【特集】グレンエルギン蒸留所(glenelgin)|立地・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「グレンエルギン蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

ホワイトホース/チャールズ・ドイグ/屋外設置のワームタブ

グレンエルギンの特徴

ノンピート/複雑/奥深い/重心低め/りんご/バニラ/クリーミー/ナッティ/モルティ

グレンエルギン蒸留所

グレンエルギン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1898年
所有会社ディアジオ社
地域分類スコットランド
スペイサイド エルギン地区
発酵槽カラ松製9基
ポットスチル初留3基・再留3基
仕込み水ミルビュイズ湖の近くの泉
ブレンド先ホワイトホースなど

「グレンエルギン蒸留所」蒸留所の立地

立地について

グレンエルギン蒸留所はスコットランドのスペイサイド,エルギン地区に位置しています。幹線道路のA941号沿いには10以上の蒸留所がひしめいていますが,エルギン地区の中で最もローゼス地区よりに位置しています。

この場所は付近の蒸留所の密集地からは最も離れており,河川資源が豊富なため,1950年までは蒸留所の動は全て河川の水力で賄っていたとのことです。

また蒸留所南東には良質な水を湛えるミルビュイズ湖があり,グレンエルギンとリンクウッドがこの水を仕込み水に使用しています。

また蒸留所のシンボル的な屋外設置のワームタブと,そこに定期的に現れるイワツバメはオフィシャルボトルにも描かれています!

イワツバメ 出典:サントリー
ワームタブ 出典:whisky.com

「グレンエルギン蒸留所」蒸留所の歴史

グレンエルギン蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1898年ウィリアムシンプソンジェームズカールによってグレンエルギン蒸留所が建設される
設計を行ったのは建築のスペシャリストであるチャールズ・ドイグ氏であった
1900年蒸留所がウイスキーの生産を始める
生産開始の5ヶ月後に蒸留所が閉鎖される
1901年蒸留所が競売にかけられることとなる
1906年ワインを生産するJJBlanche&Co社が蒸留所を購入する
生産は再開される
1930年蒸留所がDCL社の傘下にあるスコテッシュモルトディスティラーズ社に買収される
ホワイトホースディスティラーズ社にライセンスが供与され,グレンエルギンがホワイトホース
キーモルトとして使用されるようになる
1964年ポットスチルが4基増設されて6基体制となる
1992年蒸留所の改修に伴い,以降3年間に渡って閉鎖される
2002年ヒドゥンモルトシリーズとして12年熟成のボトルが公式リリースされる
2008年グレンエルギン16年が限定リリースされる
2018年18年熟成でカスクストレングスのボトルが限定リリースされる

チャールズ・ドイグ

チャールズドイグ氏は特殊な形状の「パゴダ屋根」を,蒸留所のキルン塔に導入した超有名な建築設計士です。

彼はグレンエルギン蒸留所の設計に携わった際に「今後50年間でスペイサイドに建設される最後の蒸留所となる」という予言を残していました。

この予言は誠に正確であったようで,実際に次に建った蒸留所は1958年に創業されたトーモア蒸留所でした。その間は確かに60年間空いていましたね。

白馬のイメージ

グレンエルギンは1930年ごろよりホワイトホースの中核を担うキーモルトとして使用されています。

これを受けて蒸留所の外観も白で統一されていたり,かつてのオフィシャルボトルには白馬の絵が描かれていたりしていました。

このようにホワイトホースを意識したブランディングが行われていましたが,2002年のヒドゥンモルトシリーズ以降はボトルに白馬のシンボルマークが描かれることは無くなってしまいました。

「グレンエルギン蒸留所」製法の特徴

製麦

グレンエルギン蒸留所では1960年代ごろまでは自社にてフロアモルティングを行なっていましたが,現在は廃止されており,ディアジオの製麦施設より原料のモルトを調達しています。採用されるモルトはノンピートタイプになります。

また貯蔵できるモルトの量が非常に多いのが特徴的であり,36個のモルトビン(モルトを入れておくタンク)に合計400トンを貯蔵することが可能です。

原料のモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!


糖化

グレンエルギン蒸留所では仕込み水としてミルビュイズ湖付近の泉の水を使用しています。余談ですが同じ水をリンクウッド蒸留所が使用しています。

マッシュタンは1バッチあたり約8トンのグリスト容量を誇る,近代的なフルロイタータンが採用されています。

グリストをマッシュタンに投入し,継続的に加熱した仕込み水を投入することで糖化が進められます。糖化が完了すると糖分を多分に含み,クリアな色味をしたウォートを得ることができます。

次の工程は発酵になります!


発酵

グレンエルギン蒸留所には容量40000リットルでカラ松製のウォッシュバックが6基設置されています。使用する酵母はクリーム状のものになります。

冷却したウォートと酵母をウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は約90時間と比較的長めとなっております。

発酵が完了するとアルコール度数約8%程度のもろみが完成します。

次の工程は蒸留になります!


蒸留

グレンエルギン蒸留所には容量7000リットルのウォッシュスチルが3基,容量8000リットルのスピリットスチルが3基設置されています。スチルの形状はストレート型であり,他のスペイサイドの蒸留所と比べて小さめのサイズ感が特徴的です。

ポットスチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式,冷却方式は伝統的な屋外設置のワームタブ方式になります。このワームタブは蒸留所のシンボルでもあります!

ワームタブ式では近年スタンダードなシェル&チューブ式と比較して,冷却過程で銅に触れる面積が小さくなっています。銅はクリーンでフルーティな酒質を生み出す化学反応の触媒として働いているため,接触面積が減ると,深く豊かなフルボディの酒質となります。

再留までを完了して得られるニューポットはアルコール度数が66%程度まで高められています。

次の工程は熟成になります。

出典:whisky.com
出典:whisky.com

熟成

グレンエルギン蒸留所には伝統的で小規模なダンネージ式のウェアハウスがあります。

熟成に使用される樽はバーボン樽がメインですが,シェリー樽なども一部使用されています。ニューポットは加水によってアルコール度数を63.5度に整えたのち,樽詰めされて長い年月を眠ることとなります。

オフィシャルボトル一覧

グレンエルギン蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

グレンエルギン12年

ポイント

「ボトルに入ったフルーツケーキ」と呼ばれるグレンエルギン唯一のオフィシャルボトルです!

異名のとおりエレガントな甘みが強いため,食後のデザートとして非常に有用な一本になります。

またグレンエルギンはホワイトホースのキーモルトでもあるため,飲み比べて似た要素を探るというのも非常に面白いかと思います!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:5,489円/楽天市場:5,368円(送料込み)

2022年7月現在

香り

はちみつ/柑橘/木の甘さ/焼きりんご/ナッティ/モルティ

味わい

はちみつ/熟したりんご/クリーム/ナッティ/モルティ/フローラル

余韻

かなり奥深く複雑な余韻が長く続く/華やかでフルーティ

関連ブレンデッドウイスキー紹介

グレンエルギンは前述の通りホワイトホースのキーモルトを務めています。ここではホワイトホースの標準的なボトルを紹介します!

ホワイトホース

ポイント

実は日本での販売量が第1位のスコッチウイスキーはこのホワイトホースになります。

コスパの良さとドライでスモーキーな味わいから,ハイボールで美味しく楽しむガンガン飲める最強の常飲酒なので,1本家に置いておくのはどうでしょうか!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:1,382円/楽天市場:1,464円(送料込み)

2022年7月現在

香り

スモーキー/フローラル/はちみつ/フレッシュな柑橘/ドライ

味わい

香ばしいスモーキー/花/はちみつ/フレッシュでドライ/バニラ

余韻

心地よいスモーキーさが残り,ドライな余韻

ホワイトホース12年

ポイント

日本をはじめとして世界でも大人気なホワイトホースの12年熟成のボトルになります。

ノンエイジと比較して奥深さとマイルドさが増しており,豊かな味わいを感じることができます。価格帯が大きく上がっているわけでは無いので,普段の消費量があまり多く無い方はこちらを選んだ方が良いかと思います!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:2,055円/楽天市場:2,436円(送料込み)

2022年7月現在

香り

ほのかなピート香/キャラメル/りんご/柑橘/豊かな樽香

味わい

バニラ/オークの甘さ/モルティ/香ばしいスモーキー/タンニン感/スパイシー

余韻

優しいスモーキー感とスパイシーな余韻が長く続く

ボトラーズボトル紹介

グレンエルギンの通年販売されているオフィシャルボトルは上記1本のみであり、シングルモルトはボトラーズリリースが中心となっています。

そのため現在購入できるボトラーズボトルを一部紹介します!

グレンエルギン 2006 14年 クラクストンズ

ポイント

2011年に設立された新興のボトラーズであるクラクストンズからリリースされたグレンエルギンになります。その中でも「エクスプロレーション」という50%という比較的高めの度数でボトリングすることで,モルトのキャラクターを「探検・探求」できるようにされたシリーズのボトルになります。

リフィルのシェリーバットで14年間熟成された原酒が使用されおり,程よいシェリーのニュアンスが感じられる美味なる一本です。

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ー特徴ー

価格帯

Amazon:11,100円

2022年7月現在

香り

熟したりんご/ヘザーハニー/トフィー/スパイシー

価格帯

濃いりんご/水あめ/スパイシー/バニラ/キャラメル/オークの甘さ

グレンエルギン 1995 20年 ジャック・ウィバース

ポイント

ドイツの老舗ボトラーズであるジャックウィバースがリリースした20年熟成のグレンエルギンになります。

熟成にバーボンカスクを使用しており,長い熟成期間を経てマイルドさが強調され,バニラ感が強く出ているのが特徴的です。

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ー特徴ー

価格帯

楽天市場:27,005円(送料込み)

2022年7月現在

参考資料

参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / diageo