記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回は「グレンマレイ蒸留所」になります!
Points!
「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
フランスで大人気/LABEL5/元ルイヴィトン所有
グレンマレイの特徴
ノンピート主流/多彩なカスクフィニッシュ/バーボン樽熟成を基調
(余談までに…)
YOUTUBEも始めました!ぜひ遊びにきてね!
グレンマレイ蒸留所
グレンマレイ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1897年 |
所有会社 | ラ・マルティニケーズ社 |
地域分類 | スペイサイド エルギン地区 |
発酵槽 | ステンレス製14基 |
ポットスチル | 初留3基・再留6基 |
仕込み水 | ロッシー川 |
ブレンド先 | ラベル5,ジェームズ・マーティンズ カティサークなど |
「グレンマレイ蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
グレンマレイ蒸留所はスペイサイドのエルギン地区に位置しています。より具体的にはエルギンの中心部よりもやや西に外れた住宅街の裏側,仕込み水を取るロッシー川のほとりに建っています。
蒸留所の建つ地域はウイスキー関連の地域区部とは別にスコットランドのマレー州にあたりますが,この一帯は大麦の産地としても有名な土地であり,「レアック・オ・マレイ(マレイの領主)」とも呼ばれています。
余談までに,ハイランド地方は基本的に冷涼な気候であり,夏でも20℃以下であることが多いですが,マレー州の地元の人は「ハイランドの中ではマレイ州は比較的温暖だ」と自慢げに主張しています。日当たりの問題でしょうか?
また現在蒸留所が建っている場所では,蒸留所が創業される以前は「ウエスト・ブリュワリー」というビール工場として稼働しており,そこを改造する形でグレンマレイが創業されました。
ちなみにグレンマレイ(Glen Moray)のグレン(Glen)はゲール語で「谷」を,マレイ(Moray)はケルト語もしくは初期のゲール語で「海辺の入植地」を意味しています。
「グレンマレイ蒸留所」蒸留所の歴史
グレンマレイ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1828年 | エルギン郊外にてウエストブリュワリーが創業される |
1897年 | ブリュワリーがグレンマレイ蒸留所として改装される |
1910年 | 蒸留所が閉鎖される |
1923年 | 蒸留所が当時グレンモーレンジを所有しているマクドナルド&ミューア社に買収される 併せて操業が再開される |
1958年 | ポットスチルが2基増設されて計4基体制となる サラディンボックス式の製麦設備が導入される |
1962年 | ウェアハウスの改装が行われる |
1978年 | サラディンボックスの使用が取りやめとなり,以降はモルトスターを活用するようになる |
1996年 | マクドナルド&ミューア社が社名をグレンモーレンジ社に改める |
1999年 | シャルドネ樽やシュナン・ブラン樽の後熟利用を開始する |
2004年 | グレンモーレンジ社がモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)社に買収される |
2008年 | グレンマレイ蒸留所がLVMH社からフランスのラ・マルティニケーズ社へと売却される |
2012年 | ポットスチルが増設されて計6基体制となる |
2015年 | ポットスチルが増設されて計9基体制となる 新設された3基をウォッシュスチル,既存の6基をスピリッツスチルとする |
グレンマレイに纏わるストーリー
「グレンマレイ蒸留所」製法の特徴
- 年間生産量
570万L - 仕込み水
ロッシー川 - モルトスター
ブートモルト,クリスプ,ベアーズ,マントンなど - ピーテッドレベル
ノンピート
試験用に稀にピーテッドも使用 - マッシュタン材質
ステンレス製セミロイター - マッシュタン容量
亜バッチ10.1トン - ウォッシュバック
ステンレス製14基 - 酵母
マウリ社
ディスティラーズ酵母 - ウォッシュバック容量
55,000L
- 発酵時間
60時間 - スチル加熱方式
蒸気間接加熱 - ポットスチル(初留)
ストレート型3基 - ウォッシュスチル容量
17,000L - ポットスチル(再留)
ストレート型3基 - スピリッツスチル容量
3基:10,000L(張込み9,500L)
3基:6,000L(張込み5,500L) - コンデンサー
シェル&チューブ - 本留の度数
69% - 樽詰め度数
63.4% - ウェアハウス
計12棟(ダンネージ式とパラタイズ式)
製麦について
ポイント
グレンマレイ蒸留所では1958年にサラディンボックス式の製麦設備が導入され,その後1978年までの20年間はこれを活用した自社製麦が営まれていました。
現在は製麦工程は外部の専門業社(モルトスター)であるブートモルト,クリスプ,ベアーズ,マントンなどに委託し,そこから原料のモルトを購入しています。
ピーテッドレベルは基本的に全てノンピートタイプとされていますが,2009年には試験的生産としてピーテッドタイプのモルトが導入され,以降も一部使用されています。
原料のモルトは50年以上に渡って使用されているポルテウス社製のモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
↓工程の詳細な解説↓
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糖化について
ポイント
グレンマレイ蒸留所では仕込み水としてロッシー川の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり10.1トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストは,1回目のお湯と混合されたのちにマッシュタンへと投入され,2,3回目のお湯をスパージングすることで糖化が進められます。この糖化手法はワンステップ・インフュージョン法と呼ばれています。
各回のお湯との接触ごとに,糖類を含有したウォートという溶液が抽出されており,通常糖類が多く含有されている1,2回目のウォートが発酵に回され,3回目のウォートは次回の糖化バッチにて,お湯と混合して注がれることとなります。
次の工程は発酵になります!
↓工程の詳細な解説↓
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発酵について
ポイント
グレンマレイ蒸留所には容量55,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが14基設置されています。発酵に使用される酵母はマウリ社製のディスティラーズ酵母です。
糖化によって得られたウォートは,熱交換器を介して20℃前後まで冷却されたのち,酵母と混合してウォッシュバックに投入することで発酵が始まります。
発酵にかける時間は60時間程度とされており,一般的な時間と比べてやや長めに設定されていることから,この発酵工程が軽やかでフルーティな酒質に寄与していることがわかります。
この発酵が完了するとアルコール度数約7〜9%程度となったウォッシュを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
↓工程の詳細な解説↓
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蒸留について
ポイント
グレンマレイ蒸留所には容量17,000リットルのストレート型ウォッシュスチルが3基,複数のサイズのストレート型スピリッツスチルが6基設置されています。
3基のウォッシュスチルは2015年に新設されたイタリアのフリッリ社製であり,これらの新設に合わせて元々ウォッシュスチルとして使用されていた3基のスチルはスピリッツスチルとして改装されました。
よって現在のスピリッツスチル6基の内訳は,最初からスピリッツスチルとして使用されていた容量5,500リットルのものが3基,元々のウォッシュスチルを改装した容量9,500リットルのものが3基となっています。
−初留−
発酵によって得られたウォッシュはウォッシュスチルへと投入され,初留が行われます。初留ではウォッシュに含まれるアルコールの全量が抽出され,アルコール度数が20%強程度となったローワインを得ることができます。
−再留・ミドルカット−
続いてローワインは,前回蒸留時にカットされた前留・後留と共にスピリッツスチルへと投入され,再留が行われます。
再留によって得られるニューポットはスピリッツセイフと呼ばれる箱を経由し,その中でアルコール度数や含有成分の好ましくない蒸留初期・終期の蒸留液(前留・後留と言う)がカットされ,性質の優れた中間の本留のみが確保されます。
この作業はミドルカットと言い,後留のアルコール度数が1%となるまで継続されます。グレンマレイにおいて最終的に得られる本留はアルコール度数が約69%程度となり,樽詰めされるまではスピリッツレシーバーという容器に一時貯蔵されます。
次の工程は熟成になります!
↓工程の詳細な解説↓
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熟成について
ポイント
グレンマレイ蒸留所には伝統的なダンネージ式とパラタイズ式のウェアハウスが合計で12棟建てられています。現状のカスク貯蔵可能量は135,000個であり,のちの拡張計画によって270,000個まで倍増される予定となっています。
熟成に使用する樽は主にアメリカから輸入されたバーボンバレルが使用されていますが,フィニッシュ用としてシェリー樽,ポート樽,シャルドネ樽,マデイラ樽,ラム樽,シュナン・ブラン樽などなど,非常に多彩な樽を活用しているのが特徴です。
蒸留によって得られたニューポットは,加水によってアルコール度数を63.4%に調整したのちに樽詰めされ,ウェアハウスにて長い時間を眠ることとなります。
↓工程の詳細な解説↓
オフィシャルボトル一覧
グレンマレイ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
グレンマレイ
クラシック
ポイント
グレンマレイクラシックはグレンマレイ蒸留所の公式シングルモルトのうち,最もスタンダードなボトルであり,スコッチウイスキーの入門にも最適なコスパ最強ボトルです。
その内容については,アメリカンオーク樽で熟成された原酒のみで構成されており,軽く滑らか,そしてフルーティなテイストは親しみやすさ・飲みやすさに非常に優れています。
グレンマレイは低価格帯で様々なカスクフィニッシュシリーズが販売されているため,このクラシックを起点として飲み比べることにより,各種の樽の効用を学習することもできる点も魅力的です。
香り
柑橘の甘さ/バタースコッチ/バニラ/モルティ/ショートブレッド/温かみ
味わい
レモン/オレンジ/バニラ/トフィー/モルティな甘み/暖かい草原感
余韻
キャラメルと柑橘類の甘さと優しいスパイス香が適度に残る
グレンマレイ
クラシック ピーテッド
ポイント
通常ノンピートタイプを主流としているグレンマレイですが,このボトルはその外伝的な立ち位置とし,モルトの乾燥にピートを使用したピーテッドタイプのウイスキーになります。
本来のスペイサイドらしい軽くフルーティなテイストに香ばしいコゲ感やスモーク感が付与されており,王道感とクセの見事なバランスが表現されています。
スモーキーなウイスキーを飲んだことがない人でも飲みやすい仕上がりとなっているため,ピーテッドウイスキーの入門としても扱いやすいボトルと言えるでしょう。
グレンマレイ12年
ポイント
グレンマレイ12年はアメリカンオーク樽のみを使用し,12年以上熟成された原酒で構成されています。クラシックの樽構成と同じであることから,その正統進化とも言えるボトルになります。
クラシックと比較してクリーミーなバニラ系の要素や,フローラル感,トーステッドオークの要素などが増しており,新たにベリーやダークフルーツ系の甘さも感じることができます。
グレンマレイ15年
ポイント
グレンマレイ15年は2種類の樽で15年以上熟成された原酒で構成されており,樽の内訳はアメリカンオーク樽とオロロソシェリー樽が半分づつとなっています。
樽構成が全く異なることからクラシックや12年とは全く違うテイストを呈しており,ドライフルーツやダークチョコのような,シェリー樽熟成によって得られる要素が強く表出しています。
グレンマレイ18年
ポイント
グレンマレイ18年はファーストフィルのアメリカンオーク樽のみで18年以上熟成された原酒のみで構成されており,長期熟成によるエレガントなテイストが表現されています。
通常ファーストフィル樽による熟成では,樽に由来する香味成分の溶出が激しくなるため,リフィル樽を含む12年やクラシックと比べて強力なオークやバニラのニュアンスを感じることができます。
グレンマレイクラシック
シェリーカスクフィニッシュ
ポイント
このボトルは通常のアメリカンオーク樽での熟成を行ったのち,スペインのヘレス産のオロロソシェリー樽でフィニッシュを行った原酒で構成されています。
クラシックでも感じられたバニラの甘さに追随する形で,シェリー樽由来のドライフルーツやナッツ,スパイス香などのテイストを感じることができます。
グレンマレイクラシック
シャルドネカスクフィニッシュ
ポイント
グレンマレイ蒸留所では実験的に様々な樽を熟成に使用してきましたが,このボトルは通常のアメリカンオーク樽による熟成ののち,シャルドネの白ワイン樽でフィニッシュをかけた原酒が使用されています。
クラシックのバニラ感とともに,シャルドネ樽由来のトロピカルフルーツ感やシナモンシュガーのニュアンスを感じることができます。
グレンマレイクラシック
ポートカスクフィニッシュ
ポイント
このボトルもグレンマレイの熟成に関する探究の一環に位置しており,通常のアメリカンオーク樽での熟成後,ポルトガルのクルスを詰めていたポートワイン樽で数ヶ月間のフィニッシュをかけた原酒で構成されています。
この特殊なポート樽の影響により,原酒は独特な薔薇色を呈し,豊かかつ多様なフルーティネスや芳醇なワインの要素が付与されています。
グレンマレイクラシック
カベルネ・ソーヴィニヨン
カスクフィニッシュ
ポイント
このボトルは通常のアメリカンオーク樽による熟成ののち,フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワイン樽でフィニッシュをかけた原酒で構成されています。
赤ワイン樽の影響により,タンニンの力強さやダークチョコとベリーの甘さ,強烈なスパイス香が付与されており,斬新なウイスキーを探している人を喜ばせるテイストが表現されています。
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参考資料
参考サイト:グレンマレイ公式 / whisky.com / scotchwhisky.com / malt-whisky-madness.com / smws.hk / thespiritsbusiness.com / whiskymag.jp