記事の概要
世界中の蒸留所図鑑完成を目標としたシリーズです。
今回はスコットランドより「アードナムルッカン蒸留所」になります!
Points!「立地・歴史・伝統的な製法・オフィシャルボトルの簡単な解説」
キーワード
2014年創業/アデルフィ社/ジムスワン博士
アードナムルッカンの特徴
マーマレード/りんご/はちみつ/バニラ/葉っぱ系スモーク/オレンジピール
アードナムルッカン蒸留所
アードナムルッカン蒸留所の立地・歴史・製法についてまとめていきます。
蒸留所の概要
創業年 | 2014年 |
所有会社 | アデルフィー・ディスティラリー社 |
地域分類 | スコットランド 西ハイランド |
発酵槽 | ヨーロピアンオーク製2基 オレゴンパイン製2基 ステンレス製3基 |
ポットスチル | 初留1基・再留1基 |
仕込み水 | グレンモア川 蒸留所上部の泉 |
「アードナムルッカン蒸留所」蒸留所の立地
立地について
アードナムルッカン蒸留所はスコットランドの西ハイランドに位置しています。この場所はスコットランド本土の最西端にあたり、アードナムルッカン半島のグレンベグという小さな集落のはずれに蒸留所は建っています。
アレックス・ブルース氏率いるアデルフィ社は2012年ごろから建設候補地を探していましたがなかなか見つからず、共同経営者にあたるドナルド氏が個人的に所有していた土地が最終的に選ばれました。
本土最西端というところからも予想がつきますが、かなり辺境の土地であるため手付かずの自然が多く残っているため、周辺には素晴らしい景観美が広ががっています。そのような環境で熟成されたウイスキーもまた美麗なものであること間違いなしですね!
「アードナムルッカン蒸留所」蒸留所の歴史
アードナムルッカン 蒸留所の歴史を下表のとおり整理しました!
西暦年 | 内容 |
---|---|
2014年 | アデルフィ・ディスティラリー社によってアードナムルッカン蒸留所が建設される |
2019年 | 「アードナムルッカン スピリット 2019リリース」が5100本限定で発売される |
2020年 | 9月に「アードナムルッカン シングルモルト ファーストリリース」が15950本限定で発売される |
2021年 | 1月に「アードナムルッカン シングルモルト セカンドリリーズ」が16476本限定で発売される 4月に「アードナムルッカン シングルモルト 04.21:03」が17502本限定で発売される |
創業時の手助け
アードナムルッカン蒸留所は2014年にアデルフィ・ディスティラリー社の社長を務めるアレックス・ブルース氏によって建てられました。自社の大麦を原料に採用したりその他原料もスコットランド産にこだわったりといった方針を持っており、小規模なクラフト蒸留所として稼働しています。
蒸留所創業にあたり有識者の協力を得ており、具体的にはキルホーマン蒸留所を創業したウィルズ夫妻に助言を仰ぎ、台湾のカバラン蒸留所のコンサルを勤めたジムスワン博士をコンサルに据えて助言を得ていました。
また独自のこだわりとして環境問題意識や持続可能性への懸念を忘れず、再生可能な地元産の原料の使用やパッケージも再生可能なものを採用、スチルの加熱もバイオマスボイラーとするなどの試みが行われています。
ジムスワン博士の協力を得た蒸留所は大きく躍進するという背景もありますので、非常に今後が楽しみな蒸留所であります。
アデルフィ社
アデルフィ・ディスティラリー社は過去にも蒸留所の運営を行なっていた時期がありました。アードナムルッカンをより楽しむためにも、その歴史について触れておこうかと思います。
こちらも年表形式でまとめてみます!
西暦年 | 内容 |
---|---|
1826年 | 兄弟であるチャールズ氏とデビッドグレイ氏によってアデルフィ蒸留所が建設される |
1870年 | 社名がロッホカトリーンアデルフィに変更される |
1880年 | 蒸留所がアーチボルドウォーカー&Co社に買収される グレーンの生産を決定してカフェスチルを導入する |
1904年 | アデルフィ社がDCL社に買収される |
1906年 | 様々な生産過程のウイスキーが流出し、洪水のようになってしまった「Great Gorbals Disaster」と呼ばれる事故を起こしてしまう |
1907年 | 事故を受けて蒸留所の閉鎖が決定される |
1993年 | ジェイミーウォーカー氏(アーチボルドウォーカーの曾孫)がボトラーズ企業としてアデルフィ・ディスティラリー社を創設する |
2004年 | アレックス・ブルース氏がアデルフィ・ディスティラリー社の社長となる |
「アードナムルッカン蒸留所」製法の特徴
製麦
原料の大麦には自社の畑で栽培された大麦を採用しています。製麦については現在専門業社であるベアード社に委託していますが、将来的にはフロアモルティングによる自家製麦を行う予定となっています。
ピートレベルはノンピート(0ppm)とピーテッド(30ppm)の2種類が設定されています。
原料のモルトをモルトミルで粉砕してグリストとしたのちに、糖化の工程へと進みます!
糖化
アードナムルッカン蒸留所では仕込み水にグレンモア川と蒸留所の上部の泉の水を採用しています。マッシュタンは1バッチあたり2トンのグリスト容量を誇るステンレス製のセミロイタータンになります。
製麦によって得られたグリストをマッシュタンに投入し、加熱した仕込み水を複数回に分けて注ぐことで糖化が進められます。糖化によって抽出された溶液は糖分を多分に含んでおり、これをウォートと言います。
非常に透明度の高いウォートの完成を持って、次の発酵の工程へと進みます!
発酵
アードナムルッカン蒸留所のウォッシュバックはヨーロピアンオーク製が2基、オレゴンパイン製が2基、ステンレス製が4基設置されています。
ヨーロピアンオーク製のウォッシュバックを採用した背景として、アレックス氏が来日して秩父蒸留所を訪れた際にミズナラ製のウォッシュバックを使用していたことにインスピレーションを受けていたことがあります。
酵母にはディスティラーズ酵母を採用しており、冷却したウォートとともにウォッシュバックへと投入することで発酵が進められます。発酵にかける時間は72〜120時間と長めに設けられています。
発酵が完了するとウォートはアルコール度数約8%程度のもろみへと変貌します。次の工程は蒸留です!
蒸留
アードナムルッカン蒸留所には、フォーサイス社製で容量10000リットルのウォッシュスチルが1基、容量6000リットルのスピリットスチルが1基設置されています。スチルの加熱方式は地元産の木材を活用したバイオマスボイラー、冷却方式は屋外設置のシェル&チューブ方式が採用されています。
蒸留後に残されたポットエールは環境への配慮から肥料へと再利用されています。
蒸留回数はスコッチで一般的な2回蒸留であり、再留を終えたニューポットはアルコール度数約75%となります。
蒸留が完了すると、次の熟成の工程へと進みます!
熟成
蒸留を終えたニューポットは加水によりアルコール度数を63.5%に整えてから樽に詰められて熟成が始まります。
熟成に使用する樽は主にバーボン樽とシェリー樽の2種類になります。樽を安置するウェアハウスは伝統的なダンネージ式が採用されています。
オフィシャルボトル一覧
アードナムルッカン蒸留所のオフィシャルボトルを紹介していきます!
アードナムルッカンはまだ通年販売に至っておらず限定リリースもののみのため、まだ通販にて出品が確認できるもののみ掲載します!(価格は若干高騰していますが…)
アードナムルッカン シングルモルト セカンドリリース
ポイント
2021年に発売された待望のアードナムルッカンのシングルモルトのセカンドリリースになります!
ピーテッド原酒とアンピーテッド原酒が半分づつ、熟成に使用した樽の割合はバーボン樽65%シェリー樽35%となっており、ノンチルフィルタード・ノンカラーでボトリングされています。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:22800円
※2022年6月現在
香り
マーマレード/りんごとはちみつ/オークの甘さ/オレンジピール/若干のスモーキー
味わい
はちみつ/強いオレンジ/バニラ/ソルティ/ペッパーのようなスパイシー
余韻
ほんのりとしたスモーキーさとスパイシーさが長く続く
アードナムルッカン AD/04.21:03
ポイント
このボトルは2021年4月に瓶詰めされ、17502本限定でリリースされたアードナムルッカンです。
構成はセカンドリリースと全く同じでピーテッドとノンピーテッドが半々、バーボン樽65%シェリー樽35%です。原酒の蒸留年は2014年および2015年になります。
ー特徴ー
価格帯
Amazon:31980円
※2022年6月現在
香り
マーマレード/シトラス/はちみつ/ミント/オレンジピール/香ばしいスモーキー
味わい
ナッティ/バニラ/柑橘/はちみつ/スモーク感/ソルティ/レモン
余韻
スモーキーさとオークの暖かい甘さが長く続く
アードナムルッカン 07.21:05
ポイント
2021年7月にボトリングされ、19998本限定でリリースされたアードナムルッカンです!
こちらも構成は前述の2本と同じなので割愛!!
ー特徴ー
価格帯
Amazon:31980円
※2022年6月現在
香り
マーマレード/シトラス/はちみつ/オレンジピール/優しいスモーキー
味わい
マーマレード/はちみつ/ペッパー/スモーク/スパイシー/柑橘系フルーティ
余韻
スパイシーさと香ばしいスモーキーさが長く続く
参考資料
参考サイト:whisky.com scotchwhisky.com note.com