【特集】スペイサイド蒸留所(Speyside)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は「スペイサイド蒸留所」になります!

Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

北ハイランド/25年かけて建設/台湾で人気/4人で生産

スペイサイドの特徴

ノンピート/バーボン樽/軽やか/華やか/フルーティ/甘い

(余談までに…)
YOUTUBEも始めました!ぜひ遊びにきてね!

スペイサイド蒸留所

スペイサイド蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1956年
(1990年生産開始)
所有会社ハーベイズ・オブ・エジンバラ社
地域分類スコットランド 北ハイランド
発酵槽ステンレス製4基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水トロミー川
ブレンド先スペイサイド,グレントロミー
ヨコヅナ,スコッチガードなど

「スペイサイド蒸留所」蒸留所の立地

出典:whisky.com

ポイント

スペイサイド蒸留所はスコットランドの北ハイランドに位置しています。より具体的にはスペイ川の最上流部にあるキンユーシーの街のやや東,スペイ川の支流にあたるトロミー川沿いに位置しています。

蒸留所の周辺は広い草原と木立に囲まれており,大自然に囲まれた山奥といった印象。また蒸留所名は「スペイサイド」ですが,地理区分的には北ハイランドでとなるため,混同しないように注意しましょう。

蒸留所の建物や生産設備の完成は1987年と比較的新しい蒸留所ですが,スペースの限られた土地で稼働していたため,ビジターセンターは近郊のキンユーシーの街中に作られています。設備も手狭となってきていることから,現在は第二蒸留棟の建設も計画されています。

ちなみに建物の建設はたった1人の地元の石工職人によって約25年かけて行われたものであり,スコットランドの伝統的な建築技法と材料を使って作られているその外観は,実際の創業年よりも深い歴史を感じさせる情緒溢れる風貌となっています。

「スペイサイド蒸留所」蒸留所の歴史

スペイサイド蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1956年ジョージ・クリスティー氏によって蒸留所の建設用地が購入される
1962年蒸留所の建設が開始される
1987年25年の歳月を経て蒸留所が完成する
1990年ウイスキーの生産が開始される
2000年蒸留所がクリスティ氏の子孫を含んだ民間の投資グループに買収される
2001年スペイサイド10年がリリースされる
2013年蒸留所がハーベイズ・オブ・エジンバラ社に買収される

スペイサイドに纏わるストーリー

「スペイサイド蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    60万L
  • 仕込み水
    トロミー川
  • モルトスター
    地元業社
  • ピーテッドレベル
    ノンピート
  • マッシュタン材質
    ステンレス製ロイタータン
  • マッシュタン容量
    1バッチ4.2トン
  • ウォッシュバック
    ステンレス製4基
  • ウォッシュバック容量
    23,000L
  • スチル加熱方式
    蒸気間接加熱
  • ポットスチル(初留)
    ストレート型1基
  • ウォッシュスチル容量
    11,000L
  • ポットスチル(再留)
    ストレート型1基
  • スピリッツスチル容量
    7,000L
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • ウェアハウス
    グラスゴーで熟成

運営体制について

スペイサイド蒸留所でのウイスキー造りにおいて,コンピューター制御はほとんど導入されておらず,その生産工程の全てが工場長のシャンド氏を含めた4人の職人のみで完結されています。

各種製造工程のみならず,設備の補修や草刈り,農場の運営までもを彼らで行なっており,年間で4,000以上の樽を貯蔵庫に送っているというから驚きです。ちなみに4人の職人のほかには,4匹の猫,4羽のアヒル,5羽の鶏が勤務をしているそうです…


製麦について

出典:google map

ポイント

スペイサイド蒸留所では自社製麦を行なっておらず,チャリオット種の大麦を元に,地元のモルトスターに製麦を委託しています。ピーテッドレベルはノンピートとされており,出来上がるウイスキーもクセのないソフトでクリーンなテイストとなります。

モルトの粉砕は青いローラー式のボビーミルで行い,グリストを得たのちに糖化の工程へと進みます!

↓工程の詳細な解説↓

糖化について

出典:google map

ポイント

スペイサイド蒸留所では仕込み水として,敷地のそばを流れるスペイ川支流のトロミー川の水を使用しています。トロミー川には200年前から残る古い水車小屋があり,これを動力とする石臼などは現役で使用することが可能です。

マッシュタンは1バッチあたり4.2トンのグリスト容量を誇るステンレス製のロイタータンが採用されています。このサイズ感は昨今のクラフト蒸留所と比較すると大きめですが,1900年代後半創業であることを加味するとかなりコンパクトです。

製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。

各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。

次の工程は発酵になります!

↓工程の詳細な解説↓

発酵について

出典:whisky.com

ポイント

スペイサイド蒸留所には容量23,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが4基設置されています。発酵に使用される酵母は一般的なディスティラーズ酵母です。

糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。

発酵にかける時間は詳細な記載がありませんが,軽やかなスタイルの原酒を得るために「長め」と表現されており,発酵が完了するとアルコール度数7〜9%程度のウォッシュを得ることができます。

次の工程は蒸留になります!

↓工程の詳細な解説↓

蒸留について

出典:google map

ポイント

スペイサイド蒸留所には容量11,000リットルでストレート型のウォッシュスチルが1基,容量7,000リットルで同じくストレート型のスピリッツスチルが1基設置されています。

形状については,どちらもスリムで長いネックを有しており,ラインアームについてウォッシュスチルはやや下向き,スピリッツスチルは概ね地面と水平となっています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。

−初留−

発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと投入され,初留が行われます。初留ではウォッシュに含まれるアルコールの全量が抽出され,アルコール度数が20%強程度となったローワインを得ることができます。

−再留・ミドルカット−

続いてローワインは,前回蒸留時にカットされた前留・後留と共にスピリッツスチルへと投入され,再留が行われます。

再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。

この作業はミドルカットと言い,通常は後留のアルコール度数が1%となるまで継続されます。最終的に得られる本留はアルコール度数70%程度となり,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーという容器に一時貯蔵されます。

ちなみにスペイサイド蒸留所での蒸留はゆっくりとしたスピードで行われており,最終的には軽やかかつクリーンな酒質が得られることが知られています。

次の工程は熟成になります!

↓工程の詳細な解説↓

熟成について

出典:whisky.com

ポイント

スペイサイド蒸留所では熟成を敷地内で行っておらず,ニューポットは加水によってアルコール度数を熟成に最も適した63.5%程度に調整したのちに樽詰めされ,グラスゴーへと運ばれてから熟成が行われます。使用される樽はバーボン樽を中心とし,多様な樽をフィニッシュに使用する場合があります。

↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧

スペイサイド蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

同蒸留所のウイスキーはかつて,ブレンデッドモルトタイプの「グレントロミー」とシングルモルトの「ドラムイッシュ」という名称で販売されていましたが,現在はスペイサイドの名をつけたシングルモルトが主流です。

またほとんどのボトルが,絶大な人気を受けている「台湾向け」であるため,日本で見かける機会にはあまり恵まれませんが,2019年よりガイアフロー社が輸入元となって一部商品の販売が開始されています。

スペイ テネ
カスクストレングス

ポイント

この「スペイ テネ」はスペイサイド蒸留所を所有するハーベイズ社が繋がりを持つ,ラテン語を愛するイギリスの詩人バイロン卿にちなんだ「ラテン・コレクション」のひとつ。

バーボン樽でメインの熟成を行ったのち,トゥニーポートワイン樽で半年間のフィニッシュをかけた原酒が使用されており,ジャムのような濃厚な果実の甘さが表現されています。

ちなみにテネ(TENNE)はラテン語で黄褐色を意味しています。

受賞歴:IWSC2017銅賞/WWA2018銅賞

香り

強いフルーツ香/フローラル/いちごジャム/オレンジマーマレード/適度なスパイス感

味わい

軽やか/優しいフルーティネス/ドライフルーツ/アーモンド系ナッティ/ドライフルーツ


スペイトゥルティーナ
カスクストレングス

ポイント

この「スペイ トゥルティーナ」もテネと同じ「ラテン・コレクション」のひとつであり,トゥルティーナはラテン語で「ありのまま」を意味しています。

ありのままの意味の通り,使用される原酒は最もスタンダードなバーボン樽のみで熟成された原酒のみであり,最も愚直にスペイサイド蒸留所のテイストを体現するボトルと称することができるでしょう。

受賞歴:IWSC2017銅賞/WWA2018銅賞

香り

フルーティ/華やか/軽やか/フローラル/フレッシュな柑橘感/バナナブレッド/ダークチョコ

味わい

ヌガー/バター/キャラメル/モルティ/多彩なフルーツ/オレンジチョコレート/ミルキー


ベイン・ドゥ The Black

ポイント

深くミステリアスなルビーブラックの色味を呈するブラックウイスキー。通常同じような色味のウイスキーは樽の内側を強く焦がした樽を使用することで生まれることが知られていますが,このボトルの製法は定かではありません

かつて世界一黒いウイスキーとして知られる「ロッホデュー」を手がけていた会社が,かつてスペイサイド蒸留所にも似たような性質も「クデュー」という銘柄を作らせていたことがあるらしく,ベイン・ドゥはその後継品のようです。

ベイン・ドゥというのはゲール語で「黒い山」を表し,これは蒸留所の建つケアンゴーム山脈の最高峰であり,スコットランドで2番目に高い「ベン・マクドゥイ」という山のことを指しています。

香り

フレッシュなフルーツ/ブラックレーズン/コーヒー系ビター/赤い果実感/スパイシー

味わい

フルーツバスケット/レーズン/ドライフルーツ/カカオの濃いダークチョコレート

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参考資料

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / スペイサイド公式 / malt-whisky-madness.com / ballantines.ne.jp