『アードベッグ・アンオー』は，スコットランドのアイラ島に所在する，ルイヴィトングループ傘下のアードベッグ蒸留所が生産を手がける，オフィシャルシングルモルトの一つになります。

同蒸留所は，同じくアイラ島の南岸部に建つ”ラフロイグ蒸留所”や”ラガヴーリン蒸留所”と併せて「キルダルトン3兄弟」と呼ばれて比較されることがしばしばありますが，中でも熱狂的なファンを多く獲得しているのが『アードベッグ』です。

そのウイスキーのスタイルは破壊的に強力なヘビリーピーテッドとされていますが，蒸留工程においてはよりフルーティな風味を活かすために，ラインアームに精留器（ピュリファイヤー）が設置されているなど，決して煙たさ一辺倒ではない複雑な風味が表現されています。

そしてこの「アードベッグ・アンオー」は，蒸留所に近傍にあるオー岬（アンオー）を主題に据えた作品であり，”PXシェリー樽・チャーを施した新樽・ファーストフィルのバーボン樽”の3種類の樽で熟成された原酒が使用されている逸品。

その味わいでは，土台にアードベッグらしい力強いピートスモークが感じられるものの，しっかりとした柑橘系のクリーンな感触や，PXシェリー樽由来の奥深い果実の甘みなどが感じられ，まさにスモーキー&フルーティのお手本のようなテイストを楽しむことが出来ます。

『アイルサベイ リリース1.2 スウィートスモーク』は，スコットランドのローランド地方に所在する，ウィリアムグラント&サンズ社が生産を手がける，オフィシャルシングルモルトになります。

同蒸留所はウィリアムグラント社のグレーン工場であるガーヴァンの敷地内にて2007年に創業された新興の蒸留所ですが，合計16基のポットスチルを備え，年間に1,200万リットルの原酒を生産する大規模な蒸留所となっています。

そのウイスキー作りは非常に複雑で，原料の麦芽はノンピート・ライトピート・ヘビーピートの3種類を使い分け，さらにウォートの糖度や冷却手法などのミクロな条件を変えることで，５タイプほどの原酒が作り分けられています。

また原酒の熟成に際しては，マイクロ熟成という独自の手法を実践していたり，原酒の甘みを測定して「SPPM」という指標で評価するなど，非常に科学的な試みを多く導入する近代的な蒸留所でもあります。

さらなる詳細はWhisky Roundupの「<a href="https://whisky-roundup.com/ailsabay/" target="_blank"><font color="blue">蒸留所解説記事</font></a>）」にて！

そしてこのボトルに使用される原酒は，フェノール値が22ppm，アイルサベイ独自の甘みに関する指標が19sppmのものとされており，これは端的に言えってしまえば，科学的に甘みと煙たさのバランスが最適と考えられる構成。

その味わいでは，焚き火のようなドライな煙たさとバニラやオレンジピールなどの甘味が同水準に感じられ，スコッチウイスキーと言われて連想される風味の多くを兼ね備えた非常に有意な一本となっています。

『ウルフバーン10年』は，スコットランドの北ハイランド地方に所在する，ウルフバーン蒸留所が満を持して発売した今後の代表作になるであろうオフィシャルシングルモルトになります。

同蒸留所は2013年にスコットランド本島の最北端に創設された新興の蒸留所であり，生産は非常に小規模ながらも，ノンピート麦芽とライトリーピーテッド麦芽を使い分けつつ，ファーストフィルバーボン樽熟成を主軸としながら，一部の原酒にはクオーターカスクやシェリー樽などの多様な樽での熟成を行うなど，様々なタイプの原酒を作り分けているのがポイントです。

そしてこの『ウルフバーン10年』は，2013年創業の同蒸留所が満を持して発売した10年熟成の力作であり，厳選されたスパニッシュオークのセカンドフィルオロロソシェリー樽で熟成された原酒が使用されている逸品。その味わいでは緯度の高い寒冷な気候を想起させる美麗なドライフルーツの甘みや，バニラキャラメルのような滑らかな甘み，そしてダークチョコレートのようなくせになる苦味な，芳醇かつラグジュアリーな香味を楽しむことができます。

『ザ・ピートモンスター』は，スコットランドのボトラー企業であるコンパスボックス社が生産を手がける，ピーティなアイラモルトにフィーチャーしたブレンデッドモルトになります。

コンパスボックス社のブランドは，原酒の情報が完全に明かされているものが非常に多く，このピートモンスターも例に漏れずにキーモルトが公表されています。それらはピートスモークの個性を強く持つカリラが64％，同様の特徴であるラフロイグが35％で，残りの1％はグレンマレイ・トマーティン・バルミニックのハイランドブレンデッドモルトとされています。（詳細は下記Bottle infoにて）

やはり構成原酒全体の99％をスモーキーなアイラモルトが占めているということで，その味わいでは潮っぽさを伴う激しいピートスモークを主軸に，レモンキャンディーのようなほのかな甘みやバニラのような滑らかな甘みも感じることができ，奥深く立体的な風味を楽しむことが出来ます。

ー以下コンパスボックス社についてーーー

コンパスボックス社の創業は2000年と比較的最近のことですが，その創設者はジョンクレイザー氏という元ジョニーウォーカーのグローバルマーケティングディレクターとしての経歴を有する偉大な人物。彼の知見が活かされたコンパスボックス社は，ウイスキーマカジン誌では”イノベーター・オブ・ザ・イヤー”，ウイスキーアドヴォケート誌では”パイオニア・オブ・ザ・イヤー”などを早々に獲得し，既に世間からの高い評価を獲得しています。

この『ポートダンダス15年』は，スコットランドのボトラーズ企業であるシグナトリー社が生産を手がけるシングルグレーンシリーズの１本であり，2006年9月蒸留・2022年8月ボトリングの原酒が使用されています。

ポートダンダス蒸留所は，1810年代初頭にグラスゴーの近郊で創業されたスコットランド最古のグレーン蒸留所のひとつであり，主にホワイトホースなどのブレンデッドブランドとの繋がりを持っていましたが，惜しくも2010年に閉鎖されてしまいました。よって今となっては，今後新しく生産されることのない非常に希少なシングルグレーンであるということが出来ます。