記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「キルホーマン・サナイグ」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
「キルホーマン」ってなに?
キルホーマンの解説
- ブランドと蒸留所
『キルホーマン』はスコットランドの西岸側に浮かぶアイラ島に所在する,キルホーマン蒸留所が手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
蒸留所の創業は2005年と比較的最近のことでしたが,島内に存在するピートを豊富に焚いた伝統的なアイラモルトスタイルを踏襲し,他の歴史の深い蒸留所にも引けを取らない本格的なウイスキー作りが展開されています。
また当蒸留所のオフィシャルリリースにはマキヤーベイやサナイグなど,印象的な名称が付けられたボトルがいくつか存在していますが,これらは蒸留所の近傍にある湖や入江などの名称から採用されており,キルホーマンのアイラ島に対する愛の深さが伺えます。他にもラインナップ関連で言えば,外部のボトラーリリースがほぼ皆無な点も面白く,ボトラーに原酒を払い出さない分,蒸留所から独自のシングルカスクやスモールバッチのボトルがたくさんリリースされています。
- 製法の特徴
まず『キルホーマン蒸留所』が建つアイラ島の環境について言及すると,年間の平均気温は概ね7〜17℃と比較的冷涼な水準となっており,これはウイスキーの長期間熟成に適した環境であると言えます。また島外からは多くの潮風が吹き込むため,島内で熟成されるウイスキーが海の要素を多分に獲得する可能性が示唆されています。
また蒸留所の近傍には,キルホーマン自らが大麦畑を所有しているのも強力な長所で,現在既に全ウイスキー生産量の概ね30%程度が,この畑で栽培された大麦を原料とした文字通り「100%アイラ島産」のウイスキーとなっています。
その他の生産工程については,例えば発酵時間を70〜110時間程度とかなり長めに設定することによって華やかかつ多彩な香味成分の醸成を助長していたり,容量の小さいポットスチルの使用によって深く複雑な酒質が得られる条件が整っていたりと,総じて風味の多様さに繋がる工夫が多く見て取れます。そして原酒の風味を決定づける熟成工程では,バッファロートレース蒸留所のバーボン樽や,スペインのミゲルマルティン社製のオロロソシェリー樽がメインとして使用されています。
「キルホーマン・サナイグ」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | キルホーマン・サナイグ |
地域 | スコットランド アイラ島 |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 46% |
\\製法と特徴//
- 4〜5年熟成の原酒を使用
▶︎やや若いように感じるが,ピートスモークやシェリーの力強さと,若さゆえのパワフルばボディはかなり相性が良い - バーボン樽原酒50%・シェリー樽原酒50%の構成
▶︎バーボン樽由来のクリーミーな甘みとシェリー樽由来の華やかな甘みが融合することにより,より複雑で奥深い満足感が表現されている - キルホーマンらしいピーテッドスタイル
▶︎キルホーマンのスモークテイストは他の湿った薬っぽさとは少し異なり,どこかドライかつモルティな,ざらついた質感を魅せる
「キルホーマン・サナイグ」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「キルホーマン・サナイグ」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『キルホーマン・サナイグ』の色味については,シェリー樽原酒を含有しているだけに濃いめの印象があり,若干の赤みを感じる琥珀色に見えます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Tawny"より少し濃いくらいであると言えるでしょう。
▼
香り
- 第一印象
重くサルファリー,ちょっとゴム,ノスタルジックなレーズン感
香りではアイラ系のピートスモークは控えめ|アルコール感も濃い香りに隠れている
- 経時変化で見える要素
ウッディ&スパイシー,オレンジ系のドライフルーツ感,杏やプラム,薄くスモーキー
筆者の一言
香りではアイラモルトらしいピート感よりも,シェリー樽由来の要素がやや優っていた印象。
しかし時間経過とともにスモーキー感やウッディな香りも少しづつ出てきて,全体としては濃厚で分厚い個性を感じました!
▼
味わい
- 第一印象
濃密なドライフルーツの甘み,プラム&アプリコット,ビターキャラメル
シェリーの嫌味は香りほど強くない|味わいでもアルコール感は濃さに隠れていた
- 経時変化で見える要素
ザラっとドライなピートスモーク,ブラウンシュガー,穀物の苦味,コーヒーの苦味
- 余韻に残る要素
ウッディ&スパイシーな暖かさ,キルホーマンらしいピート感,ほのかな甘み
筆者の一言
味わいではシェリー樽原酒の魅力が強く感じられ,第一印象から強いフルーツの甘みが感じられたのが驚きでした。
そしてそこから少しづつ滲み出てくる様々な苦味がまた心地よく,自ら甘みを中和して綺麗に味覚をまとめてくれた印象でした!
「キルホーマン・サナイグ」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:4/5|味わい:5/5
『キルホーマン・サナイグ』の香りと味わいについては,全体的に”シェリー樽の要素>アイラモルト感”といった構図に上手くまとまっている印象があり,フルーティさが主体となっていることから,通常のバーボン樽系の煙たさ全開なアイラモルトとは全く異なっていました。
香りでは若干のサルファリー香やゴムっぽさは感じられたものの,味わいではドライフルーツの甘さ強力であったため,シェリー樽の嫌味っぽさも程よい程度に抑えられていたのが非常に好印象でしたね。また味わいの甘いファーストインパクトが抜けてから余韻にかけては,キルホーマンらしいピートスモークや,コーヒーとか樽とかの系の苦味系の要素がどんどんと押し寄せてくるため,スイート&ビターのバランスが自己完結していてすっきりと飲み終えることができました。
ピート耐性とシェリー樽耐性のある方には,是非とも試してみていただきたいなと思いました。
- 初心者向け度:1/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『キルホーマン・サナイグ』を見てみると,全く適していないということができるでしょう。
というのも,そもそも初心者に向かないと言われているヘビリーピーテッドタイプの原酒が使用されているため,やはり細部から漂う煙たさの存在が否めません。またシェリー樽系のウイスキーも,グレンアラヒーなどのようにただ甘いだけなら初心者に勧めやすいですが,このボトルでは香りに若干のサルファリー感が感じられたため,やはり初心者に手放しで勧めることは難しそうです。
ひとまずはアイラモルトならボウモア等,シェリー系ならグレンファークラスやマッカラン等,それぞれのウイスキーの入門に相応しいウイスキーをお試しいただき,自分がそれらを呑めるのかどうかを確認した上で,この「キルホーマン・サナイグ」挑戦するといいと思います!
- 入手性:4/5|コスパ:4/5
最後に『キルホーマン・サナイグ』の入手性とコスパについては,どちらも比較的優れているということができるでしょう。
まず入手性については,キルホーマン蒸留所の年間生産量が50万リットル程度しかないので少々懸念が残りますが,現状は人気の殺到などによる影響を受けていないため,通販でも店頭でも普通に入手することが可能かと思います。
またコスパについては,大前提として味わいが大きいというポイントを踏まえ,生産量の少なさやシェリー樽原酒を使用していることなどを総合的に考えれば,かなりリーズナブルであると言えそうです。特に生産量に関してさらに考察すれば,キルホーマンよりも生産量が多少少ない程度の日本の蒸留所が作る,3年熟成程度のウイスキーが数万円することを考えれば,かなり有り難く見えてくるのではないでしょうか。