【特集】ブルックラディ蒸留所(bruichladdich)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「ブルックラディ蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

長い低迷期/テロワール/マークとジム/ブルックラディ/ポートシャーロット/オクトモア

ブルックラディの特徴

モルティな甘み/潮感/フローラル/3ブランドとも非常に個性的

ブルックラディ蒸留所

ブルックラディ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1881年
所有会社レミー・コアントロー社
地域分類スコットランド アイラ島
発酵槽オレゴンパイン製6基
ポットスチル初留2基・再留2基
仕込み水付近の丘の上の貯水池

「ブルックラディ蒸留所」立地

立地について

ブルックラディ蒸留所はスコットランドのアイラ島インダール湾のボウモアとは反対側に位置しています。

アイラ島は大麦の産地としては適していないと考えられておりこれまで100年近く大麦を栽培した人はいませんでした。

しかしブルックラディはテロワールの概念(環境によって養われる個性を尊重する考え)から島での大麦栽培に挑戦しており、未だ100%アイラ産大麦で賄うことは叶いませんが、その使用割合は約半数にまで達しています。

また地元へのこだわりは原料にとどまらず、フロアモルティングを除き、ボトリングまでの全ての工程を自社で行っています。まさしくブルックラディ蒸留所だけの個性的な味わいのウイスキーが作られています!

「ブルックラディ蒸留所」歴史

ブルックラディ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1881年ウィリアムらハーベイ兄弟によって蒸留所が創業される
1929年戦争に伴う経済状況悪化により、以降7年間に渡り蒸留所が閉鎖される
1936年ウィリアムハーベイが亡くなったことにより、ハーベイ家による蒸留所の運営が終わりを迎える
1938年蒸留所が米国のジョセフ・ホップス氏によって買収される
1952年
〜1967年
蒸留所の所有者が頻繁に移り変わる
ロス&コールター社▶︎DCL社▶︎AB Grant社
1968年蒸留所がインバーゴードンディスティラーズ社によって買収される
1975年蒸留所拡張に伴いポットスチルが2基から4基に増設される
1980年ウイスキー不況によって週一程度の低操業となる
1993年ホワイト&マッカイ社に買収
不況の影響は続きほぼ休止状態
1995年同年以降5年間に渡り蒸留所の閉鎖が決定される
2000年蒸留所がマーク・レイニェー率いるマレーマクダビッド社及びボウモア蒸留所を退職したジム・マッキーワン氏ほか2名の投資家たちによって約9億円で買収される
2001年ヘビリーピーテッドタイプのポートシャーロット10年が発売される
2002年スーパーヘビリーピーテッドタイプのオクトモアが発売される
2012年蒸留所がレミー・コアントロー社によって約87億円で買収される

不安定な100年間

ブルックラディ蒸留所は年表の通り、ハーベイ兄弟によって創業されてから10年程度は比較的好調でしたが、1900年前後から徐々に安定を失っていきました。この段階での要因は戦争や火事などの外的要因でした。

これ以降2000年の買収までの間には頻繁な所有者変更という内的要因にて運営の低迷が続いてしまいます。安定しない所有者の元で徐々に生産頻度も落ち込んでいき、その結果として採算が付かないとして1993年に閉鎖が決定されてしまいました。


マークとジム

蒸留所の危機的な状況を救ったのは2000年の買収に加担したマークレイニェージムマッキーワンの功績といえるでしょう。正反対な来歴を持つ彼らですが、ウイスキーにかける熱量やビジョンなどを共有することでブルックラディを素晴らしい蒸留所へと成長させました。

彼らは買収直後に蒸留所のビクトリア朝の古き良き装飾や設備を維持するべく再構築工事を行い、翌年には生産を再開するまでに至りました。そしてノンピートのアイラモルトであるクラシックラディやスーパーヘビリーピーテッドのオクトモアなど、個性の髄を極めたようなブランドを続々とリリースしました。

また高級なワイン樽を熟成に使用するなど、生産に係る試みも惜しまずに行なっているのが特徴的でした。

マークレイニェー

イングランド生まれ、ワイン商家系、カトリック、ラグビーファン

ジムマッキーワン

アイラ島生まれ育ち、元ウイスキー大会社務め、プロテスタント、フットボールファン

「ブルックラディ蒸留所」 製法の特徴

製麦

ブルックラディ蒸留所では原料の大麦として、六条大麦の旧品種であるベア種(オークニー産)を主に採用しています。またアイラ島での大麦の生産にも挑戦しており、最終的にはアイラ産の大麦のみでウイスキー作りを可能とすること(テロワールの概念)を目標としています!

自社での製麦作業は行なっておらず、専門業社であるインバネスのベアーズ社に委託をしています。しかし現在製麦設備の導入が進められており、2023年からはサラディンボックス式の製麦設備を導入し、自社でのモルティングを開始する予定です!

ブルックラディはブルックラディポートシャーロットオクトモアという3種類のボトルブランドを持っていますが、それぞれ製麦時に炊き込まれるピートの具合が異なります。各ブランドのフェノール値は0ppm・40ppm・80〜300ppm以上となっており、作られるウイスキーの幅の広さが伺えます。

製麦を終えたモルトはロバートボビー社によって作られた1913年製(スコッチ最古)のモルトミルによってグリストとしたのち、糖化の工程へと進みます!

モルトミル 出典:whisky.com

糖化

ブルックラディ蒸留所のマッシュタンは、ブナハーブン蒸留所の中古(1881年製)であり、グリスト容量7トンの蓋ナシ鋳鉄製フルロイタータンになります。タンの直径は5m、深さは2mとなっています。

糖化の方法にはいくつかの特徴があります。まずマッシュタンにグリストを投入し、67℃とした前回バッチの3番麦汁と混合されます。一旦全体的に攪拌したのちに20分程度時間を置くと1番麦汁が回収されます。

続いて86℃とした前回バッチの4番麦汁を注ぎ、全体が均一となるように混合したのちに2番麦汁が回収されます。その後、3番麦汁は88℃とした仕込み水を加えることによって回収し、4番麦汁は90℃の仕込み水と混合したのちに回収されます。

1・2番麦汁(ウォート)を22℃まで冷却し、次の発酵の工程へ進みます!

マッシュタン内部 出典:whisky.com

発酵

ブルックラディ蒸留所には容量35000リットルのオレゴンパイン製ウォッシュバックが設置されています。ウォッシュバックの今後の更新時には材質をスコットランド松とする方向性となっています。使用する酵母にはマウリ社製のドライイースト(ディスティラーズ酵母)を採用しており、発酵時間は60〜100時間程度となっています。

ウォートはウォッシュバックに投入する際、約22℃とされていますが発酵の進行とともに温度が上昇し、最終的には34℃程度となります。通常発酵槽にはスイッチャーと呼ばれる泡切り装置が付いていますが、ブルックラディでは取り外しており、泡が多く出た場合は消泡剤を投入しています。

発酵が完了するとアルコール度数約6〜7%のもろみが完成し、蒸留の工程へと進みます!

ウォッシュバック 出典:whisky.com

蒸留

ブルックラディ蒸留所には容量約12000リットルのウォッシュスチルが2基、容量約11000リットルのスピリットスチルが2基設置されています。これらはどれも背の高いストレートヘッド型であり、クリーンな酒質のウイスキーが生産されていることが予想できます。ちなみにスチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式、冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。

スチルハウス内にローモンドスチル(名はアグリーベティ)も設置されていますが、こちらは「ボタニスト」というジンの生産に使用されています。(過去にウイスキーの生産に使用したところ失敗したのでジンに切替えたとか…)

初留にかける時間は5時間弱であり、アルコール度数約23%のローワインが得られます。再留には約7時間をかけており、ブランドによってミドルカットのタイミングは異なっています。

クラシックラディでは範囲が狭いため度数は約72%、ポートシャーロットとオクトモアではミドルカットを少しづつ長めとしているため、度数がそれぞれ71%・70%となっています。これは原酒に含まれるスモーキーな成分は蒸留時後期に卓越するため、それらを確保することを目的としたこだわりです。

また標準的な2回蒸留にとどまらず、3・4回蒸留を行うこともあるとのことです。

続いて熟成の工程へと進みます!

ポットスチル 出典:whisky.com

熟成

2000年の蒸留所買収の立役者であるマークとジムは熟成の工程に長けた人物でした。マークはもとワイン商であったためワイン樽の入手に貢献し、ジムは元樽職人でありました。熟成には標準的なバーボン樽をメインとして、シェリー樽や著名なワインであるシャトーの空き樽を使用していることが最大の特徴です。

ウェアハウスの床は土ではありませんが、原種を詰めた樽たちはダンネージ式のように輪木を噛ませて3段に積み上げられています。スペースがかなり逼迫しているため、熟成庫の増設計画も進んでいるようです。

ウェアハウス 出典:whisky.com

オフィシャルボトル一覧

ブルックラディ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

ブルックラディにはブルックラディポートシャーロットオクトモアという3種類のブランドがあります。それぞれ限定リリースや年度ごとに特徴の違うボトル等があり、すでに入手の難しいものなども含まれるため今回は全体のうち一部のみを取り上げています!

ちなみにAmazonなどの通販でも多く出回っていますが、あまり見かけないボトルなどはスコットランド版の公式通販から購入できます!要チェックですね!

ブルックラディ

ブルックラディはアイラモルトの中では唯一のノンピートタイプのウイスキーになります。

ブルックラディ ザ・クラシックラディ

ポイント

ブルックラディ蒸留所の最もスタンダードなオフィシャルボトルになります!

その最大の特徴はアイラモルトでありながらノンピートタイプであることでしょう。

アイラらしさが皆無なわけではなく、アイラモルトからスモーキーさのみを取り払ったといった表現が正しいでしょう。

気になった人は飲んでみる価値が間違いなくあります!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:4898円/楽天市場:5273円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

花畑/麦芽の甘味/レモン系柑橘/はちみつ/カラメル

味わい

モルティな甘味/オークの甘さ/グレープフルーツ/ブラウンシュガー/フローラル

余韻

香ばしい麦芽感が残りつつフローラルかつ爽快でキレの良い余韻

ブルックラディ アイラバーレイ(2013)

ポイント(2013)

ワインやコーヒーなどでは、その土地の環境や気候に根ざした特徴のことをテロワールと呼びます。

これを意識して作られたのがこのボトルであり、原料にアイラ産のモルトを使用、その後の生産過程も全てアイラ島で行われたウイスキーになります!

こちらもノンピートタイプです!

ー特徴ー

価格帯

Amazon(2013):9000円/楽天市場(2013):7836円(送料込み)

※2022年6月現在

※ボトルの年度によって味わいや金額は異なります。

香り

柑橘類/はちみつ/杏/黄色い花/バニラ/カラメル/シナモン

味わい

オークの甘味/カラメル/ブラウンシュガー/ヘザーハニー/フルーラル

余韻

柑橘とはちみつを思わせるオークの暖かさが長く続く

ブルックラディ ベア・バーレイ(2011)

ポイント(2011)

ベア種の大麦は生産量が限られており、ウイスキー作りの主流とはなりませんでしたが、伝統的に使用されてきた品種です。

現在は他の品種に取って代わられてしまいましたが、あえて伝統的なベア種を採用し原料としたボトルになります!

通常の大麦を使用したウイスキーとは確かな違いを感じることができるでしょう!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:不明/楽天市場:13680円(送料込み)

※2022年6月現在

※ボトルの年度によって金額や味わいは異なります。

香り

花束のようなフルーラルアロマ/オレンジ/チョコミント/杏/クリーミー

味わい

チョコレート/柑橘系/杏ジャム/ハーブ感/バナナチップ/バニラ

余韻

心地よい潮風とフルーティさ、モルトの甘味が長く続く

ブルックラディ ブラックアートシリーズ

ポイント

ブルックラディ蒸留所は一度1994年に閉鎖していますが、残りわずかな閉鎖以前に生産されたモルトが使用されたボトルになります。

閉鎖以前も生産活動がわずかにしか行われていなかったことから、この原酒が非常に貴重であることがわかるでしょう。

ー特徴ー

価格帯

ブラックアート 08.11994

公式通販:280ポンド(約47000円)

ブラックアート 09.11992

公式通販:380ポンド(約64000円)

香り

トロピカル/ココナッツ/オークの甘さ/マンゴー/はちみつ/メロン/オレンジ/カスタード

味わい

ブラウンシュガー/チョコレート/ココナッツ/オークの甘み/適度のスモーキーさ

余韻

ジューシーでトロピカルな深い余韻が無限に感じる程長く続く

ポートシャーロット

ポートシャーロットはフェノール値40ppmのヘビリーピーテッドタイプのブランドになります!

ポートシャーロット10年

ポイント

40ppmとヘビリーピーテッドのスコットランド産大麦を原料としています。採用される原酒の樽構成は1stフィルのバーボン樽65%・2ndフィルのバーボン樽10%・2ndフィルのフレンチワイン樽25%となっています!

ブルックラディのモルティな甘みとヘビーピート感のマッチは一級品です!!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:7100円/楽天市場:6930円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

オーク感/モルティ/スモーキー/カラメル/スパイシー/レモン/花の香り

味わい

オークと麦芽の強い甘味/ココナッツ/バニラ/カスタード/レモン/はちみつ

余韻

スモーキーさと柑橘感が融合した心地よい余韻が長く続く

ポートシャーロット アイラバーレイ(2013)

ポイント(2013)

テロワールの概念に従ってアイラ産の大麦を原料とし、生産過程全てをアイラで行なったウイスキーです。

アイラの大麦とヘビーピートなんて美味しくないわけがないですよね(泣)

ー特徴ー

価格帯

Amazon(2013):8855円/楽天市場(2013):9548円(送料込み)

※2022年6月現在

※ボトルの年度によって金額や味わいは異なります

香り

オレンジピール/フローラル/ビスケット/ピートスモーク/ココナッツ/チェリー/メロン

味わい

潮感/程よいスモーキー/甘いオーク感/アーモンド/カラメル/バニラ/黒糖

余韻

香ばしいスモーキーさとフルーツやフローラル感が共存しておりバランスが良い/長い

オクトモア

オクトモアはフェノール値がなんと80〜300ppm以上にも及ぶ、究極のスーパーへビリーピーテッドタイプのウイスキーになります!

※比較対象として、一般にスモーキーと言われるアードベッグは60ppm程度です。

オクトモア12.1 スコティッシュバーレイ

ポイント

オクトモアは言わずと知れたスーパーヘビリーピーテッドのブランドです。このボトルも例に漏れず、フェノール値は圧巻の130.8ppmという脅威の値です!

5年の短熟、ファーストフィルのバーボン樽原酒のみが使用されています。

この構成だけを聞くと荒々しさが卓越しているのかと予想してしまいますが、実際はパワフルさに負けない華やかさを持っているのが特徴的です。この個性は間違いなく代えの効かない唯一のものであると言えるでしょう。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:22000円/楽天市場:22850円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

爽快な柑橘感/しっかりめのピートスモーク/モルティ/バニラ/ケーキ/ココナッツ/チョコ/カラメル

味わい

暖かいメープルシロップ/オークチップ燻製/ピート/乾燥した土壌/オレンジピール/ヌガー/ナッツ

余韻

フローラル・潮感・ピート等が入り混じり、香ばし余韻が非常に長く続く

オクトモア12.2 ソーテルヌカスク

ポイント

このボトルもフェノール値は129.7ppmのスーパーヘビリーピーテッドです!

熟成にソーテルヌカスクを使用しているのがとポイントで、強力なスモーク感とソーテルヌカスク由来の強い甘味は暴力のような個性を感じさせます。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:22850円/楽天市場:22850円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

メロン/スモーキーナッツ/乾いた土のようなピート/レモン系柑橘/オレンジピール/桃/洋梨

味わい

レモン/バニラ/メロン/激しいスモーキー/カラメル/シロップ付の果実/モルティな甘み

余韻

レモンのような柑橘感と土のようなピートスモークが長く続く/余韻まで力強い

オクトモア12.3 アイラバーレイ

ポイント

シングルヴィンテージ・シングルフィールド(蒸留所の程近くで作られた大麦のみを使用)といった究極のテロワールを実現させたオクトモア。フェノール値は118.1ppmというオクトモアらしいスーパーヘビリーピーテッド。

これが真のブルックラディだと言わんばかりの個性的な作品です。

樽構成は1stフィルのバーボン樽が75%、1stフィルのペドロヒメネス樽が25%となっており、熟成年数は5年になります。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:33850円/楽天市場:33850円(送料込み)

※2022年6月現在

香り

シェリー樽の個性/レーズン/鬼スモーキー/ハニー/オレンジブロッサム/ミルクチョコ/バニラ

味わい

ダークチョコ/乾燥した土のようなピート/強シェリー/ドライフルーツ/オーク/砂糖

余韻

バーベキューのような煙たさに塩漬けレモン/チョコやスパイシーを伴う長い余韻

参考資料

参考サイト: