宮城峡蒸留所(miyagikyo)|場所・歴史・製法・オフィシャルボトル|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回は日本より「宮城峡蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ニッカウイスキー/竹鶴政孝/ローランドモルト調/自然との共生

宮城峡の特徴

ローランドモルト調/華やか/軽やか/フルーティ/甘い/りんご/柑橘/バニラ

宮城峡蒸留所

宮城峡蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1969年
所有会社ニッカウイスキー株式会社
(アサヒビール社の傘下)
地域分類日本 宮城県
発酵槽ステンレス製22基
ポットスチル初留4基・再留4基
仕込み水新川(ニッカワ)
ブレンド先竹鶴,スーパーニッカ
ブラックニッカシリーズなど

「宮城峡蒸留所」蒸留所の立地

出典:google map

ポイント

宮城峡蒸留所は宮城県の作並,広瀬川と新川の間の峡谷に位置しています。

宮城峡蒸留所が建てられた背景には,竹鶴政孝ローランドモルト調の原酒を欲していたことがあり,本場スコットランドのローランドに似た環境と,良質な水を湛える新川が流れるこの場所が選ばれました。

新川は「ニッカワ」と読み,いかにもニッカウイスキーと関係がありそうに感じますが,これは単なる偶然とのことです(笑)

また蒸留所の周辺は猿が自生しているような,非常に自然が豊かな環境であり,創業時からこのような自然環境を阻害しないような配慮が随所に施されているのも特徴的です。

ビジターセンターや見学用に改造されたダンネージ式の貯蔵庫など,観光客にとっても嬉しい設備が整っているところも魅力的です!

「宮城峡蒸留所」蒸留所の歴史

宮城峡蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!年表作成にあたりニッカウイスキー社の歴史もいくつか交えています。

西暦年内容
1918年竹鶴政孝がスコットランドに留学する
1934年大日本果汁株式会社(現在のニッカウイスキー)が設立される
北海道に余市蒸留所が完成する
1963年西宮工場にカフェ式連続蒸留器が導入される
1964年カフェグレーンウイスキーの製造が本格開始される
1967年竹鶴政孝が新川の水に惚れ込んみ,宮城県の作並に蒸留所の建設を決定する
1969年宮城峡蒸留所が完成する
1976年設備増強を行って生産能力を2.5倍まで増やす
コンピューターを利用した集中制御方式が導入される
1983年工場緑化推進が評価され,通商産業大臣賞を受賞される
1985年エネルギー管理が評価され,資源エネルギー庁長官賞が受賞される
1990年食品衛生が評価され,厚生大臣賞が受賞される
1999年カフェ式連続蒸留器が宮城峡蒸留所に移設される
2000年日本のブレンデッドモルトの先駆け,竹鶴シリーズの元祖となる「竹鶴12年ピュアモルト」が発売される
2003年シングルモルト宮城峡」がリリースされる
2004年SMWSからモルトウイスキー蒸留所として認定される
2012年震災復興支援の一環として「伊達」が発売される
ニッカ カフェグレーン」が欧州で先行発売される
2013年ニッカ カフェモルト」が欧州で先行発売される
2014年ザ ニッカ12年」が発売される
2017年ビジターセンターがオープンされる

竹鶴政孝が宮城峡に至るまで

竹鶴政孝は1934年に大日本果汁株式会社を設立し,余市蒸留所を建設しました。この余市は力強くしっかりとした味わいを持つハイランドモルト調の原酒が求められていたため,スコットランドに似た環境,原料や製造条件を再現して北海道で操業を始めました。

当時の日本から見るとまさしく”本物”と言える本場のスコッチウイスキーを完全に再現するという強い意志が感じられます。

また日本において1960年代頃からウイスキーの需要が拡大します。そこに海外からの質の高いウイスキーが流入してくるのも時間の問題というところで,竹鶴は本物の日本産ウイスキーを量産する鍵となる「グレーンウイスキー」の必要性を懸案しました。

そこで1962年にはグレーンウイスキーの生産に必要な設備としてカフェ式連続式蒸留器の導入が決定,1965年には余市のモルトとカフェグレーンをブレンドした「ブラックニッカ」が誕生する運びとなりました。

しかし竹鶴が理想とした本物の品質には未だ届かず。竹鶴は本場のブレンデッドウイスキーはハイランドモルトとグレーン原酒のほかに,ローランドモルトが使用されている場合が多いこと承知していました。そのためローランドに近い環境にて,ローランドモルト調の軽やかでフルーティなウイスキーを生産できる場所を探し始めました。

そして決定されたのが良質な水を湛える新川のほとりである宮城県の作並,そこに宮城峡蒸留所が建設される運びとなりました!

自然との共生

竹鶴政孝は宮城峡蒸留所の建設段階より,自然との共生を重視していました。

既存の地形を活かしてなるべく木の伐採をせずに済むような建物の配置を検討し,電線等も地下に埋設。そして建屋自体も全て赤レンガで統一するなど自然と景観をなるべく阻害しないような設計がなされます。

先進技術が導入された生産体制と,自然への配慮が尽くされた建物は,まさしく未来に向けて宮城峡が長く残り続ける様を感じさせるものとなっていますね。

「宮城峡蒸留所」製法の特徴

製麦について

旧モルト乾燥塔
モルト貯蔵庫・粉砕設備等

ポイント

宮城峡では1975年までは自社にて製麦(フロアモルティング)を行っていましたが,現在は廃止されており,原料のモルトはスコットランドの製麦業社から輸入したものを使用しています。ピーテッドレベルはノンピートライトリーピーテッドが中心となっています。

余談ですが1970年代半ばから1980年代半ばにかけてはオーストラリア産の大麦が使用されていた時期もありました。

モルトはモルトミルにて粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!


糖化について

マッシュタン

ポイント

宮城峡蒸留所には1バッチあたり30000リットルのグリスト容量を誇るステンレス製フルロイタータンが設置されています。仕込み水は新川近郊から引き込んだ水を採用しています。この水は適度なミネラルが含まれる軟水です。

また宮城峡は蒸留器のサイズが2種類あり,それぞれに対して適正な量を仕込むために,小さいスチル用のバッチでは6.5トンのグリスト,大きいスチル用のバッチでは10トンのグリストが仕込まれることとなります。

マッシュタンにグリストを投入したのち,65度程度まで加熱した仕込み水を3回に分けて,温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。糖化が完了すると糖分を多く含んだ,澄んでいるウォートを得ることができます。

次の工程は発酵になります!


発酵について

ウォッシュバック

ポイント

宮城峡蒸留所にはステンレス製ウォッシュバック22基設置されています。このうち11基は容量33,000リットル,残りの11基は容量48,000リットルとなっています。

使用される酵母はディスティラーズ酵母が中心的であり,華やかでフルーティな香味成分を生じさせやすいものが厳選されています。

糖化によって得られたウォートは約20度前後まで冷却されたのち,酵母と共にウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は72時間程度と比較的長めに設定されています。

発酵が完了するとアルコール度数約8%のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!


蒸留について

ポットスチル(左:初留・右:再留)

ポイント

宮城峡蒸留所にはバルジ型のポットスチルが計4対(8基)あります。2対ごとに容量が異なり,ウォッシュスチルは16,000リットルと24,000リットル,スピリットスチルは12,000リットルと18,000リットルとなっております。

スチルの加熱方式は蒸気(スチームコイル)による間接加熱方式,冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。この蒸気は約130度とされているとのこと。

ちなみに写真のポットスチルについて,上部の銅板が綺麗に輝いているのは最近取り替えを行ったためとのことでした。

また余談ですがポットスチルについて,同じくニッカウイスキーの余市蒸留所のストレート型スチル(10,000リットル)と比較すると大きめのサイズ感となっています。

大きな容量はアルコールが銅と触れる面積を大きくすることに貢献し,膨らみのあるバルジ型であることから雑味成分はリフラックス(環流)によって削ぎ落とされることがわかります。

要約すると余市と比較して宮城峡は,クリーンで軽やか,フルーティなウイスキーが生まれやすい体制が整っているということをお伝えしておきます!

蒸留回数は一般的な2回蒸留であり,発酵で完成したもろみはまずウォッシュスチルへと移されて初留を行います。初留が完了するとアルコール度数約24%のローワインが得られます。

続いてこのローワインをスピリットスチルへと移し,再留を行います。再留及び,不安定なアルコール分を除去するミドルカットをくぐり抜けたものがニューポットとして採用されます。

次の工程は熟成になります!


熟成について

ダンネージ式ウェアハウス

ポイント

宮城峡蒸留所には合計25棟のウェアハウスがあり,ダンネージ式ラック式の双方があります。見学で見ることができるのはダンネージ式のみになります。

熟成に使用する樽は敷地内のクーパレッジ(樽工場)及び栃木の工場でオーク材を元に作ったものが主に使用されています。シェリー樽についてはヨーロッパのシェリー酒業社の元に出向き,厳選されたものを輸入して使用しているとのことです。

ニューポットは加水によってアルコール度数を63%に整えたのちに樽に詰められ,25棟のウェアハウスに満遍なく割り振られて,長い眠りに付くこととなります。


オフィシャルボトル一覧

宮城峡蒸留所及び関係するニッカウイスキー社のボトルを紹介していきます!

シングルモルト宮城峡

ポイント

竹鶴政孝が宮城峡に求めていたローランドモルト調の軽やかでフルーティな要素。それらをしっかりと感じることができる,現在では宮城峡唯一のオフィシャルボトルです!

りんごやドライフルーツのようなしっかりとした甘さは女性的であり,飲もうとする人を拒まないような受け入れやすい要素に包まれています。

まさしく日本を代表するシングルモルトのひとつと言って差し支えないでしょう。

価格帯

Amazon:4,526円

※2022年7月現在

香り

りんご/洋梨/甘く華やか/フローラル/ウッディ/バニラ/フルーティ

味わい

りんごの甘さ/ドライフルーツ/バニラ/なめらか/ウッディ/モルティ/華やか

余韻

モルティな甘みとややビターな要素。穏やかな樽香が長く続く。

シングルモルト余市

ポイント

余市は竹鶴政孝がハイランドモルトのようなどっしりとした,香味の強い”本物”のウイスキーを念頭に置いて作り上げたシングルモルトです。

女性的な宮城峡と比較して男性的と言われることもある,ピーティやソルティ感,そして濃厚な口当たりを特徴としたウイスキーです。

本物を目的として作られたウイスキーですが,個人的には既に本物を凌駕する一級品の個性を有していると感じています。

価格帯

Amazon:5,833円

※2022年7月

香り

優しくも独特なピート感/麦芽の甘さ/柑橘系果実香/豊かな樽香

味わい

オークの甘さ/ピートスモーク/モルティ/オレンジ/柑橘の果実感/バニラ

余韻

オーク香とスモーキーさが非常に長く続く

竹鶴

ポイント

竹鶴は余市と宮城峡のモルト原酒のみで構成された,正真正銘のジャパニーズブレンデッドモルトウイスキーです!

創業者の竹鶴政孝が持っていた圧倒的なまでの好奇心と情熱を表現することを目指し,モルトウイスキーのみでブレンデッドウイスキーを超える飲みやすさを実現したブランドです。

フルーティさと森感を持つ宮城峡,ピーティで海の要素を感じさせる余市。対極に位置するモルト原酒を併せたからこそ生まれた凄まじく個性的な調和。まさに夢の共演。

価格帯

Amazon:10,600円(店頭で安いところだとは5,000円以下程度)

※2022年7月現在

香り

りんご/杏/フレッシュな果実/ベリー/トースティ/バニラ/優しくピーティ

味わい

バナナ/オレンジ/フルーティ/ドライフルーツ/チョコ/モルティ/コクのあるピート

余韻

ビター,甘さ,香ばしさ,ピーティ等の多様な香味が長く残り続ける

ニッカ セッション

ポイント

セッションは宮城峡と余市,そしてベンネヴィスをはじめとしたスコッチモルトを複数混ぜ合わせたブレンデッドモルトウイスキーです。

凄腕アーティスト集団が奏でる一つの音楽のように,複数の素晴らしいモルト原酒を組み合わせることで一つの作品を完成させる。そんな発想で作られたのがセッションです。

余談ですが私のお気に入りウイスキーTOP5に入るくらい,大好きなボトルです(笑)美味い!

価格帯

Amazon:3,739円

※2022年7月現在

香り

オレンジ/りんご/フレッシュ/モルティ/バニラ/香ばしい樽香/優しくピート

味わい

滑らかでクリーミー/オークの甘さ/オレンジ/りんご/フルーティ/軽やか/香ばしいピートスモーク

余韻

ほのかなビターさと優しいピート感がとても香ばしい

他にもこんな限定ボトルが…

ニッカウイスキーからはこんな限定ボトルが出ていました!

宮城峡モスカテル

宮城峡アップルブランデー

宮城峡ピーテッド

宮城峡2019

ザ・ニッカ40年

参考資料

参考サイト:ニッカウイスキー公式