記事の概要
ウイスキーの風味はさまざまな身近な食べ物で形容されることがあります。例えばオレンジやスパイスなど,多くのウイスキーに共通するような食べ物もありますが,特にシェリー樽で熟成されたウイスキーにおいては「深くビターなチョコレートのような風味」に感じられるものがあります。
この記事では,そんなチョコレートのような奥深い甘みを特徴とした銘柄を全部で10本厳選してきましたので,それぞれご紹介いたします。是非ウイスキー選びのご参考としてください…!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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『チョコ』っぽい味がするウイスキー10選
スカリーワグ
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | ブレンデッドモルト |
ポイント
『スカリーワグ』は,スコットランドのボトラーズ企業である,ダグラスレイン社が生産を手がけるリマーカブルリージョナルモルトシリーズのうち,スペイサイドモルトに特化したブレンデッドモルトウイスキーのブランドになります。
同ブランドを象徴する可愛らしいワンちゃんについては,レイン家が飼っているフォクステリアという種類の愛犬がモチーフとされているらしく,ワンちゃんの可愛い仕草を表す「スイート」と,ウイスキーの甘く美味しい味わいを表す「スイート」をかけた言葉遊びにもなっているとのことです。またブランドのキーモルトは,マッカラン・モートラック・グレンロセスなどの著名な蒸留所の原酒とされています。
そしてこの『スカリーワグ』は,同ブランドの最も標準的なラインナップであり,スパニッシュオークのシェリー樽で熟成された原酒が中核に据えられている逸品。その味わいでは,ダークチョコレート系の深みを感じる要素や,ドライフルーツのような濃厚な甘みなど,シェリー樽熟成のスペイサイドモルトらしさを感じる,華やかかつラグジュアリーな香味を楽しむことができます。
香り
豊かなスパイス,甘いオレンジ,レーズン,穀物の甘み,ミルクチョコ,果実の酸味
味わい
煮込んだフルーツ,シナモン,ウッディ,ダークチョコ,蜂蜜,乳酸感,ミント
▽
アベラワー12年ダブルカスクマチュアード
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『アベラワー』は,スペイサイドを流れるスペイ川の中流域に建つ,アベラワー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の所有者は蒸留酒業界でも2番目の事業規模を誇るペルノリカール社で,意外にもこのアベラワーはあのグレンリベットに次いで同社に強くプッシュされているブランドであり,特にフランスではNo.1の人気を誇るスコッチウイスキーとして深く浸透しています。そのウイスキー作りではノンピートタイプの麦芽及び,ベンリネス山の中腹から引いてきた清澄な水を原料とし,伝統的なポットスチルによる2回蒸留が実施されているほか,熟成をシェリー樽とバーボン樽の2種類の樽で行い,それぞれの魅力が映えるように丁寧にブレンドを重ねる「ダブルカスクマチュレーション」を特徴としています。
そしてこのアベラワー12年は,同蒸留所の最もスタンダードなラインナップであり,バーボン樽と南スペイン産のシェリー樽のダブルカスクマチュレーションで作られる魅力的な原酒がフィーチャーされている逸品。その味わいでは,ノンピートらしい華やかさをベースに,シェリー樽由来のドライフルーツやチョコレートのような香味,そしてバーボン樽由来の蜂蜜のようなナチュラルな甘みがバランスよく乗っかっており,さながらデザートのような強い甘みを楽しむことができます。
香り
フルーツケーキ,軽快なバニラ,蜂蜜,オークスパイス,シナモン,穀物感
味わい
濃厚な果実感,柑橘感,蜂蜜,シナモン,バニラ,チョコレート,円熟した樽感
▽
グレンアラヒー12年
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンアラヒー』は,スコットランドのスペイサイド地方に所在する,グレンアラヒー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の建物は,かつてマクダフやタリバーディンの設計も手がけてきたデルメ・エヴァンス氏によって設計されているのが特徴で,各種生産設備に関しては,工程の流れごとに自然流化が可能な高低差を設けることによって,エネルギー的な無駄が少ないのがポイント。また作られるウイスキーについては,基本的にノンピートタイプの華やかなテイストを特徴としており,長らくブレンデッド用原酒メインの体制となっていましたが,2017年に蒸留所の所有者が変更されてからは,シェリー樽原酒をふんだんに使用したシングルモルトリリースを展開したことで,一躍人気のモルトとなりました。
そしてこのグレンアラヒー12年は,同蒸留所のラインナップの中ではミドルグレード的なボトルであり,PXシェリー樽,オロロソシェリー樽原酒をメインに,ヴァージンオーク樽原酒や赤ワイン樽原酒をヴァッティングして作られている逸品。その味わいでは,同系統のウイスキーの中でも飛び抜けて強いドライフルーツの甘みや,ヘザーハニーの自然な甘み,そしてダークチョコレートのような深い甘みなど,シェリー樽熟成ウイスキーの美味しいところが凝縮されたテイストを楽しむことができます。
香り
濃密なドライフルーツ,黒糖,ウッディ,コーヒー,レーズン,バニラ,焼き菓子
味わい
圧巻のドライフルーツ,濃いカスタード,ダークチョコ,タンニン&スパイシー
▽
エドラダワー10年
度数 | 40% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『エドラダワー』は,スコットランドの南ハイランド地方に所在する,シグナトリー社傘下のエドラダワー蒸留所が生産を手がける,シングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は1825年と今では老舗の蒸留所ですが,長い歴史の中で幾度もの所有者の変更があり,最終的に2002年以降はスコットランドのボトラーとして著名なシグナトリー社の傘下に治りました。そのウイスキー作りは非常に伝統的であり,マッシュタンは旧型のプラウ&レイキ式,ウォートの冷却装置のオープンクーラー,そしてコンデンサーも屋外設置のワームタブ式と,歴史の深さを感じる設備によって,古き良きを感じさせる本格的なシングルモルトが少量生産されています。
そしてこのエドラダワー10年は,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,オロロソシェリー樽とバーボン樽ので熟成された原酒を組み合わせることによって作られている逸品。その味わいでは,ドライフルーツのような濃い果実の甘みや,ダークチョコレートを思わせる深くウッディな苦味,そしてメープルシロップのような魅惑的な甘さなど,ハイランドモルトらしい華やかな風味の数々を楽しむことができます。
香り
徹底的なフルーティ香,シェリーの甘み,魅惑のバニラ,ウッディな苦味,ナッツ
味わい
ラムレーズン,ダークチョコ,ウッディ,ローストナッツ,バニラ,シェリー香
▽
グレンドロナック12年
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンドロナック』は,スコットランドの東ハイランドに所在する,ブラウンフォーマン社傘下のグレンドロナック蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。同蒸留所のウイスキー作りの特徴としては,原料の大麦麦芽をノンピートタイプとしつつ,蒸留工程では低速な蒸留によって華やかな香味を保つ低沸点成分を多く確保していたり,熟成工程では全体の約85%にシェリー樽を適用していたり,華やかかつフルーティな風味が表現されているのがポイントです。
そしてこのグレンドロナック12年は,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,スペイン産の最高級なオロロソとペドロヒメネスを詰めていたシェリー樽にて,12年以上の熟成が施された原酒が採用されており,辛口と甘口の両者のシェリー樽のによる魅力がバランスよく反映されている逸品。その味わいは,バニラやレーズンのような力強くフルボディな甘みのファーストインプレッションに始まり,余韻にかけてはビターかつスパイシーな樽感が主張を強めてくるなど,深く複雑な満足感を楽しむことができます。またそのテイストの完成度の高さから,巷で値上げが続いているマッカランの代替としても名が挙がる有力なボトルです。
香り
甘い穀物,濃いレーズン,キャラメル感,シナモン,ナッツチョコ,ジンジャー感
味わい
柑橘の皮,ドライフルーツ,ショコラ感,暖かいスパイス,ナッツ,穀物系の甘み
▽
アラン シェリーカスク
度数 | 55.8% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『アラン』は,スコットランドの南西部,キャンベルタウンで有名なキンタイア半島のすぐ東側に浮かぶアラン島に所在する,ロックランザ蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。同蒸留所の創業は1994年とかなり新しく,創業当初こそ赤字経営が続いていたものの,小規模経営ゆえに執り行えた斬新な試みが功を奏し,今ではクラフト蒸留所のパイオニアとして世間からの大人気を獲得するに至りました。
また蒸留所の建つアラン島の周辺は,メキシコ湾流の影響による比較的温暖な気温や,山の澄み切った空気,海から吹く潮風など,ウイスキーの熟成に良い影響を与える要素が多いのがポイント。その熟成工程では,数種類のウェアハウス形式と多様な種類の樽を使い分けることにより,魅力的な環境要因をうまく原酒に反映し,アラン島らしい個性的なウイスキーを作り出すことに成功しています。
そしてこの『アラン・シェリーカスク』は,同蒸留所のスタンダードなラインナップに属する一本であり,全期間をファーストフィルのシェリーホグスヘッドで熟成させた原酒が,カスクストレングスでボトリングされている逸品。その味わいでは,アランのフルーティ&フローラルな風味をベースとしながら,シェリー樽由来の強烈なレーズンの甘みやチョコレート感,そしてスパイシー感など,非常にパワフルかつ魅力的なテイストを楽しむことができます。
香り
フローラル,濃密なレーズン,タンニン,ダークチョコ,樽感,ミネラル,柑橘
味わい
濃密なレーズン,コゲウッディ,ナッツ,ダークチョコ,キャラメル,フローラル
▽
サントリーリージェント
度数 | 47% |
容量 | 750ml |
種類 | アメリカンウイスキー |
ポイント
『サントリーリージェント』は,日本のサントリー社が生産を手がける,ジムビーム蒸留所の原酒を使用した特殊なアメリカンウイスキーのブランドになります。同ブランドは,2023年末頃に日本に導入された新規の銘柄であり,「ケンタッキーの伝統と,日本のブレンド技術の融合」というキャッチコピーを掲げ,既存の概念に縛られない新たな香味作りが行われているのがポイントです。
具体的なウイスキーの特色としては,通常のバーボンウイスキーが新樽で熟成させることが義務付けられていたのに対し,このリージェントはそこから敢えて逸脱し,サントリー社に蓄積されたブレンド技術を基に,シェリー樽と赤ワイン樽によるフィニッシュが実施されています。その味わいでは,ストレートバーボンらしい分厚いボディを基調としつつ,ワイン樽由来のベリー感やタンニン感などの力強さ,そしてシェリー樽の華やかな果実感など,満足感に長けたパワフルな風味を楽しむことができます。
香り
パワフル溶剤感,ゴツいバニラ,ラム感,ダークチョコレート,スパイス,メロン
味わい
溶剤感,ダークチョコレート,レーズン,アーモンドバニラ,ウッディ,スパイス
▽
M&Hエレメンツ シェリーカスク
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『M&H』は,イスラエルのテルアビブに所在するミルク&ハニー蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。同蒸留所は2012年に創業された新興の蒸留所ですが,創業時にはかつて台湾のカバランなどを大成功に導いた立役者でもあるジム・スワン博士のコンサルタントを受けており,イスラエル初の蒸留所として,スコッチの規則を遵守した本格的なシングルモルト作りが展開されています。
そのウイスキー作りにおける最もユニークなポイントは,スコットランドとは完全に異なる地中海性の気候にあり,年間300日にも及ぶ晴天日と,温暖かつ乾燥した大気により,熟成工程における年間のエンジェルズシェアが平均12%にも達するとのことです。そのような環境下では,樽詰めされた原酒は短い時間で多くの要素を樽から吸収し,3年程度の熟成期間であっても,深く複雑な風味を持った円熟感のあるウイスキーを完成させることが可能となっています。
そしてこのM&H・シェリーカスクは,同蒸留所の標準的なラインナップに属する一本であり,スペイン産のオロロソシェリー樽と,ペドロヒメネスのシェリー樽で熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,濃く強力なドライフルーツの甘みや,ダークチョコのような深い苦味,そしてドライかつスイートな穀物感などのダイレクトな甘みが感じられ,2023年のWWAでは世界一美味しいシングルモルトにも輝いた本格的な美味しさを楽しむことができます。
香り
濃いドライフルーツ,甘い木のスパイス,キャラメル,オレンジ感,南国系の果実
味わい
砂糖漬けドライフルーツ,甘くモルティ,ダークチョコレート,南国果実,樽感
▽
カバラン トリプルシェリーカスク
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『カバラン』は,2006年に台湾で創業したカバラン蒸留所が生産を手がける,シングルモルトウイスキーのブランドになります。同蒸留所は台湾初の蒸留所ということで,創業に際しては業界の著名人であるジムスワン博士のコンサルタントを受けており,亜熱帯の気候にて独自のスタイルのシングルモルト作りが展開されてきました。
創業当初こそ正当な評価を受けていませんでしたが,2010年にエジンバラで開催されたブラインドテイスティング大会において,蒸留所の一作目として発売されていたカバラン・クラシック・シングルモルトが優勝を果たしたことにより,世界中にその名声が轟いたという経歴を持ちます。創業初期から評価を獲得できた背景には,スコットランドよりも気温が15度ほど高い台湾の温暖な環境の効力があり,スコットランドのウイスキーの3分の1程度の熟成期間であっても,深くどっしりとした円熟感が得ることが可能となっているとこのとです。
そしてこのカバラン・トリプルシェリーカスクは,そんな台湾の温暖な環境において,オロロソ,ペドロヒメネス,モスカテルの3種類のシェリー樽で熟成された原酒のみが使用されている逸品。その味わいでは,カバラン特有の南国系の甘みを主軸に,ビロードのような精細なシェリーの甘みや,キャラメリゼナッツ,カカオの濃いチョコのような香ばしさなど,甘く深く多層的な美味しさが表現されています。
香り
熟したベリー,ドライフルーツ,ウッディ,ダークチョコ,シナモン&クローブ,蜂蜜
味わい
極甘ドライフルーツ,甘い蜂蜜シロップ,キャラメリゼナッツ,ビターチョコ,木
▽
グレンモーレンジ シグネット
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
種類 | シングルモルト |
ポイント
『グレンモーレンジ』は,スコットランドの北ハイランド地方に所在する,ルイヴィトン社傘下のグレンモーレンジ蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所のウイスキー作りでは,ごく僅かにピートが焚かれた大麦麦芽と,ミネラルを多く含んだ硬水を原料とし,スコットランドの大規模な蒸留所の中では最も背が高いポットスチルによる蒸留が行われているのが大きなポイント。特に背の高いキリンのようなポットスチルでは,ラインアームへと流出できる蒸気に制限が生じることにより,華やかな香味を呈する蒸気が厳選されやすくなると考えられており,これがグレンモーレンジの華やかな香味を得るのに重要な役目を果たしていると考えられています。
そしてこのグレンモーレンジ・シグネットは,同蒸留所の高級ラインナップの一つであり,じっくりと深煎りして茶色く色づいたチョコレートモルトを原料とし,シェリー樽,バーボン樽,バージンチャードオーク樽によって熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,オランジェのような柑橘とチョコが融合した甘みや,ナッツ入りのバニラアイスのような甘み,そしてスパイシーなウッディ感など,高級感を感じるエレガントなテイストを楽しむことができます。
香り
チョコレートレーズン,オレンジピール,スパイシー,メープルシロップ,強く樽感
味わい
オランジェ,メープルシロップ,モルティ,エスプレッソ,スパイス,ローストナッツ