記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「オーヘントッシャン蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
3回蒸留/アーバンモルト/サントリー所有
オーヘントッシャンの特徴
伝統的ローランドスタイル/バーボン樽熟成ベース/ライトでクリーン/繊細な甘み

(余談までに…)
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オーヘントッシャン蒸留所
オーヘントッシャン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1823年 |
所有会社 | ビームサントリー社 |
地域分類 | スコットランド,ローランド |
発酵槽 | オレゴンパイン製4基 ステンレス製3基 |
ポットスチル | 初留1基・中留1基・再留1基 |
仕込み水 | カトリン湖 |
ブレンド先 | ロブロイ,アイラレジェンドなど |
「オーヘントッシャン蒸留所」蒸留所の立地

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所はスコットランドのローランドに位置しています。より具体的には大都市グラスゴーから北西に20分程度離れたローモンド湖との中間地点付近,クライド川の沿岸に位置しています。
そのアクセスの良さから観光客にとってかなり立ち寄り安い立地ですが,郊外とはいえスコットランドで人口が最大の都市グラスゴーの近くであるため,スコットランドらしい自然を好む方はハイランドやスペイサイドを目指した方が良いでしょう。
ローランドにおいて伝統的な製法の3回蒸留を行なっているスコットランドでも数少ない蒸留所のひとつであり,シングルモルトを中心にブランディングされていますが,その割に生産量が年間200万リットルと比較的多いのが特徴です。
ちなみにオーヘントッシャン(Auchentoshan)はゲール語に語源(Achadh t-oisean)があり,「野原の片隅」や「平野の角」の意味を持っているとされています。

「オーヘントッシャン蒸留所」蒸留所の歴史
オーヘントッシャン蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1800年 | ジョン・ブロック氏によって前身のダントッチャー蒸留所が建設された記録が現存している |
1823年 | 名称をオーヘントッシャンに改めて正式に創業される 運営はジョン氏とその息子のアーチボルド氏によって行われていた |
1834年 | ブロック家が破産してしまう 蒸留所がジョン・ハート氏とアレクサンダー・フィルシー氏に買収される |
1877年 | 依然としてフィルシー家による運営が続いていたが,農業の不作が続き蒸留所の売却を余儀なくされる 蒸留所はCHカーティス社に購入される |
1900年 | 蒸留所がアレクサンダー・ファーガソン&Co社によって買収される |
1903年 | 蒸留所がグラスゴーの醸造業社のジョン&ジョージ・マクラクラン社に買収される |
1941年 | 戦争の被害を受けて3棟のウェアハウスが破壊されてしまい,操業停止状態となる |
1948年 | 蒸留所が再開される |
1960年 | 蒸留所がウェルパーク醸造所のJ&Rテネント氏に買収される |
1964年 | ウェルパーク醸造所がチャリントンズ社に買収される |
1967年 | 会社合併により所有者がバス・チャリントンズ社となる |
1969年 | 蒸留所がイーディー・ケアンズ社に買収される |
1984年 | 蒸留所がスタンレー・P・モリソン社(のちのモリソン・ボウモア社)に買収される |
1994年 | モリソン社が日本のサントリー社に買収される |
2014年 | 会社合併により所有者はビーム・サントリー社となる |
オーヘントッシャンに纏わるストーリー

「オーヘントッシャン蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
200万L - 仕込み水
カトリン湖 - モルトスター
シンプソンズ - ピーテッドレベル
ノンピート - マッシュタン材質
ステンレス製セミロイター - マッシュタン容量
1バッチ6.8トン - ウォッシュバック
オレゴンパイン製4基
ステンレス製3基 - 酵母
アンカー社製ドライタイプ
ディスティラーズ酵母 - ウォッシュバック容量
38,000L(張込み34,600L) - 発酵時間
最長120時間
- スチル加熱方式
蒸気間接加熱 - ポットスチル(初留)
ランタン型1基 - ウォッシュスチル容量
17,300L - ポットスチル(中留)
ランタン型1基 - ローワインスチル容量
8,000L - ポットスチル(再留)
ランタン型1基 - スピリッツスチル容量
11,500L - コンデンサー
シェル&チューブ - 本留の度数
81% - 樽詰め度数
63.5% - ウェアハウス形式
ダンネージ式3棟,ラック式2棟
製麦について

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所では自社製麦を行っておらず,製麦工程は大手の専門業社(モルトスター)のシンプソンズ社に委託し,そこから原料のモルトを購入しています。
ピーテッドレベルについては,軽やかかつフルーティなローランドスタイルの酒質を得るために,全てノンピートタイプとされています。
用意された原料のモルトは,ポルテウス社製のローラー式モルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所では仕込み水にカトリン湖の水(軟水)を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり6.8トンのグリスト容量を誇るステンレス製セミロイタータンです。
製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯(64℃)と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目(70℃→90℃)のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。
各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。
オーヘントッシャンのウォートは比較的クリアな色味をしており,最終的なウイスキーのテイストはエステリーかつ華やかな仕上がりとなります。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所には容量38,000リットル(張込み34,600リットル)でオレゴンパイン製のウォッシュバックが4基,ステンレス製のウォッシュバックが3基設置されています。使用される酵母は一般的なディスティラーズ酵母であり,アンカー社製のドライタイプのものが採用されています。
糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。
発酵にかける時間は50時間程度から最長120時間にも及ぶ長めの設定とされており,終期には乳酸発酵が生じるため,重みのない軽くスッキリとした酒質を得ることができます。
発酵が完了するとアルコール度数が7.5〜8.2%となったウォッシュを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所では,その最大の特徴として3回蒸留を行っており,ポットスチルも3基設置されています。各種のサイズ感について初留用のウォッシュスチルは容量17,300リットル,中留用のローワインスチルは容量8,000リットル,再留用のスピリッツスチルは容量11,500リットルです。
形状はどれもランタン型であり,サイズの割には背が高く,ラインアームは概ね水平です。加熱方式は蒸気パン・コイルによる間接加熱方式,コンデンサーはシェル&チューブ方式が採用されています。
−初留−
発酵によって得られた34,600リットルのウォッシュは2分割して1基のウォッシュスチルに順番に投入され,それぞれ初留が行われます。2分割されたのちに各々が合流することはありません。
初留が完了すると7,000リットルでアルコール度数20〜21%のローワインが得られ,ひとつ目のフェインツレシーバーに移されます。
このレシーバー内にて,約1,000リットルで平均度数7%程度の前回バッチの中留残液(後留)と混合され,初留液は合計8000リットルで18%程度のアルコール度数となります。
−中留−
続いて初留液は中留釜(ローワインスチル)へと移され,2回目の蒸留(中留)が行われます。中留によって得られる溶液は前留と後留に2分され,度数20〜69%の前留分のみがふたつ目のフェインツレシーバーに移されます。
この前留は5,500リットル程度となり,レシーバー内にて5,500リットル程度の前回バッチの再留残液(前留・後留)と混合され,中留液はアルコール度数約55%程度となります。
−再留・ミドルカット−
最後に中留液は再留釜(スピリッツスチル)へと移され,3回目の蒸留(再留)が行われます。
再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。
この作業はミドルカットと言い,オーヘントッシャンではアルコール度数80〜82.5%の極端に狭い範囲のみが本留として確保され,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーにて一時保存されます。
この本留の狭さこそが,原酒のクリーンかつライトな印象に最も大きく寄与しているとされています。
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について

ポイント
オーヘントッシャン蒸留所には伝統的なダンネージ式のウェアハウスが3棟,貯蔵量に特化した近代的なラック式のウェアハウスが2棟建っています。
熟成に使用される樽はほとんどがアメリカンオークのバーボン樽とされていますが,一部のリリース用にシェリー樽やワイン樽などが使用される場合もあります。
蒸留によって得られたニューポットは,加水によってアルコール度数を63.5%程度に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓

オフィシャルボトル一覧
オーヘントッシャン蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
オーヘントッシャン12年
ポイント
オーヘントッシャン12年は当蒸留所の公式リリースのうち,最もスタンダードなシングルモルトであり,バーボン樽で12年以上熟成された原酒のみで構成されています。
オーヘントッシャンの最大の特徴は「3回蒸留」であり,ローランドモルトらしいクリーンかつ軽やかな酒質を有しています。工程による個性とバーボン樽の影響により,アーモンドやキャラメルのような,独特の滑らかで繊細な甘みを感じることができます。
日本のサントリー社が蒸留所を所有していることもあってか,我が国において最も親しみのあるローランドモルトであり,ローランドに馴染みのない方はこのボトルから試してみると良いでしょう。
香り
クリームブリュレ/柑橘類のフレッシュネス/ナッティ/草原/滑らかオーク香
味わい
オレンジマーマーレード/キャラメリゼトフィー/バニラアイス/トーステッドオーク
余韻
ナッツ感とジンジャーを伴うドライな要素が長く続く
オーヘントッシャン18年
ポイント
オーヘントッシャン18年は伝統的な3回蒸留を経たのち,バーボン樽で18年以上の長期熟成を経た原酒が使用されており,爽やかなローランドスタイルでありながらも確固たる蒸留所の個性が確立されています。
長い熟成期間の中で樽から多くの要素を吸収し,色味は深いゴールドに,風味はより多様でエレガントに変化しています。
オーヘントッシャン
アメリカンオーク
ポイント
このボトルはオーヘントッシャンの個性を形成する3回蒸留を経たのち,アメリカンオークのバーボン樽のみで熟成を行った原酒で構成されています。
オーヘントッシャンの公式シングルモルトの中では最もリーズナブルな価格帯であり,まず簡単に蒸留所の個性を知ってみたいという人にとっては最もコスパに優れているボトルと言えるでしょう。
オーヘントッシャン
スリーウッド
ポイント
このボトルは名前の通りに3種類に樽で熟成された原酒で構成されており,その内訳はバーボン樽・オロロソシェリー樽・ペドロヒメネスシェリー樽です。
オーヘントッシャンの原酒はクリーンな酒質であるため,各種の樽の個性が綺麗に表現され,複雑ながらバランスの良い仕上がりとなっています。
オーヘントッシャン
バーテンダーズモルトNo.1
ポイント
このボトルはオーヘントッシャンの限定リリースのひとつであり,世界で最も革新的で,豊富な経験と知識を有する12人のバーテンダーが選出した原酒で構成されています。
熟成年は10年ですが,バーボン樽・ヨーロピアンオーク樽・シェリー樽・赤ワイン樽・ジャーマンオーク樽などの多彩な樽で熟成が行われていました。
そのテイストはアプリコットやミルクチョコレート,フローラルな華やかさなど,非常に幅広く複雑な仕上がりとなっています。
オーヘントッシャン14年
クーパーズリザーブ
ポイント
このボトルは免税店向けのリリースですが,日本でも流通しているボトルであり,アメリカンオークのバーボン樽とオロロソシェリー樽で14年以上熟成された原酒で構成されています。
そのテイストは強いナッツの要素とカラメルやクリームチーズのような印象が強く,余韻にかけてフローラルな紅茶のような華々しさが際立ちます。
オーヘントッシャン
ブラッドオーク
ポイント
今ボトルも免税店向けのリリースであり,通常のバーボン樽の他に赤ワイン樽で熟成された原酒が使用されています。一眼で赤ワイン樽熟成だとわかる真紅の色味が特徴的です。
そのテイストにも赤ワイン樽の特徴が表れており,ココナッツやベリー系の赤い果実,タンニンの渋み等を強く感じることができます。
オーヘントッシャン
ダークオーク
ポイント
このボトルも免税店向けのリリースであり,通常のバーボン樽の他にオロロソシェリー樽・ペドロヒメネスシェリー樽で熟成された原酒で構成されています。
そのテイストはバーボン樽とシェリー樽の要素がバランスよくまとめられており,クリーミーなキャラメルのような甘さやヘーゼルナッツ,りんごにタンニンなど,多彩な香味を有しています。

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参考資料
参考サイト:オーヘントッシャン公式 / whisky.com / scotchwhisky.com / diffordsguide.com / scotchwhisky.net / malt-whisky-madness.com