記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はカナダより「ハイラムウォーカー蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
カナディアンクラブ/デトロイト川/アメリカ禁酒法時代下での発展
カナディアンクラブの特徴
ライトタイプ/華やか/飲みやすい/バランス感が卓越/クリーミー/柑橘/オーク香
ハイラムウォーカー蒸留所
ハイラムウォーカー蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1856年 |
所有会社 | ペルノ・リカール社 (ブランドはサントリー社の所有) |
地域分類 | カナダ オンタリオ州ウィンザー |
ポットスチル | 連続式蒸留機・単式蒸留器 |
「ハイラムウォーカー蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ハイラムウォーカー蒸留所はカナダのオンタリオ州、ウィンザーの街に位置しています。具体的にはアメリカとの国境沿い、デトロイト川の岸沿いになります。
創業した1800年代後半頃にはアメリカで禁酒運動が盛んとなっており、1920年の禁酒法の時期には監視の不十分であったデトロイト川の国境を介してカナディアンウイスキーの密輸が横行しました。
ハイラムウォーカー蒸留所の立地はここで有利に働き、アメリカに渡るカナディアンウイスキーの8割近くが同蒸留所で生産されるカナディアンクラブとなっていました。
「ハイラムウォーカー蒸留所」蒸留所の歴史
ハイラムウォーカー蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1854年 | ハイラムウォーカー社によってハイラムウォーカー蒸留所の前身となる蒸留所がアメリカのデトロイト州で創業される |
1855年 | アメリカの禁酒運動の拡大により、ウルヴァリン州でウイスキーの生産が禁止される |
1856年 | アメリカ禁酒運動の高まりを受けて蒸留所がカナダのオンタリオ州ウィンザーへと移される 一般にこの年がハイラムウォーカー蒸留所の創業年とされている |
1860年 | この頃にアメリカのクラブでハイラムウォーカー社のウイスキーが大人気となる |
1865年 | 同蒸留所のウイスキーのブランド名を「クラブウイスキー」に改める |
1870年 | この頃にはアメリカのウイスキー需要に応えたハイラムウォーカー社がカナダ全土で2位の大企業となる |
1880年 | アメリカで米国外で作られた蒸留酒はラベルに原産国名を記載する必要性を示した法律が可決される |
1889年 | ボトルのラベル上部にカナディアンの表記が為される |
1890年 | ウイスキーのブランド名が「カナディアンクラブウイスキー」とされる |
1891年 | 英国のヴィクトリア女王によってカナディアンクラブが王家御用達の称号を与えられる これは北米史上唯一である |
1899年 | ハイラムウォーカー氏が亡くなる 蒸留所及び会社は彼の息子らに引き継がれる |
1920年 | アメリカ全土で禁酒法が施行される カナディアンクラブが大量に密輸されることとなり、1920年代半ばには密輸ウイスキーの75%を占めるようになる |
1933年 | アメリカ禁酒法が廃止される |
1940年 | カナディアンクラブの売上は好調であり、世界90カ国以上に輸出されるようになる |
1952年 | ニューヨークのタイムズスクエアに巨大な看板を購入し、以降20年以上に渡って広告を載せる |
1987年 | ハイラムウォーカー社がアライドライオンズ社と合併する |
1994年 | 同社はスペインのペドロ・ドメク社と統合されてアライドドメク社が形成される カナディアンクラブのブランド所有権はビームグローバル社が取得する |
2005年 | アライドディスティラーズ社がペルノ・リカール社によって買収される |
2014年 | ビームグローバル社を日本のサントリー社が買収したことにより、カナディアンクラブブランドの所有者がサントリー社となる |
「ハイラムウォーカー蒸留所」製法の特徴
原料について
ポイント
ハイラムウォーカー蒸留所ではライ麦・ライ麦芽・大麦麦芽・とうもろこしを主原料として採用しています。
とうもろこしは主にカナディアンウイスキーの定義にある、風味の土台となる個性の少ないベースウイスキーの生産に活用されます。
その他の穀物は風味を形作るフレーバリングウイスキーの生産に使用されます。
用意された原料の穀物はそれぞれ混合されることなく、個別にモルトミルで粉砕します。
以降これらの原料を異とする生成物は、混合されることなく蒸留までの工程を進むこととなります。
次の工程は糖化になります!
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糖化について
ポイント
粉砕された原料の穀物はステンレス製の煮沸器(クッカー)に投入されます。
そして前回蒸留の廃液と仕込水、少量のモルト、そして糖化用の天然酵素を加え、加圧煮沸することで糖化が進められます。
糖化が完了すると糖分を多く含んだマッシュを得ることができます。
次の工程は発酵になります!
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発酵について
ポイント
糖化によって得られたマッシュは発酵槽へと移され、蒸留用の酵母と混合することで発酵が進められます。
そのまま数日が経過すると、マッシュに含まれた糖類が酵素によって代謝され、その過程でウイスキーの元となるアルコール分が生成されます。
発酵が完了するとアルコール度数約10%程度のビアーを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
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蒸留について
ポイント
ハイラムウォーカー蒸留所では蒸留に際して連続式蒸留機と単式蒸留器が使用されています。
ここまで原料の異なる生成物は混合されておらず、蒸留時も混合されることはありません。加えてベースウイスキーとフレーバリングウイスキーで蒸留方法が異なっています。
ベースウイスキーはとうもろこしを主原料としたビアーを連続式蒸留機のみで蒸留します。
フレーバリングウイスキーは2タイプに分けられています。
ひとつはライ麦、とうもろこし、ライ麦麦芽、大麦麦芽を主原料としたビアーを連続式蒸留機で蒸留した後、単式蒸留器で蒸留したものです。
もうひとつはライ麦、ライ麦麦芽、大麦麦芽を主原料としたビアーを1塔式の連続蒸留器で蒸留したものになります。
蒸留が終了した時点で、各原料ごとに区別されている2タイプのフレーバリングウイスキーとベースウイスキーが完成しています。
次の工程は熟成になります!
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熟成について
ポイント
ハイラムウォーカー蒸留所にはラック式のウェアハウスが建てられており、熟成に使用される樽はアメリカンホワイトオークのバーボン樽になります。
ここまで原料ごとに明確に区分されてきた原酒は樽詰めする前のタイミングでブレンドされることとなります。ブレンドのレシピは昔ながらの伝統的な配合にて行われます。
樽詰めされた原酒はウェアハウスに安置された後、3年以上の長い期間を眠ります。
ちなみに蒸留所には瓶詰め工場も併設されているため、熟成の完了した原酒は同じ所内にて瓶詰めされることとなります。
オフィシャルボトル一覧
ハイラムウォーカー蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
カナディアンクラブ
ポイント
カナディアンクラブはそのスッキリとした軽やかでクセのない味わいから、誰でも気軽に楽しめるウイスキーとして世界150カ国以上で愛飲される人気ブランドになります。
このボトルはそのカナディアンクラブの最もスタンダードなボトルであり、圧倒的なコスパを誇るカナディアンウイスキーの代表格です。
カナディアンウイスキーを飲んだことがない方はこのボトルから是非!
香り
クリーミー/キャラメル/オレンジ/バニラ/トフィー/ウッディ
味わい
柔らかく優しい/クリーン/バニラ/キャラメル/柑橘系フルーティ
余韻
暖かく優しいオーク香が長く続く
カナディアンクラブ ブラック
ポイント
カナディアンクラブブラックはハイボールや水割りでウイスキーが楽しまれている日本市場向けにリリースされた日本限定のボトルになります。
オーク樽で8年以上熟成された、軽やかでありながら芳醇な風味を持つ、骨格のしっかりとしたウイスキーで構成されています。
香り
濃厚なオーク香/キャラメルの甘さ/オレンジ/柑橘系フルーティ/トフィー
味わい
バニラ/キャラメル/ウッディな甘さ/オレンジ/柑橘系フルーツ香/トフィー
余韻
しなやかなウッディネスとバニラ香がとても長く続く
カナディアンクラブ12年
ポイント
オーク樽にて12回を超えるカナダの極寒を超えた原酒のみで構成される、フルボディなライ麦の芳醇で華やかな香りを持ったボトルになります。
卓越したバランス感があり、理想的なカナディアンウイスキーの風味が体現されています。
香り
柔らかいオーク香/まろやかなバニラ/オレンジ系の柑橘の香り/優しい甘さ
味わい
芳醇なバニラの甘さ/クリーミー/優しいウッディ/オレンジピール
余韻
温かみのあるスムースな樽香が長く続く
カナディアンクラブ20年
ポイント
20年を超える長期の熟成を経た原酒のみで構成された、カナディアンウイスキーの頂点に達したボトルになります。
オーク樽での長期熟成によって色は深みを増し、甘く華やかな香りやコクのあるリッチな舌触りが生み出されました。
香り
飴玉のような甘さ/レーズン/もも/りんご/芳醇なオーク香/キャラメル
味わい
クリーミーなバニラ/レーズン/りんご/オレンジ系柑橘感/ウッディなビター感
余韻
リンゴや柑橘のフルーツ香と芳醇なオーク香がとても長く続く
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参考資料
参考サイト:whisky.com / whiskeyuniv.com / canadianclub.com