記事の概要
管理人によるボトルのレビューを通して、皆様にその魅力を伝える記事です。
今回は…
「厚岸 白露」
当記事では,このボトルについて
などなど詳しく解説していきます!!
\\執筆者情報//
初谷(はつがい)
ウイスキーに関わるあらゆる情報をまとめ,「ウイスキーを知りながらより深く楽しめる記事」を発信しています。
【Shop】ウイスキー専門店『Drinkable books』
【経歴】東京都立大卒|元公務員・ネット酒屋開業
【資格】JWRC公認ウイスキーエキスパート|ウイスキー検定2級
【その他】バンド「Candid moment」のドラマー
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「厚岸」ってなに?
厚岸の解説
- 厚岸蒸留所の概要
『厚岸蒸留所』は北海道の東岸にある厚岸の街にて,2016年に創業された本格的なウイスキーの蒸留所になります。この地域の環境はウイスキーの本場”スコットランド”に酷似しており,特に冷涼な気候・海霧の発生・良質な水・豊富なピートなどの要素はアイラ島を彷彿とさせる環境があります。
この環境についてもう少し具体的に言及すると,気温は夏場に25℃・冬場に-20℃と寒暖産は比較的大きめですが,積雪は道内においては少ない部類。また仕込水についてはホマカイ川を水源とした水を採用していますが,これらはピート層を浸透して流下しており,アイラ島の水のように茶褐色をしているのが特徴的です。さらに海霧は塩分を運んでくるケースがありますが,これはアイラモルトと同様に原酒に海の要素を付与する可能性が示唆されています。
以上のようにアイラモルトと厚岸には複数の共通点が見られますが,実際に厚岸の創業は「スコットランドの伝統的な製法により,アイラモルトのようなウイスキーを作りたい」という明確な目標の元で行われており,環境的な利点をフル活用した本格的なウイスキー作りが展開されています。
出典:google map
- ウイスキー製造の特徴
『厚岸蒸留所』のウイスキー作りは非常に多彩で本格的。創業初期にはノンピートモルトとバーボン樽を使用した原酒を作り,蒸留所のポテンシャルを確認。そして自社産ウイスキーの品質を確認してから満を辞してピーテッドモルトや,ミズナラ樽などの特殊な樽を活用したウイスキー作りを開始しました。
また蒸留設備の導入・運用に際しては,スコットランドのフォーサイス社の協力を全面的に得ており,同社の技術者が数ヶ月間に渡って蒸留所に滞在し,ノウハウの髄を叩き込まれたとのこと。
その生産体制については,容量1トンのセミロイタータンで糖化を行い,1バッチに5,000Lのウォートを抽出。発酵は温度調節機能の付いていない6基のステンレス製ウォッシュバックにて,約120時間かけて実施。ずんぐりとしたストレート型のポットスチル(初留・再留各1基)で蒸留を行い,最後は敷地内のダンネージ式とラック式のウェアハウスで熟成が為されています。
現在の厚岸らしいハウススタイルは,アイラ島のようなヘビーピートのスモーキーなモルトとなっており,最終的にはテロワールを重視した100%厚岸産のウイスキー作りの構想があります。実際に原料の大麦はスコットランド産のものの他に,地元産の「りょうふう」と呼ばれる二条大麦を導入したり,厚岸に自生するミズナラ製の樽を熟成に活用したりという試みが進められており,数は少ないながらも100%地元産のウイスキーが完成しつつあります。
「厚岸 白露」ボトルの特徴
\\ボトル外観//
\\ボトル諸元//
ボトル名 | 厚岸 白露 |
シリーズ | 二十四節気シリーズ第12弾 |
地域 | 日本,北海道 |
種類 | シングルモルト |
原料 | モルト |
容量 | 700ml |
度数 | 55% |
\\製法と特徴//
- ヘビリーピーテッドスタイルの原酒を使用
▶︎原酒のベーシックな部分に,強くビターなスモーキーテイストがある。しかし厚岸は樽材にも拘っているおり,甘みも非常に強いため,味わいでは煙たさが第一とはなっていない点は見事。 - バーボン樽・赤ワイン樽・ラム樽原酒などを使用
▶︎バーボン樽からはクリーミーかつ柑橘系のフルーティなフレーバーが,赤ワイン樽からはタンニン感やスパイシーな印象が,ラム樽からはレーズンや黒糖のような濃密な甘みが得られる。多彩な原酒の組み合わせで構成される味わいは複雑かつ多様性に溢れたものとなる。 - 100%北海道産原酒も使用
(北海道産大麦・厚岸産酵母・北海道産ミズナラ樽熟成)
▶︎ワイン業界でよく用いられる「テロワール」の概念に基づき,あらゆる側面で地元産に拘った原酒を使用。厚岸でしか作ることのできない確固たる個性を持った貴重な原酒が含まれている。 - 熟成期間は4年程度
▶︎一般的なウイスキーの最低ラインである3年熟成をしっかりと超えている本格的なウイスキー。4年は短く感じるかもしれないが,厚岸の年間寒暖差はスコットランドの倍以上にも及び,既に十分すぎる熟成感を獲得している。
「厚岸 白露」テイスティングレビュー
さてさて、それでは早速「厚岸 白露」をテイスティングレビューしていきます!
色味
『厚岸 白露』の色味については,若干オレンジっぽい要素を持った金色といった感じで,ちょうど中程度くらいの濃さに見えます。
客観的な指標としてwhiskys.co.ukの色見本に準えて評価すると,”Burnished”と"Chestnutploroso Sherry"の間くらいであると言えるでしょう。
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香り
- 第一印象
クリームwith柑橘ジャム,甘く湿気ったピート感,焚き火とお香
- 経時変化で見える要素
穀物っぽい甘み,ビターオレンジ,杏,ほのかな塩気,ジンジャー
筆者の一言
香りはしっかりとしたピート感が土台に居ながらも,ジャムっぽい柑橘の濃厚な甘みが強く出ている印象です。
多彩な要素が活きていて非常に複雑ながらも,どこか落ち着く様な和風の心地よさを感じる構成は見事であり,まだまだ若いながらも完成度の高さが伺えます。
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味わい
- 第一印象
杏のドライフルーツ,オレンジジャム,穀物っぽいエステリー感
度数の割にアルコール感は弱く,満足感がある
- 経時変化で見える要素
ビターなお香の煙,優しいピートスモーク,焼いた木のビター感,乾いた潮風,ジンジャースパイス
- 余韻に残る要素
焚き火&お香,穀物感,ビターなピートスモーク
筆者の一言
味わいは舌先に触れた瞬間から杏やオレンジの強い甘さが感じられ,その後ふわっとお香やピートの煙たさが漂ったのちに,スパイシーかつビターな余韻に移ろっていく感覚でした。
度数は55%と高いですが,その刺激を感じる間のなく,様々なおいしさが展開されていくため,とにかく満足度と陶酔感が凄まじかった…!厚岸の完成度に脱帽です。
「厚岸 白露」総評
最後に総評に入りたいと思います!まずはレーダーチャートから!
さてさて、気になる点数は…
点数の理由と評価
- 香り:5/5|味わい:5/5
『厚岸 白露』の香りと味わいについては,ジャム系の濃い甘さと,お香やピートのケムっぽさの2要素が非常に強く出ており,若さを感じる間の無い完成度の高さが強く目立っていました。
熟成期間は概ね4年程度と比較的若い原酒ながら,本場スコットランドの倍程度となる年間寒暖差がある環境にて,厳選された多種多様な樽を活用して熟成を行っていることから,若さが悪目立ちすることはありません。度数も55%と高めでありながら,喉元を過ぎるまではその刺激に気づく隙すら存在しないような,十分な熟成感・満足感を持っていました。
要するに伝えておきたいことは「完成度が高い」という一点に尽き,近年爆増しているジャパニーズウイスキーの蒸留所の中で,この厚岸は類稀な存在感を持っている様に感じます。今後の100%厚岸産シングルモルトの完成が楽しみでなりません!
- 初心者向け度:2/5
続いて初心者向けかどうかという観点で『厚岸 白露』を見てみると,あまり適していないと言えるでしょう。
というのも,このボトルには若さ等のネガティブな要素はほとんどありませんが,やはり味わいのベースはピーテッドモルトの個性的な風味でした。これは決して万人受けするものではなく,初心者はおろかクセありのウイスキーを好まない人にとっても少々抵抗のある構成と言えるでしょう。
しかしながら,スモーキーテイストの壁を乗り越えた先には,多様な甘さや華やかな要素の数々が存在しているため,もしも勇気が出るのであれば是非飲んでみて欲しいところです。話題性も抜群のボトルなので,経験として一度飲んでおく価値が非常に高いと思います。
- 入手性:1/5|コスパ:➖/5
最後に『厚岸 白露』の入手性とコスパについては,入手性は最悪,コスパは言及不可といった感じです。
というのもボトルの総数こそ明かされていませんが,当たり前に多いわけはなく,需要も非常に多いことから,市場で見かけることは困難を極めるでしょう。そもそもの価格帯ですら20,000円程度と比較的高いですが,もしもこの価格で見つけることができたら,速攻で購入を検討したいボトルです。とてもラッキーですから。
またコスパについて言及するのはとても難しく,通常価格で購入できた場合と,プレミア価格で購入した場合のそれぞれで検討する必要があります。前述の通り味わいは非常に完成度が高く,もしも通常価格で発見することができたならば絶対に買っておきたいと言えるほどにコスパが良いです。
しかしながらそんなケースは稀であると思いますので,プレミア価格での購入を検討する場合もあるかもしれません。ザッとした現状では,プレミア価格は通常価格の1.5倍程度であり,この金額をベースにするとコスパはちょっと微妙という程度でしょうか。
なんにせよ,ボトルで購入するのはハードルが高いため,バーなどで飲めるならばそれがベストと言えるでしょう。