記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「アバフェルディ12年」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「アバフェルディ」ってなに?
アバフェルディの解説
- ブランドと蒸留所
『アバフェルディ』はスコットランドの南ハイランド地方,リゾート地としても名が知れているアバフェルディ村に建つ,アバフェルディ蒸留所が手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
アバフェルディ村は,良質な水を湛えることで古くから知られるピティリー川が周辺に流れており,ウイスキー作りに必要な条件を兼ね備えた好立地。そこに目をつけたジョン・デュワー&サンズ社が,ブレンデッドウイスキー「デュワーズ」の原酒を確保する目的で,1898年にアバフェルディ蒸留所を創業しました。
加えて蒸留所の創業当時は,同社が敷設した鉄道が都市パースに向けて走っていた他,アバフェルディ村は同社の創業者のジョン・デュワー氏の生まれ故郷であるなど,兎角デュワー社とゆかりの深い土地であったことがわかります。
蒸留所の所有者については,1925年からは業界最大手のグループであったDCL社の傘下に入り,向こう100年間ほどは同グループに属していました。しかし1998年にバカルディ社に買収されており,現在はデュワーズ及びそのキーとなる他の蒸留所共々,バカルディ社の傘下に治っています。
- 製法の特徴
アバフェルディ蒸留所のウイスキー作りでは,ノンピートタイプの麦芽を原料とし,ピティリー川の水から引いてきた良質な水によって仕込みが行われます。
発酵工程では常在細菌の影響を受けやすい木製のウォッシュバックを活用して,65〜85時間程度の比較的長めの発酵が実施されており,蒸留所独自の香味とすっきりとした軽やかさのベースがここで形成されています。
続く蒸留工程では,容量16,500リットルにも及ぶ大容量のポットスチルを活用し,スコッチの伝統的な2回蒸留が施されています。このような大きなポットスチルでは,アルコールの蒸気がスチル内面の銅と触れる機会が増大し,軽やかかつクリーンな酒質が得られやすくなることが知られています。
そして熟成は主にリフィルバーボン樽を活用して行われており,アバフェルディのバニラや蜂蜜のようなナチュラルな甘さは,これによってさらに高められていると考えられます。
「アバフェルディ12年」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | アバフェルディ12年 |
地域 | 南ハイランド |
種類 | シングルモルトスコッチ |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 40% |
\\製法と特徴//
- デュワーズの中核を担う優しい味わい
▶︎アバフェルディのウイスキーはノンピートタイプの華やかな様相であり,ヘザーハニーやほのかな柑橘,穀物の甘みなどの要素に非常に長けています。 - 65〜85時間程度の比較的長めの発酵時間
▶︎長時間の発酵では,徐々に乳酸発酵の影響が顕現し始め,すっきりとした華やかなテイストが得られやすくなる。 - 容量16,000リットル程度の大きなポットスチルで蒸留
▶︎サイズの大きなポットスチルでは,アルコール蒸気がスチル内面の銅と多分に接触するため,華やかな香味の醸成が進行しやすい
「アバフェルディ12年」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「アバフェルディ12年」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『アバフェルディ12年』の色味について個人的な主観では,ほのかにオレンジが買った金色のように見えます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Burnished"くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
強い蜂蜜とヘザーの要素,穏やかなりんごの甘み,ほのかな穀物感
(各要素が軽快なだけにアルコール感はちょっと感じる)
- 経時変化で見える要素
ナチュラルな花畑,ジンジャースパイス,ライトなウッディ感
筆者の一言
香り全体としては,とにかく蜂蜜っぽい自然な甘さが非常に強く出ています。
引っかかりを感じるような調和を見出す要素はほとんど見られず,万人に好まれるであろう華やかな香味に長けていました…!
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味わい
- 第一印象
強力な蜂蜜感,自然な花の蜜,ヘザーフローラル,シナモンスパイス
(アルコールの刺激があまり感じない)
- 経時変化で見える要素
マイルドな穀物感,バニラ,りんごと柑橘,ウッディな苦味
- 余韻に残る要素
蜂蜜の温かみ,ほのかにホワイトペッパー
筆者の一言
加水タイプなこともあり,非常に軽めのボデイに華やかな蜂蜜の風味という飲みやすさ特化型の味わい。
初心者にはもってこいの風味ですし,デュワーズと飲み比べても楽しいでしょう…!
「アバフェルディ12年」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:5/5|味わい:4/5
まず「アバフェルディ12年」の香りと味わいについては,蜂蜜やヘザー系のフローラル感が中核にあり,軽快かつ華やかな要素が全体的に目立っている印象でした。
熟成樽の構成は明かされていませんが,同蒸留所がよく使用するリフィルバーボン樽の原酒が多く使われているものと思われ,実際にいい意味で力強さとは無縁な,リフィルバーボンらしいほんのりとした甘みが表現されているように感じられます。
どことなくデュワーズとの繋がりを感じさせる風味となっていますので,他のキーモルト達と一緒に飲み比べてみても面白いでしょう!
- 初心者向け度:5/5
続いて初心者向けかどうかという観点で「アバフェルディ12年」を見ると,最高に適していると言えるでしょう。
というのもレビューのパートでも述べた通り,調和を乱すような引っ掛かりを感じる要素が皆無で,とにかく飲みやすさに完全特化していることから,初心者でも嫌な抵抗を感じることはほとんどないでしょう。
加えてナチュラルな蜂蜜の甘みは,好き嫌いが分かれることもあまりないと考えられるので,やはり万人に愛されうる素晴らしい銘柄であると言えそうです。
- 入手性:-/5|コスパ:-/5
入手性とコスパについては,今は言及できない状況となっています。
というのもどうやら最近某インフルエンサーがこのアバフェルディ12年を”山崎に似ている”と発言したことにより,同時多発的にほぼ全ての国内市場から淘汰されてしまっています。一応本来の価格であった4〜5,000円程度の倍額を出せば買えるところはありそうですが,この状況でコスパや入手性を議論するのは野暮に等しいので触れずに置いておきます。
無論通常価格で入手可能であった頃を考えれば,コスパもなかなかに良く,酒屋さんん店頭でよく見かける非常にありがたい銘柄であったように思います。またいつでも飲めるようになる日を心待ちにしています。