記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「クライドサイド蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
クイーンズドック|モリソン家|ポンプハウス|グラスゴー
クライドサイドの特徴
伝統的なローランドスタイル|ノンピート|梨|フローラル|バニラ
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
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【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
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クライドサイド蒸留所
クライドサイド蒸留所の立地と概要・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所諸元
創業年 | 2017年 |
所有会社 | モリソングラスゴー・ディスティラーズ社 |
地域分類 | スコットランド,ローランド |
年間生産量 | 50万リットル |
発酵槽 | ステンレス製8基 |
ポットスチル | 初留1基・再留1基 |
仕込み水 | カトリン湖 |
ブレンド先 | − |
「クライドサイド蒸留所」立地と概要
出典:whisky.com
ポイント
クライドサイド蒸留所はスコットランドのローランド地方に位置しています。より具体的には大都市グラスゴーの内部,都市を東西方向に流れるクライド川沿い,かつて水上輸送の拠点として利用された「クイーンズドック」の跡地に所在しています。
また蒸留所の建物は,クイーンズドックが現役使用されていた時代,その入口にある可動式の橋梁を動かすために建てられた「ポンプハウス」がそのまま転用されており,2016年の改装工事を経て蒸留所の一部となりました。
またクライドサイドは2017年に創業したばかりの新興蒸留所ですが,ローランド地方で伝統的な軽やかでクリーンなテイストのウイスキーを作るべく,多くの工夫が為されています。その詳細については後の製法解説の項目にて言及します。
ちなみに「クライドサイド(Clydeside)」という名称は,蒸留所の建てられた立地がクライド川のほとりであったことにちなんで,名付けられています。
「クライドサイド蒸留所」蒸留所の歴史
クライドサイド蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
2014年 | クイーンズドックの跡地に建つポンプハウス内に蒸留所を建設するという,グラスゴーモリソン・ディスティラーズ社の計画が承認される |
2015年 | 修正計画書が承認される |
2016年 | ポンプハウスを蒸留所へと変える改装工事が始動する |
2017年 | 蒸留所が完成する 11月6日に初めての蒸留,11月23日にビジターセンターがオープンされた |
2021年 | 10月15日にクライドサイド初のオフィシャルシングルモルトがリリースされる |
クライドサイドに纏わるストーリー
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「クライドサイド蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
50万リットル - 仕込み水
カトリン湖 - 大麦品種
コンチェルト - モルトスター
シンプソンズ社 - ピーテッドレベル
ノンピート - マッシュタン材質
ステンレス製セミロイター - マッシュタン容量
1.5トン - ウォート抽出量
7,500L - ウォッシュバック
ステンレス製8基 - 酵母
ララモンド社製ドライイースト
- ウォッシュバック容量
8,000L - 発酵時間
72時間 - スチル加熱方式
蒸気間接感熱 - ポットスチル(初留)
ストレート型1基 - ウォッシュスチル容量
7,500L - ポットスチル(再留)
バルジ型1基 - スピリッツスチル容量
5,000L - コンデンサー
シェル&チューブ - ミドルカットの幅
76.5〜71% - ウェアハウス形式
敷地外
製麦について
出典:theclydeside.com / traveling-savage.com
ポイント
クライドサイド蒸留所では自社製麦を実施しておらず,製麦工程は外部の専門業社(モルトスター)であるシンプソンズ社に委託しています。
大麦の品種はコンチェルト種とされており,ローランドにある7つの農場から調達したもののみ。ピーテッドレベルは伝統的なローランドスタイルを体現するために,基本的にノンピートタイプとされています。しかし最近では実験的な試みとして僅かにピーテッド麦芽の仕込みも行われているとのことです。
用意された原料のモルトはポルテウス社製の4ローラー式モルトミルで粉砕し,グリストとされます。またこのグリストはその粒径によってハスク(粗)・グリッツ(中)・フラワー(細)に分類され,それぞれの構成比は「2:7:1」とされます。
次の工程は糖化になります!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について
出典:theclydeside.com / traveling-savage.com
ポイント
クライドサイド蒸留所はクライド川の沿線に位置していますが,仕込み水は蒸留所から65kmほど北西に離れた国立公園内にあるカトリン湖の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり1.5トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。
ここが特徴!
- 糖化1バッチで得られるウォートは約7,500Lとなる
- ウォートはクリアな色味で確保されており,一般的にこのようなウォートからは軽やかでクリーンなテイストが得られる
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について
出典:theclydeside.com / traveling-savage.com
ポイント
クライドサイド蒸留所では容量8,000リットル(張込み7,500リットル程度)でステンレス製のウォッシュバックが8基設置されています。使用される酵母はララモンド社製でドライタイプのディスティラーズ酵母とされています。
ここが特徴!
- 発酵時間は72時間と比較的長めに設定されていることから,発酵終期には乳酸発酵が卓越し,クライドサイドが求める軽やかなローランドスタイルのテイストを得ることに一役買っている
- ウォッシュのアルコール度数は約8.5%となる
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について
出典:whisky.com
ポイント
クライドサイド蒸留所にはストレート型で容量7,500リットルのウォッシュスチルが1基,バルジ型で容量5,000リットルのスピリッツスチルが1基設置されています。
ネックはスラリと長く伸び,ラインアームは概ね地面と水平とされています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式とされています。
また3回蒸留を行う蒸留所も多く残るローランド地方に位置していますが,蒸留回数は2回蒸留とされています。しかし,伝統的なローランドスタイルを表現するために,フルーティですっきりとしたニューポットが多く得られるとされる,ゆっくりとした速度の蒸留が行われています。
ここが特徴!
- 初留では,ウォッシュバック1基分のウォッシュ(7,500L)がスチルに投入されており,一般的にチャージに対して「蒸留液:残留物=1:2」程度となることから,初留では2,500リットル程度のローワインが得られているものと考えられる
- ローワインの度数は30〜31%程度となる
- 再留ではローワインと前回蒸留でカットされた前留・後留を合わせた約5,000Lの溶液がチャージされ,ミドルカットの幅は76.5%〜71%の間とされており,最終的に約850Lのニューポットが完成する
- バルジ型の再留器では,ボール状の膨らみ部で蒸気の環流が促進されるため,クライドサイドが求める軽やかな香味を多く得ることができる
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について
ポイント
クライドサイド蒸留所にはウェアハウスが併設されていないため,同じセントラルベルト地方に位置する敷地外のウェアハウスで熟成が行われています。
使用する樽の方針については,今は亡きウイスキーの専門家であるジム・スワン博士の手引きを受けており,バーボン樽・シェリー樽・STR(Shaved Toasted Re-Charred)樽などの多彩な樽の調達が為されています。
蒸留によって得られたニューポットは,通常加水によってアルコール度数を63.5%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓
オフィシャルボトル一覧
クライドサイド蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
クライドサイド
ストブクロス
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ポイント
「クライドサイド ストブクロス」は当蒸留所唯一のオフィシャルシングルモルトになります。ストブクロスという名称は蒸留所の近傍にある交差点にちなんで名付けられています。
その原酒構成は1stフィルのバーボン樽原酒9割,シェリー樽原酒1割とされており,伝統的なローランドスタイルとして,軽やかでやさしくスムースなテイストに仕上がっています。2017年創業の新興蒸留所ながら,このストブクロスでは立体感のあるボディ感に芯のあるフィニッシュが表現されています。
香り
洋梨|青リンゴ|薔薇のようなフローラル感|クリーミーなバニラ|軽快なスパイス
味わい
バニラの甘さ|りんご系フルーティ|フローラル|バナナ感|ビターなオーク香|ミント
余韻
ウッディなビター感と心地よいミントのような軽快な香味が残る
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参考資料
参考サイト:クライドサイド公式 | whisky.com | scotchwhisky.com | traveling-savage.com