記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「アビンジャラクX・10年」
当記事では,このボトルについて
- 「アビンジャラク」ってなに?
- ボトルの特徴
- 香り・味わいをテイスティングレビュー
- 総評
(レーダーチャート化・100点満点評価など)
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
「アビンジャラク」ってなに?
アビンジャラクの解説
- 蒸留所の概要
『アビンジャラク』は,スコットランドの北西に浮かぶルイス島の西海岸にて,2008年に創業したアビンジャラク蒸留所が生産するウイスキーのことを指しています。
このルイス島及び南部のハリス島は陸続きの同じ島ですが,両者は慣習的に区別されており,一般にルイス島と呼ばれる地域で稼働する蒸留所はアビンジャラクのみになります。
島の環境は都市部を除き,殺伐とした荒野が延々と続く不毛の大地といった様相で,かつてはウイスキーの密造が蔓延っていたり,ヴァキングに支配されていたりという秘境のような場所。
ちなみにアビンジャラクという名称は,ゲール語で”赤い川”を意味しており,かつてのヴァイキング支配下の時代に,市民が怒りのあまりにヴァイキングを川に投げ込んでいたことから名付けられているとのことです。
- ウイスキーの製造
アビンジャラク蒸留所のウイスキー製造についても目を向けると,『畑から瓶詰めまで』を主題に掲げ,文字通り原料の大麦やピートを島内で採取し,ウイスキーの製造から瓶詰めまでをルイス島で実施しているのが最大の特徴と言えるでしょう。
そして製造工程で最も特徴的なのが”ポットスチル”であり,かつての密造スチルをそのまま巨大化させた様な特殊な形状のヒルスチルが使用されています。
ちなみに生産量はスコットランド最小級であり,ウイスキーの年間生産量は約20,000リットルのみとされています。
「アビンジャラクX・10年」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | アビンジャラクX 10年 |
地域 | スコットランド,ルイス島 (アイランズモルト) |
種類 | シングルモルトウイスキー |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 46% |
飲んだ場所 | リカマン店頭試飲 |
\\製法と特徴//
- バーボン樽熟成原酒を使用
▶︎バニラやオレンジの様な華やかなテイストが原酒に付与されている - 100%ルイス島内産の大麦のみを使用
▶︎テロワールの概念により,原料からルイス島らしさにこだわったウイスキーが完成する - 島内産のピートを使用
▶︎ルイス島の環境で形成された独自のピートの使用より,唯一無二の個性的なスモーキーテイストを得ることができる - 独特なヒルスチルで蒸留
▶︎特殊な形状のスチルにより,複雑かつ独特な香味を呈する成分が多く確保されている
「アビンジャラクX・10年」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「アビンジャラクX・10年」をテイスティングレビューしていきます!
色味
色味は比較的薄く見え,バーボン樽原酒らしい淡いゴールドといった感じですね。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,ペールゴールドよりは少し濃いくらいであると言えるでしょう。
▼
香り
- 第一印象
独特な酸味系のピート,ナチュラルながら濃厚なはちみつ,オレンジマーマレード,ややサルファリー
- 経時変化で見える要素
レーズンやドライフルーツ,パラついた穀物感,潮風の爽快感,ピートが弱まってはちみつが強くなる
筆者の一言
注ぎたての状態では独特なピート感が主体だったが,時間経過とともに強力なはちみつ感が押し寄せる。経時変化で広がるテイストも多く,個性的かつ魅力的な香りでした!
▼
味わい
- 第一印象
香り同様の独特なピート感,濃いバニラと濃いはちみつ,ややりんご
- 経時変化で見える要素
オレンジの皮のような甘苦さ,モルティ,レーズン,乾いた木のビター感,寒冷地の荒野,潮の香り,時間経過と共にはちみつが強まる
- 余韻に残る要素
柔らかな潮風,濃厚なはちみつ,オレンジの酸味感,長く残る印象的な余韻
筆者の一言
香り同様に注いだ直後は独特なピートが中心。アイランズらしい個性的かつ複雑なテイストであり,これがルイス島の味なのかと感動。個人的には注いでから少し時間が経ったタイミングで飲むとベストでした。
「アビンジャラクX・10年」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
テイストの特徴は「フルーティ&ピーティ&フェインティ」でした!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:4/5|味わい:4/5
『アビンジャラクX・10年』の香りと味わいについては,注ぎたてと少し時間をおいた状態で大きく印象が異なるのが面白いポイントでした。
注いだ直後では独特なピートスモークが割と支配的であったのに対し,時間の経過と共にはちみつ系の自然な甘さを中心とした多彩な要素が広がって行く様子が感じ取れました。
ルイス島のピート,大麦,そしてヒルスチルと呼ばれる特殊なポットスチル。これらから生み出されたウイスキーの味わいは,まさにアイランズモルトとして,ルイス島でしか育まれない唯一の個性を表したものであったと言えるでしょう。
- 初心者向け度:1/5
初心者向けかどうかと言う観点で『アビンジャラクX・10年』を見ると,結論としては全く適していないと言えるでしょう。
というのも第一印象に来るピート感がなかなかに個性的であると言う点に加え,時間経過で要素が移ろって行く様は初心者にとっては,やや複雑すぎるように思えてしまいます。
しかし裏を返せば,個性的で満足感のある複雑なウイスキーを探している方にとってはベストな選択肢のひとつになると考えられ,機会に恵まれるようでしたら是非飲んでいただきたいと思いました。
- 入手性:3/5|コスパ:2/5
最後にコスパと入手性についてになりますが,大前提としてアビンジャラク蒸留所の年間生産量が約20,000Lと極端に少ないことを忘れてはいけません。
ボトルのリリースこそ数種類ありますが,この生産量の少なさゆえに価格はやや高め。そして高値ゆえに市場には残りがちとも捉えることができそうです。
この『アビンジャラクX・10年』も2022年の夏頃から国内市場に出回っている様で,最近では店頭・通販で見かけることもしばしばあります。
そんなわけで,コスパについては言及しづらいところではありますが,少し厳しめに見ておきました。
しかし他と相対的な比較をせず,個性的で独特な美味しさを醸し出しているところに着眼すれば,購入する価値が十分にあるのではないかと思ってしまいます。
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レビューに使用した道具たち
グラス:グレンケアン
ジガーカップ:JOYONEというメーカーのものをAmazonで購入して使っています。
正直計りたい分量が計れるものであれば何でもいいと思います!