記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「アベラワー蒸留所」になります!
キーワード
ペルノ・リカールのイチオシ/スペイサイド/売上TOP10/ダブルカスクマチュレーション
アベラワーの特徴
ノンピート/リッチ/シェリー/りんごのようなフルーティさ
アベラワー蒸留所
アベラワー蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1826年 |
所有会社 | ペルノ・リカール社 |
地域分類 | スペイサイド スペイ川中流域 |
発酵槽 | ステンレス6基 |
ポットスチル | 初留2基・再留2基 |
仕込み水 | ベンリネス山中腹の泉 |
ブレンド先 | キングスランサム クランキャンベルなど |
「アベラワー蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
アベラワー蒸留所はスペイサイドのほぼ中央、標高840mベンリネス山から流れるラワー川沿いに位置しています。
この地域は年間を通して冷涼な気候、良質な湧水が豊富な場所であり、ウイスキー作りに適した土地です。
この地域は蒸留所が建てられる以前から密造が盛んであり、聖ダンスタンの井戸水という神聖な水を用いて密造酒が作られていました。
アベラワー蒸留所も設立当初はこの井戸水を仕込みに使用していたが、現在はベンリネス山中腹の泉から水をひいています。
ちなみにアベラワーはゲール語で「ラワー川の落合い」を表しています。
【マメ知識】聖ダンスタンって?
聖ダンスタンは西暦960年にカンタベリーという都市の大主教となった大聖人のことです。
「アベラワー蒸留所」蒸留所の歴史
アベラワー蒸留所の歴史を年表形式でまとめていきます!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1826年 | ジェームズ・ゴードンとピーター・ウェアによってアベラワー蒸留所が設立される |
1827年 | ピーター・ウェアが蒸留所から脱退した |
1879年 | 蒸留所が火災で壊滅的な被害を受ける 地元の銀行員であり、慈善家として有名であったジェームズ・フレミングによって移設・再建が進められる |
1892年 | 蒸留所がロバート・ソーン&サンズ社によって買収される |
1898年 | 再び深刻な火災に見舞われ、設備や原酒の大半を失う 火災後すぐに再建が進められた |
1921年 | 蒸留所がWHホルト&サンズ社に買収される |
1945年 | 蒸留所がS.キャンベル&サンズ社に買収される |
1973年 | アベラワーがキーモルトであるデュワーズの需要増に応えるべく、ポットスチルが2基から4基に増設される |
1974年 | フランスのペルノ・リカール社に買収される |
2000年 | シェリー樽原酒のみかつカスクストレングスのアベラワーアブーナをリリースする |
2001年 | ペルノリカール社がシーバスブラザーズ社を買収し、同社が今後生産活動を担うようになる 同年ビジターセンターがオープンされる |
アベラワーに纏わるストーリー
蒸留所の移設・再建の詳細
1879年、火災によって蒸留所が壊滅的な被害を受けた際にジェームズ・フレミングという銀行家によって再建が計画されました。
再建場所については、元々の立地よりもスペイ側の上流方向に蒸留所を建て直すこととします。
この際、新蒸留所の設計はチャールズ・ドイグによるものであり、ヴィクトリア朝の華麗な建物となりました。
またフレミングは蒸留所のみでなく、建設地周辺の街灯や橋梁も手掛けていました!
再建後の建物も一度火災に見舞われているため、現在の建物は復元されたものになります。
「アベラワー蒸留所」製法の特徴
製麦について
製麦
アベラワー蒸留所では1962年まで、伝統的なフロアモルティングが行われていました。
現在では、スコットランドのモルトスターより、ノンピートの麦芽を購入しています。
仕入れた原料のモルトはポルテウス社製のモルトミルにて粉砕してグリストとした後、糖化へと進みます!
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糖化について
糖化
アベラワー蒸留所ではベンリネス山中腹の水を仕込み水に使用しています。
マッシュタンについては、1バッチあたり12トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンが使用されています。
まずマッシュタンにグリストを投入し、加熱した仕込み水を複数回に分けて注ぐことで糖化が進められます。
こうして透明感のあるウォートを得た後、発酵の工程へと進みます!
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発酵について
発酵
アベラワー蒸留所には容量7万リットルでステンレス製のウォッシュバックが6基設置されています。
発酵に使用される酵母はクリーム状のものになります。
まずウォートを冷却してから発酵槽に投入し、酵母を添加することで発酵が進められます。
発酵時間は48時間と標準的な長さになります。
発酵が完了するとアルコール度数約8%程度のもろみが完成し、次の蒸留の工程へと進みます!
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蒸留について
蒸留
アベラワー蒸留所には容量約12,000リットルのウォッシュスチルが2基、容量約14500リットルのスピリットスチルが2基設置されています。
スチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式、コンデンサーの冷却方式はシェル&チューブ式となっています。
スチルの形状は背の低いストレート型で、多くの蒸気がラインアームへと流出することから、インパクトの強いアルコール分が得られる事がわかります。
また蒸留回数については、スコッチで一般的な2回蒸留となっており、蒸留時間や温度はコンピューターで管理されているのが特徴です!
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熟成について
熟成
アベラワー蒸留所では熟成の際、ほとんどの原酒にシェリー樽を使用していますが、一部の原酒にバーボン樽を使用しています。
2種類の樽原酒を慎重に選択しブレンドするダブルカスクマチュレーションが特徴となっています。
これによりウイスキーにブランデーのような甘味や、フルーティな風味を持たせることができます。
また樽詰めされた原酒はラワー川沿いにずらりと並んだ熟成庫に安置しており、現在は2万7千もの樽が眠っていると言われています。
余談ですが、かつてアベラワーの倉庫主任だったフレイザー氏は熟成庫に眠っているウイスキーにバグパイプの演奏を聞かせていたとのことです。
音色を聞いていた原酒たちはより豊かな表情を見せてくれるのではないでしょうか!
オフィシャルボトル紹介
アベラワー蒸留所がリリースするオフィシャルボトルを紹介します!
アベラワー12年
ダブルカスクマチュアード
ポイント
シェリー樽とバーボン樽、それぞれの原酒をバランスよくブレンドし、エレガントさや複雑さを味わうことのできるボトルとなっています!アベラワーの力強さもしっかり活きており、複雑かつ重めの酒質が印象的ですね。
ちなみにシェリー樽は南スペイン産の樽を使用しているとのことです。
キャラ立ちの強い甘さを求めている人にはピッタリのボトルです!!
価格帯
Amazon:5,114円/楽天市場:5,596円(送料込み)
※2022年4月27日現在
香り
まろやかなシェリー感/りんご/フルーティ/優しい甘さ
味わい
チョコレート/レーズン/シナモン/りんご/フルーティ/シェリー
余韻
甘みをメインにかすかなスパイシーさ/長く温かい余韻
アベラワー アブーナ
ポイント
オロロソシェリー樽原酒をカスクストレングスでボトリングした一品!シェリー樽のニュアンスとアベラワーの個性がダイレクトに伝わってきます。
「アブーナ」は起源を意味しており、樽出し後に加水しないスタイルが表現されています!
食後のデザートとしてボスクラスの存在感を示してくれること間違いナシです!!
価格帯
Amazon:10,379円/楽天市場:10,200円(送料込み)
※2022年4月27日現在
香り
オレンジ/多様なスパイシー/オレンジ/シェリー由来の甘み/リッチで深い
味わい
オレンジ/ダークなチェリー/ドライフルーツ/チョコレート/フルボディ
余韻
ビターとスパイシーと甘みが共存するエキゾチックさ/複雑かつ長い
参考資料
サムネイル画像:whisky.com ペルノ・リカール公式 scotchwhisky.com