記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「キャパドニック蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
閉鎖蒸留所/公式ボトルなし/グレングラント蒸留所
キャパドニック蒸留所
キャパドニック蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 1898年 |
所有会社 | ペルノリカール社 |
地域分類 | スコットランド スペイサイド ローゼス地区 |
発酵槽 | 8基 |
ポットスチル | 4基 (既に売却済み) |
仕込み水 | グレングラント川 |
ブレンド先 | ー |
「キャパドニック蒸留所」蒸留所の立地
ポイント
キャパドニック蒸留所はグレングラントの第2工場として,同じスペイサイドのローゼス地区に位置していました。
この地域はポットスチルメーカーとして著名なフォーサイス社が居を構えている地でもあり,キャパドニックが建っていた場所も現在はフォーサイス社の資材置き場として活用されています。
ちなみに創業当初は独自の蒸留所として扱われておらず,「グレングラントNo.2」と呼ばれていました。60年代の操業再開時にキャパドニックという名前がついたのです。
ちなみにキャパドニックはゲール語で「秘密の井戸」を表す「Tobar Domhbaich」の英語読みが語源となっています。
「キャパドニック蒸留所」蒸留所の歴史
キャパドニック蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1898年 | ジェームズグラント氏がグレングラントNo.2となる蒸留所を建設する |
1902年 | ウイスキー不況によって蒸留所が閉鎖される |
1965年 | グレングラントの需要増を援護するために蒸留所が再開される |
1967年 | 当初2基のポットスチルと異なる形状のスチルを2基増設する |
1977年 | この蒸留所名が「キャパドニック」と命名される |
2001年 | 蒸留所がペルノリカール社に買収される |
2003年 | 蒸留所が閉鎖される |
2010年 | 敷地及び建物はフォーサイス社によって購入される |
2011年 | フォーサイス社によって建物が取り壊される |
現在 | 蒸留所があった場所はフォーサイス社の資材置き場として活用されている |
稼働時はブレンド専用
キャパドニックで作られたモルト原酒は操業期間内に公式シングルモルトとしてリリースされることはなく,全てがシーバスリーガルなどのブレンデッド用として使用されていました。
シーバスリーガル繋がりで2001年ペルノリカール社に買収されますが,オフィシャルボトルが世に出ることはなく,その後すぐに閉鎖されてしまう運びとなっています。
しかし近年のウイスキーブームの中に需要を見出して,多くのボトラーズ企業が持っていた原酒が少しづつシングルモルトとしてリリースされています。
新たに生み出されることのない貴重なウイスキーなので見かけた際には飲んでおきたいものです。
「キャパドニック蒸留所」製法の特徴
製麦について
ポイント
キャパドニックは1898年の創業当時,税務署から独立した蒸留所と認識されておらず,グレングラントの一部として扱われていました。そのため原料の大麦はグレングラントと全く同じものが使用されていました。
グレングラントがノンピートタイプのモルトを中心に使用していたため,キャパドニックも多くの原酒が同様の条件で作られていました。
またわずかではありましたが,ピーテッドモルトを原料とした原酒の生産も行われていたようです。
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糖化について
ポイント
キャパドニック蒸留所では仕込み水としてグレングラントと同じグレングラント川を起源とした水を採用していました。マッシュタンは1バッチあたり4.6トンのグリスト容量を誇るステンレス製のものでした。
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発酵について
ポイント
キャパドニック蒸留所には容量23000リットルのウォッシュバックが8基設置されていました。そのうち二つは現在もウルフバーン蒸留所で水タンクとして活用されています。
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蒸留について
ポイント
キャパドニック蒸留所は創業時にグレングラントとほぼ同じランタン型のものが設置されていました。1967年に追加された2基についてはバルジ型で,容量11,500リットルのウォッシュスチルと容量7,000リットルのスピリットスチルでした。
当時としては新しい蒸気による間接加熱方式が採用されたタイプでした。
蒸留所が取り壊される際,1組はベルギーのフクロウ蒸留所へ,もう1組はフォルカークの新しい蒸留所へと売却されていきました。
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熟成について
ポイント
キャパドニック蒸留所は敷地内にウェアハウスを持っていましたが,現在は土地・建物共にフォーサイス社の所有となっています。
大部分が取り壊されて同社の資材置き場となっていますが,ウェアハウスの一部は残っており,現在もそこに眠るウイスキーが残っています。
ボトル一覧
キャパドニック蒸留所のウイスキーはボトラーズリリースのものがまだ見つけられるかと思います。
キャパドニックがシングルモルトとしてリリースされたボトルについて,一部を紹介していきます!
キャパドニック
ピーテッド18年
ポイント
シーバスブラザーズ社が手がける「シークレットスペイサイドコレクション」としてキャパドニックがシングルモルトとして世に出るようになりました。
このボトルは蒸留所稼働時にスモールバッチで作られていたピーテッドウイスキーに着目し,18年以上の熟成を経た原酒で構成されています。
残存する絶対量が増えることのないキャパドニック。今のうちに飲んでおいた方がよさそうです。
価格帯
Amazon:16,410円
※2022年8月現在
香り
ピートスモーク/焚き火感/クラシカルなスペイサイドスタイル/フルーティで華やか
味わい
ピートスモーク/コゲ感/華やか/りんご/ブラウンシュガー/ジンジャー/オークの甘さ
余韻
香ばしいスモーク感とスパイシーな余韻がとても長く続く
キャパドニック21年
ポイント
キャパドニックで作られたウイスキーのうち,21年以上の熟成を経たノンピートタイプの原酒のみで構成されたボトルです。
キャパドニック本来のグレングラントを凌駕する圧倒的なフルーティ感は必見です。
価格帯
Amazon:27,261円
※2022年8月現在
香り
柑橘系の甘さ/多様なフルーツ香/華やか/軽やか/バニラ/はちみつ
味わい
オレンジピール/洋梨/リッチバニラ/フルーティ/スムース/フローラル/ハーバル
余韻
柑橘系の甘さと樽由来のウッディとバニラが長く残り続ける
G&M プライベートコレクション
キャパドニック1982
ポイント
プライベートの名の通り,G&M社を経営してきたアーカート家のメンバーのみによって厳選された圧倒的なクオリティの樽のみからボトリングされるシリーズです。
40年近い時を眠る中で,究極に洗練されたキャパドニックになります。
価格帯
楽天市場:222,360円
※2022年8月現在
香り
シトラス/トフィー/アロマティック/ドライフラワー/スイカズラ/ミント
味わい
リコリス/フレッシュな赤りんご/オークの甘さ/ドライ/強くナッティ/とにかく甘く華やか
余韻
強い甘味とフルーティ感が残り,熟成感のあるオークの甘さが長く続く
参考資料
参考サイト:whisky.com / scotchwhisky.com