グレンモーレンジ蒸留所(Glenmorangie)|場所・歴史・製法・オフィシャルボトル|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「グレンモーレンジ蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

テインの16人の男たち/背の高い蒸留器/ルイヴィトン社の所有/樽のパイオニア

グレンモーレンジの特徴

柑橘とバニラ/マイルドでスイート/バランス良し/各種の樽にフィーチャーしたカスクフィニッシュシリーズ

グレンモーレンジ蒸留所

グレンモーレンジ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1843年
所有会社モエヘネシー・ルイヴィトン社
地域分類北ハイランド
発酵槽ステンレス製12基
ポットスチル初留6基・再留6基
(+新蒸留棟に1対)
仕込み水ターロギーの泉
ケルピーの泉
ブレンド先ハイランドクイーンなど

「グレンモーレンジ蒸留所」蒸留所の立地

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所はスコットランドの北ハイランドに位置しています。具体的にはロス州のテインの街のはずれ,ドーノック湾の南岸沿いに位置しています。

テインの街はスコットランドで最も古い街のひとつであり,1066年にロイヤルバラとして自治権が与えられていたことが記録上で確認されています。

またかつてこの地ではビール工場が運営されていましたが,1843年にバルブレア蒸留所の共同経営社であったウィリアム・マセソン氏が,このビール工場を改造してグレンモーレンジ蒸留所を創業しました

ちなみにグレンモーレンジという名称はゲール語に由来があるようで,「大いなる静寂の谷間」という意味を持っているとされています。

「グレンモーレンジ蒸留所」蒸留所の歴史

グレンモーレンジ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1843年ジョンとウィリアムのマセソン兄弟がテインにある醸造所を改造してグレンモーレンジ蒸留所を創業する
1847年ウイスキーの生産が始まる
1863年ジョンマセソン&Co社が創設される
1887年グレンモーレンジ・ディスティラリー社が創設される
1918年蒸留所の40%はマクドナルド&ミューア社に,60%はダーラム&Co社に買収される
1931年アメリカ禁酒法の影響が波及し,1936年までの間,蒸留所が事実上閉鎖状態となる
1941年戦争の影響によって1944年までの間,生産が停止される
1977年ポットスチルが2基増設されて計4基体制となる
自社でのフロアモルティングが廃止される
1990年スチルルームが新設され,ポットスチルも4基増設されて計8基体制となる
1994年ビジターセンターがオープンされる
1996年ポート・マデイラ・シェリーなどのカスクフィニッシュシリーズがリリースされる
マクドナルド&ミューア社が名称変更によってグレンモーレンジ社となる
1997年蒸留所内に博物館がオープンされる
2004年蒸留所がモエヘネシー・ルイヴィトン社へと売却される
2009年ポットスチルが4基増設されて計12基体制となる
2018年新しく実験的な生産を行う蒸留棟を建設する計画がビル・ラムズデン博士主導の元で始まる
2021年ライトハウスと呼ばれる新蒸留棟が完成する

テインの16人の男たち

グレンモーレンジは「テインの16人の男たち」というキャッチコピーの元で生産を行っていますが,これは実際に16人の男たちのみによって生産作業が行われている様を表しています。

100年以上前からこの陣営は敷かれており,昔と比べて10倍以上の生産量へと発展した現在でも,コンピューター管理を駆使して16人体制での生産が継続されています。

このキャッチコピーへのこだわりは,グレンモーレンジが経験と技術が卓越した少数精鋭の元で作られる,伝統的で品質の高いウイスキーであるということを確かに感じさせてくれますね。

ボトラーリリースが無い

グレンモーレンジの確立されたブランドの背景には,ボトラー企業に樽を販売することがないという事実があると言えるでしょう。要するに数あるボトラーズブランドからグレンモーレンジがリリースされることはないのです。

一応業界でよくある手法として「ティースプーンモルト」と言われる,とある樽に他の蒸留所のモルトをスプーン1杯分加えて,表向きにはブレンデッドモルトとして樽が外部に販売される場合はあるようです。

ライトハウス

グレンモーレンジの最高蒸留・製造責任者であるビル・ラムズデン博士主導のもとで,2018年より新たな蒸留棟の建設計画が進行していました。コンセプトは「ウイスキークリエイターの遊び場」とのことで,ポットスチルこそ従来の5.14mの高さを誇るスチルですが,実験的な装置や機能が装備されているとか。

そんなコンセプトの新蒸留棟ですが,2021年の9月についに完成しました。

その外観は高さ20mのガラス張りとなっており,船乗りの目印となる灯台に着想を得ており「未来にデリシャスなウイスキーを誕生させる道標となるように」という想いが込められているとのことです。

今後予想される実験的リリースの数々が楽しみでなりませんね!

ライトハウス
出典:グレンモーレンジ公式

「グレンモーレンジ蒸留所」製法の特徴

  • 年間生産量
    650万リットル
  • 仕込み水
    ターロギーの泉
  • モルティング
    外部委託
  • ピーテッドレベル
    ライトリーピーテッド(2ppm)
  • マッシュタン
    ステンレス製フルロイタータン
  • マッシュタン容量
    10.3トン
  • ウォッシュバック材質
    ステンレス製
  • ウォッシュバック容量
    48,500リットル
  • ウォッシュの度数
    約8%
  • 発酵時間
    52時間
  • ポットスチルの数
    初留6基・再留6基
    +ライトハウスに2基
  • ポットスチル形状
    バルジ型
  • スチル加熱方式
    電気・スチームコイル
  • コンデンサー
    シェル&チューブ
  • ローワインの度数
    約24%
  • ミドルカット内訳
    ヘッド:30min 72~80%
    ハーツ:3.5h 60~72%
    テール:2h ~60%
  • ニューポット度数
    69%
  • ウェアハウス
    ダンネージ式10棟・ラック式4棟
  • 樽詰め度数
    63.5%

製麦について

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所では1977年までは自社にてフロアモルティングを行なっていました。現在はインバネスのマレー湾の業者より原料のモルトを仕入れています。

ピーテッドレベルについてはごく僅かなピート処理に留まり,フェノール値がおよそ2ppm程度のライトリーピーテッドタイプになります。

また蒸留所の周囲にはカドボル・エステートと呼ばれる大麦畑があり,ここで収穫される大麦は「グレンモーレンジ・シグネット」に主に使用されています。余談ですがこのシグネットに使用されるモルトの一部は濃い茶色になるまでローストした「チョコレートモルト」という状態に仕立て上げられます。

ちなみにカドボルは古い言葉で「山猫の家」を示しており,蒸留所近辺の山地に山猫が生息していたことからこの名がつけられています。

原料のモルトはポーティアス社製のモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!


糖化について

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所では仕込み水としてターロギーの泉及びケルピーの泉の水を採用しています。この水はミネラルが多く含まれた硬水であり,硬水を仕込み水とする蒸留所はスコットランドではあまり多くありません。

マッシュタンは1バッチあたり10.3トンのグリスト容量を誇る最新鋭のステンレス製フルロイタータンとなっています。

製麦によって得られたグリストはマッシュタンへと移され,加熱した仕込み水を3回に分けて,温度(63.5℃→84℃→96℃)を上げながら注ぐことで糖化が進められます。この糖化手法はインフュージョン法と呼ばれています。

糖化が完了すると糖分を多く含み,透明感のあるウォートを約48,000リットル得ることが出来ます。

次の工程は発酵になります!


発酵について

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所には容量48,500リットルでステンレス製のウォッシュバックが12基設置されています。使用される酵母はマウリ社製のリキッドイーストになります。

糖化によって得られたウォートは酵母が活発に活動することができる18℃まで冷却されたのち,酵母(1基あたり250リットル)とともにウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。

発酵にかける時間は52時間とスコッチでは一般的な水準で設定されています。

発酵が完了するとアルコール度数約8%程度のウォッシュが完成します。

次の工程は蒸留になります!


蒸留について

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所には容量12,500リットルのウォッシュスチルが6基,容量8,000リットルのスピリットスチルが6基設置されています。また2021年に新たにオープンされたライトハウスと呼ばれる蒸留棟にも1対のスチルが増設されています。

ポットスチルはどれも背が非常に高く,5.14mにも及ぶその高さは業界最大級です。この5.14mはかつてスコットランド最大でしたが,2019年にエジンバラで新たに創業されたホールリード蒸留所が7mのスチルを導入したため抜かれてしまいました。

背の高いスチルではアルコール蒸気の多くが還流し,非常に軽やかで雑味の少ない成分のみしかラインアームへと流出しないことから,ウイスキーも雑味の少ないクリーンなテイストとなります。

スチルの形状はどれもバルジ型であり,加熱方式は電気加熱及び蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。

発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと移されて初留が行われます。この際に1基のウォッシュバックから得られたウォッシュは4等分されて4基の初留釜が満たされます。6基のウォッシュスチル全てを満たすにはウォッシュバック1.5基分のウォッシュが必要ということになります。

初留が完了するとアルコール度数約24%程度のローワインが完成します。

次いでローワインはスピリットスチルへと移されて再留が行われます。再留によって得られるアルコールはスピリッツセイフと呼ばれる箱を通り,その中で不安定な香味成分が含まれる蒸留初期・終期の精製物が除去されます。

この工程はミドルカットと呼ばれており,スチルマンという熟練の蒸留技士の厳格な管理のもとで行われます。

再留・ミドルカットを終えた時点でアルコール度数約69%のニューポットが完成します。

次の工程は熟成になります!


熟成について

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所には14棟のウェアハウスが建てられており,そのうち10棟が伝統的なダンネージ式,残り4棟が11段積みのラック式となっています。

使用される樽は非常に多様でありバーボン樽シェリー樽・ポート樽・マデイラ樽などの各種ワイン樽や,これまで熟成に使用されてこなかった珍しいオーク材で作られた樽などが使用されることもあります。

これらの樽はセカンドフィルまでの2回のみ使用されます。樽の鏡板が赤いものはファーストフィル,黒いものがセカンドフィルと厳密に分けられており,セカンドフィルの樽はダンネージ式の貯蔵庫のみで熟成されます。

ちなみにバーボン樽でウイスキーの熟成を行ったのはグレンモーレンジが初,その後も様々なカスクフィニッシュを考案・リリースしたこともあり,現在では「樽熟成のパイオニア」と呼ばれる蒸留所になりました。

蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのち,樽詰めされてウェアハウスで長い時間を眠ることとなります。


オフィシャルボトル一覧

グレンモーレンジ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレンモーレンジ オリジナル

ポイント

グレンモーレンジ蒸留所のオフィシャルボトルのうち,最もスタンダードな10年以上熟成された原酒で構成された,代表作的なボトルになります。

硬水を仕込み水とし,背の高いポットスチルで蒸留されて出来たグレンモーレンジらしい爽やかな柑橘の風味とバニラの甘みを特徴とした,とても華やかなウイスキーです!

香り

エスプレッソ/ミント/オレンジピール/シナモン/ジンジャー/バタースコッチ/チョコ/ドライフルーツ/チェリー

味わい

オレンジピール/アプリコット/スパイシー/モカ/ビスケット/フレッシュ/ミネラル感

余韻

爽やかなミントとレモンのような柑橘香が長く続く

グレンモーレンジ エックスバイ

ポイント

シングルモルトとしては珍しいカクテルベースを意識して作られた,甘みの非常に強いウイスキーになります。

グレンモーレンジらしい柑橘感とバニラはそのままに,甘さとリッチな厚み,スムースな飲み口が際立った一本になります。

香り

洋梨/青リンゴ/バニラ/オレンジの甘さ

味わい

オレンジのシャーベット/クリームブリュレ/チョコレート/華やかな柑橘感

余韻

リッチで甘い濃密な余韻が長く続く

グレンモーレンジ12年ラサンタ
シェリーカスク

ポイント

グレンモーレンジの原酒のうち,オロロソとペドロヒメネスのシェリー樽でフィニッシュされた原酒にフィーチャーしたカスクフィニッシュシリーズのひとつになります。

10年間はバーボン樽で熟成されており,残りの2年間をシェリー樽で熟成させています。

ナッツ感を思わせる温かい香味のある,芳醇で濃厚なシングルモルトです!

香り

チョコレート/レーズン/キャラメル/トフィー/クリームブリュレ/ヘーゼルナッツ/胡桃

味わい

シェリー感/レーズン/ドライフルーツ/ぶどう/オレンジピール/バター/チョコ/甘いスパイス

余韻

スパイスドオレンジとチョコ&ヘーゼルナッツを思わせる長い余韻

グレンモーレンジ14年キンタルバン
ポートカスク

ポイント

グレンモーレンジのカスクフィニッシュシリーズのひとつとして,良質なルビーポート樽で後熟した原酒にフィーチャーしたボトルになります。

10年程度のバーボン樽での熟成を経たのち,ポルトガルのポートワイン樽で約4年後熟されています。

とても滑らかな口当たりとチョコやミントを思わせる香味が特徴的な一本です!

香り

フローラル/オレンジ/白檀/ダークチョコ/トリュフチョコ/ココナッツ/ウッディネス

味わい

濃厚で滑らか/チョコミント/フルーツキャンディ/完熟みかん/トリュフチョコ/ウッディネス

余韻

チョコミントとオレンジ,ナッツの甘さがとても長く続く

グレンモーレンジ ネクタードール
ソーテルヌカスク

ポイント

グレンモーレンジのカスクフィニッシュシリーズのひとつであり,希少なソーテルヌカスクでフィニッシュされた原酒で構成された一本になります。

レモンタルトのような甘さと,クリーミーで濃厚なテクスチャーを特徴としたエレガントなシングルモルトです!

香り

レモンクリーム/タルト/ライム/オレンジピール/バニラ/ぶどう/ジンジャー/ココナッツ/ナツメグ

味わい

レモンタルト/クリーミー/柑橘系の果実香/キャラメル/ライム/ジンジャー/ナツメグ/アーモンド/焼き菓子

余韻

レモン系の酸味を伴う甘さとバニラの要素,スパイシー感が長く続く

グレンモーレンジ18年

ポイント

18年以上熟成されたバーボン原酒を主体とし,一部シェリーカスクフィニッシュされた原酒をバッティングして生み出された最高級のグレンモーレンジになります。

オリジナルに通づる柑橘とバニラを基調に,濃厚でエキゾチックな果実香と花畑のような芳醇なフローラル感を併せ持つ,まさにグレンモーレンジの真髄とも言える一本です。

自分へのご褒美のみならず,大切な人へのプレゼントにも最適と言えるような,外装的にもゴージャスなボトルと化粧箱が施されています。

香り

溢れ出るアロマ/ナッティ/トフィー/クリームブリュレ/バニラ/オレンジピール/レモン/胡桃

味わい

グレープフルーツ/オレンジピール/シルクの舌触り/花畑/シェリー感/ドライフルーツ/ヘーゼルナッツ/胡桃

余韻

魅惑的なドライフルーツ感とナッティな余韻がとても長く続く

グレンモーレンジ シグネット

ポイント

グレンモーレンジが長年の研究の末,発明した「チョコレートモルト」と呼ばれる,濃い茶色になるまでローストしたモルトを原料とした原酒をベースに構成されたボトルになります。

そのほかにも数ある希少な原酒がブレンドされており,幾重にも重なり合う複雑で幅広い香味は圧巻の一言。

グレンモーレンジがリリースするプレミアムシングルモルトを是非。

香り

暖炉の炎/エスプレッソ/ミント/チョコタルト/プラム/オレンジピール/シナモン/ジンジャー/バタースコッチ/ドライフルーツ/チェリー

味わい

シナモン系スパイス/モカ/アプリコット/オレンジピール/コーヒービーンズ/胡桃/甘いビスケット

余韻

爽やかなミントとレモン系の甘い柑橘感がとても長く続く

参考資料

参考サイト:グレンモーレンジ公式 / whisky.com / scotchwhisky.com /