記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「アイル・オブ・ジュラ蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
ジョージ・オーウェル/60年間の沈黙/巨大なポットスチル
アイル・オブ・ジュラの特徴
基本ノンピート/年に1週間へビリーピート/バニラ/柑橘/スパイス香

(余談までに…)
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アイル・オブ・ジュラ蒸留所
アイル・オブ・ジュラ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1810年(1960年) |
所有会社 | エンペラドール社 |
地域分類 | スコットランド,アイランズ |
発酵槽 | ステンレス製6基 |
ポットスチル | 初留2基・再留2基 |
仕込み水 | マーケット湖 |
ブレンド先 | ホワイト&マッカイ,クレイモアなど |
「アイル・オブ・ジュラ蒸留所」蒸留所の立地

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所はウイスキーの地域区分として,スコットランドのアイランズに分類されます。具体的にはウイスキーファンに親しみの深いアイラ島から,アイラ海峡を挟んですぐ北東に浮かぶジュラ島,その南部の東岸に位置しています。
ジュラ島は360k㎡程度の非常に小さな島であり,人口もわずか180人しかいないことから島に渡る交通手段がひとつしかなく,その唯一の方法はアイラ島のポートアスケイグ港から出る車が10台も乗らない小さなフェリーに乗ることです。
またジュラ島はかつて作家のジョージ・オーウェル氏が「1984」を執筆した島としても有名であり,1945年頃に結核を患ったジョージ氏が最後の執筆を行うべく,電話線すら存在しない隔絶された土地を求めてたどり着いたのがジュラ島の最北端でした。
ちなみにジュラ(JURA)は地元の人が使うゲール語では「Diùrach」と表記し,ヴァイキングが使用していた北ゲルマン語群で「鹿」を意味する「hjortr」が語源となっています。
よってアイル・オブ・ジュラは「鹿の島」と訳すこともでき,その名の通りジュラ島には180人という極小の人口に対して約5,000頭にも及ぶ野性の鹿が生息しています。
\\ジョージオーウェルの「1984」//

「アイル・オブ・ジュラ蒸留所」蒸留所の歴史
アイル・オブ・ジュラ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1810年 | アーチボルド・キャンベル氏によって前身のスモール・アイルズ蒸留所が設立される |
1831年 | アイル・オブ・ジュラ蒸留所として政府公認のライセンスを得る |
1853年 | 蒸留所がノーマン・ブキャナン氏にリースされる |
1867年 | ノーマン氏が破産し,蒸留所の運営はJ&Kオア氏に引き継がれる |
1876年 | 蒸留所がジェームズ・ファーガソン&サンズ社に買収される |
1901年 | 地主と土地代で揉めた結果,設備等が全て解体されて島外へ運び出される 固定資産税対策として建物の屋根も落とされ,完全に閉鎖される |
1960年 | ジュラ島の地主の主導の元,ジュラ・ディスティラリー社によって蒸留所の再建が行われる 同年蒸留所はスコティッシュ&ニューキャッスル・ブリュワリーズ社に買収される |
1963年 | 60年ぶりにアイル・オブ・ジュラ蒸留所での生産が再開される |
1974年 | ジュラのシングルモルトが初めてリリースされる |
1985年 | 蒸留所がインバーゴードン・ディスティラーズ社に買収される |
1995年 | インバーゴードン社がホワイト&マッカイ社に買収される |
2007年 | ホワイト&マッカイ社がユナイテッド・スピリッツ社に買収される |
2014年 | ホワイト&マッカイ社がフィリピンのエンペラドール社に買収される |
アイル・オブ・ジュラに纏わるストーリー
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「アイル・オブ・ジュラ蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
240万L - 仕込み水
マーケット湖 - モルトスター
ポートエレン製麦所,ベアーズ社 - ピーテッドレベル
ノンピート
年に4週間のみヘビリーピーテッド(40ppm) - マッシュタン材質
ステンレス製セミロイター - マッシュタン容量
1バッチ5トン - ウォッシュバック
ステンレス製6基 - 酵母
ケリー社製 - ウォッシュバック容量
43,000L
- 発酵時間
54時間 - スチル加熱方式
蒸気間接加熱 - ポットスチル(初留)
ランタン型2基 - ウォッシュスチル容量
24,500L - ポットスチル(再留)
ランタン型2基 - スピリッツスチル
15,500L - コンデンサー
シェル&チューブ - 本留の度数
71% - ウェアハウス形式
ダンネージ式,ラック式
製麦について

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所では自社製麦を行っておらず,製麦工程は外部の専門業社(モルトスター)であるベアーズ社に委託し,そこから原料のモルトを購入しています。
大麦はスコットランド本土のスペイサイド産のものを主に採用しており,ピーテッドレベルについてはノンピートタイプとされています。ノンピートとする背景には,距離の近いアイラ島のウイスキーと差別化を図る意味が込められています。
しかしながら年に4週間だけは,ジュラ島のピートを使用した製麦をアイラ島のポートエレン製麦所に委託し,40ppmのヘビリーピーテッドタイプの麦芽も購入して使用されています。
用意された原料のモルトはポルテウス社製のローラー式モルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所では仕込み水としてマーケット湖の水(軟水)を採用しています。この水はピート層を抜けてきているため,薄く茶色みがかっているのが特徴です。マッシュタンは1バッチあたり5トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。
各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所では容量43,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが6基設置されています。発酵時に添加する酵母はケリー社製の一般的なディスティラーズ酵母です。
糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。
発酵にかける時間は54時間程度とされており,スコッチウイスキー業界では概ね通常レベルの長さに設定されています。乳酸発酵があまり生じないことから,比較的重めの複雑なテイストが保持されます。
発酵が完了するとアルコール度数約7〜9%程度となったウォッシュを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所には容量24,500リットルのウォッシュスチルが2基,容量15,500リットルのスピリッツスチルが2基設置されています。加熱方式は蒸気パン・コイルによる間接加熱方式,コンデンサーは屋外設置のシェル&チューブ方式になります。
形状はどちらも非常に大きなランタン型であり,1843年にグレンモーレンジ蒸留所が登場するまでは最も背の高いポットスチル(約8.53m)として知られていました。今でもホールリードやグレンモーレンジに次ぐスコットランド最大級の大きさです。
一般的にサイズが大きく背の高いポットスチルで蒸留を行った場合,比較的ヘビーな香味を有する蒸気の多くが還流するため,軽くすっきりとした酒質が得られるとされており,アイラモルトと差別化を図る意図がここにも込められています。
−初留−
発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと投入され,初留が行われます。初留ではウォッシュに含まれるアルコールの全量が抽出され,アルコール度数が20%強程度となったローワインを得ることができます。
−再留・ミドルカット−
続いてローワインは,前回蒸留時にカットされた前留・後留と共にスピリッツスチルへと投入され,再留が行われます。
再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。
この作業はミドルカットと言い,後留のアルコール度数が1%となるまで継続されます。アイル・オブ・ジュラにおいて,最終的に得られる本留はアルコール度数が約71%程度となり,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーという容器に一時貯蔵されます。
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について

ポイント
アイル・オブ・ジュラ蒸留所には伝統的なダンネージ式のウェアハウスと貯蔵効率に優れた近代的なラック式のウェアハウスが混在しています。
熟成に使用される樽にはバーボン樽やシェリー樽はもちろんのこと,フレンチオーク樽・ライウイスキー樽・多彩な地域のワイン樽・ラム樽などを使用したカスクフィニッシュが行われています。
蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのち,樽詰めされてウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧
アイル・オブ・ジュラ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
アイル・オブ・ジュラ10年
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ10年」は当蒸留所の公式シングルモルトのうち,最もスタンダードなボトルになります。ちなみに公式ラインナップは2018年に一度刷新されています。
スコットランドでも有数の巨大なポットスチルで蒸留され,アメリカンオークのバーボン樽で10年間の熟成を経たのち,スペインのヘレス産のシェリー樽でフィニッシュされた原酒で構成されています。
そのテイストは軽やかで優しいスパイス香とシェリーの甘さが際立ち,公式には「現代の酒飲みのためのオールラウンダー」と表現されています。
香り
バニラ/はちみつ/オレンジ/柑橘にフレッシュ感/胡椒系スパイス香/ダークチョコレート
味わい
オレンジマーマレード/ジンジャー/モルティ/優しいスパイス/モルティ/トーステッドアーモンド
余韻
土気のあるドライ感とモルティな甘さが長く続く
アイル・オブ・ジュラ12年
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ12年」は当蒸留所の公式シングルモルトのうち,「最も強烈で筋肉質ながら親しみやすいウイスキー」と称されています。ジュラ島の人々は集まりごとの際によく飲んでいるようですね。
熟成年数の内訳こそ記載されていませんが,バーボン樽で主たる熟成を行ったのち,オロロソシェリー樽でフィニッシュをかけた原酒が使用されています。
そのテイストは暖かなスパイス,バナナ,柑橘,コーヒー,ダークチョコなどシェリーの要素を感じさせるものが多く存在します。
アイル・オブ・ジュラ18年
レッドワインカスクフィニッシュ
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ18年」はバーボン樽で18年間の熟成を経たのち,南フランス産の「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ・ボルドー赤ワイン」の樽でフィニッシュをかけた原酒で構成される長熟ボトルです。
10年や12年とは異なり,フィニッシュに赤ワイン樽を用いていることからテイストの傾向も大きく異なっており,熟したラズベリー,濃いキャラメル,シナモンスパイス,いちごチョコなどの要素を感じることができます。
アイル・オブ・ジュラ21年
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ21年」は当蒸留所の通年販売されている公式シングルモルトの中で長熟のボトルであり,「深みと強さの贅沢な波」のようなテイストを持っています。
アメリカンオークのバーボン樽で主要な熟成を行ったのち,アメリカンオークのバージン樽でフィニッシュをかけた原酒で構成されているため,ジュラの個性の真髄を覗くことができるでしょう。
そのテイストはクリーミーなキャラメル,フルーツバスケット,ナッツ,ホワイトチョコなどの多彩かつ奥深い甘みのニュアンスを感じることができます。
アイル・オブ・ジュラ
ウィンターエディション
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ ウインターエディション」は当蒸留所のカスクエディションシリーズのひとつであり,優しいスパイス香により体を温める「完璧な冬のウォーマー」的ボトルです。
様々なカスクフィニッシュを探求するカスクエディションの一環として,スペイン産のシェリー樽で後熟を行い,リッチで甘美なテイストが実現されました。
そのテイストはシトラス,キャラメル,メープルシロップ,アップルパイ,シナモンスパイスなどなど,体の温まりそうな濃厚な甘さを多く感じることができます。
アイル・オブ・ジュラ
セブンウッド
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ セブンウッド」はフルーティでスパイシーなテイストを生み出すために独創的なアプローチが施された,当蒸留所の公式シングルモルトです。
通常の1stフィルのバーボン樽でメインの熟成を行ったのち,フランスの林業関連の組合と協力して調達した,異なる地域のフレンチオーク材で作られた6種類の樽でフィニッシュをかけた原酒で構成されています。
ちなみにフレンチオークの産地はそれぞれ「リムーザン・トロンセ・アリエ・ヴォージュ・ジュピーヌ・ベルトランジュ」です。
多彩な樽材の影響により,キャラメル,熟したピーチ,オレンジピール,ジンジャースパイスなどの香味が生み出されています。
アイル・オブ・ジュラ
ザ・サウンド
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ ザ・サウンド」は当蒸留所の免税店向けの公式リリースのひとつですが,日本国内でも流通はしているようです。
タイトルにある「サウンド」は音という意味ではなく,ジュラ島とスカバ島の間の大きな海峡のことを指しており,ここは大きな渦潮「コリーヴレッカン」が発生することで有名です。ちなみにサウンドという地形は日本には存在しないので馴染みがないかもしれませんね。
その構成はバーボン樽でメインの熟成を終えたのち,15年間にわたってペドロヒメネスシェリーを詰めていた樽でフィニッシュをかけた原酒から成立しており,ヘーゼルナッツやメープルシロップ,オレンジピール,ダークフルーツなどの個性的なテイストを感じることができます。
アイル・オブ・ジュラ
ザ・ロード
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ ザ・ロード」も当蒸留所の免税店向けの公式リリースのひとつですが,日本国内にて入手が可能のようです。
タイトルの「ザ・ロード」はジュラ島にたったひとつだけ存在する大きな道路「A846号線」を示しており,この道路は島の南岸から東岸に沿うように南北を繋いでいます。
その構成は一般的なバーボン樽で主たる熟成を行ったのち,過去20年間もの長期間ペドロヒメネスシェリーを詰めていた,シェリーの香味が色濃く移された樽でフィニッシュをかけられており,濃密なドライフルーツやピスタチオ,コーヒー,シナモンなどの甘さを感じることができます。
アイル・オブ・ジュラ19年
パップス
ポイント
「アイル・オブ・ジュラ19年 パップス」もジュラ蒸留所のトラベルリテール専用公式シングルモルトのひとつですが,日本国内にて入手が可能のようです。
タイトルの「ザ・パップス」はジュラ島西部にあるパップス山を指しており,この山は海を挟んで対岸にあるアイラ島のポートアスケイグ港からも見ることができる印象的な存在です。
その構成はバーボン樽でメインの熟成を行ったのち,驚きの過去に40年間もペドロヒメネスシェリーを詰めていた樽でフィニッシュをかけ,合計で19年以上の熟成を経た原酒が使用されています。
そのテイストはジンジャーケーキやバニラ,,洋梨,砂糖漬けのドライフルーツなど,多彩かつ濃厚な圧巻の仕上がりとなっています。

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参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / scotchwhisky.net / ジュラ公式