記事の概要
2000年代に入ってから「ウイスキー」はその人気を徐々に高めており,遂にはスコットランドをはじめとした伝統的な名産地以外の世界各地においても,しばしば地域の環境特性を活かしたウイスキー作りが行われるようになってきました。長期熟成&高額な既存ジャンルが美味しいのは半ば当たり前ですが,いまだそのようなラインナップを持たない「ニューワールドウイスキー」には,将来性というまた異なった魅力が秘められているように感じられます。
この記事では,そんなこれからの未来を担うニューワールドウイスキーに着目し,ネクストブレイク必至な銘柄を全部で10本厳選してきましたので,それぞれご紹介していきたいと思います。
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
各種SNSも運用中!
【ネクストブレイク必至!】
要注目のニューワールドウイスキー10選
オマー バーボンタイプ
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | 台湾 |
ポイント
『オマー』は,台湾の南投市に所在する南投蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は2008年のことで,年間を通して気温が15℃から30℃程度を推移する亜熱帯の台湾において,本場スコットランドに倣った本格的なシングルモルト作りが展開されてきました。そのウイスキー作りは,伝統的なスコッチの製法そのものですが,やはり最大の特徴となっているのは気候の違いであり,南投市の気候では熟成期間中における年間のエンジェルズシェアが,スコットランドの3倍に達するほどであり,熟成がとても早く進むとされています。
そしてこのオマー・バーボンタイプは,同蒸留所の最も標準的なラインナップのひとつであり,アメリカンオークのバーボン樽で3年間の熟成を経た原酒が使用されている逸品。その味わいでは,南国を思わせるパイナップル系の果実感や,滑らかなバニラの甘み,そして奥深くウッディなビター感など,若さを感じさせない華やかな魅力を楽しむことができます。
香り
オレンジ,パイナップル,挽いたシナモン,キャラメル,レモンの皮,甘いバニラ感
味わい
ミルクチョコ,パイナップル&バナナ感,バニラエッセンス,蜂蜜,モルティ,木
▽
アムルット シングルモルト
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | インド |
ポイント
『アムルット』は,インドのカルナータカ州に所在する,アムルット蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
サンスクリットで”人類の霊酒”の意味も持つアムルットですが,その歴史は1948年にまで遡ることができます。しかしながら本格的なウイスキー作りが始められたのは1989年のことで,スコットランドのジムスワン博士のコンサルタントを受けて,伝統的な製法とテロワールの概念に基づいたインディアンウイスキーが作られるようになりました。またウイスキー作りの要点はその環境にあり,標高が920mと非常に高く,さらに年間の降水量も多い温暖湿潤な環境のもとでは,ウイスキーの熟成はダイナミックに進行することがわかっています。
そしてこのアムルット・シングルモルトは,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,熟成年数こそ明かされていないものの,オーク樽で3年以上熟成して作られたトラディショナルなシングルモルト。その味わいでは,原料由来の穀物の甘みや,ドライかつビターなウッディ感,そしてリコリスのようなハーブ感など,どことなくインドの気候を感じるエキゾチックなテイストを楽しむことができます。
香り
リコリスのハーブ感,トフィーの甘み,シルキーなバニラ,ウッディ,スパイス
味わい
モルティな甘み,ビターなウッディ感,リコリス,バニラ,トフィー,スパイス
▽
スターワード ノヴァ
度数 | 41% |
容量 | 700ml |
地域 | オーストラリア |
ポイント
『スターワード』は,オーストラリアのメルボルン,ドックランズ地区に所在する蒸留所が生産を手がけるオーストラリアンウイスキーのブランドになります。
ブランドの創設は2007年のことで,創業者のデイヴィッド・ヴィターレ氏が「世界中の人に誇りを持って提供できるオーストラリアならではのウイスキーを作る」という単純明快な夢から発展してきました。そのウイスキー作りでは,オーストラリア産の大麦や小麦を原料に活用しつつ,温暖な気候の元でオーストラリア産の赤ワイン樽を活用した熟成を行っているのがポイントです。
そしてこのスターワード・ノヴァは,同蒸留所の代表作的なラインナップであり,100%オーストラリア産大麦を原料とし,オーストラリア産赤ワイン樽で熟成された原酒のみが使用されているシングルモルトタイプの逸品。その味わいでは,真っ赤なベリーのような印象的な果実感や,シナモンとりんごのような華やかな要素,そしてほのかにタンニン系の渋みなど,ワイン樽熟成シングルモルトらしい大人びた風味を楽しむことができます。
香り
真っ赤なベリー,濃密なりんご感,樽感,シナモンスパイス,タンニン感,ぶどう
味わい
レッドベリー,甘いバニラ,キャラメル,シナモン,タンニン,ウッディな苦味
▽
ウエストランド シングルモルト
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | アメリカ,ワシントン州 |
ポイント
『ウエストランド』は,アメリカのワシントン州シアトルに所在する,ウエストランド蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は2010年とかなり最近ですが,アメリカ市場ではほぼ未開であったシングルモルトというジャンルを開拓し,世界にアメリカンシングルモルトの名声を轟かせてきました。そのウイスキー作りは,伝統的なシングルモルトの製法と相違ないですが,最大のポイントはアメリカの西岸側の湿度が高い独特な微気候にあり,この地域の熟成環境でしか得られない独自の風味が生み出されていると考えられます。
そしてこのウエストランド・アメリカンシングルモルトは,2023年にブランドの新たなフラッグシップボトルとしてリリースされたボトルであり,新樽やバーボン樽,そしてシェリー樽などによる多彩な原酒を組み合わせて作られている逸品。その味わいでは,カスタードクリームのような濃密な甘さや,ブラックベリーのようなディープな甘み,そしてメープルシロップのような香ばしい甘みなど,新ジャンルとしては信じられないほど本格的な風味を楽しむことができます。
香り
カスタードクリーム,メープルナッツ感,ブラックベリージャム,焼きマシュマロ
味わい
アーモンドヌガー,クリームブリュレ,フローラルな紅茶,バニラ,モルティ
▽
ペンダーリン マデイラフィニッシュ
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | イギリス,ウェールズ |
ポイント
『ペンダーリン』は,英国内のウェールズ南部,バンナイ・ブラヘイニョグ国立公園内に所在する,ペンダーリン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所は2000年に創業された新興の蒸留所ですが,特に蒸留器に関しては創業時より独自の設計で作られた,単式と連続式の利点が掛け合わされたファラデースチルを導入しているのが最大のポイントです。しかしながらスチルハウス内には伝統的なポットスチルも備えているため,蒸留工程では2タイプの原酒を作り分けることが可能で,熟成は主にバッファロートレース蒸留所のバーボン樽で行われています。
そしてこのペンダーリン・マデイラフィニッシュは,同蒸留所の標準的なラインナップのひとつであり,マデイラカスクフィニッシュが施された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,トロピカルフルーツのようなビビッドな果実感や,柑橘ジャムのような濃密な甘み,そしてほのかに繊細なバニラの甘みなど,甘く華やかなテイストを楽しむことができます。
香り
トロピカルフルーツ,濃密柑橘フルーツ,バニラクリーム,レーズン,キャラメル
味わい
フローラル,トロピカル,キャラメル感,オレンジマーマレード,少サルファリー
▽
ハイコースト エルヴ
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | スウェーデン |
ポイント
『ハイコースト』は,スウェーデンの世界自然遺産であるハイコーストに所在する,ハイコースト蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は2010年とかなり最近のことでしたが,創業に際してはコンサルタントとして,スコットランドからジョンマクドゥーガル氏を招聘しており,ノンピートとピーテッドを含む数タイプの原酒を作り分ける戦略が確立されています。またウイスキー作りの要点はその気候にもあり,蒸留所の立地は北緯が63度と極端に緯度が高く,年間の寒暖差はスコットランドの3倍を優に超える水準となっているため,ウイスキーの熟成度合いも複雑になってくるのがポイントです。
そしてこのハイコースト・エルヴは,同蒸留所の標準的なラインナップの一つであり,ノンピート麦芽を原料とし,2種類のサイズのファーストフィル・バーボン樽で6年間熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,ノンピート麦芽由来のフルーティさを土台とし,繊細なバニラの甘みや,洋梨のようなフレッシュな果実感など,非常にわかりやすい華やかなを楽しむことができます。
香り
繊細なバニラ,ココナッツ,爽快な洋梨,穀物系のモルティな甘み,暖かいオーク
味わい
甘く濃厚なバニラ,熟したりんご,洋梨,クリームケーキ,フルーツバスケット
▽
プーニ ヴィーナ
度数 | 43% |
容量 | 700ml |
地域 | イタリア |
ポイント
『プーニ』は,イタリア国内のスイスとオーストリアの国境付近,南チロルのグロレンツァに所在する,プーニ蒸留所が生産を手がけるイタリアンモルトウイスキーのブランドになります。
そのウイスキー作りにおいては,原料を欧州とスコットランドから仕入れた大麦を中心にしつつ,ライ麦や小麦なども織り交ぜて使用する独自のスタイルがポイントで,そのウイスキーはイタリアンモルトウイスキーと呼ばれています。また蒸留は2基のバルジ型ポットスチルで行われますが,加熱方式が温度制御性に優れた温水加熱方式という特殊なものになっており,最終的な原酒の熟成はバーボン樽,シェリー樽,マルサラワイン樽などの多彩な樽が活用されています。
そしてこのプーニ・ヴィーナは,同蒸留所の標準的なラインナップのひとつであり,マルサラワイン樽で5年間熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは,フルーツケーキのような華やかな香味や,プラムやオレンジのような瑞々しい果実感,そしてナッツ系の香ばしさなど,どこか美しさを感じる華やかなテイストを楽しむことができます。
香り
ラムレーズン,白ぶどう,爽快なミント感,香ばしいナッツ,タンニン,甘いシナモン
味わい
フルーツケーキ,焼きくるみ,レーズン,シナモンスパイス,オレンジ,プラム感
▽
オールドサンドヒル ジャーマンオーク
度数 | 43% |
容量 | 500ml |
地域 | ドイツ |
ポイント
『オールドサンドヒル』は,ドイツのバートベルツィヒに所在する,エゲンシュタイン蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所はもともとビールの醸造所として稼働していましたが,2012年からは,ビール造りで培われた発酵に対する知見を活かしつつ,小規模ながら本格的なシングルモルトウイスキー作りが始められていました。そのウイスキー作りでは,仕込水に洗浄や処理が不要とも言われるほどの純度を誇るホーアーフレミング自然公園の水を採用したり,熟成にはドイツ産のジャーマンオーク樽を活用したり,独自性の強い製法を採用しているのがポイントです。
そしてこのオールドサンドヒル・ジャーマンオークは,独自のジャーマンオーク樽で7年間熟成された原酒によって構成されており,TWSCではベストヨーロピアンウイスキー賞を受賞している逸品。その味わいでは,キャラメルのようなビターな甘さや,スパイシーなウッディ感,そしてチョコレートのような甘みなど,重心の低い濃厚なテイストを楽しむことができます。
香り
ビターキャラメル,樽由来のスパイシー,ウッディな苦味,タンニン,ナッティ感
味わい
ダークチョコレート,スパイシーな穀物,パワフルウッディ,香ばしいナッツ感
▽
スプリングベイ トゥニーポートカスク
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | オーストラリア,タスマニア島 |
ポイント
『スプリングベイ』は,オーストラリアのタスマニア島に所在する,スプリングベイ蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
同蒸留所の創業は2015年のことで,アイルランドとスコットランドにルーツを持ち,20年以上にわたってウイスキー作りの夢を持ち続けてきたベレット夫妻によるものでした。そのウイスキー作りでは,原料は100%がタスマニア産の大麦で,仕込水にはなんと雨水を使用しているのがポイント。これは世界で最も空気と水が綺麗な場所と言われるタスマニアだからこそ実現できた荒業であり,その他の生産工程も高品質かつ最小限の設備で妥協の余地は皆無となっています。
そしてこのスプリングベイ・トゥニーポートカスクは,オーストラリア産のトゥニーポートワインの樽で熟成された原酒が使用された定番ラインナップの一つであり,TWSCでベストカテゴリー賞も受賞している逸品。その味わいでは,バタースコッチのような穀物系の暖かい甘みや,キャラメルのような濃密な甘み,そしてタンニンの力強い渋みなど,パワフルかつ奥深いテイストを楽しむことができます。
香り
バタースコッチ,濃密マスカット,穀物,軽快なプラム,暖かいオークスパイス
味わい
モルティな甘み,カラメルプリン,柑橘,タンニン感,チェリー,ナッツ,オーク
▽
アルモリック クラシック
度数 | 46% |
容量 | 700ml |
地域 | フランス |
ポイント
『アルモリック』は,フランスのブルターニュ地方に所在する,ヴァレンギエム蒸留所が生産を手がけるシングルモルトウイスキーのブランドになります。
その創業は1994年と比較的最近ですが,現在のフランスでは最大規模のウイスキー業社となっており,フランス国内産の大麦を原料に,ランタンヘッド型とバルジ型のポットスチルで蒸留されたモルト原酒と,連続式蒸留器によるグレーン原酒の両方を生産することができます。また同蒸留所は自社のウイスキーをブルターニュウイスキーとしてブランディングしており,最近のリリースでは熟成樽においても,ブルターニュ産のオーク樽を活用した原酒が使用されるようになっています。
そしてこのアルモリック・クラシックは,同蒸留所の最も標準的なラインナップであり,複数の熟成年数をバーボン樽とシェリー樽で過ごした原酒が使用されている逸品。その味わいでは,シトラスのような軽快な柑橘感や,マイルドな樽由来の深み,そしてモルティな穀物系の甘みなど,本格的なシングルモルトらしいテイストを楽しむことができます。
香り
ヘーゼルナッツ,シトラス,爽快な草原,モルティ,柑橘感,マイルドな樽香
味わい
モルティな穀物感,ややブリニー,樽感,サルファリー,レーズン,シトラス感