記事の概要
近年のウイスキーブームの中で、世界五大ウイスキーの他にも多くの蒸留所が創業しています。
今回はスコットランドと同じくイギリス国内「イングランド・ウェールズ」に位置する蒸留所をまとめていきます!
位置と蒸留所名
番号 | 蒸留所名 |
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① | レイクス蒸留所 (Lakes) |
② | ダーラム蒸留所 (Durham) |
③ | クーパーキング蒸留所 (Cooper King) |
④ | スピリット・オブ・ヨークシャー蒸留所 (Spirit of Yorkshire) |
⑤ | チェイス蒸留所 (Chase) |
⑥ | コッツウォルズ蒸留所 (Cotswolds) |
⑦ | ワーフ蒸留所 (Wharf) |
⑧ | セント・ジョージズ蒸留所 (St.George's) |
⑨ | アドナムス・コッパーハウス蒸留所 (Adnams Copper House) |
⑩ | ジ・オックスフォードアーティザン蒸留所 (The Oxford Artisan) |
⑪ | ビムバー蒸留所 (Bimber) |
⑫ | ロンドン蒸留所 (London) |
⑬ | イーストロンドン蒸留所 (East London) |
⑭ | コッパーリベット蒸留所 (Copper Rivet) |
⑮ | ヒーリーズ・コーニッシュサイダーファーム蒸留所 (Healey's Cornish Cyder Farm) |
⑯ | ダートムーア蒸留所 (Dartmoor) |
⑰ | アイル・オブ・ワイト蒸留所 (Isle of Wight) |
⑱ | アバーフォールズ蒸留所 (Aber Falls) |
⑲ | ダ・ヴィーレイ蒸留所 (Da Mhile) |
⑳ | ペンダーリン蒸留所 (Penderyn) |
各蒸留所の概要
各蒸留所の情報を簡単にまとめていきます!
レイクス蒸留所(Lakes)
ポイント
ロックランザ蒸留所(旧アイル・オブ・アラン)を手がけたハロルド・カリー氏の息子である,ポール・カリー氏が中心となって創業させた蒸留所です。
その立地はレイク・ディストリクト国立公園の中であり,英国で最も流れが早いとされるダーウェント川のほとりと,豊かな自然に囲まれた環境となっています。
ウイスキーの生産にはスコットランドでも見かけるような,普通のポットスチルが使用されており,フォーサイス社製でランタン型とバルジ型が1基ずつ設置されています。
コンデンサーが非常に個性的で,通常は銅製の場合が多いですが,銅とステンレスが併用されたものを備えています。
レイクスはジンを作っていることでも知られていましたが,2018年ころからウイスキーをリリースしており,日本でも割とよく見かけるボトルとなってきています。
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ダーラム蒸留所(Durham)
ポイント
ダーラム蒸留所はもともとジンやウォッカを製造する蒸留所として2014年に創業していました。
2018年よりスコットランドに程近いニューカッスル・アポン・タインの街に拠点を移すタイミングでウイスキーの製造をはじめました。
イングランド北東部において,初めてシングルモルトを作る蒸留所としてブランディングを展開しており,公式サイトよりウイスキーの提供を確約する投資パッケージなどの販売されています。(日本からの購入は難しそうです…)
おそらく今後数年以内に初にシングルモルトがリリースされるはずなので,日本に入ってくることに期待しましょう!
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クーパーキング蒸留所(Cooper King)
ポイント
クーパーキング蒸留所は2014年にイングランド東部のヨークシャーで創業しました。ウイスキー作りに関しては非常に独特なルーツを持ち,参考とした蒸留所はオーストラリアのタスマニア島にある小さな蒸留所であるとか。
そのため蒸留器はタスマニアで作られた容量900リットルの銅製ポットスチルが採用されており,2回蒸留が行われています。また熟成もタスマニアで一般に使用される容量100リットルの小さな樽を使用するため,熟成の進行はとても早いのが特徴です。
ほかにも糖化を手作業で行っていたり,発酵に5〜7日間という極度に長い時間をかけていたり,非常に興味深いポイントが多い蒸留所となっています。
ちなみにクーパーキングという名称は,創業者の高祖父にあたるチャールズ・クーパー・キングが由来とのことです。
シングルモルトのリリースは2023年を予定しているとのことなので,期待して待ちましょう。
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スピリット・オブ・ヨークシャー蒸留所(Spirit of Yorkshire)
ポイント
スピリット・オブ・ヨークシャー蒸留所は,2013年からビール作りを手がけていたメラー家によって,2016年よりウイスキー蒸留所として稼働した蒸留所になります。
トム・メラー氏はビール製造をしていた頃より,ウイスキー作りを行う野望を持っており,今は亡きジムスワン博士のコンサルティングを受けることで実現に至りました。
彼らはビール作りに熟達していたため,醸造所から6キロほど離れた場所にスチルハウスを建設し,ウォッシュを移送して蒸留するという形態を取っています。
既に複数種類のシングルモルトがリリースされていますが,日本では未流通な模様。入手の機会がきた際には逃したくありません。
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チェイス蒸留所(Chase)
ポイント
チェイス蒸留所は2008年にポテトウォッカやジンを作る目的で,ウェールズ付近のヘリフォードの街の郊外で創業されました。
チェイスはウイスキーを手がけているわけではありませんが,特にウォッカの生産においてアイラモルトの熟成に使用されたカスクでの樽熟を行うなど,こだわりの蒸留酒作りを行っています。
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コッツウォルズ蒸留所(Cotswolds)
ポイント
コッツウォルズ蒸留所は2014年にコッツウォルズ地方で創業しました。創業に際してはボウモアに勤めていたハリー・コックバーン氏と今は亡きジムスワン博士によるコンサルタントを受けていました。
錚々たるメンツを見るに,創業時点から成功が確約されていたようにも感じますね。
ウイスキー作りは全て地元産の大麦を原料とし,概ねスコッチウイスキーの生産に習った手法で作られています。
ポットスチルはフォーサイス社製のものが2基,ほかにジン用のホルスタイン社製のハイブリッド型ジンスチルも導入されています。
創業から3年後の2017年には既にシングルモルトをリリースしており,既にコンペティションでの受賞歴も持つ実力派。
日本でも良くボトルを見かけるので,スコッチウイスキーに飽きてきた方は試してみてはいかがでしょう。
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ワーフ蒸留所(Wharf)
ポイント
ワーフ蒸留所は2014年にウォッカやジン,アップルブランデーなど多様な酒類を作る目的で創業された蒸留所であり,ウイスキーの製造には2015年から着手しています。
蒸留酒の製造にはポルトガルで作られた小さめのアランビック型スチルが使用されています。
公式サイトのストアでは3年熟成に満たない点を除き,ウイスキーと同じ様に作られたスピリッツとして,3回蒸留を経た原酒がボトリングされています。
また2018年にはキャトル・クリープという名称でシングルモルトがリリースされています。
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セント・ジョージズ蒸留所(St.George's)
ポイント
セント・ジョージズ蒸留所は2006年,イングランド東部のノーフォークにて農業と建設業を営んでいたネルストロップ家によって設立されました。この地域一帯は大麦の一大産地としても知られています。
ウイスキーの生産は2006年の12月から着手しており,イングランドのクラフト蒸留所界ではパイオニア的存在。作られるウイスキーは地域にちなんでノーフォーク・ウイスキーと呼ばれています。
創業に際してフォーサイス社製でランタン型の初留器とバルジ型の再留器を備え,かつてラフロイグの蒸留所長を務めたイアン・ヘンダーソン氏を蒸留責任者に迎え入れたことから注目を浴びました。
公式のシングルモルトは「ザ(ジ)・イングリッシュウイスキー」というブランドとして販売されています!
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アドナムス・コッパーハウス蒸留所(Adnams Copper House)
ポイント
アドナムス・コッパーハウス蒸留所は2010年,アドナムスビール社がサフォーク州サウスウォルドにあるソロベイ醸造所内に蒸留設備を設置したことで成立しました。
サウスウォルドの街は北海に面したサフォーク海岸沿いにあり,人口はわずか900人程度でありながら,美しいビーチや象徴的な灯台があることから環境客が多く訪れる場所です。
蒸留器は2塔式コラムスチルや上部に3段の精留棚を有するポットスチルなどが設置されており,ビール作りで培った知識をもとに仕込み・発酵を行い,これらのスチルを活用してジンやウォッカ,シングルモルトウイスキー,ライモルトウイスキーなどを製造販売しています。
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ジ・オックスフォードアーティザン蒸留所(The Oxford Artisan)
ポイント
ジ・オックスフォードアーティザン蒸留所はオックスフォードで初めて創業されたクラフト蒸留所であり,2017年に創業されました。
創業に際して植物園や博物館,古代植物学社などと協力し,かつて地元に存在したとされる古代穀物を復活させ,それらを原料としたジンやウォッカ,ライスピリッツなどの生産が行われています。
蒸留器は非常に個性的なポールプリダム社製のカスタムメイド品で,ポットスチルと2塔式カフェスチルを組み合わせたものが使用されています。
モルトウイスキーやライウイスキーの生産も順次開始されているようです!
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ビムバー蒸留所(Bimber)
ポイント
ビムバー(ビンバー)社は元々ジンやウォッカを手がける蒸留酒メーカーでしたが,2015年にウイスキー蒸留所を解説し,翌年から生産を開始しています。
ビムバーという名称はポーランド語で「月光」を意味しており,創業者の祖先が密造酒(ムーンシャイン)を製造していたことにちなんで名付けられました。
ウイスキー製造においては,ワーミンスターモルティングス社から英国産のモルトを仕入れ,ポルトガルのホヤ社製ポットスチルが使用されており,熟成はバーボンや各種酒精強化ワイン樽で行われています。
2019年から順次ウイスキーのリリースも開始されています。
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ロンドン蒸留所(London)
ポイント
ロンドン蒸留所は2012年,ダレン・ルーク氏とニック・テイラー氏によってテムズ川南岸のバターシーにて創業されました。
2013年内にウイスキー製造免許を取得し,生産が開始されており,ジンやライウイスキー,シングルモルトウイスキーなどが既にリリースされています。
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イーストロンドン蒸留所(East London)
ポイント
イーストロンドン蒸留所は2014年に操業を開始しており,ロンドンでウイスキーが作られるのは1904年のリーヴァレー蒸留所の閉鎖以降では,このイーストロンドンが最初となりました。
熟成に使用する樽にひとクセを有しており,小型のフレンチオーク樽を初めとして栗やアカシアなど,様々な木材製のものが使用されています。
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コッパーリベット蒸留所(Copper Rivet)
ポイント
コッパーリベット蒸留所はロンドンの南東側にあるチャタム市にて,地元のラッセル家が2016年に創業した蒸留所になります。
バルジ型ポットスチルやコラムスチルが設置されており,ローカルな契約農家から購入した穀物を原料とし,クラフトジンやウォッカ,ラム,ウイスキーなどが製造されています。
熟成に使用する樽はアメリカンオークやフレンチーク,ワイン樽,バーボン樽,栗材の樽など多様なものが採用されています。
ウイスキーはマストハウスという名称で既にリリースされており,モルトのみを原料にコラムスチルで蒸留したコラムモルトウイスキーやシングルモルト,シングルグレーンなどがあります。
(3種セットが気になりますね…)
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ヒーリーズ・コーニッシュサイダーファーム蒸留所(Healey's Cornish Cyder Farm)
ポイント
ヒーリーズ・コーニッシュサイダーファーム蒸留所はコーンウォール地方にて2003年よりウイスキーの生産が行われています。
生産に際してはビールづくりを行うセント・オーステル・ブリュワリーと提携し,醸造所で作られたウォッシュを蒸留所に運び込んで蒸留するという独特なスタイルが確立されています。
スチルはフォーサイス社製で容量1,200リットルと小型のものが使用されており,2011年に7年熟成のウイスキーが初めてリリースされています。
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ダートムーア蒸留所(Dartmoor)
ポイント
ダートムーア蒸留所はイングランド南部のデボン州,起伏の激しい丘陵地帯に位置しています。地元のウイスキー好きたちがアイラ島を訪れた際に,ウイスキー作りを決心したことにより創業された蒸留所です。
容量1,400リットルのコニャック用シャラントスチルを導入し,2016年からウイスキーの生産が始められており,2020年には3年熟成のボトルが,2022年には5年熟成のボトルが販売されています。
しかしながら購入できるのは公式サイトからで英国本土への配送のみなので今のところ入手は難しそうです。
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アイル・オブ・ワイト蒸留所(Isle of Wight)
ポイント
アイル・オブ・ワイト蒸留所はイングランド南岸のポーツマス沖に浮かぶワイト島,その東部に位置します。元々ジンやウォッカを作っており,蒸留所にはレストラン等も併設されています。
蒸留酒の生産は2015年末より島内産の大麦を原料とし,発酵までをゴッダーズビール醸造所で行い,醸造液を蒸留所に運んで蒸留するスタイルで行われています。
熟成にはバーボン樽とフレンチオーク製の白ワイン樽を中心に用い,各種酒精強化ワイン樽やコニャック樽などを後熟用として採用しています。
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アバーフォールズ蒸留所(Aber Falls)
ポイント
アバーフォールズ蒸留所はその名の通り,ウェールズの観光名所であるアバーフォールズという滝の麓に位置しています。2017年からバルジ型のポットスチルとジン用のスチルを導入しており,既にジンが販売されています。
またアバーフォールズは1900年代初頭以来,北ウェールズで創業した第一号の蒸留所となっており,既にシングルモルトがリリースされていますが,日本では未発売のため現状購入は難しそうです。
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ダ・ヴィーレイ蒸留所(Da Mhile)
ポイント
ダ・ヴィーレイ蒸留所はチーズを生産する有機栽培農家として知られるジョン・サベージ・オンストウェッダー氏が創業した家族経営の蒸留所です。
創業当初はスプリングバンクやロッホローモンドを使用したブレンデッドウイスキーをダ・ヴィーレイと名付けて販売していましたが,2011年頃にコラム式ハイブリッド蒸留器を採用してウイスキー作りを始めました。
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ペンダーリン蒸留所(Penderyn)
ポイント
ペンダーリン蒸留所は1998年,ウェルシュ・ウイスキー社によって南ウェールズのブレコン・ビーコンズ国立公園の南端で創業されました。ペンダーリンという名称は「鳥の頭」という意味で,蒸留所が建つ場所にある集落の名前です。
非常に個性的なポットスチルが採用されており,精留棚が上部に6段,横の細い塔に18段設置されているため,1基だけでアルコール度数を91%まで高めることができるという優れもの。
このポットスチルの設計はサリー大学のデイビッド・ファラデー博士が設計したものであり,合計2基が導入されています。
創業当初はウォッシュをウェールズの首都カーディフのビール工場で作っていましたが,現在は蒸留所内で糖化〜蒸留を行うことが可能となっています。
オフィシャルボトルも既にいくつかリリースされており,日本でも流通しています。