記事の概要
スコッチやアイリッシュとは異なる独自の個性を持つアメリカンウイスキー。
その発展の影には禁酒法やウイスキー戦争などの激動の時代がありました。
アメリカンウイスキーの中でも有名なジャックダニエルなどはミュージシャンが豪快に飲んでいる姿を見てかっこよさを感じていた人も多いのではないでしょうか。
そんなアメリカンウイスキーをより深く理解し、楽しめるよう知識をまとめていきます!
定義
アメリカンウイスキーの定義は「連邦アルコール法」によって定められています。
アメリカンウイスキーはバーボンを中心に複数の種類があり、それぞれについて細かく定義があります。
ここではそれぞれの名称と定義をまとめておきます。
バーボンウイスキー
・原料の51%以上がトウモロコシ
・アルコール度数80%以下で蒸留
・内側を焦がしたオークの新樽にアルコール度数62.5%
以下で詰めて熟成させる
・2年熟成でストレートバーボンウイスキーという
ホイートウイスキー
・原料の51%以上が小麦(ホイート)
・2年熟成でストレートホイートウイスキーという
・その他はバーボンに同じ
ライモルトウイスキー
・原料の51%以上がライ麦芽
・2年熟成でストレートライモルトウイスキーという
・その他はバーボンに同じ
ブレンデッドウイスキー
・ストレートウイスキーにその他のウイスキーやスピリッツを加える
・ストレートウイスキーを20%以上使用する
ライウイスキー
・原料の51%以上がライ麦
・2年熟成でストレートライウイスキーという
・その他はバーボンに同じ
モルトウイスキー
・原料の51%以上が大麦(モルト)
・2年熟成でストレートモルトウイスキーという
・その他はバーボンに同じ
コーンウイスキー
・原料の80%以上がトウモロコシ
・アルコール度数80%以下で蒸留
・古樽か内側を焦がしていないオークの新樽にアルコール度数62.5%以下で詰めて熟成させる
・2年熟成でストレートコーンウイスキーという
テネシーウイスキー
・テネシー州で作られる
・サトウカエデの炭を使用した『チャコールメローイング製法』を用いること
・その他はバーボンと同じ
【マメ知識】プルーフってなに?
アメリカンウイスキーにはよく○○プルーフという記載がありますが、これはアメリカで伝統的に用いられている蒸留酒のアルコール度数を表す単位です。
プルーフ表記は×0.5をすると一般的な%表記のアルコール度数に換算することができます。
【マメ知識】チャコールメローイング製法
サトウカエデの木材で作った木炭を細かく砕き、それらを大きな槽に入れて蒸留直後のウイスキーを濾過することです。
非常に時間のかかる作業であり、この工程に10日程度かかります。
濾過の過程で蒸留液に残るわずかな不純物を除去し、サトウカエデの木炭の要素を吸収すると考えられており、独特の風味とまろやかな味わいが付与されています
歴史
アメリカンウイスキーの歴史について見ていきます。
1700年代前半ーアメリカンウイスキーの始まりー
18世紀初頭にスコットランド及びアイルランドからの移民がアメリカに多く訪れていました。
その当時彼らが現地で農業の傍らにライ麦等を用いて蒸留酒を作っており、これがアメリカンウイスキーの始まりです。
1700年代後半ーウイスキー戦争ー
1783年にはアメリカ独立戦争が終結したが、政府は財政を立て直すためにウイスキーに課税を行いました。
当時ウイスキーを作っていたスコットランド及びアイルランドからの移民たちはもちろん課税に対して反発し、ウイスキー戦争が勃発してしまいます。
程なくして暴動は鎮圧されるが、移民たちは課税から逃れるべく、政府管轄外のケンタッキーやテネシーに移り住み、現地で収穫できるトウモロコシを原料にウイスキーを作るようになりました。
1800年代ー急速な発展ー
1865年、国内で勃発していた南北戦争が終結すると、連続式蒸留器が導入されたり、スコットランドから技術者が招かれたりし、技術革新が進んでアメリカンウイスキー業界の企業化が進んでいきました。
1800年代の末期にはウイスキーに関連する法律の整備も進み、全米に800箇所ほどの蒸留所が設立されていた。
1900年代前半ー禁酒法ー
1900年代前半にはアメリカンウイスキーには大きな転機が訪れることとなります。
当時国内にはアルコールに対して批判的なピューリタンという清教徒が多数存在していました。
彼らの影響によりアメリカ全土に渡って禁酒法が適用されることとなってしまいます。
禁酒法の施行によって国内では密造業者やもぐり酒場が横行するようになり、治安までもが悪化する事態となってしまいました。
このような状況はおよそ14年続いていたが、1933年にフランクリンルーズベルトが大統領になると禁酒法は廃止され混乱は収まることとなりました。
1900年代後半
禁酒法の廃止後、アメリカンウイスキーは徐々に勢いを取り戻していくことになりますが、直後は原酒不足により安価なブレンデッドウイスキーが出回っていました。
その後徐々に法整備が進み、1948年には現行法の基になる連邦アルコール法が制定されました。
1950年代からは輸出も増加し、世界でバーボンが飲まれるようになっていた。中でもビッグ4と呼ばれる酒類企業は多くの蒸留所を抱えていました。
それ以降、現在にかけてウイスキー人気の浮き沈みはあったが、近年のウイスキーのブームで中小のクラフト蒸留所も増えていたり、テネシーに位置するジャックダニエル蒸留所が世界第2位に販売量を誇るようになったりと目覚ましい発展を遂げています。
アメリカンウイスキー
(バーボン)の特徴
アメリカンウイスキーを代表するバーボンウイスキーについて、その特徴を原料や製法の観点から確かめていきましょう。
原料についてー穀物ー
バーボンでよく使用される原料としては、トウモロコシや小麦、ライ麦、モルトなどが挙げられるが、法定義としてトウモロコシを51%以上使うことが義務化されています。
マッシュビル(原料となる穀物の使用比率)は蒸留所ごとに異なっており、トウモロコシが多いと甘くまろやかに、ライ麦が多いとスパイシーかつオイリーに、小麦を使うとマイルドでソフトな味わいとなります。
原料についてー水ー
バーボンの生産にはライムストーンウォーターという弱アルカリ性の硬水を使用しています。
ちなみにアルカリ性の水を使用した場合、糖化が進みにくくなってしまう。
そのため、糖化を行う際に前回蒸留時の残液(スティレージ)の上澄みを添加して、糖化条件を改善することにより、酵母に栄養が供給されて香味がよくなります。
製法についてー蒸留ー
バーボンの蒸留には1塔式の連続式蒸留器である「ビアスチル」と、精留装置の「ダブラー」を組み合わせて使用します。
具体的な流れとしては、まずもろみ(アメリカではビアという)をビアスチルで蒸留してアルコール度数55~60%のローワインを得ます。
続いてこのローワインをダブラーで精留することでアルコール度数65~70%高めています。この度数65%程度としたものをハイワインと呼びます。
製法についてー樽ー
アメリカでは法律によって、バーボンの熟成に内側を焦がした新樽を使用することが定められています。
この焦がした樽の使用がバーボンの力強い風味を生み出す大きな要因となっています。
【マメ知識】チャーってなに?
樽の内側を焦がすことを「チャー」といいます。このチャーにはグレード1~4(0.5刻み)の7段階の程度が設けられており、バーボンの生産時にはグレード3~4のヘビリーチャーの樽が使用されることが多い。
代表的な蒸留所
現在アメリカには有名な大手蒸留所や新興のクラフトウイスキー蒸留所などを合わせて30を超える蒸留所があります。
特に近年のウイスキー人気から新興の蒸留所の建設が加速しており、アメリカ国内で俗にいう地ウイスキーが増えているようです。
ここでは数ある蒸留所の中から、アメリカ国内でもウイスキー生産の中心地であるケンタッキー州とテネシー州のメジャーな蒸留所を下表にまとめておきます。
ケンタッキー州の蒸留所
ヘブンヒル | ブラウンフォーマン | ウッドフォードリザーブ |
バッファロートレース | フォアローゼス | ワイルドターキー |
ジムビーム | バートン1792 | メーカーズマーク |
テネシー州の蒸留所
ジャックダニエル | ジョージディッケル |
参考資料