記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「ダルウィニー蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
気象観測所/屋外設置のワームタブ/標高が高い/クラシックモルトシリーズ
ダルウィニーの特徴
ヘザーハニー/オレンジ/バニラ/メープル/優しい内陸系ピートスモーク
ダルウィニー蒸留所
ダルウィニー蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1897年 |
所有会社 | ディアジオ社 |
地域分類 | スコットランド 北ハイランド ※スペイサイド論者がいる |
発酵槽 | オレゴンパイン製6基 |
ポットスチル | 初留1基・再留1基 |
仕込み水 | アルタナスルイー川 |
ブレンド先 | ブラック&ホワイト,ブキャナンズ ロイヤルハウスホールドなど |
「ダルウィニー蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
ダルウィニー蒸留所はスコットランドの北ハイランド,ケアンゴーム国立公園内に位置しています。スペイサイドにかなり近い場所であるため,一部スペイサイドモルトであるする説もあります。
具体的にはグランビアン山脈の最高峰であるドラムオクター峠の少し北側,スペイ川の上流部に広がる広い谷に位置しています。蒸留所の標高は約330mとかなり高く,スコットランドで最も高い場所にある蒸留所の一つとされています。
またその標高の高さと,周囲を遮るものがないことから,昔より気象観測の拠点として併用されていた背景があります。かねてより蒸留所のマネージャーは気象観測のデータをつける業務を毎日行っているとか。
ちなみにダルウィニーはゲール語で「待ち合わせ場所」という意味を持っています。その名の通り蒸留所のある場所は鉄道や道路などが複数交差する場所となっています。
「ダルウィニー蒸留所」蒸留所の歴史
ダルウィニー蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
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1897年 | アレクサンダー・マッケンジー,ジョン・グラント,ジョージ・セラーらによってストラススペイ蒸留所が創設される |
1898年 | 創業直後より経営難に陥り,APブライス&サンズ社らによって買収される |
1905年 | 蒸留所がアメリカのクック&バーンハイム社によって買収される 蒸留所名が「ダルウィニー蒸留所」に改められる |
1919年 | 蒸留所がマクドナルド・グリーンリーズ社によって買収される |
1926年 | 所有社グループがDCL社によって買収される |
1934年 | 火災によって蒸留所が一時閉鎖される |
1938年 | 蒸留所の再建が完了し,生産が再開される |
1940年 | 戦争に伴う大麦不足によって一時的に休業状態となる |
1961年 | ウォッシュスチルの加熱方式が石炭を熱源とした蒸気による間接加熱方式に変更される |
1968年 | 自社によるフロアモルティングが廃止される |
1972年 | 近代化に伴って燃料が石炭から石油に変更される |
1986年 | 改修工事によりコンデンサーがシェル&チューブ方式とされる |
1988年 | ダルウィニー15年がクラシックモルトシリーズのハイランド代表に選出される |
1991年 | ビジターセンターがオープンされる |
1992年 | 蒸留所の完全なリニューアル実施にあたり3年間休業状態となる |
1995年 | 蒸留所の改装が行われ,撤去されていたワームタブ式コンデンサーが復活させられた |
「ダルウィニー蒸留所」製法の特徴
製麦について
ポイント
ダルウィニー蒸留所では1968年まで自社にてフロアモルティングが行われていました。現在はディアジオ社の製麦部門に原料の生産を委託しており,ライトリーピーテッドタイプのモルトを仕入れています。
乾燥に使用されているピートは蒸留所近傍のヘザーを多く含有したものであると言われており,内陸系のスモーク感が得られています。
原料のモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
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糖化について
ポイント
ダルウィニー蒸留所では仕込み水としてアルタナスルイー川の水を採用しています。この水は大部分が澄み切った雪解け水で構成されています。
マッシュタンは1バッチあたり7.3トンのグリスト容量を誇るステンレス製のフルロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストはマッシュタンに投入され,そこに加熱した仕込み水を3回に分けて温度を上げながら注ぐことで糖化が進められます。この糖化手法はインフュージョン法と呼ばれています。
糖化が完了すると,糖分を多く含み透き通った色味のウォートを得ることができます。
次の工程は発酵になります!
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発酵について
ポイント
ダルウィニー蒸留所には容量34000リットルでオレゴンパイン製のウォッシュバックが6基設置されています。使用される酵母はクリーム状のものです。
糖化によって得られたウォートは酵母が活性化する20度前後まで冷却された後,酵母と共にウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は最低60時間以上と比較的長めに設定されています。
発酵が完了するとアルコール度数約8%程度のもろみを得ることができます。
次の工程は蒸留になります!
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蒸留について
ポイント
ダルウィニー蒸留所には容量17,000リットルのウォッシュスチルが1基,容量14,000リットルのスピリットスチルが1基設置されています。形状はどちらもストレート型であり,加熱は蒸気による間接加熱方式が採用されています。
コンデンサーは,創業〜1986年までは伝統的なワームタブ方式,1986年〜1995年はタブを取り外してシェル&チューブ方式が採用されていました。しかし酒質が想像通りにならなかったため,1995年以降はかつてのワームタブを再び設置して使用しています。
外からも見えるこの巨大なワームタブは蒸留所のシンボル的存在にもなっています。
発酵によって得られたもろみは,まずウォッシュスチルに移されて初留が行われます。初留が完了するとアルコール度数約20%のローワインを得ることができます。
続いてローワインはスピリットスチルへと移されて再留が行われます。再留によって得られるアルコールはスピリッツセイフという箱の中で,不安定な成分が多く含まれる部分を除去するミドルカットという工程が適用されます。
再留・ミドルカットを終えた段階でアルコール度数約67%のニューポットを得ることができます。
次の工程は熟成になります!
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熟成について
ポイント
ダルウィニー蒸留所にはダンネージ式のウェアハウスが2棟あり,合計5000樽以上のウイスキーを貯蔵させることができます。
熟成に使用される樽はバーボン樽がメインですが,一部の限定品用にオロロソシェリー樽が使われることもあります。
蒸留によって得られたニューポットは加水によってアルコール度数を63.5%に調整した後樽詰めされて,ウェアハウスにて長い時を眠ることとなります。
オフィシャルボトル一覧
ダルウィニー蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
ダルウィニー15年
ポイント
スコットランドで最も標高の高い場所に立つ蒸留所の一つであるダルウィニー蒸留所の公式ボトル。その中でも最もスタンダードなボトルになります。
高原らしいヘザーハニーの香りがとても香ばしく,濃密な個性を感じることができるウイスキーです。
また15年熟成のこのボトルは1988年にクラシックモルトシリーズのハイランド代表に選出されたこともあり,その美味しさはお墨付きです。
価格帯
Amazon:6,200円
※2022年8月現在
香り
ヘザーの甘み/はちみつ/バニラ/柑橘/内陸系の優しいピート感
味わい
ヘザーハニー/バニラ/柑橘系フルーツの甘さ/モルティ/穏やかなピートスモーク
余韻
フルーツ系の甘さからピートスモークやモルト感へと移ろう長い余韻
ダルウィニー
ウィンターズゴールド
ポイント
ダルウィニー蒸留所は高原にあるため年中気温が低いですが,その中でも特に冷え込みの厳しい10月〜3月に蒸留された原酒のみで構成されたボトルです。
まさしく個性的な立地をウイスキーの個性に100%反映させた,他にはない唯一のウイスキーと言えるでしょう!
価格帯
Amazon:6500円
※2022年8月現在
香り
シャープ/モルティ/ヘザーハニー/バニラ/レーズン/オーク
味わい
リッチ/オレンジ/ヘザーハニー/バニラ/オークの甘さ/優しいピートスモーク
余韻
ヘザーの香りと優しく僅かなピートスモークが心地よく長く残る
ダルウィニー
ディスティラーズエディション
ポイント
ダルウィニーではほとんどの原酒がバーボン樽のみで熟成されていますが,このディスティラーズエディションはオロロソシェリーでフィニッシュさせた原酒を使用しています。
元々の個性はそのままに,新しくシェリー樽のニュアンスが付与されたダルウィニーです。
ボトルデザインが非常にクールなのも推しポイントですね…おしゃれすぎるって…
価格帯
楽天市場:7,403円
※2022年8月現在
香り
モルティ/ヘザーハニー/ぶどう/レーズン/バニラ/優しいピートスモーク
味わい
モルティ/オレンジ/レーズン/バニラ/オークの甘さ/香ばしいピート/スパイシー
余韻
ヘザーの香りに,レーズンやオーク香が残りつつもドライな余韻
参考資料
参考サイト: