【特集】ボウモア蒸留所(bowmore)|場所・歴史・製法・味と種類|ウイスキーラウンドアップ

記事の概要

世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。

今回はスコットランドより「ボウモア蒸留所」になります!

Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」

キーワード

アイラの女王/海のシングルモルト/第1熟成庫/ブラックボウモア

ボウモアの特徴

乾いたスモーキー/熟成環境由来の潮感/オレンジ系の柑橘感/アイラモルトの中では入門レベルのクセ

ボウモア蒸留所

ボウモア蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。

蒸留所の概要

創業年1779年
所有会社ビームサントリー社
地域分類スコットランド
アイラ島
発酵槽オレゴンパイン製6基
ポットスチル初留2基・再留2基
仕込み水ラーガン川
ブレンド先ロブロイなど

「ボウモア蒸留所」立地

立地について

ボウモア蒸留所はアイラ島の中心的な街であるボウモア町の海辺に建っています。

アイラ島は有数のピート産地であり、冷涼かつ海風の吹き込む熟成環境のためウイスキーの生産に最適な地です。ボウモアでは独自のピートボグ(採掘場)を有しており、そこで採取したピートを活用してモルティングを行なっています。

アイラ島のウイスキーはその多くがスモーキーな風味を持っています。島の南岸のモルトは低地の海付近で取れるピートを使用しているため、ヨード香や薬品集が強いものがほとんど。一方でボウモアはやや高台にピートボグを持っているため、からっとしたソイリーな煙たさがあります

ちなみにボウモアはゲール語で「大いなる岩礁」を意味しています。

「ボウモア蒸留所」歴史

ボウモア蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!

西暦年内容
1779年ジョン・シンプソンによってボウモア蒸留所が創設される(諸説あり)
1816年ジョン・シンプソンがボウモア蒸留所での蒸留ライセンスを申請する
1837年蒸留所がグラスゴーの双子、ウィリアムとジェームズのムター兄弟によって買収される
1841年ウィンザー城より樽の注文を受ける
1880年頃現存する最古のボトルの一つであるムターボトルの発売時期
1887年蒸留所がジョンベルシェリフへと売却される
1892年蒸留所がジョセフ・ロバート・ホームズによって買収される
1925年蒸留所がジェームズベルシェリフ&Co社によって買収される
1943年第2次世界大戦の影響により、蒸留所が閉鎖される
1950年蒸留所がウィリアムグリゴール&サンズ社によって買収される
1963年蒸留所がスタンリーPモリソン社によって買収される
1979年蒸留所200周年を記念して当時入手可能なムターボトルをを模した限定ボトルをリリースする
1980年女王エリザベス2世がボウモア蒸留所を訪問する
1989年日本のサントリーグループが蒸留所の株式を一部購入する
1994年サントリーが蒸留所の運営権を持つ
1993年初代ブラックボウモアが発売される
1994年2代目ブラックボウモアが発売される
1995年3代目ブラックボウモアが発売される
2007年827本限定でブラックボウモアが発売される
2014年ビームサントリー社がモリソンボウモアディスティラーズ社を買収する
2015年ミズナラ樽熟成のボウモアミズナラが発売される
2016年ブラックボウモア50年ファイナルカスクが発売される
2020年アストンマーティンとのコラボでブラックボウモアが限定発売される

ブラックボウモア

ブラックボウモア1964年に蒸留された、伝説級に出来の良いウイスキーがボトリングされたシリーズになります。原酒は現在では入手の難しいソレラシステムで使われたオロロソシェリー樽に詰められ、長期熟成に適したダンネージ式の倉庫に安置されていました。

第1弾は1993年、2000本限定で1本20000円弱で販売されました。続く第2弾は翌年1994年、第3弾は1995年にファイナルエディションと称して販売されました。これで終わりかと思いきや2007年に827本限定で第4弾が販売されており、価格は約30万円まで跳ね上がっています。

2016年に再びファイナルと銘打って、50年熟成のファイナルカスクが発売されましたが、価格は200万オーバー…

2020年には27本限定でアストンマーティンとのコラボボトルが700万円販売されています。(ファイナルじゃなかったんかい(笑))しかし中身は1995年のファイナルエディションの在庫であったため、熟成年数は31年になります。

出来が良いヴィンテージ、本物のシェリー樽で長期熟成、なんと期待値の高まるワードたちか。是非人生で一度は飲んでみたいものです!

初代ブラックボウモア 出典:ボウモア公式
ブラックボウモア50年 出典:ボウモア公式

「ボウモア蒸留所」製法の特徴

製麦

ボウモアは現在でもフロアモルティングを行なっている稀有な蒸留所です。また仕込み水にはラーガン川の水が使用されています。

使用される大麦はアイラ島外から仕入れていますが、モルティングの全工程を自社にて行なっており、ピートも自社の採掘場から採れたものを使用しています。

まずは大麦を仕込み水に27時間浸したのちに、モルティングフロアに敷き並べ、24時間程度据え置かれます。その後4時間ごとにモルトマンが木製シャベルでかき回し発芽を促します。1週間程度これを繰り返し、芽の出たグリーンモルトが出来上がると乾燥塔に運ばれます。

乾燥塔ではメッシュ状の床に大麦を敷き、下から熱風を送ることで乾燥を進めます。乾燥時に最初の18時間はピートを炊き、残りは通常の熱風を活用しています。

こうして完成するモルトはフェノール値が25〜30ppm程度と、アイラモルトの中では中間レベルであり、島南岸と比べて高地で取れるピートを使用しているため薬品のようなヨード臭は控えめです。

モルトをポルテウス社製のモルトミルで粉砕し、グリストとしたのちに糖化の工程へと進みます!

フロアモルティング 出典:whisky.com
モルトミル 出典:whisky.com

糖化

ボウモア蒸留所のマッシュタンは8トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。このマッシュタンはかつてアイルオブジュラ蒸留所で使用されていたものになります。

タンにグリストを投入したのち、複数回に分けて加熱した仕込み水を注ぐことで糖化が進められます。そして完成するウォートは1バッチあたり約4万リットル程度となります。

次の工程は発酵になります!

マッシュタン 出典:whisky.com

発酵

ボウモア蒸留所には容量40000リットル、オレゴンパイン製のウォッシュバックが6基設置されています。発酵に使用される酵母はケリー社製のものとマウリ社製のものになります。

糖化で得られたウォートは酵母の働きやすい温度まで冷却したのち、ウォッシュバックへと投入されます。そこに酵母を添加することで発酵がスタートし、約48〜62時間かけて反応進んでいきます。。発酵全盛期は2日程度あり、この間は激しい泡立ちと共にアルコール分が生成されています。

完成したもろみはビールと非常に良く似た味と香りを持つ、アルコール度数約8%程度となります。

次の工程は蒸留になります!

ウォッシュバック 出典:whisky.com

蒸留

ボウモア蒸留所には容量20000リットルのウォッシュスチルが2基、容量12000リットルのスピリットスチルが2基設置されています。スチルは全てがストレート型であり、加熱方式は蒸気による間接加熱方式、冷却方式はシェル&チューブ方式が採用されています。

まず初めにウォッシュバック1基で作られた4万リットルのもろみが2等分され、それぞれ2基のウォッシュスチルへと投入。そのまま初留を行うことでアルコール度数約22%のローワインが得られます。

続いて初留で得られたローワインと前回蒸留時の廃液を合わせた約11000リットルの溶液をスピリットスチルへと投入し、再留が行われます。ミドルカットまでが完了したニューポットはアルコール度数が約70%程度まで高められています。

次の工程は熟成になります!

スチルハウス 出典:whisky.com

熟成

ボウモア蒸留所にはダンネージ式のウェアハウスが2棟、ラック式のウェアハウスが1棟あります。

ダンネージ式の第1熟成庫は創業時から使用されているスコッチ最古のウェアハウスであり、厚さ1mの石壁に満潮時には水面化1mに沈むという特徴的な環境を有しています。このウェアハウスからは世界的な人気を誇る伝説のブラックボウモアを生み出すなど、素晴らしい実績を誇ります。

熟成に使用される樽は主にアメリカンオーク製バーボン樽(70%)とスパニッシュオーク製シェリー樽(30%)です。しかし一部の原酒にはボルドーやマデイラのワイン樽やミズナラ樽なども使用されることがあります。

またボウモアでは原酒を最低でも9年間熟成させてから使用しており、数種類の樽原酒をバランス良く組み合わせてボトリングしています。

ボウモアはこの熟成環境によって生み出される潮の香りから「海のシングルモルト」と呼ばれることがあります。また上品なスモーキーさがあることから「アイラの女王」とも呼ばれています。

ダンネージ式ウェアハウス 出典:whisky.com

オフィシャルボトル一覧

ボウモア蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!

ボウモア12年

ポイント

ボウモア蒸留所のオフィシャルボトルの中で一番スタンダードなボトルになります!

潮の香りとやさしく香ばしいスモーキーさはまさしく「海のシングルモルト」であり「アイラの女王」です。アイラモルトの中では個性が突き抜けているわけではなく、フルーティさや甘味が感じやすいので最も初心者向けであるかと思います!

アイラモルトに興味がある。でも個性派と聞いて少し戸惑ってしまう。そんな方々はまずボウモア12年から飲んでみましょう!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:2494円/楽天市場:2965円(送料込み)

※2022年6月1日現在

香り

優しいスモーキー/オレンジ系の柑橘/はちみつ/バニラ/ドライ/うっすら潮感

味わい

スモーキー/オレンジ/ダークチョコ/ドライ/潮

余韻

香ばしい煙たさと柑橘の繊細な甘さが長く続く

ボウモア15年

ポイント

バーボン樽で12年間熟成後、シェリー樽で3年間熟成させた原酒が使用されています!

ボウモア本来のスモーキーさや潮感はそのままに、シェリー樽由来のウッディ感やドライフルーツ調の甘さが表現されています。色味が濃いのでとても美味しそうに見えますよね…

ー特徴ー

価格帯

Amazon:/楽天市場:

※2022年6月1日現在

香り

チョコっぽい甘さ/レーズン/オレンジ/ドライなスモーキー/潮

味わい

ウッディ/はちみつ/レーズン/ドライフルーツ/潮気

余韻

力強さがあり、うっすらではあれど暖かく甘いシェリーの余韻がとても長く続く

ボウモア18年

ポイント(休売中)

シェリー樽原酒の特徴が色濃く出ている非常にスウィートなボウモアです。

18年という非常に長い熟成期間の中でスモーキーさや潮感は洗練されており、角のない非常に柔らかい旨味が全身を包み込みます。これぞまさしく贅沢と言える素晴らしい完成度を誇る至高の1本です。

ー特徴ー

価格帯

Amazon:23220円/楽天市場:22620円

※2022年6月1日現在。希望小売価格は9600円(税別)

香り

クリーミー/トフィー/熟したフルーツ軍団/スモーキー/ドライフルーツ

味わい

角の取れたスモーキーさ/様々なフルーツ/チョコレート/非常に奥深い甘味

余韻

バランスが良く永遠かと思うほど長い

ボウモア No.1

ポイント

ファーストフィルのバーボン樽原酒のみで構成されたボトルです!

No.1は海抜0メートルの第1熟成庫で熟成されたモルトを主体に使用していることを表しています。バーボン樽らしいバニラの甘さに熟成環境由来の潮感が際立つ一本です!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:3800円/楽天市場:4041円(送料込み)

※2022年6月1日現在

香り

かすかな潮感/バニラの甘さ/はちみつ/シナモン/オレンジ

味わい

シトラス/潮感/バニラ/はちみつ/香ばしいスモーキー/柑橘感

余韻

爽快だが、バニラの甘さとスモーキーな余韻が感じられる/キレがいい

ボウモア スモールバッチ

ポイント

ファーストフィル及びセカンドフィルのバーボン樽原酒のみが使用されたノンエイジのボトルです!

スモーキーさはもちろんですが、バニラの甘さが強く、ボウモア12年より甘めの味わいです。どちらかといえばクセのあるハイランドモルトに近い味わいなので、アイラモルトに慣れていない方にとっては飲みやすい一本だと思います!

ー特徴ー

価格帯

Amazon:9960円/楽天市場:9780円(送料込み)

※2022年6月1日現在

香り

軽快/スモーキー/バニラ/バニラ/オレンジ系柑橘/はちみつ

味わい

モルティ/スモーキー/濃厚オレンジ/バニラ/ビター

余韻

バニラとスモーキーが強く感じられるが、徐々にビター感が立ちつつ減衰していく

【番外編】免税店向けボトル・限定品等

ボウモア レジェンド(正規輸入ナシ)

ボウモア デビルズカスク(限定品)

ブラックボウモア

ボウモア10年 ダーク&インテンス(免税店)

ボウモア15年 ゴールデン&エレガンス(免税店)

ボウモア18年 ディープ&コンプレックス(免税店)

参考資料

参考サイト: