記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「アイルサベイ蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
グランツ/バルヴェニーの代わり/5タイプの原酒/SPPM
アイルサベイの5タイプの原酒
軽やかなスペイサイドスタイル/サルファリーでヘビーな酒質/ノンピート/ライトピート/ヘビーピート

アイルサベイ蒸留所
アイルサベイ蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 2007年 |
所有会社 | ウィリアム・グラント&サンズ社 |
地域分類 | スコットランド ローランド |
発酵槽 | ステンレス製24基 |
ポットスチル | 初留8基・再留8基 |
仕込み水 | ペンワップル貯水湖 |
ブレンド先 | グランツ |

「アイルサベイ蒸留所」蒸留所の立地
立地について
アイルサベイ蒸留所はスコットランドのローランドに位置しています!具体的には本島南西部の都市エアの近郊にあり,海を見渡すことのできる高台に建てたられています。
エアの街はスコットランドの国民的な詩人であるロバートバーンズ氏の生まれた土地であり,彼にゆかりのある場所が多く存在することで有名です。
また蒸留所の敷地内には1963年から操業しているグレーンウイスキーを製造するガーヴァン蒸留所が建っています。アイルサベイもガーヴァンもウィリアム・グラント&サンズ社の所有であり,作られる原酒は現在同社のブレンデッドウイスキーであるグランツに使用されています。
ちなみにアイルサベイという名前はガーヴァンの沖にある「アイルサクレイグ島」を由来としています!この島はカーリングストーンの元となる岩を切り出す場所としても知られています。

「アイルサベイ蒸留所」蒸留所の歴史
アイルサベイ蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
2006年 | ガーヴァン蒸留所の隣にアイルサベイ蒸留所の建設が計画される |
2007年 | ウィリアム・グラント&サンズ社がアイルサベイ蒸留所を創設する |
2008年 | スチル4基体制で生産を開始する |
2009年 | チャールズ皇太子出席のもとで正式にオープンされる |
2013年 | スチルが12基増設されて16基体制となる |
2016年 | ノンエイジのヘビリーピーテッドのシングルモルトが初めて公式リリースされる |
ガーヴァン蒸留所との関係
1960年代はブレンデッドウイスキーの全盛時代でした。そのため当時ウィリアム・グラント&サンズ社はブレンドに必要なグレーンウイスキーを欲っしていました。
そこで同社は1963年に現在アイルサベイ蒸留所が立つ場所の隣にグレーンウイスキーを生産するガーヴァン蒸留所を創設しています。
その後1966年にはガーヴァンの敷地内でモルトウイスキーの生産も可能にするべく,レディバーン蒸留所を創設しました。しかしながらこの蒸留所はグレーン工場拡大のため,1975年に取り壊される運びとなっています。
この地でモルトの生産が行われなくなってから32年後の2007年,同社がアイルサベイ蒸留所を建設したことで,再びシングルモルトの生産が始まることとなりました!

「アイルサベイ蒸留所」製法の特徴
製麦
ポイント
アイルサベイ蒸留所では自社にて製麦を行なっておらず,外部の複数の専門業社からモルトを仕入れています。ピートレベルはノンピート・ライトピート・ヘビリーピートの3種類が設けられています。
原料のモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのち,糖化の工程へと進みます!
糖化
ポイント
アイルサベイ蒸留所では仕込み水にペンワップルの泉の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり12トンのグリスト容量を誇る,最新鋭のフルロイタータンになります。
マッシュタンにグリストを投入し,加熱した仕込み水を注ぐことで,自動的に糖分を多分に含み,クリアな色味のウォートを得ることができます。麦汁の抽出においては高重力分離を行うことで,通常45°のところ80°と,糖分を多く含んだ状態で回収しています。
次の工程は発酵になります!
発酵
ポイント
アイルサベイ蒸留所には容量50,000リットルでステンレス製のウォッシュバックが24基設置されています。酵母はリキッドタイプのものが使用されています。
20度前後まで冷却したウォートと酵母をウォッシュバックに投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は約60時間と比較的長めに設定されており,発酵が完了するとアルコール度数約11%のもろみが完成します。
次の工程は蒸留になります!
蒸留
ポイント
アイルサベイ蒸留所では容量12,000リットルのウォッシュバックが8基,容量12,000リットルのスピリットスチルが8基設置されています。形状はどれもバルジ型であり,スチルの加熱方式は蒸気による間接加熱方式,コンデンサー(冷却装置)はシェル&チューブ方式が採用されています。
通常コンデンサーは銅製であることが一般的ですが,計8対あるスチルのうち1対のコンデンサーはステンレス製となっています。アルコールの蒸気は銅と触れることでよりクリーンな酒質へと変化していきますが,冷却装置をステンレスとすることで,サルファリーな要素を持つヘビーな酒質を得ることができます。
初留を終えたローワインはアルコール度数26%,再留とミドルカットまでを終えるとアルコール度数70%のニューポットが完成します。
次の工程は熟成になります!

熟成
ポイント
アイルサベイ蒸留所では樽をガーヴァン蒸留所に建つ,パラタイズ式とラック式のウェアハウスに安置しています。熟成に使用される樽はアメリカンオーク樽とアメリカンオークのバーボン樽が主となっています。
ニューポットは加水によって63.5%に調整されてから樽詰めされます。また独自の「マイクロ熟成」という工程を適用しており,度数を整えた原酒を6〜9ヶ月間の間,アメリカのクラフト蒸留所であるハドソン蒸留所製の容量25〜100リットルのベビーバーボン樽で熟成させています。マイクロ熟成の後はアメリカンオーク樽に移して熟成を行います。
またアイルサベイは原酒に対して初めて”甘み”の測定を行った蒸留所でもあり,SPPMという数値指標を定義し,化学的根拠をもってウイスキーの味わいを完成させているのが最大の特徴と言えるでしょう!


5種類の異なるタイプの原酒
アイルサベイではこれまで解説しきた5つの過程の中で5種類の異なるタイプの原酒が作り分けられています。具体的には…
- 軽やかなスペイサイドスタイル(銅製コンデンサー)
- サルファリーでヘビーなスタイル(鋼製コンデンサー)
- ノンピートタイプ
- ライトピートタイプ
- ヘビリーピートタイプ
まだまだ新興の蒸留所であるため多様な原酒をボトリングした商品が今後リリースされるのが楽しみでなりませんね!
また軽やかなスペイサイドスタイルの原酒は,グランツの販売量増に伴うバルヴェニーの負担軽減のために,キーモルトの一角を担っています。
オフィシャルボトル一覧
アイルサベイ蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
アイルサベイ 1.2スウィートスモーク
ポイント
2021年にボトリングされたアイルサベイのシングルモルトです!
ピーテッドレベルは22ppm,甘さは19SPPMになります。ピーテッドレベルは比較的高めであることがわかりますが,SPPMについては比較対象がまだあまり多くありません。そのためあくまで参考ですが,アイルサベイのファーストリリースは11SPPMであったので,どちらかといえば甘めの方向性と思って良いでしょう!
2000年以降に新たに生み出された唯一の個性をここで感じてみませんか??
ー特徴ー
価格帯
Amazon:12,180円(送料込み)
※2022年7月現在
香り
ドライなピートスモーク/焚き火/バター/モルティ/杏/バニラ
味わい
ピートスモーク/バニラ/オークの甘さ/シナモン/オレンジ系柑橘/トフィー
余韻
薬品系のピート香とキャラメル感が長く続く

アーストン(AERSTONE)10年シーカスク
ポイント
このボトルも初めて年数表記がついたアイルサベイの1本になります!
シーカスクはその名の通り海沿いの貯蔵庫で熟成されたことを表しています。またノンピート麦芽を原料とした原種のみで構成されているため,甘くフルーティでほのかに潮の香りが感じられるのが特徴です!
ー特徴ー
価格帯
Amazon:4,300円(送料込み)
※2022年7月現在
香り
軽やか/花系フローラル/ナッティ/オークの甘さ/モルティ/バニラ/クリーミー
味わい
トースト香/アーモンド/砂糖菓子/ウッディ/モルティ/タンニン感
余韻
繊細なフルーティさとウッディな余韻が長く続く

アーストン(AERSTONE)10年ランドカスク
ポイント
アイルサベイがリリースしたボトルのうち,初めて年数表記のついたシングルモルトになります!
ローランドの内陸で熟成された原酒を使用していることから,ランドカスクの名前がつきました。またピーテッド麦芽を原料とした原酒のみを使用したピーティな仕上がりが特徴的です。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:4,333円(送料込み)
※2022年7月現在
香り
リッチなピート香/焚き火/モルティ/フローラル/柑橘
味わい
ピートスモーク/ウッディ/熟したフルーツの甘さ/スパイシー
余韻
ガッツリとしたスモーキーさが長く続く

参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com / whisky.dog / アイルサベイ公式