世界五大ウイスキー解説!「アイリッシュウイスキー編」|マメ知識|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

伝統的な単式蒸留器による3回蒸留を行う製法が残るアイリッシュウイスキー。

一説ではウイスキー発祥の地とも考えられている深い歴史を持っています。

深い歴史のもとに生産されるウイスキーは独特なオイリーさ、滑らかでライトな味わいが特徴といえるでしょう。

この記事ではアイリッシュウイスキーについて理解を深められるよう知識をまとめていきます。

どんな定義があるの?

アイリッシュウイスキー関する決まりについては、アイルランド共和国内において1980年「アイリッシュウイスキー法」によって定義されています。

ここでは同法で定められるアイリッシュウイスキーの定義についてまとめておきます。

定義

ⅰ.穀物類を原料としている。

ⅱ.麦芽の酵素から糖化・発酵を行う。

ⅲ.蒸留時のアルコール度数は94.8%以下とする。

ⅳ.木樽で3年以上熟成させる。

ⅴ.アイルランド共和国及び北アイルランド国内の倉庫にて熟成を行う。

またこれらの定義には含まれていないが、蒸留所によっては単式蒸留器を用い3回蒸留を行っているものもあり、アイリッシュウイスキーの大きな特徴となっている。

アイルランドは実は島の中に二つの国があり、それぞれ図のとおりイギリスの地方である北アイルランドとアイルランド共和国である。

歴史について教えて!

ウイスキーの発祥には諸説ありますが、その中のひとつに1172年にイングランドがアイルランドに侵攻した際にすでに麦から蒸留した酒が飲まれていたという故事があることを根拠に、アイルランドが発祥とする説があります。

深い歴史を持つアイリッシュウイスキーですが、ここではその歴史についてまとめておきます。

1600年代ー生産開始ー

1608年に北アイルランド国内、ブッシュミルズの町でウイスキーの製造が始まりました。

現在、ブッシュミルズにはオールドブッシュミルズ蒸留所という世界最古の蒸留所があるが、1608年時点のウイスキー製造は町全体で行われたものであり、この蒸留所の創業は1784年です。

1700年代ー最盛期ー

18世紀には国内でウイスキー産業が広まり、約2000程の小規模な蒸留所が稼働していました。

またアイルランドは島国であり、国内市場が小さかったことから輸出志向が強くありました。

そのためアメリカへのアイリッシュウイスキーの輸出により、19世紀にはその規模は世界市場の6割を占めるほどでした。
 
なお、当時ウイスキーの生産が最も盛んだったのは、アイルランド共和国の現在の首都にであるダブリンでありました。

この地で創業した大型蒸留所である「トーマスストリート蒸留所」「ボウストリート蒸留所」「ジョンズレーン蒸留所」「マローボーレーン蒸留所」は当時ダブリンビッグ4と呼ばれていました。

1800年代ーブレンデッドウイスキーの台頭ー

この時代には世界でウイスキーの製造に必要は蒸留器も進化が進んでおり、1826年には連続式蒸留器が、1831年にはカフェ式連続式蒸留器が発明されていました。

これらの新技術は、主にスコットランドのローランドで多く使用されるようになった。しかし、アイルランドやハイランドの蒸留所では伝統的な製法を続けていたため人気はありませんでした。

1850年ごろにはスコットランドで伝統的なモルトウイスキーと連続式蒸留器で生産されるグレーンウイスキーをヴァッティングしたブレンデッドウイスキーが生産されるようになります。

このブレンデッドウイスキーはアイリッシュウイスキーよりも軽い味わいであり、大量生産ができたことからアイリッシュウイスキーは徐々にその地位を脅かされるようになりました。

1900年代前半ーアメリカ禁酒法の影響ー

1919年には主要な取引先であったアメリカで禁酒法が施行されたことにより、アイルランド国内のウイスキー製造業は蒸留所の閉鎖や規模縮小をせざるを得なくなってしまう。

また1920年ごろ、アイルランドは内戦によりスコットランドから独立をすることとなったが、ウイスキー業界にとっては裏目に出ることとなり、アイリッシュウイスキーはイングランド市場からも締め出されてしまう。

そして1974年にはジョンズレーン蒸留所が閉鎖されたことにより1700年代から繁栄していたダブリンの蒸留所は完全に姿を消すことになった。

1900年代後半ー復活の兆しー

このようなアイリッシュウイスキー存亡の危機の中で、1960年代には政府の政策で伝統的なアイリッシュウイスキー産業を復活させるべく、残存する蒸留所の合併がすすめられました。

これにより、北部にブッシュミルズ蒸留所、南部にはジェムソンを作るミドルトン蒸留所の2つが残ります。

以降、現在にかけてアイリッシュウイスキーには徐々に復活の兆しが見え始め、現在では蒸留所の復活や新興蒸留所の創業も増えており勢いを取り戻しています。

どんな種類があるのかな?

アイルランドでは、スコッチと同じくモルトウイスキーやグレーンウイスキー、それらを混ぜわせたブレンデッドウイスキーが作られていますが、そのほかにアイリッシュウイスキーを特徴づけるポットスチルウイスキー」というものが作られています。

このポットスチルウイスキーとモルトウイスキーについて詳細に見てみましょう。

ポットスチルアイリッシュウイスキー

ポットスチルアイリッシュウイスキーの定義は次の通りです。

ⅰ.原料として30%以上の大麦麦芽(モルト)の使用、30%以上の未発達大麦(バーレイ)の使用及びその他穀物の使用は5%以内とする。

ⅱ.単式蒸留器によって3回の蒸留を行うこと。

ちなみにひとつの蒸留所で上記の条件を満たしたウイスキーをボトリングした場合、シングルポットスチルアイリッシュウイスキーと表記することができます。

また原料にモルト以外の穀物を使用する場合、硬い殻を粉砕するために石臼ですりつぶした後に、長時間かかて糖化を行っています。

【マメ知識】大麦以外の穀物は硬い?

大麦麦芽以外の穀物は殻が硬く、通常のローラーミルでは粉砕ができません。

そこでアイリッシュウイスキー生産時には石臼を用いて粉砕をしています。

また原料がモルト100%でないと糖化に長く時間がかかるが、これによってアイリッシュウイスキーの独特のオイリーさを生み出していると言われています。

モルトアイリッシュウイスキー

スコッチと同様にモルト100%のウイスキーをモルトアイリッシュウイスキーと言います。

また単一の蒸留所で生産されたものであればシングルモルトアイリッシュウイスキーと呼ぶことができます。

一般に蒸留にはポットスチルを用い、ブッシュミルズなどでは3回蒸留を行う伝統的な製法が続けられている。

味わいについて

ここで、改めてアイリッシュウイスキーの味わいの特徴についてまとめてみましょう。

アイリッシュウイスキー、特に伝統的な製法として単式蒸留器による3回蒸留を行っているものは、雑味がそぎ落とされたライトかつクリーンな味わいとなっています。

酒質については、原料のモルト以外の穀物は石臼で粉砕した後に長時間かけて糖化させていることから、独特のオイリーさがあります。

またアイリッシュウイスキーは基本的に製麦時にピートを使用しないため、スモーキーさは無く、フルーティで飲みやすいものが多いです。

代表的な蒸留所!

アイルランドの蒸留所は近年のウイスキーブームを受けて少しづつ増え続けている。

ここでは主要な蒸留所をピックアップしてまとめておきます。

ミドルトンオールドブッシュミルズクーリー
キルベガンタラモアティーリング
ロイヤルオーク

参考資料