ウイスキーの製法解説「まとめ編」|マメ知識|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

ウイスキーは製麦・糖化・発酵・蒸留・熟成という工程を経て生産されています。

この記事では各工程について概要的な解説をしていきます!

アルコール生成の原理

一般的にウイスキーの原料とされるものは「穀物(大麦が主)・水・酵母」の3種類のみになります。

具体的な製法の解説に入る前に,いたってシンプルな3つ原料からどのようにしてウイスキーの元となるアルコールが生成されるされるのか。その原理について解説しておきます。

まずアルコール生成に際しては,原料のひとつである酵母の作用であるアルコール発酵が利用されています。アルコール発酵とは酵母が嫌気環境下で糖類を消費することで,アルコールと二酸化炭素が発生する働きのことです。

この工程は「発酵」と呼ばれています。

ここで発酵に必要な糖類はどこからきているかと言うと,もうひとつの原料である穀物になります。穀物にはデンプンが含有されており,これを大麦麦芽が持つ酵素を持って分解させたものが糖類となります。

穀物のうち,特に大麦に糖化酵素を生じさせる工程を「製麦」と言い,穀物のデンプンを糖類に変化させる工程を「糖化」と言います。

上記の発酵までの過程で,ウイスキーの元となるアルコールが生成されており,ここから「蒸留」と「熟成」の工程を完了させることで,ウイスキーが出来上がります!

ウイスキーの製造工程

改めまして,ウイスキーは次のフローに示す5つの工程を経て製造されています。各工程について概要をまとめていきます!

製麦について

製麦(モルティング)は原料の穀物のうち「大麦」について,糖化に必要な酵素を生じさせた上で,その状態のまま保存するために乾燥させる工程になります。

製麦工程は「収穫→風乾→保管→選粒→浸麦→発芽→乾燥→除根」と言う手順で行われています。それぞれ順を追って説明していきます!

製麦の手順

  • 収穫〜選粒

一般的にウイスキー作りに使用される大麦は春播き大麦言われており,8月中旬ごろに「収穫」されます。

これから大麦をこれから発芽させることとなるのですが,大麦にはドーマンシーと呼ばれる休眠期間があり,この間は発芽させることができません。

そこでひとまず自然乾燥(「風乾」)によって含水率を落とし,1〜2ヶ月程度「保管」します。

そしてこの期間を終えると,均一に発芽を進行させるために大麦をサイズごとに分類する「選粒」が行われます。

  • 浸麦

選粒された大麦はスティープ(浸麦槽)へと移され,「ウェット&ドライ」という,数時間ごとに水を抜いては空気に晒し,再び水を入れるという工程が2〜3日程度繰り返されます。

この工程を終えると大麦は十分な水分を含有し,発芽の準備が整います。

  • 発芽

浸麦を終えた大麦は発芽室へと移され,温度一定の環境下で絶えず攪拌し,均一に空気と接触させます。

この作業を概ね1週間程度続けて,発芽した芽の長さが粒の全長の3分の2程度となったタイミングで発芽は完了となります。この状態の大麦はグリーンモルトと呼ばれており,糖化に必要な酵素が活性化しています。

  • 乾燥

発芽が完了した大麦は,その時点で成長を止めておかないとデンプンの分解が進み,生成された糖類が徐々に消費されてしまいます。そこで糖類の消費が進行する前に「乾燥」させることで成長を止めます。

乾燥の基本的な方法は,大麦麦芽を敷き詰めたメッシュ状の床の下からピートか無煙炭を焚くという手法になります。特にピートで乾燥させた大麦は個性的なスモーキー系の風味を生み出すため,作りたいウイスキーのイメージに合わせてピートの焚き込み具合が調整されます。

  • 除根

乾燥が完了した麦芽は,水分の再吸収を防ぐために伸びかけの根が除去されます。

この除根は乾燥後であれば簡単に行うことが可能のため,モルトスクリーナーと呼ばれる専用の機械を使用するか,麦芽の選別(スクリーニング)時に併せて行われます。

除根後から仕込みまでの間,麦芽はモルトビンと呼ばれる貯蔵タンクに一時保管されることとなります。


※製麦の現状について

ここでは代表的な製麦手法を紹介しましたが,現在蒸留所にてこの作業が行われる例は稀となっています。多くの蒸留所はモルトスターと呼ばれる製麦の専門会社より,指定した条件を満たす大麦麦芽を購入して使用しています。

糖化について

原料の大麦麦芽は製麦を終えることで,糖化酵素を多く含有し,デンプンの分解を行う準備が整った状態となっています。

糖化(マッシング)はこのデンプンやタンパク質を実際に分解させて,発酵に必要な糖類を生じさせる工程となります。

糖化の作業内容について解説します

糖化の手順

  • モルトの粉砕

製麦を終えた原料のモルトは,糖分を抽出しやすくするためにモルトミルと呼ばれる機械で粉砕されることとなります。

一般に大麦麦芽の粉砕にはローラーミルという,回転する金属製の棒の間に大麦を通すことで,粉状に砕くという形式のものが採用されています。グレーンウイスキーの原料を砕く際にはハンマーミルが使用されることが多くなります。

また粉砕された麦芽は総じてグリストと呼ばれます。しかし粒度の大きいものは麦汁採取時の濾過材としても機能するため,サイズごとにに3段階に分けられます。。

  • ウォートの採取

ウォートは酵素の働きによってデンプンが発酵に適した大きさの糖類となり,それらが多く含有された液体のことになります。このウォートはグリストを加熱した仕込み水と混合し,濾し取ることで得られ,これを糖化と呼んでいます。


※糖の種類

糖類は発酵性糖類非発酵性糖類に分けることができます。

発酵性糖類は4糖類までの比較的小さい糖類を表し,発酵の際に酵母が資化できるのはここまでになります。

要するにこの発酵性糖類が多いほど,発酵で得られるアルコールは多くなるということです。

そうすると非発酵性糖類は酒造において不要に感じてしまいますが,多様な香味成分の元となるため,こちらも無下にすることはできません。

発酵について

発酵(ファーメンテーション)は,糖化によって得られた糖類を多く含んだウォートに酵母を添加し,その作用によってアルコールを生み出す工程になります。

発酵の作業内容について解説します!

発酵の手順

まず糖化で得られたウォートは熱交換装置(ヒートエクスチェンジャー)を用いて20度前後に冷却されます。

そして酵母と共に発酵槽(ウォッシュバック)に移すことで,発酵が進行していきます。ウォートを一度冷却するのは、高温環境下だと酵母が死滅してしまうためです

発酵中は酵母が糖を食べてアルコール炭酸ガスに分解されています。発酵開始から12〜18時間では二酸化炭素の泡が多数発生するので,スイッチャーという泡切り装置を稼働して溢れることを防ぎます。

その後徐々にガスの発生は収まり,概ね48時間〜60時間程度で発酵が完了します。

この時点でビールに似た,アルコール度数7〜9%のモロミ(ウォッシュ)が出来上がっています。完成したウォッシュは一時的にウォッシュチャージャーに貯蔵されます。

蒸留について

蒸留(ディスティレーション)は,発酵で得られたウォッシュを元に「アルコールと水の沸点の差」を利用して、アルコール分を抽出して度数を高める工程になります。

ここでは一般的なモルトウイスキーの蒸留工程を解説します!

蒸留の手順

  • ポットスチル

通常モルトウイスキーの生産には単式蒸留器(ポットスチル)を用いて蒸留を行います。このポットスチルは様々な大きさ・形状があり,蒸留時によって全く異なります。

仕組みについては,まずスチルに蒸留する液体を投入して加熱することで沸点の低いアルコールを気化させます。そしてアルコールの蒸気は,スチルのネックからラインアームへと流出し,冷却装置(コンデンサー)へと運ばれて再び液化されています。

またスコッチの生産時には基本的に2回蒸留を行なっており、1回目の蒸留に使用するスチルを初留釜(ウォッシュスチル)、2回目のスチルを再留釜(スピリッツスチルもしくはローワインスチル)と呼んで区別しています。

  • 初留

発酵によって得られたウォッシュはまずウォッシュスチルへと移されます。そしてスチルを加熱して蒸留を行い,ウォッシュに存在するアルコールが全て回収されることとなります。

初留を終えるとアルコール度数が約3倍程度の21〜24%となった「ローワイン」を得ることができ,これらはコンデンサーを通過したのち,ローワインレシーバーに貯蔵されます。

アルコール回収後にスチルに残った蒸留廃液は「ポットエール/スペントウォッシュ/バーントエール」などと呼ばれ,糖化時の搾りかす(ドラフ)と混合して家畜飼料などとされます。

  • 再留

続いてローワインをレシーバーからスピリッツスチルに移し,2度目の蒸留が行われます。再留時にコンデンサーを抜けたアルコールはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,蒸留初期の「前留(フォアショッツ/ヘッズ)」と終期の「後留(フェインツ/テイル)」は除去されます。

除去された溶液はローワインと混合して次回の再留に回されることとなります。

最終的に蒸留中期の「本留(ミドル/ハーツ)」と呼ばれるアルコール度数は65〜72%程度の蒸留液(ニューポット)が確保され,スピリッツレシーバーへと送られます。

再留後に釜に残る廃液は「スペントリース」と呼ばれ,肥料などに加工されます。

熟成について

熟成(マチュレーション)蒸留直後のスピリッツ(ニューポット)は非常に荒々しい味わいであるため、樽に詰めて木の成分を取り込みつつ空気に触れることで,まろやかな味わいとする工程になります。

熟成の概要について解説します!

熟成の概要

蒸留直後のスピリッツは無色透明であり,度数が約70%もある刺激の強い風味となっています。スピリッツ(酒精)の名の通りにその荒々しさから活力や精力を増強できるというのが一つの魅力でもありますが,多くの人にとっては非常に飲みにくいでしょう。

そこでアルコール刺激をマイルドにしてより飲みやすく,美味しくするためにオーク樽での熟成が行われます。

また原酒は熟成過程で樽から多くの溶出成分を享受され,俗にいう熟成感を獲得していくこととなりますが,度数の高低によって成分の溶出度合いが変化してきます。

成分溶出のピークとなるのはアルコール度数63%程度の時であるため,蒸留直後のスピリッツは加水によって度数63%程度に調整されてから樽詰めされることとなります。

樽詰めの後はウェアハウスと呼ばれる貯蔵庫にて貯蔵を行い,最低3年から数十年に渡り熟成が進められることとなります。


参考資料