記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「ブレアアソール蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
環境客数ディアジオ最多/カワウソの小川/ベルのキーモルト
ブレアアソールの特徴
9割ブレンデッド用/ノンピート/甘さ主体シェリー樽/オイリー/複雑で多層的
ブレアアソール蒸留所
ブレアアソール蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1798年 |
所有会社 | ディアジオ社 |
地域分類 | スコットランド 南ハイランド |
発酵槽 | ステンレス製6基 |
ポットスチル | 初留2基・再留2基 |
仕込み水 | オルトダワー川 |
ブレンド先 | ジョニーウォーカー ベルなど |
「ブレアアソール蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ブレアアソール蒸留所はスコットランドの南ハイランドに位置しています。より具体的にはエジンバラから幹線A9号を北に120kmほど進んだところにあるピトロッホリーの町,そのメインストリート沿いに位置しています。
このピトロッホリーの町は観光地として有名であるほか,「ハイランドの玄関口」とも呼ばれる好立地であることから,ウイスキーファンか否かを問わず多くの環境客が来訪します。そのためブレアアソール蒸留所を訪れる人も非常に多くなっています。
周辺の景色は非常に美しく,蒸留所のほど近くには著名なボトラー企業であるシグナトリー社が所有するエドラダワー蒸留所もあるので,観光に訪れる際は是非とも立ち寄りたい町ですね。
ちなみにブレアアソールでは仕込み水に敷地内を流れるオルトダワー川の水を採用していますが,このオルトダワーという名称はゲール語で「カワウソの小川」という意味を持っています。これに起因して唯一のオフィシャルボトルである花と動物シリーズのラベルにはカワウソが描かれています。
「ブレアアソール蒸留所」蒸留所の歴史
ブレアアソール蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1798年 | ジョン・スチュワート氏とロバート・ロバートソン氏が前身のアルダー蒸留所を創業する しかし経営難によりまもなく閉鎖状態となる |
1825年 | ジョン・ロバートソン氏によって蒸留所が再開される 蒸留所名を付近の村にちなんでブレアアソールに変更する |
1826年 | 蒸留所がアレキサンダー・コナチャー社にリースされる |
1827年 | 蒸留所がアレキサンダー・コナチャー社の所有となる |
1829年 | 蒸留所がピーター・フレイザー社の所有となる |
1852年 | 蒸留所が再びアレキサンダー・コナチャー社の所有となる |
1860年 | 蒸留所がエリザベス・コナチャー氏に引き継がれる |
1882年 | 蒸留所がピーター・マッケンジー社に買収される |
1897年 | ピーター・マッケンジー社がダフタウン-グレンリベット社を引き継ぎ,ピーター・マッケンジー・ディスティラーズ社が設立される |
1932年 | 蒸留所が一時閉鎖される |
1933年 | ピーター・マッケンジー社が蒸留所と共にアーサー・ベル&サンズ社に引き継がれる 蒸留所は引き続き閉鎖状態 |
1949年 | 蒸留所が再開される |
1973年 | ポットスチルが2基から4基に増設される |
1985年 | アーサー・ベル&サンズ社がギネス社に買収される |
1987年 | ビジターセンターがオープンされる |
1998年 | 蒸留所がディアジオ社の所有となる |
ブレアアソールに纏わるストーリー
「ブレアアソール蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
280万L - 仕込み水
オルトダワー川 - モルトスター
ディアジオの製麦部門 - ピーテッドレベル
ノンピート - マッシュタン材質
ステンレス製セミロイター - マッシュタン容量
1バッチ8.2トン - ウォッシュバック
ステンレス製6基 - 酵母
クリーム状 - ウォッシュバック容量
40,000L - 発酵時間
ショート46時間
ロング104時間
- スチル加熱方式
蒸気間接加熱 - ウォッシュスチル
ストレート型2基 - ウォッシュスチル容量
14,000L - スピリッツスチル
ストレート型2基 - スピリッツスチル容量
11,500L - コンデンサー
シェル&チューブ - 本留の度数
67% - 樽詰め度数
63.5% - ウェアハウス形式
ダンネージ・ラック
製麦について
ポイント
ブレアアソール蒸留所ではかつてフロアモルティングによる自社製麦が行われていましたが,現在はディアジオ社の製麦部門より原料のモルトを購入しています。
ピーテッドレベルについては,ブレンデッド用シングルモルト用を問わず,全てノンピートタイプとされています。
仕入れた原料のモルトはポルテウス社製のローラー式モルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について
ポイント
ブレアアソール蒸留所では仕込み水としてオルトダワー川の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり8.2トンの容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。
各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。
通常多くの蒸留所において,ウォートは上澄の清澄な部分のみが確保されていますが,ブレアアソールでは敢えて濁りのある状態で発酵に進むことでナッティ感やモルティ感を強調させています。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について
ポイント
ブレアアソール蒸留所には容量60,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが6基設置されています。使用される酵母はクリーム状のディスティラーズ酵母になります。
糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。
発酵にかける時間はショートの46時間とロングの104時間の2水準が設けられており,ショートでは重めで複雑な香味が得られ,ロングでは乳酸発酵に起因した軽くフルーティなテイストが得られています。
発酵が完了するとアルコール度数約7〜9%程度となったウォッシュを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について
ポイント
ブレアアソール蒸留所には容量14,000リットルでストレート型のウォッシュスチルが2基,容量11,500リットルで同じくストレート型のスピリッツスチルが2基設置されています。
スチルはどれも旧DCL系列のアバクロンビー社製であり,ずっしりとした重心低めの印象。ラインアームは概ね地面と水平となっています。加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。
その形状による蒸気の還流があまり生じないことから,オイリーかつ多層的でラフなハイランドスタイルの原酒が生み出されています。
−初留−
発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと投入され,初留が行われます。初留ではウォッシュに含まれるアルコールの全量が抽出され,アルコール度数が20%強程度となったローワインを得ることができます。
−再留・ミドルカット−
続いてローワインは,前回蒸留時にカットされた前留・後留と共にスピリッツスチルへと投入され,再留が行われます。
再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。
この作業はミドルカットと言い,後留のアルコール度数が1%となるまで継続されます。ブレアアソールにおいて最終的に得られる本留はアルコール度数が約67%程度となり,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーという容器に一時貯蔵されます。
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について
ポイント
ブレアアソール蒸留所にはダンネージ式とラック式の2種類のウェアハウスを使用して熟成が行われています。余談までに蒸留所棟とウェアハウスの間には仕込み水を採取しているオルトダワー川が流れています。
使用される樽について,ブレンデッド(主にベル)に使用される原酒はバーボン樽,シングルモルトリリース用の原酒にはシェリー樽が使用されるケースが多くなっています。
蒸留によって得られた本留は加水によってアルコール度数を63.5%に整えたのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓
オフィシャルボトル一覧
ブレアアソール蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
『花と動物』
ブレアアソール12年
ポイント
ブレアアソールの原酒は99%がブレンデッド用となっているため,この花と動物「ブレアアソール12年」は蒸留所で唯一のオフィシャルシングルモルトとなっています。
ラベルに描かれている動物はカワウソであり,仕込み水を採取するオルトダワー川の名称がゲール語で「カワウソの小川」を意味していることから採用されています。
還流の少ないポットスチルで蒸留され,シェリー樽での熟成を経た原酒を中心に構成されていることから,オイリーで甘く力強く,そしてスパイシー感との調和が取れたテイストが特徴となっています。
香り
ナッティ/濃厚/熟したフルーツ/レーズン/モルティ/オイリー/わずかにスパイシー/フレッシュ
味わい
フルーツの濃厚な甘さ/多層感/オーク/モルティ/強くスパイシー/柑橘系の酸味感/バランスが良い
関連ボトル
ブレアアソール蒸留所の原酒が使用されたボトルもいくつか紹介しておきます!
ハイランドジャーニー
ポイント
著名なボトラー企業であるハンターレイン社の「旅するウイスキー」シリーズのうち,ハイランド地方の蒸留所のモルトだけで構成されたブレンデッドモルトになります。
ブレアアソール・クライヌリッシュ・グレンゴインの7年熟成程度の原酒で構成されており,バニラや熟したりんごのような濃厚な甘さを特徴としています。
ティモラスビースティー
ポイント
こちらも著名なボトラー企業であるダグラスレイン社が手がけているブレンデッドモルトであり,ブレアアソール・グレンゴイン・グレンギリーなどのハイランドモルトを中心として構成されています。
ティモラスビースティは「か弱きケモノ」を意味しており,甘くフローラルで上品な印象のテイストを特徴としています。
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参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / distilando.com