【特集】スキャパ蒸留所(scapa)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「スキャパ蒸留所」になります!

スキャパ蒸留所

スキャパ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1885年
所有会社ペルノ・リカール社
地域分類アイランズ
オークニー諸島
発酵槽ステンレス4基
コールテン鋼4基
ポットスチル初留1基・再留1基
仕込み水オークイル農場の湧き水
ブレンド先バランタインなど

「スキャパ蒸留所」蒸留所の立地

立地について

スキャパ蒸留所はオークニー諸島、メインランド島のスキャパ湾を望む高台に建てられています。

このスキャパ湾は第2次世界対戦の頃、チャーチルバリアーが張られるなど、戦略拠点として使用されていた場所だったとか。

蒸留所周辺では昔から密造が盛んであり、カークウォールの大聖堂では新任の牧師は大杯のウイスキーを飲まされていたなんて話もあります。

ちなみにスキャパはノース語で「ボート」を意味しています。


「スキャパ蒸留所」蒸留所の歴史

スキャパ蒸留所の歴史を年表形式でまとめます!

西暦年内容
1885年マクファーレン&タウンゼント社によってスキャパ蒸留所が設立される
1919年スキャパディスティラリー社が設立され,蒸留所の所有者となる
1934年スキャパディスティラリー社が倒産したことにより,生産も休止状態となる
1936年蒸留所をブロッホブラザース社が購入し,生産を再開する
1954年蒸留所がハイラムウォーカー社に買収される
1959年特殊な形状をした蒸留器であるローモンドスチルが導入される
1978年蒸留所の改装が行われる
1994年蒸留所の操業停止が決定される
以降ハイランドパークの職人が厚意にて不定期に生産を行う
2004年蒸留所の大規模な改修が決定・実行される
2005年蒸留所の所有権がペルノリカールに渡され,生産が完全位再開される
蒸留所の運営は同社のウイスキー部門にあたるシーバスブラザーズ社が執り行う。
2015年蒸留所にビジターセンターがオープンされる

「スキャパ蒸留所」製法の特徴

製麦

スキャパ蒸留所では1966年までスペイサイド産の大麦を使用し、フロアモルティングが行われていました。現在はメインランド島の製麦業者から原料となるコンチェルト種の大麦を購入しています。

スキャパではノンピートのモルトを使用しており,ピーテッドタイプを使用する他の多くのアイランズモルトとは差別化されていました。

モルトはポルテウス社の1950年製モルトミルで粉砕することでグリストとします。得られるグリストは粗さごとに種別分けされており、「ハスク:グリッツ:フラワー=30:60:10」となっています。

次の工程は糖化になります!

モルトミル 出典:Google map

糖化

スキャパ蒸留所では仕込み水として蒸留所の西に約2マイルのところにあるオークイル農場の湧き水を使用しています。この水は砂岩層を浸透してきた,ミネラルを多分に含んでいる硬水になります。

マッシュタンは1バッチあたり容量4トンのグリスト容量を誇る、ドーム型の銅製の蓋がついたステンレス製セミロイタータンを使用しています。

糖化は1バッチあたり2.9トンのグリストをマッシュタンに投入し、5時間かけて加熱した仕込み水を注ぐことで糖化が進められます。糖化が完了すると13500リットルのウォートが得られます。

次の工程は発酵になります。

マッシュタン 出典:Google map

発酵

スキャパ蒸留所のウォッシュバックは容量44000リットルであり,ステンレス製が4基、コールテン鋼製が4基あります。

糖化によって得られたウォートは冷却したのちにウォッシュバックに移され,ドライイースト(乾燥アンカーイースト)を投入して撹拌することで発酵が進められます。

発酵にかける時間はこれまで160時間と業界最長レベルでありましたが,現在は52時間に短縮されており,一般的な水準となっています。

発酵が完了すると,アルコール度数8%程度のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!

蒸留

スキャパ蒸留所には初留釜として容量13500リットルローモンドスチルを1基使用しており、5時間かけて初留が行われます。

ローモンドスチルは円筒状のネック内部を仕切板で区切り、各階層ごとにポットスチルによる蒸留と同様な原理が働くスチルになります。一般にはローモンドスチルの使用により,3回蒸留と似たクリーンな風味が錬成されると言われています。

スキャパのスチルはこの仕切板を外しているため、外観はローモンドスチルですが、本質的には形状の特殊なポットスチルを使用しているということになります。

再留釜は容量9000リットルのものが1基あり、約6時間半かけて再留を行います。蒸気は同じ部屋にあるシェル&チューブタイプのコンデンサー(冷却装置)へと導かれて液化されます。

こうしてできるスキャパのニューポットは新品の革やパイナップルの香りがしてライトであると評価されています。

ローモンドスチル 出典:Google map

熟成

スキャパ蒸留所では熟成に使用する樽の全てににファーストフィルのバーボン樽が使用されています。このファーストフィルというのは、これまでバーボンの熟成に使用していた樽を初めてスコッチの熟成に使用することを指します。

これによってセカンドフィル以降と比べて豊かなバニラ香を原酒に与えることができます。

熟成を行うウェアハウスは海の近くに建てられているため、熟成の過程で程よい塩気が養われているとされています。

こうして作られた原酒たちは多くがシングルモルトとして販売されますが、一部はバランタインの原酒として、7つの柱の役目を果たしています。

ウェアハウス内部 出典:google map

オフィシャルボトル一覧

スキャパ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

スキャパ スキレン

ポイント

スキャパの繊細かつフローラルな風味を体現したノンピートタイプの原酒で構成されたボトルになります。

私自身密かに愛しているボトルで、一口飲むだけで目の前に明るく華やかな空間が広がるような感覚がしたのを鮮明に覚えております。

ボトルデザインも非常にシンプルでありながら一際目を引くクールさが溢れています!個性的なアイランズモルトの中では非常に飲みやすいボトルなので,興味を持った時に買っておいて損はないですね!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:6,380円/楽天市場:6,039円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

パイナップル/洋梨/トロピカル/ヘザーハニー/バニラ/華やか

味わい

レモン系柑橘/バニラの甘さ/塩気/モルティー/メロン/ヘザーハニー

余韻

フレッシュで軽やかな甘さが長く続く

スキャパ グランサ

ポイント

グランサはファーストフィルのバーボン樽で熟成を行ったのち,スモーキーなウイスキーを熟成していた樽で後熟を行っています。

そのためノンピートタイプのモルトを使用していながら,優しく香ばしいスモーキーさを有するウイスキーが完成しました。

樽由来のスモーキーさはスキャパの甘さとの馴染みが非常に良く,最強のバランス感が錬成されています!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:8,168円/楽天市場:8,380円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

ピーチ/熟した果実/クリーミー/バニラの甘さ/優しいスモーキー/焚き火感

味わい

ピーチ/濃密なフルーティ/クリーミー/キャラメル/バニラ/香ばしいスモーキー

余韻

バランスの良い甘さと香ばしいスモーク感が非常に長く続く

関連ブレンデッドウイスキー紹介

スキャパ蒸留所は前述の通りバランタインのキーモルトを務めています。ここでは標準的なバランタインのボトルを紹介します!

バランタインについて

バランタインは「The Scotch」という異名がつけられており、まさしくスコットランドを代表するブレンデッドウイスキーになります!

スコッチ世界売上ランキング第2位という超主力銘柄であり、世界的なコンペティションでの受賞歴も持つ完成度の高いボトルです。

バランタイン ファイネスト

ポイント

ファイネストはクセのない非常にクリーンでフルーティな仕上がりとなっており、ウイスキーに興味があるならば嫌う人はいないと言っても過言ではないでしょう。

リーズナブルでありながら豊かなで多様な甘さを持つことから、スコッチの入門としても最適なボトルでしょう。

どこでも買えていつ飲んでも美味しい、非常に汎用性の高いボトルなのでとりあえずウイスキーが飲みたくなったらこれを選びましょう!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:1,936円/楽天市場:1,821円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

強力なバニラ/ハチミツ/オレンジ/華々しい/クリーミー/バランスが良い

味わい

強いバニラの甘さ/はちみつ/滑らかな口当たり/ビターチョコ/柑橘/木の甘さ/薄く柑橘類

余韻

複雑で多様な甘味があり、まろやかな余韻が続く

バランタイン 7年

ポイント

バランタイン7年はスコッチらしいリッチな熟成感や樽に由来する強くクリーミーなバニラ感が特徴的であり、バランス感の良い飲みやすさが最大の特徴です。

主観ですが同価格帯のボトルの中では圧倒的にうまいボトルだと感じています。どの飲み方でも美味しさが引き出される超絶万能な一本と言えるでしょう!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:2,153円/楽天市場:2,463円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

強いバニラ/はちみつ/柑橘系のフルーティ/馴染みの良いピート感/りんご

味わい

熟したりんご/洋梨/柑橘/クリーミーなバニラ/木の甘さ/暖かいピート感/とにかく優しい

余韻

芳醇で甘い余韻が非常に長く続く

バランタイン 12年

ポイント

酒齢12年以上となった40種類を超える原酒をバッティングして生み出されたボトルになります。

バランスの取れたエレガントな味わいは圧巻です。

スーパーでも普通に販売されているので,買いやすいのも大きな魅力の一つでしょうか!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:2,617円/楽天市場:2,569円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

はちみつ/バニラ/キャラメル/柑橘系フルーティ

味わい

複雑で華やかなフルーティ/バニラ/クリーミー/バランスが完璧

余韻

優しい潮感と甘さが長く続く

バランタイン 17年

ポイント

バランタイン17年は初めてブレンドされたのが1930年であり,それ以降揺るぎない地位と尊厳を守り続けてきたボトルになります。

17年の熟成によってスコッチの持つ全ての良さが凝縮されて綺麗にまとまり,まさしくこの1本で全てを感じられるといった素晴らしいボトルになります。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:6,998円/楽天市場:5,845円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

バニラの甘さ/豊かな樽香/はちみつ/バランス感の良いフルーティさ/優しいスモーキー

味わい

はちみつ/甘美なフルーティ/オークの甘さ/優しいピーティ/バニラ

余韻

香ばしいスモーキーさとバニラや柑橘などの華やかな余韻がとても長く続く

バランタイン 21年

ポイント

21年という非常に長い期間の熟成を経て,よりまろやかでエレガントな華やかさが強調されました。

スコッチの長い歴史が積み上げてきた美味しさの全てがここに感じられるボトルです。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:12,400円/楽天市場:12,698円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

濃密なりんご/花畑フローラル/はちみつ/バニラの甘さ/とろけるオーク香

味わい

洗練された甘さ/ドライフルーツ/りんご/柑橘/フローラル/オークの甘さ/スパイシー/ミディアムボディ

余韻

ドライシェリーのような甘美で芳醇な余韻が木の遠くなる程長く続く

バランタイン 30年

ポイント

30年という非常に長い年月を経て熟成された,まさに最高峰のバランタインになります。

30年の眠りの中でネガティブな要素は出てこず,より輝きを増し続けた原酒のみで構成されています。

文字通りスコッチ最高峰の味わいを是非堪能あれ。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:31,980円/楽天市場:33,980円(送料込み)

※2022年7月現在

香り

複雑で多様な甘い香り/まさにスコッチの歴史を感じる/これが全て

味わい

シェリーの甘さ/濃いバニラ/圧倒的な樽感/温かくエレガント/リッチ

余韻

永遠かのよう

参考資料

参考:スキャパ公式サイト / whisky.com / scotchwhisky.com