な穀物感|カカオ豆|乾いた木|ほのかな柑橘の酸味|蜂蜜
味わい
軽快なグレーン感|バニラキャラメル|柑橘の皮の苦味|薄いウッディ感
▽
ブラックニッカ・スペシャル
(BLACK NIKKA Special)
度数 | 42% |
容量 | 720ml |
キーモルト | 宮城峡・余市・海外原酒 (宮城峡カフェグレーンが主体) |
ポイント
『ブラックニッカ』は,アサヒビール社の傘下のニッカウイスキー社が手がける,大衆派ブレンデッドウイスキーのブランドになります。この『ブラックニッカ・スペシャル』においてキーとなるモルト原酒は,同社所有の余市,宮城峡,そして一部は輸入原酒と公表されていますが,最も特徴的なのはグレーン原酒に宮城峡蒸留所で生産されたカフェグレーンという,特殊なタイプのウイスキーを使用しているところにあります。
今日のグレーン原酒の製造は,4塔式の連続式蒸留器を用いて行われるのが主流となっていますが,宮城峡に設置されているのは2塔式のカフェスチルというもので,簡単に言えば旧型の連続式蒸留器になります。このようなスチルでは,最新型よりも蒸留効率が劣るものの,通常のグレーン原酒よりも原料由来の豊かな香味が残りやすくなるという魅力があり,ブラックニッカスペシャルにはこの特徴が強く活かされています。
よって味わいにおいては,モルト由来の力強い風味はかなり控えめとなっていますが,カフェグレーンらしいマットな穀物の甘みやチョコレートの甘み,軽快なフルーティ感などがかなり強く表現されており,非常に飲みやすい構成となっています。
香り
カフェグレーンのトロピカル感|蜂蜜|穀物の甘み|レーズン|薄くウッディビター
味わい
グレーンの甘み|軽やかな柑橘感|蜂蜜|レーズン|薄い木香|弱いスモーキー感|チョコ
▽
ジョニーウォーカー・レッドラベル
(Johnnie Walker RED LABEL)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | カーデュ,タリスカー,カリラ |
ポイント
『ジョニーウォーカー』は,業界最大手のディアジオ社が手がける,非常に著名なブレンデッドウイスキーのブランドであり多くの世界的なコンペティションでも受賞を重ねているトップ・オブ・ザ・トップの存在になります。そしてこのレッドラベルは,数ある同ブランドのボトルの中でも一番スタンダードなボトルであり,最も多くの販売量を記録しているベーシックなウイスキーです。
その味わいの決め手となるキーモルトには,スペイサイドのカーデュ,スカイ島のタリスカー,そしてアイラ島のカリラとされており,ライトでフルーティなボディを持つスコットランド西海岸のモルトと,スモーキーで力強いノートを持つ西海岸側のモルトが上手く掛け合わされ,深く香り高い味わいが構築されています。
同価格帯の他のブレンデッドウイスキーと比較すると,りんごや木の苦味,仄かなピート香など,トラディショナルなスコッチウイスキーのイメージに程近いスモーキー&フルーティな風味が完成されており,ベーシックな存在でありながら,かなり本格的な要素を持ち合わせているのが最大の魅力です。是非とも家に一本は置いておきたい,コスパ最強のウイスキーです。
香り
りんごと梨|シナモン&ペッパー|穀物|ウッドスモーク|バニラ|若干のヨード
味わい
赤りんご|微かにピートスモーク|ビターな木|シナモンスパイス|バニラ|弱ヨード感
▽
ホワイトホース・ファインオールド
(WHITE HORSE Fine-Old)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | ラガヴーリン クライゲラキ,グレンエルギン,オルトモア |
ポイント
『ホワイトホース』は英国のディアジオ社が製造,日本のキリン社が国内の輸入販売を手掛けているブレンデッドウイスキーのブランドであり,日本国内においては同種のウイスキーの中でNo.1の売り上げを誇っていることが知られています。
ブランドの歴史は1800年代後期にまで遡り,当時ラガヴーリン蒸留所の運営に携わっていた,ピーターマッキー氏によって創設されたことがわかっています。このピーター氏は,日夜休むことなく狂気的に働き続ける様から,誇大妄想狂とも呼ばれていましたが,彼の功績は非常に大きく,1900年代前期には,ホワイトホースは他の著名なブランドと並んで,BIGファイブに数えられる崇高なブランドへと発展しました。
キーモルトはやはりラガヴーリンが筆頭ですが,その他にもクライゲラキやグレンエルギン,オルトモアなど,合計で35種類以上にも及ぶ多様な原酒が使用されており,スモーキーながらもマイルドな,いかにもハイボールにピッタリなテイストが完成されています。
ジョニーウォーカーに勝るとも劣らずな本格派の風味があり,前述の通り,局所的に日本国内を見れば,トップセールスのブランドとなりますので,是非とも安心して購入を検討してみてください。
香り
花畑と蜂蜜|カラメルの甘み|オーク|トフィー|弱ピートスモーク|潮モルト
味わい
穀物感が強い|ピート|ヨード系の潮風|蜂蜜|トフィー|弱くりんご|おがくず
▽
バランタイン・ファイネスト
(Ballantine's Finest)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | グレンバーギ,グレントファース ミルトンダフ,スキャパ |
ポイント
『バランタイン』は,業界の大手企業であるペルノリカール社が生産を手がける,甘くフルーティな風味に特化したブレンデッドウイスキーのブランドであり,スコッチブレンデッドの括りでは,ほぼほぼ売上ランキング世界TOP3に食い込んでくる超有名な存在になります。そしてこの『バランタイン・ファイネスト』は,ブランドの歴史を見ると,1910年に初めて作られたラインナップであり,現時点で120年以上にわたって人気を拡大し続けていることから,非常に評価の高いボトルであることがわかります。
またファイネストを含め,12年までのラインナップに採用されているV字のラベルは,シェブロンシェイプラベルと呼ばれており,これは紋章学において「保護」や「信頼できる建築家」という意味を持っているようです。
バランタインのキーモルトについては,スペイサイドのグレンバーギ,ミルトンダフ,グレントファース,そしてオークニー諸島のスキャパの4種類が中核とされており,その他にも合計40種類以上の原酒によって構成されています。
その味わいでは,バニラやはちみつのような華やかな甘さを中心に据えつつ,柑橘フルーツやほのかな樽の香り,そして余韻にかけて感じられる軽やかでビターなピート香がバランスよく感じられ,初心者から達人まで幅広い人を楽しませてくれる魅力があります。
香り
甘いバニラ|蜂蜜|華やかなフローラル|甘いウッディ感|弱くピートスモーク
味わい
バニラ|芳醇な樽香|蜂蜜|優しい柑橘|キャラメル|薄くビターなピートスモーク
▽
ティーチャーズ・ハイランドクリーム
(Teacher's Highland Cream)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | アードモア |
ポイント
『ティーチャーズ』は,日本のサントリー社が製造・販売を手がけるブレンデッドウイスキーのブランドになります。特にこの『ハイランドクリーム』においては,2020年頃には俳優の大泉洋さんをキャストに据えたCMがテレビで放映されていたこともあり,国内での認知度が非常に高いブランドになります。
またその歴史を見れば,ハイランドクリームの発売は1860年と実に150年以上も昔のことであり,その後は世界中に認知度を広めつつ,ブレンド用の原酒を作る工場としてアードモア蒸留所を設立するなど,売れっ子ブランドとして活躍してきたことがよくわかります。
そのキーモルトについては,現在ティーチャーズのブランド共々サントリー社の傘下となっている,ハイランド地方のアードモア蒸留所のモルト原酒が使用されています。このアードモアのウイスキーは,内陸産のピートを活用したライトリーピーテッドスタイルとされており,ハイランドクリームにおいても,この内陸ピートに由来するドライかつクリーミー,そしてヨード感のない,香ばしいスモーキーテイストを優しく感じることができます。
香り
内陸スモーキー|濃いりんご|モルティ|薄く柑橘|若干の焚き火感|ウッディビター
味わい
内陸のドライなピートスモーク|りんごと洋梨|焚き火|滑らかバニラ|モルティな甘み
▽
グランツ・トリプルウッド
(Grant's Triple Wood)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | グレンフィディック,バルヴェニー キニンヴィ,アイルサベイ |
ポイント
『グランツ』は,グレンフィディックなどで有名となっているトラディショナルなスコットランドの企業,ウィリアム・グラント&サンズ社が生産を手がけるブレンデッドウイスキーのブランドになります。国内での認知度はやや控えめな印象がありますが,世界的に見れば,ジョニーウォーカーやバランタインに並び,売上ランキングでTOP5には食い込んでくる,非常に有名なブランドになります。
また,三角形のボトル形状からも連想できますが,キーモルトはグランツブランドと所有者を同じとするグレンフィディック,バルヴェニー,キニンヴィ,アイルサベイとされており,熟成をヴァージンオーク樽,アメリカンオーク樽,リフィルバーボン樽の3種類で行った原酒がブレンドされているとのことです。
その味わいでは,バニラや梨のような華やかでフルーティな香味や,花畑のようなフローラルなノート,そしてさりげないウッドスモークの要素が感じられ,非常に飲みやすいが故に気軽に飲めるウイスキーとして家に1本は置いておきたくなってしまうような魅力があります。
香り
バニラ|洋梨|花畑フローラル|柑橘|ウッドスモーク|乾いた穀物|木の苦味
味わい
りんごとみかん|フローラルな蜂蜜|苦味のあるウッドスモーク|穀物感
▽
デュワーズ・ホワイトラベル
(Dewar's White Label)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | アバフェルディ,クライゲラキ,オルトモア ロイヤルブラックラ,マクダフ |
ポイント
『デュワーズ』は,バカルディ社が手がけるブレンデッドウイスキーのブランドであり,特にアメリカにおいてはスコッチウイスキーの代名詞とも呼ばれるほどに,広く深く浸透しているブランドになります。ブランドの創設は150年以上も昔の1860年頃のことであり,1886年のエジンバラ博覧会でメダルを獲得したことを皮切りとし,1893年にはヴィクトリア女王より英国王室御用達を獲得。そして現在までには1,000を超える受賞歴を重ねてきた一流の経歴を持ちます。
ちなみに最もベーシックな『ホワイトラベル』は,1899年から販売されているブランドの代表作で,キーモルトはアバフェルディ,クライゲラキ,オルトモア,ロイヤルブラックラ,マクダフの5種類とされています。またデュワーズの最も興味深いポイントは,独自のダブルエイジ製法を適用している点にあり,熟成させた原酒を一度ブレンドしたのち,再び樽に詰めて熟成させる,という手間のかかる工程を設けています。
よって味わいは非常にまとまりが良いものとなっておりほのかなヘザーのフローラル感や,バニラ,柑橘,僅かなピートスモークなど,かなり華やかさに寄った要素を魅力としています。
香り
ヘザー系フローラル|バニラ|洋梨|柑橘フルーティ|モルティ|弱くピート
味わい
ヘザー系のピート|フローラルな蜂蜜|バニラの甘み|柑橘感|弱くりんご感
▽
カティサーク・オリジナル
(CUTTY SARK ORIGINAL)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | マッカラン,グレンロセス ハイランドパーク |
ポイント
『カティサーク』は,フランスのラ・マルティニケーズ社が生産を手がけるブレンデッドウイスキーのブランドであり,日本国内での販売は2023年4月から,アサヒビール社が受け持っています。同ブランドは,イギリスの高速帆船「カティサーク号」を名称の由来として,1923年から販売が開始されており,実はこの動画を投稿した2023年に,創設100周年を迎えたブランドでもあります。
キーモルトは,スペイサイド地方のグレンロセスとマッカラン,そしてオークニー諸島のハイランドパークの3種類と,どれも広く名の知れた蒸留所の原酒が使用されています。そしてこの『カティサーク・オリジナル』では,ウイスキーに着色が施されておらず,非常に淡い色味と,突き抜けるように爽快な柑橘感を中心とした,ライトでナチュラルなテイストを特徴としており,ロックやハイボールなど,どんな飲み方でも魅力を見せてくれるニュートラルな存在です。
スコッチウイスキーの飲み慣れていない人でも,気軽に飲めるであろうという非常に親しみやすい銘柄です!
香り
超フレッシュな柑橘感|ハーブ|レモン|ミルクチョコレート|洋梨|はちみつ
味わい
フレッシュ柑橘|爽快なハーブ|蜂蜜|バニラ|ミルクチョコ|香ばしいオーク
▽
ベル・オリジナル
(BELL's ORIGINAL)
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
キーモルト | ブレアアソール,ダフタウン インチガワー,ブラドノック |
ポイント
『ベル』は,ディアジオ社が生産を手がけるブレンデッドウイスキーのブランドであり,特にウイスキーの本場であるイギリスでは売上TOPの座を譲らない超人気なブランドとなっています。初めてベルの名称が採用されたのは1904年のことで,販売数の増加とともにキーモルトを作る蒸留所を買収し120を超える世界中の国にシェアを拡大していったことから,1983年に英国女王陛下特別輸出奨励賞を受賞するに至った,由緒正しきブランドでもあります。
そしてそのキーモルトはブレアアソール,ダフタウン,インチガワー,ブラドノックなどを筆頭としており,若干マイナーながらもキャラ立ちのいい蒸留所の原酒が採用されています。
その味わいは本場で人気のあるウイスキーだけに,ストレートでも飲めてしまうほどに優しく,りんごやレーズン,シナモンスパイスなど,非常にフルーティなノートが多く感じられます。無論ハイボールも最高に美味しいので,是非とも一度試してみてください!
香り
グレープフルーツ|ナッティ|青リンゴ|穀物の甘み|蜂蜜|レーズン|シナモン
味わい
グレープフルーツ|カラメル|軽くスモーキー|水飴の甘み|レーズン|木
最後までお読み頂きありがとうございました!
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