記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「ベンロマック10年」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「ベンロマック」ってなに?
ベンロマックの解説
- ベンロマック蒸留所の概要
『ベンロマック蒸留所』は,スペイサイドのフォレス地区に所在しており,現在は著名なボトラー企業であるゴードン&マクファイル社によって運営されています。
同蒸留所はもともとダンカン・マッカラム氏が個人創業したことが知られていますが,長らく運営が安定せず,複数の閉鎖・再会,所有者変更の果てにDCL社(のちのディアジオ)の傘下に収まり,一旦は落ち着いていました。しかしながら1983年に閉鎖されてしまい,蒸留所の建物自体も一度解体されてしまったことが知られています。
そこから10年後の1993年に,閉鎖状態のベンロマックがゴードン&マクファイル社に買収され,生産再開に向けて建物の改修や設備の新設が実施。5年後の1998年10月15日に再びベンロマックのウイスキー作りが再開されました。
新生ベンロマックの世間的な評価は非常に高く,『ベンロマック15年』がWWA2018にて”ベスト・スコッチ・スペイサイド・シングルモルト”に輝いたことにより,生産再開からわずか10年でスペイサイドモルトのTOPに君臨することとなっています。
- ウイスキー作りの特色
ベンロマック蒸留所のウイスキー作りでは,現在のスペイサイドモルトの特色でもある華やかなスタイルを放棄し,もっと古くの時代に作られていた『伝統的なライトリーピーテッドのスペイサイドモルト』を再現する試みが行われています。よって麦芽は適度にピートが焚かれたフェノール値8〜12ppmの状態で仕入れられ,約120年前に作られたモルトミルで粉砕されています。
マッシュタンやポットスチルなどは生産再開時に新たに導入されたものですが,製法においては随所に細かい工夫が散りばめられているのがポイント。例えば複雑な香味を得るためにウォートを敢えて濁った状態で採取していたり,発酵時間を72〜120時間と長めに取っていたりしています。
またゴードン&マクファイル社は元来ボトラー業を営んでおり,見方によっては樽熟成のプロフェッショナルと言うこともできます。『良い樽が良いウイスキーを作るための絶対条件』と言う信念のもとで,同社の厳しい目を潜り抜けた最高品質の樽材で熟成されたウイスキーは,類稀な奥深さを獲得しています。
「ベンロマック10年」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | ベンロマック10年 |
地域 | スペイサイド,フォレス地区 |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 43% |
\\製法と特徴//
- 伝統的なライトリーピーテッドスタイルを採用
▶︎近年の華やかなスペイサイドモルトとは一線を画し,超本格派スコッチウイスキーとして確かな存在感と個性を持ちつつ,飲みやすい味わいにまとめられている。 - バーボンバレル80%・シェリーホグスヘッド20%
▶︎バーボン樽のクリーミーな甘み,そしてシェリー樽のフルーティ感を併せ持つ複雑なテイストが完成している。 - 1stFillオロロソシェリー樽で1年間のフィニッシュ
▶︎ファーストフィル樽からは,通常力強く樽由来の風味が得られる。敢えてフィニッシュにこの樽を採用することにより,全体の風味をよりパワフルにしている。
「ベンロマック10年」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「ベンロマック10年」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『ベンロマック10年』の色味については,中程度よりも少し濃い程度に見え,琥珀っぽさを見せる鮮やかな金色といった感じです。客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,"Russetmuscat"くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
綺麗なヘザーっぽいピート,青リンゴと柑橘の甘み,ダークなドライフルーツ
アルコールの刺激はほぼ無し,ピート感は優しい
- 経時変化で見える要素
モルティとバニラ,甘いスパイス感,ナチュラルな蜂蜜の甘み
筆者の一言
非常に完成度の高い香りであり,華やかながらも,どこかクセになる引っ掛かりがあるやや個性的な印象です。
感じられる要素が非常に多彩であり,甘みと苦味,スモーキーとフルーティのコントラストが本当に美しいです。
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味わい
- 第一印象
べたっと濃厚な柑橘,香ばしいピートスモーク,重厚なドライフルーツ
- 経時変化で見える要素
強力な麦芽感,クリーミーなトフィー,ジンジャーとシナモン,ヘザーフローラル
- 余韻に残る要素
ヘザーっぽいピート,柑橘の酸味,ビターな木の要素
筆者の一言
味わいも本当に完成度が高すぎる…
ライトピートスタイルに,複雑な樽構成等。G&M社のこだわりと知見の真髄を味わいに感じることができます。
”甘い”や”煙たい”などの単純なワードでは表現ができないような,複雑に作り込まれた味わいです。
「ベンロマック10年」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:5/5|味わい:5/5
『ベンロマック10年』の香りと味わいについては,とにかく完成度が非常に高く,さまざまな要素の調和が取れた圧巻の仕上がりに感動させられました。流石は大手ボトラー企業のゴードン&マクファイル社といったところです。
一般的にスペイサイドモルトは飲みやすく華やかなテイストを魅力としていますが,ベンロマックはその良い部分はそのまま残し,ライトピートスタイルや多彩な樽の扱いなどの技術によって,より多くの引っ掛かりを生み出している印象。単に”飲みやすいなぁ”という感想だけでなく,”もっとたくさん飲みたい。また飲みたい。”と言う気持ちにさせてくれるような,確固たる個性を見せてきました。
ちょっと具体的に表現すると,甘いの反対側に苦い,フルーティの反対側にスモーキーと言うような正反対の要素が共存していながら,それぞれが強すぎも弱すぎもしないといった感じ。風味がとても複雑なため,自分のコンディションによって第一に感じられる要素が変わる日もありますが,どんな要素が第一に来てもホームランが出るような感覚です。
- 初心者向け度:3/5
続いて『ベンロマック10年』を初心者向けかどうかと言う観点でみると,やや懸念ありといった感じです。
というのも味わいは超絶本格派のスコッチウイスキーの様相であり,複雑かつ多様な要素によって構成されています。その中にはピートスモークや苦味のような初心者にとってハードルになる要素も含まれているため,一概に初心者に向けておすすめすることは難しい気がしています。
しかしながら多少ウイスキーを飲み勧め,スモーキーテイストに耐性を感じている人や,個性的で引っ掛かりのある味わいを求めている人にとってはベストチョイスになり得る銘柄なので,初心者の方々もウイスキーに慣れを感じ始めた時に飲んでみると良いでしょう。というか是非飲んでみてください。
- 入手性:5/5|コスパ:5/5
最後に『ベンロマック10年』の入手性をコスパについては,どちらも最高レベルと言うことができるでしょう。
まず蒸留所のベーシックなラインナップということもあり,流通量は割と十分にある印象。そのためウイスキーの品揃えが揃っているところならば,スーパーなどでも見かける機会があるでしょう。もちろん通販でも定常的に販売されているので入手性はほとんど問題にならないと言えます。
価格帯については,店によって若干のばらつきがある印象がありますが,ちゃんと探せば概ね4,000円台半ばくらいで買えるものと思います。ウイスキー全体の価格帯が高騰する中,この味わいのウイスキーをこの価格帯で買えるのはびっくり仰天の一言。もしも私がコスパ最強のウイスキーを聞かれたら,一瞬の迷いもなく『ベンロマック10年』と答えます。
まだ飲んだことのない人は是非一度飲んでみてください!!