【特集】バルブレア蒸留所(balblair)を徹底解説!|蒸留所解説|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「バルブレア蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

天使の分け前/8人チームによる少量生産

バルブレアの特徴

バーボン樽主体/バニラ/柑橘/エレガント/親しみやすさ

バルブレア蒸留所

バルブレア蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1790年
所有会社タイ・ビバレッジ社
地域分類スコットランド 北ハイランド
発酵槽オレゴンパイン製6基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水オルト・ドレッグ川
ブレンド先インバーハウスなど

「バルブレア蒸留所」蒸留所の立地

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所はスコットランドの北ハイランドに位置しています。より具体的にはドーノック湾に程近いロスシャー州のエダートン村のはずれ,「ピート教区」とも呼ばれる民家の配置も疎である土地で操業しています。

蒸留所の創業年は1790年とされていますが,実は当初の蒸留所は現在の場所から5キロほど離れた場所に建てられており,現在の蒸留所は1894年にチャールズ・ドイグ氏の設計の元で新設されたものになります。

しかし仕込み水の水源については当初の水質が理想的であったため,蒸留所付近のものではなく,創業時から使用されていたオルト・ドレッグ川の水を現在も採用しています。

ちなみにバルブレア(Balblair)という名称はゲール語に意味を有しており,Bal(Baile)が村や町などの集落や農場を指し,blair(bhlair)は平野や戦場の意味を持っているとされています。

「バルブレア蒸留所」蒸留所の歴史

バルブレア蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1790年ジョン・ロス氏によってバルブレア蒸留所が創業される
以降約100年間はロス家による家族経営が続く
1894年蒸留所がジェームズ・ロス氏からアレクサンダー・コーワン氏へと売却される
アレクサンダー氏の元で当初の800mほど北に新たなスチルハウス・マッシュハウス・キルンなどが建設される
1911年蒸留所が閉鎖される(1949年まで)
1932年蒸留所のウェアハウスから残存する最後の原酒が取り出される
1939年蒸留所建屋が第二次世界大戦の軍用地に活用される
1948年蒸留所が弁護士兼プルトニーの所有者であるロバート・ジェームズ・カミング氏によって買収される
1949年蒸留所が生産を再開する
1964年ウェアハウスが増設される
1970年蒸留所がハイラムウォーカーへと売却される
1988年会社合併によって所有者がアライド・ライオンズ社となる
1994年会社合併によって所有者がアライド・ドメク社となる
1996年蒸留所がインバーハウス・ディスティラーズ社に買収される
2000年バルブレア33年のボトリングが始まる
2003年バルブレア33年がIWSCで金賞を受賞する
2004年バルブレア38年がリリースされる
2007年1979,1989,1997の3種類のビンテージがリリースされる
2006年会社買収によって親会社がタイ・ビバレッジ社となる
2011年ビジターセンターが開設される
2013年映画「天使の分け前」のロケ地となる

バルブレアに纏わるストーリー

「バルブレア蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    180万L
  • 仕込み水
    オルト・ドレッグ川
  • モルトスター
    クリスプ・モルト社
    ベアーズ・モルト社
    ボート・モルト社
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製セミロイター
  • マッシュタン容量
    1バッチ4.4トン
  • ウォッシュバック
    オレゴンパイン製6基
  • 酵母
    マウリ社製
    リキッドイースト
  • ウォッシュバック容量
    21,500L
  • 発酵時間
    60時間
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型1基
  • ウォッシュスチル容量
    19,000L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型1基
  • スピリッツスチル容量
    11,500L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • 本留の度数
    68%
  • ウェアハウス形式
    ダンネージ式8棟

製麦について

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所では自社製麦は行われておらず,現在は専門業者(モルトスター)であるクリスプ社,ベアーズ社,ブート社などから原料のモルトを購入しています。

ピーテッドレベルはほぼ全てノンピートタイプとされており,クセの少ないピュアな北ハイランドモルトらしさが表現されていることが分かります。

原料のモルトの粉砕は,導入時こそ中古でありながら長年にわたって使用されているポルテウス社製のローラーミルにて行い,グリストを得ています。

次の工程は糖化になります!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所では仕込み水にオルト・ドレッグ川の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり4.4トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。

製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。

各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。

バルブレアでは糖化にかける時間を長めに設けており,清澄度の高いウォートが得られていることから,最終的に完成するウイスキーはエステル感が強く,ライトで華やかな酒質となることが分かります。

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所には容量21,500リットルでオレゴンパイン製のウォッシュバックが計6基設置されています。使用される酵母はマウリ社製のリキッドイーストになります。

糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。

発酵にかける時間について,かつてはショートとロングの2通りが設定されていましたが,現在は全て比較的長めと言える60時間に統一されています。発酵終期には乳酸発酵が適度に生じ,フルーティなテイストを生じさせていることが分かります。

発酵が完了するとアルコール度数約7〜9%程度となったウォッシュを得ることができます。

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所には容量19,000リットルでストレート型のウォッシュスチルが1基,容量11,500リットルで同じくストレート型のスピリッツスチルが1基設置されています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式です。

形状はどれも背が低くずんぐりとした印象であり,ラインアームも概ね水平程度。蒸気の還流を生じさせる要因があまり無いことから,ヘビーな香味成分がニューポットにも残存することが分かります。

またスチルハウスには現在も3基のポットスチルが並んでいますが,最も古くて小さいスピリッツスチルは現在使用されておらず,初留1基・再留1基体制として生産が行われています。

−初留−

発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと投入され,初留が行われます。初留ではウォッシュに含まれるアルコールの全量が抽出され,アルコール度数が20%強程度となったローワインを得ることができます。

−再留・ミドルカット−

続いてローワインは,前回蒸留時にカットされた前留・後留と共にスピリッツスチルへと投入され,再留が行われます。

再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。

この作業はミドルカットと言い,後留のアルコール度数が1%となるまで継続されます。バルブレアにおいて最終的に得られる本留はアルコール度数が約68%程度となり,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーという容器に一時貯蔵されます。

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:whisky.com

ポイント

バルブレア蒸留所には伝統的なダンネージ式のウェアハウスが8棟建っており,1894年に建てられた建物と1964年の増設された建物が混在しています。

熟成に使用される樽についてはバーボンバレルおよび,バレルを解体して一回り大きく組み直したホグスヘッドが中心となっています。なお全体の5%程度には,バットかパンチョンサイズのシェリー樽が使用されています。

スコットランドの多くの蒸留所では樽詰めに際して,ニューポットに加水を行って63.5%程度のアルコール度数とすることが一般的ですが,バルブレアでは加水を行わず,蒸留直後の68%程度のまま樽詰めを行っています。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

バルブレア蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

バルブレア12年

ポイント

バルブレア12年は2019年に一新されたバルブレア蒸留所の公式リリースのうち,最もスタンダードであり,「エレガントかつ親しみやすい」テイストを持ったシングルモルトになります。

バーボン樽及びダブルファイヤード製法を適用したアメリカンオーク樽にて12年以上熟成された原酒のみで構成されており,バニラや柑橘系の強い甘さを感じることができます。

ノンチル・ノンカラー,そして46%という高めのアルコール度数でボトリングされていることから,バルブレアの持つ本来の美味しさを濃厚に味わうことができます。

香り

バニラ/クリーミー/青リンゴ/レモンピール/エレガント/華やか/ライト

味わい

はちみつ/バニラ/クリーミー/ウッディな樽香/スパイス香/ドライオレンジ/ナッティ


バルブレア15年

ポイント

バルブレア15年はアメリカンオークのバーボン樽で熟成を行ったのち,ファーストフィルのシェリー樽で後熟された原酒で構成されています。

後熟程度ですがファーストフィルのシェリー樽から付与されるテイストは色濃く表出し,本来のバニラや柑橘感に対して,チョコやトロピカルフルーツ感などの多彩な甘さが上乗せされています。

スタンダードな12年とは全く違った構成となっているため,「丸みのある滑らかさ」を有したバルブレアの新たな一面を感じることができるオフィシャルボトルです。


バルブレア18年

ポイント

バルブレア18年はアメリカンオークのバーボン樽でメインの熟成を行ったのち,ファーストフィルのシェリー樽で後熟された原酒で構成されています。その構成からオフィシャルの15年の正統進化にあたるボトルとも言えるでしょう。

バーボン樽由来のクリーミーな甘さ,そしてシェリー樽由来の華やかで多様なフルーティネスが融合したその様は,まさに「見事なバランス」を体現しています。


バルブレア25年

ポイント

バルブレア25年はアメリカンオークのバーボン樽でメインの熟成を終えたのち,スパニッシュオーク樽で再度熟成させた原酒で構成されています。

四半世紀にも及ぶ長い熟成期間により,数多のフルーツやナッツチョコのような甘さはもちろん,比類なき複雑な香味が錬成されています。

濃縮感がありつつも滑らかなそのテイストは,圧倒的なレベルアップを重ねながらも12年と同様のエレガントかつ親しみやすい」という表現が最もしっくりと来ます。

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参考資料

参考サイト:三陽物産株式会社 / バルブレア公式 / whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / scotchwhisky.net